介護におけるポジショニングの基本を解説|実施の仕方や注意点など

2023.08.28

介護において、ポジショニングは重要なケアの一環です。患者や高齢者の身体の位置や姿勢を変えることで、さまざまな予防効果をもたらします。

本記事では、ポジショニングの基本的な解説や実施の仕方、注意点について詳しく紹介します。介護に携わる方々にとって、ポジショニングの知識は必須ですのでぜひ最後までお読みください。

介護におけるポジショニングとは?

介護におけるポジショニングとは、自力で体位変換が困難なご利用者様の姿勢を安全で快適なものに保つことです。

ひとたび褥瘡や拘縮が発生すると、治療が長期に及ぶこともあるため、ポジショニングはこれらの予防において重要なケアの一つです。ポジショニングをすることで、身体的・精神的負担を軽減し、生活の質を向上させられます。

ポジショニングを行う目的

ポジショニングを行う目的の一つに、長時間同じ姿勢を続けることによる関節のこわばりや可動域の制限を予防する方法があります。この方法は、リラックスした良い姿勢を作ることで、筋緊張や身体の硬さを緩和し、体圧を分散させることができます。

ポジショニングは、関節拘縮や変形、褥瘡の予防だけでなく、身体機能の活性化やストレス軽減などにも効果があります。

関節拘縮の予防

関節拘縮とは、長時間同じ姿勢を続けることによって、関節がこわばってしまい、可動域が制限される状態です。関節拘縮が起こると、関節の痛みや動きづらさだけでなく、血行不良や褥瘡のリスクも高まります。

関節拘縮を予防するためには、ポジショニングで定期的に関節を動かしてあげることが大切です。関節の可動域内でゆっくりとストレッチを行い、関節の柔軟性を保ちます。また、関節に適度な負荷をかけることで、筋力の低下も防ぎます。

褥瘡(じょくそう)の予防

褥瘡とは、圧迫や摩擦によって皮膚が損傷し、潰瘍(かいよう)ができる病気です。褥瘡は非常に痛みが強く、感染や壊死(えし)などの重大な合併症を引き起こす可能性があります。

褥瘡を予防するためには、ポジショニングで圧迫部位を変えてあげることが必要です。圧迫部位になりやすい骨盤や肩甲骨などの骨突起部分に、クッションやパッドなどを敷いてあげます。また、2時間ごとに姿勢を変えてあげることで、皮膚の血流を改善します。

浮腫(むくみ)の予防

浮腫とは、長時間同じ姿勢でいることによって、体液が滞留(たいりゅう)してしまい、手足や顔などがむくんでしまう現象です。不快感や重だるさだけでなく、皮膚の張りや弾力性の低下なども引き起こします。

浮腫を予防するためには、ポジショニングで体液の循環を促進することが大切です。ポジショニングでは、心臓よりも低い位置にある手足を高くしてあげることで、重力に逆らって体液が溜まるのを防ぎます。また、マッサージやリンパドレナージュなどの手技も有効です。

ポジショニングをするときの注意点

ポジショニングは、患者や高齢者の状態に応じて、頻度や方法を調整する必要があります。ここでは、ポジショニングをするときの注意点について解説します。

また、ポジショニングの頻度や方法は、患者や高齢者の身体的な状態や自立度によって異なります。一般的には、2時間から4時間ごとに体位を変えることが推奨されます。しかし、以下のような場合は、より頻繁に変える必要があります。

  • 褥瘡がある場合
  • 血行障害がある場合
  • 呼吸困難がある場合
  • 痛みがある場合

ポジショニンの基本|やり方を解説

ポジショニングは、患者や高齢者の体位や姿勢を適切に調整することで以下を目的としています。

  • 身体機能の維持や改善
  • 生活の質の向上
  • 合併症の予防

ポジショニングには様々な方法がありますが、ここでは代表的なものを紹介します。

①仰臥位

仰臥位とは、患者や高齢者が仰向けに寝た状態のことです。頭部や背部、腰部、下肢にクッションやタオルなどを適切に挟んで支えることで、姿勢を安定させたり、圧迫部位を軽減したりします。

また、頭部を高くすることで呼吸や嚥下を容易にしたり、下肢を曲げることで腰痛や便秘を予防できます。仰臥位では、以下の点に注意してください。

  • 頭部は中心に置き、左右に傾けないようにします。
  • 肩甲骨や肘、腸骨の突出部分はクッションなどで保護します。
  • 足首は自然な角度で固定し、内反や外反を防ぎます。
  • 定期的に体位変換を行い、血行不良や褥瘡などの合併症を予防します。

②側臥位

側臥位とは、患者や高齢者が横向きに寝た状態のことです。頭部や背部、腰部、下肢にクッションやタオルなどを適切に挟んで支えることで姿勢を安定させたり、圧迫部位を軽減したりします。

また、上肢や下肢を曲げることで関節の可動域を維持したり、胸郭の拡張性を高めたりできます。側臥位では、以下の点に注意してください。

  • 頭部は中心に置き、左右に傾けないようにします。
  • 肩甲骨や肘、腸骨の突出部分はクッションなどで保護します。
  • 上肢は前方に伸ばし、下肢は上下に曲げます。
  • 足首は自然な角度で固定し、内反や外反を防ぎます。
  • 定期的に体位変換を行い、血行不良や褥瘡などの合併症を予防します。

③ベッド上長座位

ベッド上長座位とは、ベッド上で上半身を起こした状態のことです。背中や腰にクッションやタオルなどを適切に当てて支えることで、姿勢を安定させたり、脊柱の負担を軽減します。

また、上半身を起こすことで呼吸や嚥下を容易にしたり、心臓や脳の血流を改善したりすることもできます。ベッド上長座位では、以下の点に注意してください。

  • 頭部は中心に置き、左右に傾けないようにします。
  • 肩甲骨や肘の突出部分はクッションなどで保護します。
  • 背中や腰は直線的に保ち、前傾や後傾を防ぎます。
  • 下肢は自然な角度で伸ばし、内反や外反を防ぎます。
  • 定期的に体位変換を行い、血行不良や褥瘡などの合併症を予防します。

④端座位

端座位とは、ベッドや椅子の端に座ることで下肢の筋力維持や循環の促進を図るポジショニング方法です。足元にクッションやタオルなどを適切に置いて支えることで、姿勢を安定させたり足首の可動域を維持したりします。

また、端座位から立ち上がる動作を行うことで、下肢の筋力やバランス感覚を鍛えられます。端座位では、以下の点に注意してください。

  • 頭部は中心に置き、左右に傾けないようにします。
  • 肩甲骨や肘などの突出部分はクッションなどで保護します。
  • 背中や腰は直線的に保ち、前傾や後傾を防ぎます。
  • 下肢は自然な角度で伸ばし、内反や外反を防ぎます。
  • 安全性を確保するために、介助者が必要な場合は付き添います。

⑤座位

座位とは、患者や高齢者が椅子や車椅子に座っている状態のことです。背中や腰にクッションやタオルなどを適切に当てて支えることで、姿勢を安定させたり脊柱の負担を軽減します。

また、上半身を起こすことで呼吸や嚥下を容易にしたり、心臓や脳の血流を改善したりできます。座位では、以下の点に注意してください。

  • 頭部は中心に置き、左右に傾けないようにします。
  • 肩甲骨や肘などの突出部分はクッションなどで保護します。
  • 背中や腰は直線的に保ち、前傾や後傾を防ぎます。
  • 下肢は自然な角度で曲げて足元に置き、内反や外反を防ぎます。
  • 定期的に体位変換を行い、血行不良や褥瘡などの合併症を予防します。

まとめ

ポジショニングは、介護に関して重要な役割を果たす行動で、要介護者の身体の姿勢を安全で快適な状態に置くことを目的としています。浮腫のような様々なリスクを予防し、要介護者の健康と生活の質を向上できます。

ポジショニングを行う際には、注意点に留意しながら前臥位、側臥位、ベッド上長座位など、基本を正しく実践することで、重要な介護者の健康と快適さをサポートできます。

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