世帯分離をすると国民健康保険はどうなる?手続きや注意点も解説

2024.08.06

世帯分離したら国民健康保険はどうなるのでしょうか?
世帯分離をした世帯が国民健康保険に加入している場合、各々の世帯主が
国民健康保険料を支払うことになります。

その結果、負担額が増える場合があるので、世帯分離前後の負担額の変化を事前に
確認することが重要です。
世帯分離は国民健康保険にどのような影響があるのか、手続きや注意点も解説しましょう。

世帯分離と国民健康保険の関係

国民健康保険に加入している世帯が世帯分離をした場合、同一世帯であれば、
ひとりの世帯主が保険料を負担しますが、世帯を分離すると各自が世帯主となり、
各々の世帯主が国民健康保険料を支払うことになります。

 そもそも世帯分離とは

世帯分離とは現在同居している親子間で、住民票の世帯を分けることです。
特に親と子の間で行われることを言います。

無職や独身であったとしても、シングルマザーでも、同居していて家族間(主に親と子)の世帯を
分けることは可能です。

親と子のそれぞれの世帯主が「独立した生計で暮らしている」という条件を満たせば、
世帯分離の申請ができ、市区町村の窓口で世帯分離の申請手続きをすれば世帯を分けることが可能です。

 国民健康保険との関係性

国民健康保険は、全国民が加入を義務付けられている保険制度です。
国民健康保険料は「一世帯ごとの平等割額」「被保険者の人数による均等割額」
「被保険者の所得に応じた所得割額」の合計額によって税額が計算されます。

世帯分離すると、一世帯ごとの「平等割額」が二世帯分に変わりますので、その分は増額となります。
しかし、世帯分離をした年度内は、国民健康保険料の再計算はされず、世帯分離をした
翌年からの変更となります。

世帯分離がもたらす負担軽減のポイントは?

世帯分離することで、国民健康保険料の負担を軽減できる可能性があります。
負担を軽減できる下記のポイントを3つ詳しく解説しましょう。

  1. 保険料の見直しができる→住民税非課税世帯になる・所得割が下がる
  2. 扶養家族の影響を受けない→扶養家族は医療費などの給付を受けられる、
    扶養家族の所得が一定額を超えると扶養から外される
  3. 医療費の支払いについてのメリット→高額療養費制度を利用できる
    ・医療費控除制度を申請できる

 保険料の見直しができる

世帯分離することで国民健康保険料の見直しができます。
具体的に国民健康保険料などを見直して、減額を検討するには下記の2つのパターンが考えられます。

・住民税非課税世帯になる
・所得割が下がる

親の収入が少なくても、子供の収入が高いと、その世帯は課税世帯となり親子共に
住民税が課税されますが、世帯分離することで親世帯は住民税非課税世帯となり、
国民健康保険料が減免され住民税の課税もなくなり減額が可能です。

 扶養家族の影響を受けない

世帯分離することで、扶養家族の影響を受けないというメリットがあります。

扶養家族とは、社会保険などの制度で定められた基準によって扶養される家族のことで、
配偶者や子供などが該当します。

扶養家族は、扶養者の社会保険・公的年金に加入でき、これにより医療費などの給付を
受けられますが、一定の所得制限を受けることになります。
扶養家族の所得が一定額を超えると扶養から外れ、自分で国民健康保険、などに
加入することになります。

 医療費の支払いについてのメリット

世帯分離することで、医療費の支払いにおいて下記のメリットがあります。

  • 高額療養費制度:1か月の間に一定額の医療費が支払い額を超えた場合、超えた分を
    後から各市町村より変換してもらえる制度が利用できる
  • 医療費控除:1年間に支払った医療費が一定の基準額を超えたとき、
    所得税・住民税の減額を受けられる制度を申請できる
    世帯分離によって所得が減り、控除の基準額が下がる場合があり、医療費控除を
    受けやすくなります。

世帯分離を申請する前に注意すべきこと

  1. 世帯分離した年度内には国民健康保険料の再計算はされない
  2. 給付金や税金が変更になる可能性がある
  3. 国民健康保険料の負担が増えることがある
  4. 生活環境や家族関係が変わる可能性がある
  5. 各種手続きが煩雑になる

 世帯分離した年度内には国民健康保険料の再計算はされない

国民健康保険に加入している世帯が、世帯分離する際には注意が必要です。
世帯分離をしたからといって、国民健康保険料にすぐに反映される訳ではありません。
国民健康保険料は4月1日時点の世帯の構成によって保険料が決定されます。

そのため、年度の途中に世帯分離をしたとしても年度内に国民健康保険料の再計算は行われません。
また世帯分離をした年度内に支払った国民健康保険料や住民税は返還されないので注意しましょう。

 給付金や税金が変更になる可能性がある

世帯分離すると、それまで同居していた家族が別々の世帯となり、それぞれの世帯の
人数や所得に応じて住民税が課せられるようになります。

そのため、世帯分離前よりも総額が高くなる場合があります。
世帯分離によって世帯内の所得が下がる場合や、分離後の世帯人数が少なくなる場合は、
住民税が減額される可能性もあります。

また、各種給付金が変更になる可能性があります。
例えば所得税や児童手当、特別定額給付金などが該当します。

 国民健康保険料の負担が増えることがある

世帯分離により世帯が別々になると、各世帯の世帯主も別々になります。
国民健康保険に加入している場合には、各世帯主が国民健康保険料を支払うことになります。
世帯分離によって分離前の世帯の所得や人数が減少し、保険料の計算基準に変化が生じます。

このため、親と子の2人で1世帯分の保険料を支払っていた場合に比べて各自が各世帯分を
支払うと高くなる可能性があります。
結果として、国民健康保険料の負担が増える場合が考えられます。

 生活環境や家族関係が変わる可能性がある

世帯分離することで、家族関係や生活環境に変化が表れる場合があります。
例えば親子や兄弟が世帯分離をした場合には、相続や贈与などの法的な問題が
発生する懸念が出てきます。

また家族間での適切なコミュニケーションにも影響が出る可能性があります。
その他、家族の介護などのサポート面においても問題が出てくるかもしれません。

トラブルなどを防ぐためにも、世帯分離する際は家族の間でもしっかりと話し合いを
しておきましょう。

 各種手続きが煩雑になる

世帯分離するためには、申請前の準備にも申請後にも色々な手続きが必要となるので、
時間がかかってしまう点がデメリットでしょう。

住民票や申請書を取得し、更に、複数の書類にそれぞれの事柄を記入する必要があるので、
手間がかかります。
また、親が高齢などのため、自力で手続きが困難な場合には、子が代理で手続きを
することになり「委任状」が必要です。

手続きをするのが煩雑であるというデメリットも把握しておきましょう。

世帯分離の手続き方法は?

世帯分離についてのメリットとデメリットを十分に理解し、検討することが重要です。
世帯分離の手続き方法について、下記の順に解説しましょう。

  • 必要書類の準備
  • 住んでいる市区町村の窓口へ提出

 必要書類の準備

世帯分離の申請手続きを進めることになったら、必要な書類などを準備しましょう。

  • 本人確認書類(マイナンバーカードやパスポート、運転免許証など)
  • 世帯変更届(市町村役場の住民課・戸籍課にて「住民異動届」をもらう、
    市区町村のホームページからダウンロードする)
  • 国民健康保険証
  • 印鑑
  • 委任状(代理人による申請の場合)
    ※親の手続きを代理する場合、同一世帯であっても委任状が必要となるため気を付けましょう。

 市町村窓口へ提出

世帯分離の手続きは、住んでいる市区町村の窓口で申請ができます。
書類や証明書などの準備が整ったら、市区町村の窓口へ提出しましょう。
世帯分離の手続きは、一般的に、世帯主が行うのが原則です。

世帯主による手続きが困難な場合は、委任状を作成し、同一世帯の親族や友人に
手続きを委任できます。
窓口で、準備した本人確認書類や世帯変更届などを提出します。
不明な点があれば自治体に確かめておきましょう。

まとめ

国民健康保険料は、被保険者の所得に応じた所得割額の合計額などによって税額が計算されます。
国民健康保険に加入している世帯が世帯分離した場合、世帯を分離すると各自が世帯主となり、
各世帯主が国民健康保険料を支払うことになります。

世帯分離することで、国民健康保険料を減額できるケースもありますが、
負担が増える場合もあります。
世帯分離を検討する際、メリットとデメリットを理解し慎重に検討することが大切です

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