世帯分離のメリット・デメリットは?手続き方法も紹介!

2024.07.12

世帯分離とは、親と同居を続けながら、住民票上で世帯を分けることです。
介護が必要になると、それに伴って、あらゆる面でお金がかかってきますので、
介護保険制度を利用して介護費用を軽減させましょう。

世帯分離をすることにより、介護費用の負担軽減や国民健康保険料の減額などの
メリットがありますが、デメリットにも注意が必要です。
世帯分離のメリット・デメリット、手続き方法や注意点などをわかりやすく解説していきます。

そもそも世帯分離とは

世帯分離とは、住民票に登録されている1つの世帯を、2つ以上の世帯に分けることです。
同居していても家族間(主に親と子)の世帯を分けることが可能です。

つまり、現時点で同じ住所に複数の世帯主が登録されている場合に世帯分離の申請ができます。
親と子のそれぞれの世帯主が独立した家計を営んでいるという条件があれば、
世帯を分けることができ、
市区町村の窓口で世帯分離の申請手続きをすれば世帯を分けることが可能です。

世帯分離のメリット

世帯分離のメリットについて、下記の項目を詳しく解説します。

  • 介護保険サービス費の自己負担額の上限を下げられる
  • 介護保険サービス費の自己負担割合を下げられる
    介護サービス費の支払い制度を利用しやすくなるでしょう。

 介護保険サービス費の自己負担額の上限を下げられる

高額介護サービス費は、月々の利用者負担額(福祉用具購入費や食費・居住費等など一部を除く)
の合計額が所得に応じて区分された上限額を超えた場合、超えた部分が介護保険から支給されます。

所得が少ないと上限が低い金額に設定されるため、世帯分離をすることによって
所得額が減少すれば自己負担額は軽減されます。
結果として、自己負担額の上限を下げられることになります。
負担額の支給を受けるためには、市区町村に申請することが必要です。

 介護保険サービス費の自己負担割合を下げられる

負担限度額認定制度とは、介護保険施設を利用した際にかかる費用(住居費・食費)を
軽減する制度のことです。

一般的に介護保険施設に入居した際にかかる費用のうち「居住費・食費」は全額自己負担
になりますが、一定の条件を満たした方に限り、費用が軽減される仕組みが「負担限度額認定制度」
です。
主な条件は「世帯全員が住民税非課税世帯であること」と「預貯金の金額が制度に定められた
金額よりも少ないこと」との2つです。

 国民健康保険料が下がる可能性がある

世帯分離をすることで国民健康保険料の納付額が下がる可能性があります。
下記の項目について詳しく解説していきましょう。

  • 後期高齢者医療制度の保険料を下げられる
  • 介護保険施設の費用を抑えられる

 後期高齢者医療制度の保険料を下げられる

後期高齢者医療制度とは、75歳以上の後期高齢者の医療費を負担する医療制度です。
基本的に後期高齢者は自己負担割合が1割で医療機関を利用できますが、自分自身も
保険料を納付する必要があります。
なお、保険料は世帯所得に応じて負担額が異なっており、低所得者であれば保険料の
軽減制度が適用されます。

世帯分離することで世帯所得を抑えて保険料負担を軽減できる可能性があるため、
世帯の総所得金額を確かめておくと良いでしょう。

 介護保険施設の費用を抑えられる

高額介護サービス費制度とは、1カ月に支払った介護費用が自己負担額の上限を超えた場合、
超えた分を払い戻してもらえる制度です。

「高額介護サービス費」や「高額介護・高額医療合算制度」は、同じ世帯で生じた介護や
医療費用を合算する制度なので、世帯分離を行い親世帯の所得が下がれば介護費用の軽減になります。
さらに、世帯収入をベースにして介護費用が算出される場合は、世帯を分けることで
「世帯収入」を軽減できます。

世帯分離のデメリット

世帯分離のデメリットについて、下記の項目を詳しく解説していきましょう。

  • 家族手当や扶養手当から外れる可能性がある
  • 国民健康保険料が高くなる可能性がある
  • 手続きが煩雑になる
  • 勤務先の健康保険組合を利用できなくなる

 家族手当や扶養手当から外れる可能性がある

親を勤務先の扶養に入れており、会社から扶養手当や家族手当をもらっている場合は、
世帯分離をすると扶養から除外されてしまうことがあるので、事前に健康保険組合などで
確かめておきましょう。

扶養から外れる場合には扶養手当が支給されなくなるので少なからず影響があります。
会社から支給される手当額の方が世帯分離後に減額される額より多くなる可能性もあるため、
相談しながら細かなシミュレーションをすることをおすすめします。

 国民健康保険料が高くなる可能性がある

国民健康保険に加入している世帯が世帯分離をした場合、各世帯主が国民健康保険料を
支払うことになります。
その結果、負担額が増える場合もあるので、世帯分離前後の負担額がどうなるのかを
事前に確かめておくことが重要です。

同一世帯であれば世帯主が保険料を負担しますが、世帯を分けると各自が世帯主となり
保険料も各自が負担することになります。
結果として、世帯分離によって国民健康保険料が高くなる可能性もあります。

 手続きが煩雑になる

世帯分離をするためには、事前にも事後にも様々な手続きが必要となるので、
時間がかかってしまう点がデメリットです。

住民票を取得したり複数の書類に様々な事項を記入する必要があるので、手間がかかります。
また、親が高齢のため自力で手続きが難しい場合は、子が代理で手続きをすることになり、
この場合には「委任状」が必要です。
世帯分離によるメリットはありますが、実践するために煩雑な手続きがあるという
デメリットもあります。

 勤務先の健康保険組合を利用できなくなる

会社の健康保険組合の扶養から外れると、組合のサービスなどが利用できなくなります。
扶養家族ならば健康保険料を自己負担する必要はありませんが、扶養から外れると自分自身で
保険料を支払わなければなりません。

また、健康保険組合独自の付加給付なども受けられなくなり、場合によっては大きな
損失となることもあります。
親を介護している人が、扶養家族として会社の健康保険組合に加入させた方が経済的に
負担を軽減できるという場合もあります。

世帯分離の手続き方法は?

先述したメリットとデメリットを考慮して、負担が軽減するのかを確かめましょう。
世帯分離の手続き方法について、下記の順に解説します。

  • 手続きを行う前に条件を確認
  • 必要書類の準備
  • 住んでいる市区町村の窓口へ提出

 手続きを行う前に条件を確認

下記のケースで状況が変わる場合がありますので、メリットとデメリットを考慮し、
負担が軽減するかどうか確かめましょう。

  • アルバイト収入や年金額が多いなど、要介護者の所得が高い場合、世帯分離しても
    負担軽減にならない可能性がある
  • 会社の家族手当の金額を再確認して、総合的に世帯分離をした場合に負担軽減になるか
  • 親子で介護サービスを利用している場合「高額介護高額医療合算制度」の世帯合算が
    できなくなる

 必要書類の準備

世帯分離の申請手続きを進めることになったら、必要な書類などを準備しましょう。

  • 本人確認書類(マイナンバーカードやパスポート、運転免許証など)
  • 世帯変更届(市町村役場の住民課・戸籍課にて「住民異動届」をもらう)
  • 国民健康保険証
  • 印鑑
  • 委任状(代理人による申請の場合)
    親の手続きを代理する場合、同一世帯であっても委任状が必要となるため気を付けましょう。
    不備の無いように不明な点は役所に確かめておきましょう。

 住んでいる市区町村の窓口へ提出

世帯分離の手続きは、住んでいる市区町村の窓口で行うことができます。
書類の項目を埋め、捺印をし、他の証明書などの準備が整ったら、住んでいる
市区町村の窓口へ提出しましょう。

自治体によって、そのほかの手続きに必要なものが違うため、事前に確かめておきましょう。
窓口で、準備した本人確認書類や世帯変更届などを提出し、訂正等があれば印鑑が
必要になる場合がありますので、忘れずに持参しましょう。

まとめ

世帯分離をする際には、

  • 介護費用の負担軽減なら、介護度や利用する介護サービスをよく確かめ
  • 国民健康保険料の減額なら、世帯分離後の各世帯の所得をよく確かめ
  • 健康保険の扶養から外れるデメリットを回避したいなら、扶養控除や扶養手当の適用条件を確認し
  • 介護サービス費と医療費を合算できないデメリットを回避したいなら、
    介護保険サービスと医療保険の利用方法を検討して

    自身の状況に合った最適な判断を検討しましょう。
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