清拭の目的は?手順とポイントについて解説!術後や発熱時の注意点も

2023.09.15

清拭とは、術後や寝たきりなどで入浴できない方の体を、温かいタオルで拭くことです。身体の清潔を保つ以外にも、身体の状態観察や褥瘡・拘縮予防など、様々な目的で行われます。

この記事では、清拭の目的や手順を詳しく紹介。ポイントや、術後や発熱時の注意点などもまとめました。清拭を行うと、身体が清潔になりスッキリとして気持ちも前向きになります。スムーズに行えるよう、ポイントをおさえておきましょう。

清拭とは?

清拭(せいしき)とは、入浴ができない方の体を、温かいタオルで拭いて清潔にすること。

身体の清潔を保つには入浴が一番効率的です。しかし、術後の患者や寝たきり状態の要介護者などは、入浴が難しい場合も。その場合は、清拭で身体の清潔状態を保ちましょう。入浴に比べてエネルギーの消耗が少なく、対象者への負担を減らせます。

清拭は、身体全体を拭く「全身清拭」と、顔や手足といった身体の一部を拭く「部分清拭」の2種類。全身清拭は時間がかかるため、対象者の体に負担をかける場合があります。対象者の身体状態や希望によっては、部分清拭を選ぶと良いでしょう。

清拭の目的

清拭には、身体の清潔を保つ以外にも様々な目的があります。

  • 身体の状態観察:入浴ができないと身体全体の観察を行うのは困難です。清拭を行う際に皮膚や爪などを観察すれば、異常の早期発見に繋がります。
  • 褥瘡や拘縮の予防:寝たきりで同じ体勢が続くと、身体の圧迫された部位の血流が滞ります。結果、褥瘡ができやすくなります。また、関節をあまり動かさないと固まり、拘縮になる恐れがあるのです。清拭によって体圧分散や関節を動かすこともでき、褥瘡や拘縮を予防します。
  • 細菌感染の予防:入浴ができないと清潔を保てず、褥瘡や掻き傷から細菌感染を起こす恐れがあります。清拭で皮膚を清潔にすれば、細菌感染の予防に繋がります。また、術前に皮膚を清潔に保つと、手術部位感染の予防に効果的。抗菌石鹸を使用してのシャワー浴や入浴が最適ですが、難しければ清拭を行いましょう。
  • 外出や他者との交流への意欲を向上させる:寝たきりになると引きこもりがちとなり、外出や他者との交流が減る方は少なくありません。清拭で身体が清潔になれば気持ちもスッキリします。外出などへの意欲向上に繋がるでしょう。

清拭の手順

全身清拭する場合、部分清拭に比べ時間がかかるため、対象者の体に負担がかかる場合があります。事前に必要なものを準備し、上半身から下半身にかけて拭く手順で行えばスムーズです。

この章では、準備物や体の拭く部位について手順通りに詳しくまとめました。事前に手順を知れば、介助者の負担も少なくなります。

必要なものを準備する

清拭に必要なものを事前に準備しておくとスムーズです。準備物は以下の通りです。

  • 洗面器やバケツ:清拭用のタオルを濡らす際に使用。温かいタオルで体を拭くために、50~55度の熱めのお湯を用意しましょう。
  • 清拭用タオル:7~10枚程。顔、身体、陰部用と使い分けます。毎回拭く面も変えますので、多めに用意すると安心です。
  • バスタオル:身体が冷えないようにかけたり、隠したりするために使用。
  • 石鹸:汚れが多い時に使用。
  • 陰洗ボトル:陰部を洗浄する際に使用するお湯を入れておきます。
  • ゴム手袋やビニールエプロン:感染予防のため着用します。
  • 着替え一式
  • ボディークリームなどの保湿剤や、処方された塗り薬…必要に応じて用意。

お湯がきれいな内に顔を拭きたいため、最初に拭きましょう。

拭く順番は、目、鼻、口の周り、額、頬、耳、首の順です。顔の真ん中から、外側に向けて拭きます。目は、左右でタオルの拭く面を変えましょう。目ヤニが固まって取れない場合は、蒸しタオルで覆って柔らかくしてから取ります。目の周りの皮膚は薄いため、優しく拭きましょう。

小鼻や耳の裏、首のしわの間、顎の下は特に汚れが溜まりやすい箇所。注意して拭いてください。鼻は鼻筋にそって上から下に向けて拭くと、汚れが取りやすくなります。

腕・手指

腕や手は、軽く持ち上げながら拭くと拭きやすくなります。ただし、拘縮の強い方は、腕を持ち上げると痛みを感じたり、骨折のリスクがあったりします。注意して行いましょう。

末端(手の指先)から拭くと、血液の循環を良くします。まず指の間を拭き、手首から腕に向かって拭き上げます。その後肘の内側、脇の下を拭きましょう。特に汚れが溜まりやすい箇所は、指の間や脇の下、肘の内側。肘の内側は円を描くように拭くと、拭きやすいです。

また、全身清拭が難しい場合は、手をお湯につける「手浴」がおすすめ。身体が温まり、血行促進に効果的です。

胸・腹

胸やお腹を出すと、寒さを感じやすいため要注意です。拭く箇所だけが出るよう、バスタオルをずらしながら行ってください。

まず鎖骨にそって周りを拭きます。胸は、円を描くように拭きましょう。女性は胸の下が汚れやすいため、念入りに拭きます。

腹部は、「の」の字を描くようにマッサージしながら拭くと、便秘に効果的です。蒸しタオルでしばらく腹部を温めてから拭くのも良いでしょう。腰が曲がっている方は、腹部も曲がりその間に汚れが溜まりやすくなります。

脚・足指

片脚ずつ、足首を持ちながら拭きます。膝を立てるようにしながら行うと、拭きやすいでしょう。腕と同じく、末端である足の指先から太ももに向かって拭くと、血液の循環を促進します。

特に汚れが溜まりやすいのは、足指の間や膝の裏、足の甲。念入りに拭きましょう。寝たきりの方は踵に圧がかかりやすく、褥瘡ができやすくなります。赤くなっている場合は、力を入れすぎないように優しく拭いてください。

手と同じく全身清拭が難しい場合は、足をお湯につける「足浴(そくよく)」がおすすめ。血行促進だけでなく、リラックス効果もあります。

背中

背中を拭く際は、体を横向きにしながら行うと拭きやすくなります。寒くならないよう、できるだけタオルをかけたまま行いましょう。

仙骨部から肩甲骨にかけて、下から上に向けて円を描くように拭きます。肋骨に沿って、大きな動作で拭くのがポイント。マッサージをするイメージです。寝たきりの方は、背中に圧がかかり、褥瘡になる恐れあり。清拭で血流を良くすると、褥瘡予防に繋がります。

また、清拭は全身観察を行える貴重な機会。褥瘡になりそうな箇所が無いか、しっかりと確認しましょう。

臀部・陰部

臀部は肋骨にそって、円を描くように拭きます。踵や背中と同じく、臀部も褥瘡ができやすい箇所。特に仙骨に注意が必要です。血流を良くするために丁寧に拭きましょう。

陰部は専用のタオルを使用しましょう。一度拭いた面は再度使わないようにし、感染予防に努めます。人に拭かれることを恥ずかしいと感じる方も多いので、配慮も必要です。自分で拭ける方には、自分で拭いてもらいましょう。

男性は陰茎のしわの間、女性は大陰唇や小陰唇に汚れが溜まりやすいため、注意が必要です。

清拭のポイントと注意点

清拭のポイントと注意点には、体を冷やさないことや保湿などがあります。

この章では、清拭のポイント・注意点について詳しくまとめました。身体を清潔にし、気分転換となる清拭。対象者がより快適になるよう、ポイントや注意点を把握して行いましょう。

体を冷やさない

清拭中は、体を冷やさないように配慮するのがポイント。清拭は、出来る限り暖かい日中に行います。

事前に発熱などの体調不良が無いか、バイタル確認も行いましょう。発熱時でも、解熱している段階で多量に汗をかいている時などは清拭を行う場合もあります。その際は体を冷やさないよう、手早く行いましょう。

室温は22~24度に事前に調整しておきます。特に心不全を患っている方は、寒いと血管の抵抗が増し、血圧上昇を引き起こす恐れあり、より注意が必要です。

また、清拭中は寒くないよう体をバスタオルで覆います。拭く際は、拭いている箇所だけをタオルから出しましょう。

優しい力加減を心がける

清拭では、優しい力加減を心がけるよう注意しましょう。皮膚の弱い方は、強くこすると皮膚炎などのトラブルを起こす可能性があります。高齢者は皮膚が柔らかくなっている方が多いため、強く拭きすぎないよう注意しましょう。

術後一日目で清拭を行う場合は、疼痛(とうつう)コントロールの確認も必要。傷口があれば注意し、優しい力加減で行いながら体に痛みがないか確認しましょう。

また、拭いてもらって気持ち良いと感じる力加減は、人それぞれ。特に小児病棟の子どもは痛い思いをすると、その後の処置なども怖がる恐れがあります。清拭は、対象者とのコミュニケーションも重要です。対象者の状態や希望をしっかりと確認し、ご本人に合わせた力加減を心がけましょう。

保湿をする

清拭を行った後は、必要に応じて保湿をするのがポイント。乾燥した弱い皮膚は、わずかな刺激でも傷ができやすくなったり、細菌感染を起こしやすくなります。特に高齢者の方は、皮膚が乾燥しやすいため要注意。

術後などは同じ姿勢で寝ることが増えるため、褥瘡や床ずれができやすくなります。また、医療用テープやおむつの刺激で、皮膚トラブルが起きる恐れも。

保湿をすることで、皮膚のバリア機能が向上します。清拭後は、保湿剤や医師から処方された軟膏などを適量使用しましょう。

まとめ

清拭とは、入浴ができない方の体を、温かいタオルで拭いて清潔にすること。身体の清潔保持の他に、身体状態の観察や細菌感染の予防などが目的で行われます。

清拭は、必要物品を事前に用意してから行うとスムーズです。上半身から下半身にかけて拭きましょう。

看護学生や若手看護師向けのサイト『看護ルー』では、清拭の手順を動画で紹介しています。
清拭のポイント・注意点は、体を冷やさない、保湿をするなどです。

清拭は介助者にとって負担が大きいですが、手順やポイントをおさえればスムーズに行えます。ぜひ記事を参考にしてください。

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