薬局薬剤師による居宅療養管理指導とは?利用までの流れも解説

2023.09.15

あなたの大切なご家族やご自身が要介護になったとき、どのように適切なサポートを受けられるでしょうか?そのような状況になったとき、居宅での療養生活を支援する「居宅療養管理指導」というサービスが存在します。

このサービスは、医師や薬剤師などが利用者の自宅を訪問し、個別に合わせた療養上の指導や健康管理を行います。要介護状態や通院困難な方に対して、日常生活を自立したまま営むための大切な助けとなるのです。

本記事では、薬局による居宅療養管理指導の意義や服薬状況の確認、対象者の範囲、算定要件、そして利用までの流れについて詳しく紹介します。

家族の一員や大切な方の療養生活を支えるために、この有益なサービスの重要性を解説していきます。

居宅療養管理指導とは?

居宅療養管理指導は、通院が難しい介護高齢者の自宅を専門家が訪問し、療養上の管理と指導を行うサービスです。

このサービスは、自宅での自立した生活を支援し、療養生活の質を向上させることを目的としています。具体的には、定期的な医学的・歯科医学的な管理を提供し、療養上のアドバイスや健康管理をサポートします。

要介護状態の方でも可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることを目指し、療養生活を支援します。

薬局による居宅療養管理指導の意義

薬剤師が要介護高齢者の自宅を訪問して患者さんの療養生活の支援をするため、以下の重要な役割があります。

  • 服薬状況の確認や副作用の評価
  • 薬物有害事象の早期発見と対処を行う

このサービスにより、利用者が自宅で安心して生活できるような環境づくりが可能となります。また、医師や他の医療従事者との連携により、利用者とその家族の健康への理解が深まり、より質の高いケアが提供されることが期待されます。

以下で詳しく解説していきます。

薬物有害事象の発見と対処

薬物有害事象の発見と対処は、薬局による居宅療養管理指導の重要な側面です。

薬剤師が要介護高齢者の自宅を訪問し、患者さんが服用している薬の種類や量、服用方法を確認し、副作用や相互作用のリスクを評価します。

薬物有害事象とは、薬の副作用や薬同士の相互作用によって生じる健康への悪影響のことを指します。特に高齢者は複数の薬を同時に使用することが多く、そのため薬物有害事象のリスクが高まります。薬剤師は、患者さんに対して副作用の症状や対処方法について説明し、必要に応じて医師や他の医療従事者と連携して対処を行います。

このような介入により、残薬の発見によるアドヒアランス不良や有害事象の早期発見、服薬状況の改善が期待できます。

服薬状況の確認

薬剤師が要介護高齢者の自宅を訪問し、患者さんが服用している薬の種類や量、服用方法を丁寧に確認します。薬剤師の訪問による服薬状況の確認は、患者さんの安全な薬物療法を確保するうえで非常に重要な役割を果たします。確認には、以下のような目的があります。

  1. 薬の適切な服用:薬剤師は患者さんに対して、薬の正しい服用方法やタイミングを説明し、適切な服薬をサポートします。
  2. 副作用や相互作用の評価:患者さんが複数の薬を使用している場合、副作用や相互作用のリスクを評価し、必要な対処を行います。
  3. 服用のサポート:服薬指導を通じて、患者さんが薬を忘れずに正しく服用できるようサポートします。
  4. 有害事象の早期発見:服薬状況の確認により、残薬の発見や異常な服薬パターンを把握し、有害事象の早期発見と適切な対処ができます。

居宅療養管理指導の対象者

居宅療養管理指導の対象者は、以下のような方々です。

  • 要介護高齢者で、通院が困難な方:身体的な理由などで通院が難しい要介護状態の高齢者が対象となります。
  • 療養上の管理及び指導が必要な方:慢性疾患や障害を持つ患者さんで、療養上の指導や管理が必要な方が含まれます。また、医師、歯科医師、薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士などの療養上の管理及び指導を必要とする方も含まれます。
  • 薬剤師が服薬指導や薬歴管理を行う必要がある方:薬剤師の専門的な指導や服薬管理が必要な方が含まれます。
  •  薬剤師による薬物有害事象の発見と対処を行う必要がある方:薬物治療中に有害事象のリスクがある方が対象となります。

居宅療養管理指導の算定要件と単位

居宅療養管理指導の算定要件と単位について、以下のような観点が重要です。

居宅療養管理指導の算定要件は、サービス提供の範囲や内容、時間などが規定されています。これにより適切な療養管理と指導が行われ、患者さんのニーズに合ったサービスが提供されることが保証されます。

一方、居宅療養管理指導の単位は、どのような基準でサービスの提供量が計測されるかを示しています。適切な単位によって、必要なサービスが適切な報酬で提供されることが重要です。

以下では、具体的な算定要件と単位について詳しく説明していきます。

算定要件

居宅療養管理指導の算定要件は、厚生労働省が定めた基準に基づいています。主な算定要件には以下のような項目が含まれます。

  • 対象者の要件:要介護高齢者で通院が困難な方や療養上の管理及び指導が必要な方が対象となります。
  • 訪問回数:一定期間内に何回訪問を行うかが定められています。
    これは、患者さんのニーズに応じて適切な頻度でサービスを提供するための指針となります。
  • 訪問時間:一回の訪問にかかる時間が規定されています。
    これは、療養管理と指導を適切に行うために必要な時間を確保するための基準です。
  • 実施内容:具体的な療養管理や指導の内容が明記されています。
    これには医学的管理や薬剤師による服薬指導などが含まれます。
  • 記録と報告:訪問内容や患者さんの状況に関する記録が必要です。
    また、報告書の提出が求められる場合もあります。

これらの算定要件を遵守しながら、薬剤師や他の医療従事者は居宅療養管理指導を提供し、患者さんの療養生活をサポートしています。

単位と加算項目

居宅療養管理指導の単位と加算項目は、以下になります。

  • 単位:居宅療養管理指導は、1回あたりの訪問に対する単位数で算定されます。単位数は、訪問回数や訪問時間などに基づいて計算されます。
  •  加算項目:居宅療養管理指導には、特定の条件下で追加の加算が認められる場合があります。例えば、特別な医療的ニーズを持つ患者さんへの訪問や、複数の医療従事者が連携して行う場合などが加算項目として考慮されます。

これらの単位と加算項目は、厚生労働省の指針に基づいて設定されており、効果的で適切な療養管理指導を提供するための基準となっています。

居宅療養管理指導利用までの流れ

居宅療養管理指導を利用するまでの流れは、患者さんとその家族にとって大切なプロセスです。

以下は、居宅療養管理指導を利用するための一般的な流れとして、ケアマネジャーに相談する段階から事業所との契約までのプロセスをご説明します。

ケアマネジャーに相談する

ケアマネジャーに相談することは、居宅療養管理指導を利用する際に非常に重要です。ケアマネジャーは、要介護者やその家族のニーズを把握し、適切なサービスを提供するための専門家です。ケアマネジャーに相談する際の主なポイントは以下の通りです。

  • 居宅療養管理指導の利用に関する相談
    ケアマネジャーには、居宅療養管理指導の利用に関する相談を行うことができます。
    自身や家族の状況、要介護度などを伝えることで、居宅療養管理指導が適切なサービスかどうかを判断してもらえます。
  • サービスの説明と利用の手続き
    ケアマネジャーは、居宅療養管理指導の内容やサービス提供の流れを詳しく説明してくれます。また、必要な手続きや申し込みについてもサポートしてくれます。

医師の指示によるケアプランの作成

ケアプランは、患者さんの健康状態や介護ニーズに応じた具体的なサービスやケア内容をまとめたものであり、医師の指示に基づいて作成されます。

医師の指示によるケアプランの作成は、居宅療養管理指導において非常に重要なステップです。患者さんの健康を維持・改善するための具体的な手順やスケジュールが明確化されます。

以下のようなポイントが医師の指示によるケアプランの作成に関連します。

  • 医師との相談と評価:医師は、患者さんの健康状態や病状を評価し、必要なケアや治療を指示します。これに基づいて、ケアプランを立てるために医師との相談が欠かせません。
  • 療養上の管理と指導内容の確定:医師の指示に基づいて、具体的な療養上の管理と指導内容をケアプランに盛り込みます。薬物治療、食事管理、運動療法など、患者さんの健康をサポートするアプローチを計画します。
  • ケアプランの柔軟な変更:患者さんの健康状態は変化することがあります。そのため、ケアプランは柔軟に変更可能なように作成されます。医師の指示に基づいて、必要な修正や調整を行うことが重要です。

事業所の決定と契約

事業所の決定と契約は、居宅療養管理指導を利用する際に重要な段階です。以下のようなプロセスが一般的に行われます。

  1. 事業所との面談
    利用者は選んだ事業所と面談を行います。面談では、居宅療養管理指導の内容や料金、契約条件について詳細に説明を受けます。また、事業所も利用者の状態やニーズを把握し、適切なサービス提供が可能かを確認します。
  2. サービス提供の契約
    双方が合意したら、事業所と利用者との間で契約が締結されます。契約書には、提供されるサービスの内容、料金、利用条件、利用者の権利やプライバシーに関する事項などが含まれます。
  3. サービスの開始
    契約が成立したら、居宅療養管理指導のサービスが開始されます。医師の指示に基づいたケアプランが実施され、薬剤師や他の専門職が患者さんの療養上の管理と指導を行います。

まとめ

居宅療養管理指導は、要介護高齢者の居宅を訪問し、医師や薬剤師などが心身の状況を把握し、療養上の管理や指導を行うサービスです。

薬局による指導では、薬剤師が患者さんの服薬状況を確認し、薬物有害事象の早期発見や服薬改善を支援します。

ケアマネジャーへの相談から始まり、事業所の選定や契約を経て利用が開始されます。居宅療養管理指導は利用者の自立した日常生活をサポートする重要なサービスです。医師や薬剤師などが協力し、高齢者や要介護者の健康と生活の質を向上させる役立つ取り組みです。

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