夫婦でも世帯分離は可能?メリットや注意点なども詳しく解説!

2023.07.14
  • 介護の豆知識

介護費用などの経済的負担を抑える方法として世帯分離がありますが、夫婦間で世帯分離ができることは知っていますか?

実は夫婦間の世帯分離も認められることがあります。 この記事では夫婦間での世帯分離が認められる場合やそのメリット、注意点について紹介していきます。

介護費用を抑えたい、生活を安定させたい方は参考にしてみてください。

世帯分離とは?

世帯分離とは、同じ家に住みながら世帯を分けることを言います。世帯ごとに住民票を分け、2つの世帯が同居する状態を指します。

世帯分離のパターンとして、親夫婦と子ども夫婦が住民票を分けることがよくあります。 親夫婦と子ども夫婦それぞれで安定した収入を得ている場合、世帯分離が可能です。

世帯分離の目的は、住民税や介護サービスの自己負担割合の軽減です。 住民税や介護サービスの自己負担割合は世帯の収入によって金額が決まり、収入が多いほど割合が多くなります。

そのため、1つの世帯に複数の働き手がいると、収入が多くなり自己負担割合が増えてしまいます。 そこで、世帯分離によって世帯ごとの収入額を減らすことで、住民税や介護サービスの自己負担割合を軽減できます。

世帯分離は夫婦間でも可能なの?

一般的に親夫婦と子ども夫婦での世帯分離が多いですが、夫婦での世帯分離はできるのでしょうか。

夫婦間の世帯分離ができる場合とできない場合をそれぞれ紹介します。 夫婦で世帯分離を検討している方はぜひ参考にしてみてください。

夫婦間で世帯分離ができる場合

夫婦間に限らず、世帯分離を申請するには住民票に記載された市区町村の窓口で手続きをする必要があります。

夫婦間の世帯分離が認められるためには、どんな条件を満たす必要があるのでしょうか。 それぞれのパターンごとに紹介します。

夫婦どちらかが施設入所した

夫婦のどちらかが介護施設に入所した場合、世帯分離が可能です。 高齢の夫婦であれば、年金で生計を立てることになります。

年金が少ないと、夫婦の片方が介護施設に入所することで自宅に残った方は生活が不安定になる場合があります。 そこで介護施設に入所した方の住民票を介護施設に移すことで、世帯分離ができます。

これによって住民税や介護費の軽減が可能になります。 また、世帯分離をすることで自宅に残った方の生活が不安定で苦しい場合は、生活保護を受けられる可能性もあります。

世帯分離をした後に生活が苦しくなったときは、市区町村の窓口に相談してみましょう。

別居や離婚などで生計を共にしていない

夫婦間の世帯分離は、生計を共にしていないという条件を満たさなければいけません。

どちらかに収入を依存していると、世帯分離しても生計が立てなくなります。夫婦間で生計を共にせず、お互いに独立して生活できる場合に世帯分離は認められます。 高齢の夫婦の場合は、どちらかが介護施設に入所することで条件を満たせます。

高齢でない場合は、別居や離婚など一緒の家に住んでいない夫婦関係を解消している状態では世帯分離が認められます。

夫婦間で世帯分離ができない場合

親子間での世帯分離に比べ、夫婦間での世帯分離は認められにくいです。

民法では夫婦を「同居、協力、扶助し合う」と定義しており、世帯分離はこの定義に反してしまうからです。 これらを踏まえて、夫婦間で世帯分離ができない場合について紹介します。

 共働きで生計を共にしている

民法での夫婦の定義は、お互いに扶助し合うことになっています。 共働きで生計を立てている場合、2人で生計を立てている状態なので、世帯分離は認められません。

生計を共にしていると、世帯分離をした後の生活が安定しない可能性があります。 お互いに独立しても十分に生計を立てられる収入がそれぞれにあれば、世帯分離は認められることがあります。

その場合は世帯が分離しても生活できると判断されるからです。 共働きで生計を共にしているとなると、独立できるほどの収入は実現が難しいでしょう。

離婚前だけど生計を共にしている

夫婦間で離婚することに合意している場合でも、生計を共にしていれば世帯分離はできません。 夫婦関係が解消される前からお互いに独立できる収入がある場合、離婚前でも世帯分離が可能です。

夫婦という関係は民法上で「扶助・協力する」ことが定められているため、生計を共にしている以上世帯分離は認められません。 生計を共にしていない事実確認がされないと、世帯分離の許可は下りないでしょう。

このように夫婦間での世帯分離は民法に反することになるため、例外を除くとハードルが高いと言えます。

夫婦間で世帯分離をするメリットとは?

夫婦間での世帯分離は容易に認められません。

しかし、世帯分離によって介護や医療に必要な費用を抑え、それぞれの生活を安定させるメリットがあります。

夫婦が世帯分離をすることで得られるメリットについて紹介します。

介護サービスの自己負担割合が低くなる

世帯分離によって介護サービスの自己負担割合を低くできます。 介護サービスの費用は介護保険がカバーしてくれますが、一部はサービスの利用者が自己負担することになっています。

自己負担割合は本人もしくは世帯の所得によって決定するため、1つの世帯に働き手が複数人いると所得が多くなり、自己負担割合も多くなります。

世帯分離をすることで世帯ごとの所得が低くなり、1つの世帯の負担割合も低くなります。 自己負担割合は1〜3割の低減が可能です。

高額医療・介護費の減免を受けやすくなる

夫婦で世帯分離をすると高額の医療費・介護費を減免してもらえる可能性があります。 医療や介護にかかる利用者の負担額が設けられた上限額を超えた場合、上限分の金額が支給されます。 以下は対象となる人の上限額です。

①生活保護を受給している→上限額15,000円(世帯) 〈市町村民税非課税世帯の場合〉

②公的年金所得とその他の所得の合計が80万円以下→上限額24,600円(世帯)、15,000円(個人)

③①と②に該当しない→上限額24,600円(世帯) 〈市町村民税課税世帯の場合〉

④課税所得が380万円(年収約770万円)未満→上限額44,400円(世帯)

⑤課税所得が380万円~690万円(年収約1,160万円)未満→上限額93,000円(世帯)

⑥課税所得が690万円以上→上限額140,100円(世帯)

介護保険施設利用料が軽減される

世帯分離によって介護保険施設を利用する際にかかる料金を軽減できます。 介護保険施設を利用するには居住費や食費を全額負担しなければいけません。 居住費や食費は本人もしくは世帯の所得や預貯金で決まります。

一定の条件を満たすと、決められた条件の超過分の金額を負担してもらえます。 以下は対象となる人と所得や預貯金の要件です。

①世帯全員が市町村民税非課税で、老齢福祉年金受給者かつ預貯金が1,000万円以下(個人)もしくは2,000万円以下(夫婦) 〈世帯全員が市町村民税課税の場合〉

②公的年金所得とその他の所得の合計が80万円以下かつ預貯金が650万円以下(個人)もしくは1,650万円以下(夫婦)

③公的年金所得とその他の所得の合計が80万円~120万円以下かつ預貯金が550万円以下(個人)もしくは1,550万円以下(夫婦)

④公的年金所得とその他の所得の合計が120万円以上かつ預貯金が500万円以下(個人)もしくは1,500万円以下(夫婦)

夫婦間で世帯分離をする際の注意点

夫婦間での世帯分離には様々なメリットがありますが、一方で注意するべき点もあります。

夫婦間での世帯分離はハードルが高いので、実行する際には注意点を含めて慎重に検討する必要があります。 夫婦間で世帯分離する際の注意点について紹介します。

国民健康保険料が増える場合がある

世帯分離によって国民健康保険料が増加する可能性があります。

国民健康保険料は世帯ごとの世帯主が負担することになっています。 そのため、世帯ごとの保険料は減っても2つの世帯の保険料の合計は、世帯分離する前より増えている場合があります。

その結果、夫婦が支払う国民健康保険料は多くなってしまいます。 離婚や別居など、完全に生活を隔てるための世帯分離以外の場合は注意が必要です。国民健康保険料が増える場合があることを頭に入れておきましょう。

勤務先の恩恵を受けられなくなる

世帯分離によって扶養などの手当を受けられなくなります。 夫婦で妻が夫の扶養に入っている場合、世帯分離によって扶養から外れてしまいます。

それによって勤務先から支給されていた扶養手当が受けられなくなります。 扶養手当や家族手当など、勤務先の健康保険組合から支給される金額の相場は17,600円とされていて、年間で211,200万円になります。

夫婦での世帯分離で20万円以上の手当を受けられなくなってしまいます。

役所での手続きが煩雑になる

夫婦間での世帯分離を実現するには役所での手続きが必要ですが、手間が多く煩雑になります。 手続きには世帯分離した後の住民票や各種書類を用意する必要があり、記入などに時間がかかります。

また、夫婦が高齢で自力での手続きが困難な場合は、夫婦の子どもが代理で手続きをしますが、その際には委任状が必要になります。 そもそも夫婦間での世帯分離のハードルが高いため、自治体によっては夫婦間での世帯分離を認めない場合もあります。

また、世帯分離の理由を聞かれ、内容によって夫婦の世帯分離を認めないこともあります。

世帯分離をしても生活が立ち行かない場合は生活保護を受けられる可能性がある

夫婦が世帯分離をしても生活が立ち行かない場合があります。 例えば高齢の夫婦のどちらかが施設に入所した場合、年金が少ないと世帯分離をしても生活が立ち行かなくなる可能性があります。

その場合は生活保護の申請をすることで受けられるかもしれません。生活保護は最低生活費がその世帯の収入を上回った場合に認定されます。

しかし、世帯分離したことで生活が立ち行かない人を安易に増やせないため、限られた場合になります。 申請を通過するのは厳しいとされているので、生活保護を狙った世帯分離は控えましょう

まとめ

夫婦間での世帯分離が認められる条件やメリット、注意点について紹介してきました。 夫婦間での世帯分離はハードルが高いですが、認められれば介護サービス費を軽減させ、生活を安定させられる可能性があります。

世帯分離によってメリットとなるかどうかを夫婦や家族で慎重に検討し、市区町村の役所や窓口に相談してみましょう。

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