本記事では、介助とは何かについて詳しく解説していきます。
よく介護との違いも比較されることがありますが、介助と介護の違いを理解しておくことは、
適切なケアを行うために重要です。
どちらも似たような言葉ですが、それぞれの意味を明確に理解し、その違いを説明できるという人は
少ないのではないでしょうか。
内容などについて詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
介護の現場ではよく介護と介助という言葉がつかわれますが、その違いをしっかり知るところが
スタートであるとも言えます。
まずは介護と介助の意味や目的、仕事内容の違いなどについて解説しますので、より正しい言葉と
その内容を覚えることから始めていきましょう。
介助とは、個人のニーズや援助する度合いに応じて基本的な動作をサポートし、快適で安心した
生活を送るように支援することです。
要介助者に付き添い、日常生活を手助けする行為ですが、利用者の心身の状態によってサポート
する内容は異なります。
また介助は、「一部介助」「半介助」「全介助」の3段階あり、動作の見守りや必要に動作だけの
手助け、すべての動作に手助けが必要という基準で分けられています。
食事、排泄、入浴、着替えなど日々の生活のあらゆる場面で必要となる基本の動作や行動を
サポートすることが介助です。
介助と介護の違いは、それぞれの持つ意味合いが異なっていると考えることができます。
一過性の短い期間のみ要介助者が困難な動作を手助けすることが目的の「介助」に対し、
長期間にわたり身体機能の低下を防ぎ、自立した生活を回復する目的が「介護」です。
介助は限られた行為に対するサポートが完了すれば達成したことになりますが、介護は
さまざまな介助を組み合わせて目的を達成させることと表現できます。
介助は一部的な手助けをする介護を実現するための手段、一方の介護は利用者が日常生活全般を
手助けする行為全般といえるでしょう。
介助にはさまざまな種類があるとお伝えしましたが、今回は実際の介護現場でよく行われている
主な介助の方法をいくつかご紹介します。
介助を行う際のポイントも併せてご紹介しますので、在宅介護を行う方は参考にしてください。
食事介助とは、加齢や病気などにより咀嚼や嚥下機能が低下し、上手く食事が摂れない利用者に
対して行う介助です。
食事を摂る際は、利用者の体調や姿勢、一口に食べる量などの配慮が大切です。
食事介助は、高齢者では誤嚥性肺炎のリスクがあり、場合によっては窒息など重大事故につながる
可能性が高い難しい介助の一つです。
食事中の姿勢や食べ物の大きさや量、食べる間隔などに配慮しながら、利用者の栄養を適切に
維持し、食事を楽しむためのサポートが目的になります。
排泄介助とは、利用者の排尿や排便をといった排泄行為をサポートします。
排泄介助は利用者の身体状況によって4つの介助を選択します。
自力でできることは本人に任せ、1人では難しいところだけを手伝うようにしましょう。
排泄中に力んで血圧が上がり、めまいなどを引き起こす可能性があります。
体調の変化には十分注意しましょう。
排泄物や皮膚の状態をさりげなくチェックして健康状態を把握しておきましょう。
下着やズボンに汚れがついていないかも併せて確認しておきましょう。
入浴介助とは、自力で入浴が困難な方のために、利用者の状態に応じた方法で入浴を手助けする
介助です。
入浴は、身体の清潔を保つ、リラックス効果が得られる、褥瘡や感染症の防止などの効果があり、
体調チェックにも役立ちます。
入浴介助には一般、リフト、機械の3種類あり、利用者に最適な方法でサポートします。
手すりがあれば自力での入浴や車いすを使用しての入浴、寝たきりの方でも入浴できますが、
転倒防止やヒートショックなどに注意が必要です。
移乗介助は、介護ベッドや車いす、トイレの便座などに利用者を安全に移すための介助です。
移乗介助は、スタッフの動作や姿勢、身体の動きによって負担感は大きく異なります。
持ち上げて移乗させようとすると、介助者の腰や腕に大きな負担がかかりますので介助時の姿勢に
注意しましょう。
介助者は腰を落として重心を低くし、本人には前かがみの姿勢をとってもらい上手に体重を
移動させましょう。
特に腰に負担がかかる動作が多いため、介助者の適切な体勢維持と利用者の支え方など
技術が必要な介助です。
歩行介助は、利用者の歩行をサポートし、転倒などの事故を未然に防止する介助です。
歩行介助も入浴介助や排泄介助と同様に利用者の身体状況によって介助方法が異なります。
寄り添い介助、手引き介助、後ろからの介助など合計5つの種類があります。
無理のないように本人のペースに歩幅を合わせましょう。声かけをしたり、リズムを
とったりしながら同じペースで歩きます。
いずれの歩行介助も転倒リスクやふらつきを想定した介助が必要です。
更衣介助とは、起床や入浴、就寝時に利用者の着替えを補助する介助です。
特に加齢や病気などで寝たきりの利用者には必要な介助です。
しかし、麻痺や手や関節の拘縮、怪我などで腕や足の動きに制限がある方には注意すべきポイントが
あります。
・上着を脱ぐ際は麻痺のない腕から脱ぎ、着る場合は麻痺側から着る
・肘や手首の関節を支えながら更衣する
・利用者に痛みのない範囲でゆっくりと着替える
プライバシー保護や同性のスタッフによる介助などにも配慮する必要があるでしょう。
介護の主な内容は、身体的な介助や日常的な支援が必要な方に、身体的および精神および
社会的なサポートを行うことです。
そんな中、お互いが気持ちの良い介助をするために、気を付けるべきポイントがいくつかあります。
介護の本来の目的は利用者の自立支援です。
過剰介助は、介助を受ける方の主体性を損なったり、身体機能を低下させたりと、
介助を受ける方の自立を妨げる可能性があります。
そこで近年広まりつつあるのが、引き算の介護という考え方です。
介助される方の主体性を尊重し、できないことだけを介助するというものです。
サポートやリハビリ等によって、身体機能の低下を防ぐだけでなく、自立した生活が送れる喜びや
生きる意欲につながります。
介助する際には、体に触れる前や動かす前に、一度声をかけることが大切です。
「少しこっち側を持ち上げるね」「少し引っ張るよ」と声をかけることで、相手も体を動かす
準備をするので、介助がしやすくなります。
また、声をかけずに急に触れたりなどすると、相手が驚いてしまいます。
結果、転倒したり、驚いたときにいきなり体を動かして痛めたりするリスクがあるので、
気を付けなければなりません。
介助で失敗しないためにも、先に声をかけ、相手にも準備をしてもらうことが重要です。
介助する際には、必ずゆっくりとした動作を心がけてください。
立ち上がるときや座るとき、移乗するとき、歩行するときなど、どのようなシーンであっても、
早い動きは要介助者に不安感を与えます。
自分の体を自由に動かせないとき、頼りになるのは介助者だけです。その介助者に、
てきぱきと体を動かされては、「転倒しないか」「体が痛くならないか」などいろいろな心配を
してしまいます。
すばやく体を動かして介助しようとすると、要介助者の体に負担をかけるので注意が必要です。
配慮しながら介助をすると、相手に安心してもらえるでしょう。
忘れがちな部分であるのが、介助者の怪我です。
要介助者に目を向けていると、自分の体のことが後回しになってしまうことが少なくありません。
中腰の体勢でサポートしていたり、要介助者を抱えていたりと、体に大きな負担がかかります。
日々の介助作業による腰痛や、負担の大きい作業での関節痛などは、介助者に多いトラブルです。
介助中に転倒してしまったり、体をぶつけたりすることで引き起こる怪我もあります。
介助者自身にも怪我のリスクがあるので、自分の健康を守りつつ介助を行うことが重要です。
本記事では、介助とはどんなもので、どんなことをするのかについて解説してきました。
介助は大変な作業が多いうえに、配慮しなければならない部分もあります。
身体的な介助だけではなく、心にも寄り添うといった心身のサポートが必要なのが介助です。
将来的に介助を担うことになる人は、今回ご紹介した内容を参考にしながら、
適切に介助できるよう準備を整えておきましょう。