介護現場や医療機関などで、「QOL」や「ADL」という言葉が使用されます。
「QOL」とは「生活の質」になり、充実した生活を送るための概念です。
「ADL」とは、日常生活において必要な身の回りの生活動作のことで、
「起きる、食べる、排せつする、入浴する」などです。
介護におけるQOLとADLの関係やQOLの向上のためのポイントなどについて、
わかりやすく解説します。
目次
「QOL」とは、クオリティ・オブ・ライフ(Quality of Life)の略で、「生活の質」をいいます。
ご利用者のQOLを高めることは、ケアの質を高め、充実した生活を送るために必要な概念です。
利用者の一人ひとりの意向に合わせて、その方自身が「生きがい」や「幸福感」を
感じられるかどうかを考え、サービスやケアを提供します。
看護・介護におけるQOLはサービスやケアの効果を確認する指標になります。
認知機能の衰えや気分の落ち込みなどにより、意欲が低下する心理的要素や、
身体機能が低下するなどの肉体的要素。
職場や家族、友人との関係が上手くいかないなどの社会への参加が減るために起こる社会的要素。
生きがい、平穏な気持ちなどのスピリチュアリティな部分。
収入が不安定になりやすく日常生活へ不安があるなど経済的要素などがあります。
下記の要素について解説しましょう。
・心理的要素
・肉体的要素
・社会的要素
・経済的要素
心理面・精神面において、抑うつ、不安、認知機能の衰え、意欲低下などがあります。
適切なコミュニケーションにより、話を傾聴し、その気持ちに共感していく姿勢が重要です。
介護を必要とする方が自分の意見や希望を表に示しやすくなり、
不安や心配な事でも共有しやすくなります。
苦しみや生きづらさなどの感情を表に出しやすい環境を作ることが求められます。
介護を必要とする人々への心理的配慮や関わりが、QOLの向上に必要です。
肉体的要素の身体面には、身体症状や運動量が落ちる・体が痛む・身体機能の低下などが
あります。
疼痛や不快感などの症状を適切に管理することが、介護を必要とする方々のQOLを
向上させるために必要となります。
看護や介護は、その方の痛みや、不快感を感じている身体の状態を、充分に評価し、
医師の指示を受けて、適切な治療やリハビリを行ったり、
姿勢を整えたり、ベッドや車いすなどの環境整備に取り組むことが求められます。
社会的要素として、家族や友人との関係や社会的立場、活動性、日常生活の役割など、
身の回りの人との関係が悪化する場合があります。
また、スピリチュアリティ(霊性)として、信念、生きがい、平穏な気持ちなどに変化が
起こる場合もあります。
介護を必要とする方に、リハビリや経済的支援、生活環境の整備など、
それぞれの個人的な自立度を高めるための対策を実行し、
生活の快適さ、利便さを追求することがQOLを高めると考えられます。
経済的要素として、今までの日常生活の役割や活動性、日常生活の機能面などがあります。
経済的な環境により、収入が不安定になりやすくなることも重要な経済的要因となります。
心理的要素の認知機能の衰えや肉体的要素の身体機能の低下、社会的要素の社会的立場や役割、
スピリチュアリティな部分での生きがいや平穏な気持ちの変化などが、
不安や抑うつにつながりQOLの向上に影響を与える可能性があります。
介護を必要とする方が自分らしい生活を送るためには、ADLの維持と向上が非常に重要になります。
ADLの向上は、結果的にQOLの向上につながるからです。
QOLとADLの関係を詳しくみていきましょう。
「ADL」とは、アクティビティ・オブ・デイリーリビング(Activities of Daily Living)の略称です。
日常生活を過ごす中で、食事や排泄、更衣や整容、移動や入浴などの基本的な動作になります。
高齢者の身体活動のレベルや障害の程度などを知るためにも、重要な評価の指標になっています。
ADLが低下するとQOLも低下しますので、自分らしい生活を送るために、
ADLの維持と向上は非常に重要です。
ADLの維持と向上で、介護を必要とする方は自分で判断して行動し、自立した生活に
向けていく事ができ、その結果、QOLの向上につながります。
逆に、ADLが低下して依存の度合いが高まると、介護を必要とする方のQOLは低下し、
身体的な不快感や苦痛、精神的なストレスなどを感じるようになります。
そのため、看護・介護においては、対象者のADLの状況を常に把握し、自立支援に向けた
取り組みが求められています。
介護を必要とする方が、ADLが下がり、手を動かしづらく、食事が摂りにくい場合、
食欲の低下だけでなく、食べることで得られる満足感や楽しみを得ることも難しく、QOLも
低下してしまいます。
そこで、ADLを上げるために、手を動かす運動やリハビリをすれば、食事が摂りやすくなり、
QOLの向上にもつながります。
ADLが上がれば、日常生活での活動意欲が向上しQOLも向上するため、さまざまな要素に影響します。
介護におけるQOLの向上には、要介護者の一人ひとりに合ったケアを行いましょう。
下記について、ポイントを解説します。
・要介護者の話をしっかり聞く
・要介護者自身ができることはサポートに徹する
コミュニケーションは要介護者の思考や感情に刺激を与えて活性化させることにもつながります。
また、日常生活への活力の向上や、新たな可能性を引き出せるかもしれません。
コミュニケーションにおいては、じっくりと話を聞き、受け止めることと質問することが
ポイントです。
QOLやADLを向上させるために、本人の思いや、できることを理解し、状況を判断しながら、
話の中で得た情報を一人ひとりのQOLの向上に役立てましょう。
要介護者の身の回りの介護では、職員がつい手を貸してしまうことも少なくありませんし、
自分でやることを面倒がる方も多くいるかと思います。
介護職員は面倒見がよい方が多いため、世話をしすぎてしまっている場合もあるかもしれません。
ですが、ADLやIADLの低下がQOLの低下につながる可能性も多々ありますので、
自分でできることは、なるべく自分でやってもらい、職員は補助的なサポートに回って、
見守ることが理想です。
日頃から介護を必要とする人々を対象にサービスを提供している介護従事者は、
QOLとADLの関係性をよく理解しておくと、ケアの質の向上につなげられるでしょう。
誰もが皆、生きがいや幸福感を感じながら、生活の質を高められるように、
QOLの向上を心がけたいものです。
ADLの維持を目的にしてQOLがおろそかにならないように注意しましょう。