近年、日本では高齢化が進み「超高齢化社会」とも呼ばれる現状にあります。
それに伴い、福祉職の需要は高まっている一方、介護業界は慢性的な人手不足が問題となっています。
この記事では、そんな深刻化する「介護人材の不足」の現状とその原因、
そして具体的な解決策について紹介していきます!
福祉職で人材不足を感じている方や、スタッフとして働き負担が高まっていると
悩んでいる方はぜひこの記事を閲覧してみてください!
目次
介護業界の人手不足の解決策を紹介する前に、まずは「介護業界の人手不足の背景と現状」
について紹介していきます。
しっかりと、現状と背景を理解することは解決策の実施や根拠になり得る、
重要なポイントですのでこれを機におさえておきましょう。
介護人材が不足している現状の背景には、「少子化」があります。
日本では、少子化と高齢化が同時に進んでいるため「少子高齢化」が起きてしまい、
働き手の減少が加速しています。
内閣府の令和5年度版「高齢社会白書」によると、令和4年(2022年)時点の日本の
「総人口は1億2,495万人」で、そのうち「65歳〜75歳以上の人口は1,687万人」となっています。
これは総人口の13.5%を占めています。
さらに、2060年にはこの割合が17.8%までにも上昇すると予想されており、
さらに高齢化が急速に進展することになります。
介護人材の現状として、厚生労働省が出したデータによると「2023年度には233万人の
介護スタッフが必要」というデータがあります。
しかしそれに対して、「2021年度の介護スタッフ数は214万人」という実績となり
「約19万人もの人材不足が起きている」というのが現状です。
さらに、今後の介護スタッフ数を推測したデータでは「2025年には約32万人」
「2040年には約69万人」もの人材不足が起きると予想されています。
少子高齢化が加速する日本において、介護人材は約19万人不足しており、
今後も不足する人数は増えていくという推測が立てられています。
この介護業界の人手不足の主な原因には、色々な理由が絡み合っています。
ここからは、介護業界の人手不足の主な原因についてご紹介していきます!
介護の人手不足の主な理由のひとつは「離職率の高さ」です。
介護業界は定着率が低く、すぐに離職する方が多いことから人手不足を引き起こします。
介護業界の離職状況として「就職してから3年未満での離職の割合が6割を超えている」
というデータがあります。
これは、厚生労働省が発表した「日本の平均離職率」よりも高い平均で、
いかに離職率が高いかを物語っています。
離職した理由を調査したデータによると、一番多い離職理由は「職場の人間関係に問題があったため」が27.5%となっています。
介護の現場は、サービス業ゆえに人の関わりが多い職場です。
これはやりがいを多く感じることができるという反面、「人間関係がストレスとなる」場面も
多い業界といえます。
また、他の離職理由としては「理念や運営のあり方に不満を感じた(22.8%)」
「他に良い仕事・職場があった(19%)」などがあります。
介護業界の人手不足の主な原因ふたつめは「仕事内容に対する賃金の低さ」があげられます。
介護職の給与は、「全産業の平均賃金が33万3,800円」なのに対して、
「介護職の平均賃金は、24万9800円」と大きく差が開いています。
※介護職とは、介護職が該当する「社会保険・介護事業・社会福祉」を意味します。
また、厚生労働省の調査によると2024年6月時点での有効求人倍率が「1.20倍」
なのに対して「介護職の有効求人倍率は3.70倍(2024年3月時点)」でした。
これは、1人の求職者を3社でとりあっていると言え、
「他業種と比べて競争の厳しさが約3倍にも及ぶ」ということがわかります。
介護職は、人を抱えることや、おむつ交換、入浴の介助など身体的な負担も大きく、
認知症の高齢者を昼夜問わずお世話をするという精神的な負担も大きい職業です。
仕事内容の負担の大きさに加えて、これらの賃金の低さや人材確保の難しさが
人手不足を加速させている原因のひとつとなっています。
介護の人手不足の原因3つ目は、「仕事内容に対する社会的評価の低さ」です。
介護の業界は今なお「ネガティブなイメージが根強くある」業界のひとつです。
介護の仕事は「キツイ・キケン・キタナイ」の「3K」に当てはまり、
夜勤による不規則な生活リズム、おむつ交換やトイレ案内など、
精神面的な辛さがあげられます。
また、「介護」自体も従来身内の人が行うという「家族の代理」というイメージも
根強く残り「介護専門のプロフェッショナル」というイメージが
浸透せず、社会的評価の低さを招いているという見方もあります。
介護の人手不足の原因4つ目は「身体的負担の大きさ」です。
介護は一日に何度も「人を抱える」「おむつ交換やトイレの世話」「洗身・洗髪の入浴介助」
などを行います。
事業所の形態にもよりますが、日に数十人の介護を行う必要がある場合もあり、
身体的負担が大きい仕事です。
また、認知症をもつ高齢者の世話は、ケガや事故のリスクも高まる場合が多く、
勤務中は常に気を抜くことができないという負担も生じます。
現在は、リフトやセンサーなど機械化も進み身体的な負担の改善も推進されていますが、
世間ではまだまだ「人の手で全て介護する」というイメージが大きく、
人材を募集しても負担の大きさと浸透しているイメージから、中々人手が集まらない
という状態にあります。
ここまで、「介護業界の人手不足の現状と背景」や「介護業界の人手不足の原因」などに
ついて詳しく解説しました。
それでは、これらの背景や原因に負けず人手不足を解消するための対策はどんなものが
あるのでしょうか?
実際に取り組まれている解決策を基に「5つの解決策」をご紹介していきます!
介護の人材不足の解決策1つ目は「働きやすい環境を整える」です。
介護の離職で一番多い理由は「人間関係などによる離職率の高さ」にあります。
そのため、「人間関係の改善」や「スタッフにとって働きやすい環境を整える」ことが
重要といえます。
スタッフの働きやすい環境整備としては、以下のようなものが上げられます。
介護の人材不足の解決策2つ目は「ITシステムの導入」です。
今までは「シフト管理」や「業務管理」「保険料や加算などの計算」を人力で行っているものを、
ソフトなどのITシステムを導入することで、業務の効率化を狙えます。
業務を効率化をすることは、時間に余裕ができたり残業が減ることに繋がるためスタッフの
離職防止に繋がります。
また、介護ロボットの導入も効果的で「人を抱える作業を介護リフトを使う」
「離床センサーを利用し、巡回の回数や見守りの負担を減らす」など、
介護ロボットは日々、進化しています。
これらのようなITシステムやツールについて、情報収集をし、設備をアップデートすることは、
スタッフの負担軽減や安心感の向上に繋がります。
負担が減り、安心して仕事ができることは、スタッフの離職が減ることにも、
人材確保のための強みにも繋がります。
介護の人材不足の解決策3つ目は「外国人人材の積極的な採用」です。
介護業界では近年、外国人人材の採用が増加しています。
外国の若い人材は日本で働きたいと考えている人が多く、
力仕事が多い介護で活躍する可能性があります。
外国人スタッフを採用するメリットには以下のようなものがあります。
介護の人材不足の解決策4つ目は「資格取得支援制度の導入・拡大」です。
スタッフの教育や、介護福祉士の取得支援などを行うことで「スタッフのキャリア形成を
積極的に応援している」というアピールは、印象がよくなり効果的なポイントとなります。
介護業界でキャリアアップを目指す「意欲のある人材からの応募も期待できる」ようになります。
資格取得支援制度の例には以下のようなものがあります。
介護の人材不足の解決策5つ目は「多様な働き方ができる環境の整備」です。
先に説明した、「少子高齢化」「賃金の低さ」は人手不足を加速させてしまいます。
実際に「介護や子育てと仕事を両立したい」「自分の好きな時間や場所で働きたい」
というニーズは増加傾向にあります。
多様な働き方には以下のようなものがあります。
この記事では介護の人材不足をとりまく現状や背景、人材不足の原因と解決策について
実例を踏まえながら紹介しました。
今後、超高齢化と少子化が進み介護業界の人材不足はさらに深刻化していくと予想されています。
この記事で紹介した解決策や課題解決の全てに取り組むことは難しいかもしれませんが、
閲覧していただいた方の一助となれば幸いです!