本記事では、デイサービスにおける機能訓練とはどんなものかについて、詳しく解説します。
高齢者社会が進んでいる現在、医療法人や社会福祉法人以外の企業も進出し、
たくさんのデイサービスがあります。
そのために、選ばれる事業所になるべく、各事業所で他とは違ったサービスを展開する
事業所も増えてきました。
そこで、デイサービスにおける機能訓練の概要などを詳しく解説します。
目次
まずデイサービスとは、主に自宅で生活する高齢者・障がい者(以下、利用者)が施設等に通い、
日帰りで食事、入浴、レクリエーションといった日常生活援助が受けられるサービスです。
様々なサービスを展開する中で、機能訓練というのもその一種として含まれています。
機能訓練とは、生活の質(QOL)を維持する目的で行われる訓練です。
利用者が自宅でその人らしい生活の維持、あるいは改善できるように、デイサービスの施設では
各種の機能訓練を行っています。
在籍している機能訓練指導員の専門性によっても内容は異なりますが、身体機能と
認知症予防のための機能訓練を、個別やゲームのようなレクリエーション形式など、
様々な形で実施しています。
歩行、稼働訓練など内容は多岐にわたっており、マッサージや脳トレなどもこれに
含まれています。
先述した通り、機能訓練とは、生活の質(QOL)を維持する目的で行われる訓練です。
つまり、日常生活に必要な基本動作である日常生活基本動作(ADL)の改善・維持のため
に行われます。
デイサービスでは、体操や歩行訓練などの身体機能訓練、脳力トレーニング(脳トレ)などの
認知症予防を行う訓練を主に行っています。
その他、機能訓練指導員の持っている資格によっては、可動域訓練や、嚥下の機能訓練などの
機能訓練が可能です。
その方法もレクリエーションであったり、専門職によるマンツーマンで行ったりしています。
デイサービスを含めた介護保険サービスを受けるには要介護認定が必要です。
要介護認定は、要支援の1と2、要介護が1~5の合計7段階あります。
要支援とは、基本動作はすることができるが、負担の大きな家事は支援が必要な方が対象となります。
デイサービスは機能訓練を行う場所であり、基本動作が可能である要支援1と2は、デイサービスを
利用することができません。
よって機能訓練を受けることができるのは、要介護認定を受けている1~5段階の方になります。
機能訓練は、リハビリテーションとどう違うのかについてよく疑問になることや
比較されることがあります。
機能訓練、リハビリテーション共に身体機能の改善を目的に行われます。
大きな違いは医師による指示があるかどうか、そしてそれらの行為を行う実施者の違いです。
リハビリテーションは医師の指示の下に、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士のみの限られた
職種のみが実施可能な行為です。
一方で、機能訓練は医師の指示は不要で、身体機能の改善、現在の状態を維持する
ために、看護師・作業療法士・理学療法士・言語聴覚士・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師など
幅広い職種が行うことが可能になります。
施設等によっては機能訓練とリハビリテーションを同義として使っている所もあるので、
確認が必要です。
厚生労働省によれば、機能訓練指導員の定義は「日常生活を営むのに必要な機能の減退を
防止するための訓練を行う能力を有するもの」とされています。
そこに介護福祉士は含まれません。
この中の「訓練を行う能力を有する者」に該当するのが、これからご紹介する有資格者です。
理学療法士のことを英語で「Phisical Therapist」といい、日本でも作業療法士の事を
「PT」と呼んだりもします。
怪我や病気により運動機能が低下した方に対して、運動療法、物理療法などの物理的手段を
用いて自立した生活を送れるように支援するリハビリテーションの専門職です。
デイサービスにおける機能訓練の中では、主に歩くなどの日常動作で基本となる動作の
改善を目指します。
関節可動域の拡大、まひの回復、痛みの軽減など痛みに直接働きかける治療法から、
歩行練習など能力向上を目指す治療法の技術を用いて日常生活の自立を目指します。
看護師といえば主に傷病者の療養上の世話や、診療の補助を行う職種というイメージが
大きいでしょうが、機能訓練指導員としても働くことができます。
看護師になるためのカリキュラムの中には運動分野はあまり多くありません。
そのためリハビリテーションの知識は少ないですが、看護師としての医療知識を活かして
利用者のケアや、バイタルチェックを通しての健康状態を見極めたり、疾病のリスク管理を
行うことができます。
デイサービスでは看護師と機能委訓練指導員を兼務している場合が多くあります。
作業療法士は、英語では「Occupational Therapist」といい、日本でも作業療法士の事を「OT」
と呼んだりもします。
心身に障害がある方に対して、「作業」に焦点を当てて、治療・支援するのが主な業務です。
具体的には以下の3つの能力に焦点を当てています。
病気や交通事故などによりコミュニケーションに必要な各機能が損なわれることがあります。
言語聴覚士は、このようなコミュニケーションに問題がある方が、自分らしい生活を送れるように
支援します。
その他に摂食・嚥下機能関係も支援しています。
高齢者になると嚥下機能が低下してしまうため、のどに食べ物をひっかけてしまったり、
誤嚥性肺炎リスクが高くなります。
そのため高齢者福祉では、食にかかわる嚥下機能への支援に多くかかわっています。
骨折や捻挫、じん帯、筋などの人体の損傷に対して、非観血的療法により治療します。
非観血的療法とは手術などの出血を伴わない治療法のことです。
つまりは整復・固定などにより機能回復を目指します。
柔道整復師は上記のように手術などの外的治療ではなく、人が本来持っている自然治癒力を
引き出す身体能力と運動能力の専門家です。
そのため、高齢者の機能訓練においても施術によって自然治癒力や筋力を高め、
自分らしい生活を送るための支援を行います。
手や指などで押したり、もんだり、たたいたりするなどの力学的な刺激を与えて、
体のコリをほぐすのがあん摩マッサージ指圧師です。
体のコリをほぐすことで血行を良くしたり、脊椎の歪みを矯正することにより、
症状の緩和・回復を図ります。
要介護認定を受けている方の中には脳梗塞や脳出血で麻痺や拘縮がある方もいます。
その方やその他の方においても、関節可動域の維持や拡大、むくみやしびれがある方のための
血行促進、コリや疼痛のある方には痛みの緩和のサポートをすることが可能です。
「鍼(はり)」と「灸(きゅう)」を使ってツボ、皮膚、筋肉に刺激を与えて、
自然治癒力を高めたり、病気の改善や予防など、健康回復を目的として治療を行います。
副作用が少ないといわれ注目されている治療の一つです。
「鍼」と「灸」は別々の国家資格ですが、同時に取る方が多いのもあり、
二つの資格を持っている方を「鍼灸師」と呼びます。
鍼灸師が機能訓練指導員になるためには、鍼灸師以外の機能訓練指導員が在籍している事業所で
半年以上の実務経験が必要です。
では、デイサービスにおける機能訓練とはどのような内容なのでしょうか。
通っているデイサービスによって機能訓練のメニューは若干異なりますが、
今回はその中でもよく行われている訓練を例に挙げてご紹介しましょう。
まず、日常生活の動作能力の改善や維持を目的にしたものがあります。
例えば、屋内や屋外での歩行をサポートする歩行訓練などが代表的です。
バランス感覚や筋力を鍛えることで、転倒防止や歩行能力の維持を目指します。
立ち座り訓練なども代表的といえるでしょう。椅子から立ち上がったり、座ったりする動作を
繰り返すことで、下肢筋力やバランス感覚を向上させます。
他にも、ベッドからの起き上がりや、布団での寝返りなど、寝た状態からの動作を改善するための
訓練などもこれに該当します。
身体機能の改善、維持を目的とした訓練もあります。
例えば物を取る・握る・つまむ動作の維持を目的とした機能訓練などがあり、
セラバンドを使って機能の維持を行うことなどが挙げられます。
モノを握る運動などもあり、両手をあげることが難しい方は、テーブルの上に両腕をのせ手指を
開閉します。この場合は、やわらかいボール等を持ったほうが手指を開閉しやすいです。
物を取る・握る・つまむ動作の機能訓練として、ちぎり絵、折り紙をはじめとする創作活動も
おすすめです。ひとりで行うことが難しい場合は作業分担し行います。
本記事では、デイサービスにおける機能訓練とはどんなものかを解説しました。
デイサービスでは配置義務のある機能訓練指導員に様々なリハビリテーションの専門職が
なれるようになっています。
それぞれの専門性を活かし、それぞれのアプローチから利用者の自宅でのその人らしい
生活の継続を支援できるということです。
在宅介護を支える一つであるデイサービス、その中で行われる機能訓練は、
より健康的な生活を支援しているため、利用者にとっても介護業界にとっても重要な
位置づけといえるでしょう。