子供が社会人になると、親子で同居していても住民票の世帯を分けられます。これを「世帯分離」と呼びます。
世帯分離には、介護費用や住民税などの経済的なメリットがありますが、一方で医療保険料や手続きの面倒さなどのデメリットもあります。
この記事では、子供が社会人になったら世帯分離をするメリット・デメリットを徹底解説します。世帯分離を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
世帯分離とは、同居している家族と住民票の世帯を分けることです。世帯分離をするには、市区町村役場で「住民票記載事項訂正届」や「住民票記載事項変更届」などの必要書類を提出します。また、国民健康保険や年金などの関係機関にも手続きが必要です。
世帯分離の本来の目的は、所得が少ない親の住民税を軽減するためです。住民税非課税になれば、国民健康保険料や高額医療費制度などの恩恵も受けられます。さらに、世帯分離は介護費用の軽減にもつながる可能性があります。
介護保険サービスの自己負担額は所得に応じて決まりますが、世帯分離によって所得が減れば自己負担額も下がる場合があるからです。
子供が社会人になっても親子で同居している場合は、世帯分離が可能です。ただし、子供が独立した家計を営んでいることが前提になります。つまり、子供が自分で収入を得て生活費を負担していることが必要です。
子供が親から扶養されている場合や親から生活費を受け取っている場合は、世帯分離できません。世帯分離をすると、子供は親の扶養から外れることになります。そのため、医療保険や年金などの手続きも変わってきますので注意が必要です。
子供と世帯分離をするメリットは、主に経済的なものです。世帯分離によって、介護費用や住民税などの負担を軽減できる可能性があります。また、低所得者向け給付金の対象になることもあります。
これらのメリットは、親の所得が少ない場合や介護が必要な場合に特に大きくなります。子供と世帯分離をするメリットを3つ紹介します。
子供と世帯分離をするメリットの一つは、介護費用の負担額が下がる可能性があることです。介護保険サービスの自己負担額は、所得に応じて1割から3割に分かれます。
世帯分離によって所得が減れば、自己負担額の割合も下がる場合があります。例えば、要介護5で月々36万2,170円のサービスを利用している場合、自己負担額は3割で10万8,651円ですが、1割になれば3万6,217円になります。
このように、月々数万円も節約できる可能性があります。
もう一つのメリットは、介護保険施設の居住費と食費が下がる可能性があることです。介護保険施設に入居する場合、利用者は居住費と食費を自己負担しなければなりません。しかし、世帯分離によって所得が減れば、「負担限度額認定制度」を利用できる場合があります。
この制度は、所得に応じて居住費と食費の上限額を決めてくれる制度です。上限額を超えた分は国や自治体が補助してくれます。例えば、要介護5で月々10万円の居住費と食費を支払っている場合、上限額が6万円になれば4万円も補助されます。
3つめのメリットとして、世帯分離によって低所得者向け給付金の対象になることがあるということです。
低所得者向け給付金とは、所得や年齢などの条件を満たす方に支給される給付金です。例えば、「高齢者一人暮らし世帯等臨時特別給付金」や「特別定額給付金」などがあります。これらの給付金は、世帯年収や市町村民税などで対象者が決まります。
世帯分離によって所得や税額が減れば、これらの給付金を受け取れる可能性が高まります。
子供と世帯分離をするデメリットは、主に医療保険料や手続きの面倒さなどです。また、世帯分離は一度決めたら簡単に戻せないこともあるため、メリット・デメリットや手続きなどをよく調べてから決める必要があります。では、具体的にどんなデメリットがあるのでしょうか?
以下で、デメリットについて詳しく見ていきましょう。
子供と世帯分離をするデメリットの一つは、医療保険料が高額になる場合があることです。世帯分離によって、子供は親の医療保険から外れます。そのため、子供は自分で医療保険に加入しなければなりません。
医療保険の種類や収入によっては、医療保険料が高くなる可能性があります。例えば、会社員の子供が親の国民健康保険から外れて社会保険に加入する場合、社会保険料は収入の6.67%になります。これは国民健康保険料よりも高い場合が多いです。
もう一つのデメリットは、扶養手当や家族手当などが使えなくなることです。世帯分離によって、子供は親の扶養から外れます。そのため、親は子供に対して扶養手当や家族手当などの給付金を受け取れなくなります。
これらの給付金は、所得や年齢などの条件を満たす場合に支給されるものです。例えば「児童扶養手当」や「障害児福祉手当」「特別児童扶養手当」などがあります。これらの給付金は、月々数万円も支給される場合があります。
3つめのデメリットは、役所での手続きが複雑になることです。世帯分離をするには、市区町村役場で住民票や国民健康保険などの変更届を出す必要があります。また、年金や税金などの関係機関にも変更届を出す必要があります。
これらの手続きは、時間や労力がかかります。また、間違った手続きをすると罰則や不利益を受ける可能性もあります。
世帯分離の手続きは、世帯分離した日から2週間以内に行う必要があります。また、各機関によって必要な書類や手数料が異なります。そのため、事前に確認しておくことが重要です。
子供と世帯分離をする時に、断られる場合があることを知っていますか?世帯分離は任意ではなく審査制です。市区町村役場は、子供が親から完全に独立した家計を営んでいるかどうかをチェックします。その結果、世帯分離を断られる場合があります。
世帯分離を断られた場合は、まず世帯分離を断られた理由を確認しましょう。もし、理由が明確でない場合や納得できない場合は、市区町村役場に問い合わせましょう。世帯分離を断られた理由を改善するできるかどうかを検討できます。
本記事では、子供が社会人になったら世帯分離をするメリット・デメリットを徹底解説しました。世帯分離には、介護費用や住民税などの経済的なメリットがありますが、医療保険料や手続きの面倒さなどのデメリットもあります。
世帯分離は任意ではなく審査制です。世帯分離を断られた場合は、再申請や異議申し立てなどの対処法があります。世帯分離は一度決めたら簡単に戻せないこともあります。そのため、世帯分離をする前にはメリット・デメリット、手続きなどをよく調べてから決めましょう。