ADLとは?目的から評価方法・項目についても詳しく解説

2023.09.19

日常生活動作(ADL)には、私たちの生活を支える重要な動作が含まれています。食事、入浴、トイレなどの基本的な活動は、自立した日常生活を営むために欠かせません。

本記事では、ADLの評価方法としてよく用いられる「BI(バーセルインデックス)」と「FIM(機能的自立度評価表)」に焦点を当てて解説します。それぞれの評価項目や評価基準について詳しく紹介し、日常生活動作の自立度を把握する重要性を説明します。

個々の状態を客観的に評価し、適切なケアやリハビリテーションの判断に役立てましょう。

ADL(日常生活動作)とは?

ADL(Activities of Daily Living)とは、日常生活において基本的な活動や動作のことを指します。これらの活動は、個人が自立した日常生活を送るために必要不可欠なものであり、身の回りの世話や自己ケアに関わる様々な行動を含んでいます。食事、入浴、トイレ、移動、着替え、排泄などが代表的なADLに含まれます。

ADLの評価は、医療や介護の現場で重要な役割を果たしています。個々の能力を客観的に評価することで、その人の日常生活への適切な支援やリハビリテーションの必要性を把握できます。

特に、高齢者や障がいを持つ方々にとっては、ADLの評価が日常生活の改善や自立支援に繋がる重要な手段となります。

ADL評価の目的

ADL評価の主な目的は、個々の人の日常生活動作能力を客観的に評価し、その人に適したサポートやケアプランを立てることです。

まず、個別の患者や利用者の現在の能力レベルを把握することで、その人が日常生活をどれだけ自立して過ごせるかを理解します。自立している項目と介助が必要な項目を特定し、その人がどの程度の介助が必要なのかを評価します。

また、ADL評価はリハビリテーションや介護プランの進行をモニタリングするためにも利用されます。治療やトレーニングの効果を定量的に評価し、進捗を把握することで、適切なリハビリテーションの提供や介護サービスの適時な見直しを行います。

ADL評価は、個々の人の生活の質を向上させるための重要なステップであり、より適切なケアや支援を提供するために欠かせない評価と言えます。

ADLの評価方法

ADL(日常生活動作)の評価方法は、Barthel IndexとFIMが主な方法です。

Barthel Indexは基本的な10項目を2~4段階で評価し、100点満点で自立度を把握します。一方、FIMはセルフケア、移動、コミュニケーションなどを1~7点で評価し、126点満点となります。これらの評価は個々の能力を理解し、リハビリや介護計画に役立ちます。

施設や医療機関では、これらの評価を活用して利用者の生活向上に努めています。

BI(バーセルインデックス)の評価項目

BI(バーセルインデックス)は日常生活動作(ADL)の評価によく使われる方法です。この評価では、食事、移動、入浴など10項目が含まれており、それぞれの項目で自立度を2~4段階で評価します。

具体的には、食事や入浴などの活動が完全自立から全介助までのどれに該当するかを判定し、その結果によってスコアを与えます。BIの評価によって利用者の日常生活動作能力が詳細に把握でき、適切なサポートやリハビリプログラムの立案に役立ちます。

この評価は、介護施設や医療機関でのケアプランにおいて重要な指標となっています。以下で詳しく解説していきます。

食事

食事は日常生活動作(ADL)の重要な項目の一つであり、自立生活に欠かせない要素です。食事の評価においては、利用者が適切な時間内に食事を自分でとることができるか、また自助具を利用して食事を摂取できるかが重要なポイントとなります。

完全自立では、利用者は適切な食事の時間と量を自分で決定し、自助具を使って食事が行えます。一部介助では、食べ物を細かく切ってもらうなどの介助が必要になりますが、自助食器などの配置によって取りこぼしを防ぎます。

全介助では、利用者が食事において全面的な介助を必要とします。食事の評価結果によって、利用者の栄養摂取や食事の安全性に関する対応策が立案され、適切なサポートが提供されることになります。

車椅子からベッドへの移動

車椅子からベッドへの移動は、日常生活動作(ADL)において重要な動作の一つです。この項目では、利用者が車椅子からベッドへの移乗を自立して行えるか、あるいは介助を必要とするかが評価されます。

完全自立では、利用者は車椅子からベッドへの移乗を全て自分で行えます。一部介助では、利用者が移乗の一部を自分で行えるが、ある程度の介助が必要な場合です。例えば、足元をベッドに乗せることはできるが、腰の上げ下げなどに介助が必要なケースです。全介助では、利用者が移乗において全面的な介助を必要とします。

この評価結果によって、利用者の身体機能や介護度に合わせた適切な移乗方法や支援方法が検討され、安全かつ快適な移乗が実現できるようになります。移動においては、利用者の自立度を最大限尊重し、適切な支援を提供することが重要です。

整容

整容の評価項目では、利用者の日常生活動作(ADL)における整容動作の自立度が評価されます。

整容とは、髪の毛を整えたり、洗顔を行ったりするなど、外見や身だしなみを整える活動のことです。この項目では、利用者が整容を自分で行えるか、あるいは介助を必要とするかが評価されます。

完全自立では、利用者が鏡を使って髪や顔を自分で整えることができます。髪を整える、洗顔や化粧を行うなど、全ての整容動作を自分で行える状態を指します。一部介助では、利用者が髪の一部や顔の一部を整えることができるが、他の部分に介助が必要なケースです。全介助では、利用者が整容において全面的な介助を必要とします。

トイレ

トイレの評価項目では、利用者の日常生活動作(ADL)におけるトイレ動作の自立度が評価されます。
トイレ動作は、トイレに行くための準備から排泄までの一連の行動を指します。この項目では、利用者がトイレ動作を自分で行えるか、あるいは介助を必要とするかが評価されます。

完全自立では、利用者がトイレに行くタイミングを自分でコントロールし、自分でトイレ動作を行うことができます。排泄に必要な洗浄や手洗いも自分で行います。

一部介助では、利用者がトイレに行くタイミングを自分でコントロールできるが、排泄の際に補助具や介助が必要なケースです。全介助では、利用者が排泄に関して全面的な介助を必要とします。

入浴

入浴の評価項目では、利用者の日常生活動作(ADL)における入浴能力の自立度が評価されます。入浴は身体の清潔を保ち、健康を維持するために重要な活動です。

この項目では、利用者が入浴を自分で行えるか、あるいは介助を必要とするかが評価されます。

完全自立では、利用者が入浴場所、浴槽に入り、洗髪や体を洗い、最後に流すまで全て自分で行うことができます。入浴に必要な準備や後片付けも自分で行います。

一部介助では、利用者が入浴場所には入れるが浴槽に入る際に補助が必要となる場合や、洗髪や体を洗う際に介助が必要なケースです。全介助では、利用者が入浴に関して全面的な介助を必要とします。

歩行

歩行の評価項目では、利用者の日常生活動作(ADL)における歩行能力の自立度が評価されます。歩行は日常生活で非常に重要な活動であり、移動や社会参加に欠かせない機能です。

この項目では、利用者が歩行を自分で行えるか、どれだけの介助が必要なのかが評価されます。完全自立では、利用者が歩行器や杖を使用せず、自分の力だけで安定して歩行することができます。

部分介助では、利用者が歩行器や杖を使用したり軽度の支援が必要となる場合がありますが、基本的には自分で歩行できます。全介助では、利用者が歩行に関して全面的な介助を必要とします。

段差昇降

段差昇降の評価項目では、利用者の日常生活動作(ADL)における段差の昇降能力が評価されます。日常生活では、家や施設内など様々な場所に段差が存在し、それらの段差を安全に昇降することが求められます。

この項目では、利用者が段差昇降を自分で行えるか、どれだけの介助が必要なのかが評価されます。

完全自立では、利用者が段差昇降を自分で安定して行うことができます。部分介助では、利用者が一部の段差昇降に介助が必要だが、他の部分は自分で行える場合があります。全介助では、利用者が段差昇降に関して全面的な介助を必要とします。

着替え

着替えの評価項目では、利用者の日常生活動作(ADL)における衣服の着脱能力が評価されます。衣服の着脱は、日常生活で頻繁に行われる重要な動作であり、自分自身で衣服を着替えることができるかどうかが評価されます。

完全自立では、利用者が適切な手順で衣服を着脱し、必要なアクセサリーやボタンを留めることができます。部分介助では、利用者が一部の衣服の着脱に介助が必要だが、他の部分は自分で行える場合があります。全介助では、利用者が衣服の着脱に関して全面的な介助を必要とします。

排便コントロール

排便コントロールの評価項目では、利用者の排便に関する自立度が評価されます。日常生活動作(ADL)の中で排便は重要な機能であり、適切な排便コントロールが健康と快適な生活に必要です。

完全自立では、利用者が自分の排便を自分でコントロールし、トイレに適切なタイミングで行くことができます。修正自立では、排便に関して一部の補助具や介助が必要な場合がありますが、基本的に自分で排便を行えます。

監視・補助では、利用者の排便のタイミングや補助が必要な場合がありますが、簡単な介助で済むことが多いです。

排尿コントロール

排尿コントロールの評価項目では、利用者の排尿に関する自立度が評価されます。排尿は日常生活動作(ADL)の中で重要な機能であり、適切な排尿コントロールが健康と快適な生活に欠かせません。

完全自立では、利用者が自分の排尿を自分でコントロールし、トイレに適切なタイミングで行くことができます。修正自立では、排尿に関して一部の補助具や介助が必要な場合がありますが、基本的に自分で排尿を行えます。

監視・補助では、利用者の排尿のタイミングや補助が必要な場合がありますが、簡単な介助で済むことが多いです。

FIM(機能的自立度評価表)の評価項目

FIM(機能的自立度評価表)は、日常生活動作(ADL)の自立度を評価するための評価表です。利用者の生活の質を向上させるために広く用いられています。

FIM評価は、セルフケア、排泄コントロール、移乗、移動、コミュニケーション、および社会的認知の6つの項目に分かれています。それぞれの項目には自立度に応じて1から7までの点数が割り当てられ、利用者の日常生活動作能力を客観的に評価します。

FIM評価を通じて利用者の個別のニーズに合わせた適切なケアプランを立案することが重要です。

セルフケア

セルフケアはFIM評価の一部であり、日常生活動作(ADL)の中で個人が自己で行える活動を指します。セルフケアの評価では、以下の項目が評価されます。

  1. 食事:適切な時間内に自分で食事をとり、自助具を使用して食事を行うかどうか。
  2. 排泄コントロール:トイレに行くタイミングを自分でコントロールできるかどうか。
  3. 移乗:車椅子やベッドなどからの移動を自分で行えるかどうか。
  4. 移動:歩行や移動において自分で行動できるかどうか。
  5. コミュニケーション:意思疎通ができるかどうか。
  6. 社会的認知:自分や周囲の状況を理解し、適切に対応できるかどうか。

それぞれの項目には、完全自立から全介助までの7段階の評価があります。利用者のセルフケア能力を客観的に評価し、適切な介入やケアプランの立案に役立てることがFIM評価の目的の一つです。

排泄コントロール

排泄コントロールはFIM評価のセルフケア項目の一つであり、個人が排泄行動を制御し、適切なタイミングでトイレに行くことができるかどうかを評価します。具体的には、以下のようなポイントが評価されます。

  1. 完全自立 (7点):利用者は適切なタイミングで自力でトイレに行け、排泄を完全に制御できる。
  2. 修正自立 (6点):利用者はトイレに行くことはできるが、排泄コントロールに補助具や介助が必要な場合がある。
  3. 監視・補助 (5点):利用者はトイレに行けるが、監視や準備、指示、促しを必要とする場合がある。簡単なことに介助が10%未満必要。
  4. 最小介助 (4点):利用者はトイレに行くタイミングを自分で制御し、手で触れる以上の介助は必要ない。75%以上は自力で行う。
  5. 中等度介助 (3点):利用者はトイレに行くタイミングを制御できるが、手で触れる以上の介助が必要で、50%〜75%は自力で行う。
  6. 最大介助 (2点):利用者は一部の排泄行動を自力で行えるが、25%〜50%は介助が必要。
  7. 全介助 (1点):利用者は25%未満しか自力で排泄行動を行わない。

これらの評価結果により、利用者の排泄コントロールの自立度が把握され、適切なケアや支援が提供されることになります。

移乗

移乗はFIM評価のセルフケア項目の一つであり、利用者が車椅子からベッドなどへの移動行動をどれだけ自立して行えるかを評価します。以下はFIM評価における移乗の評価基準です。

  1. 完全自立 (7点):利用者は車椅子からベッドへの移乗を全て自力で行える。
  2. 修正自立 (6点):利用者は移乗の動作の一部に介助が必要だが、他は自力で行える。
  3. 監視・補助 (5点):利用者は移乗において監視、準備、指示、促しが必要な場合がある。簡単なことに介助が10%未満必要。
  4. 最小介助 (4点):利用者は軽度の介助を必要とし、手で触れる以上の介助は必要ない。75%以上は自力で行う。
  5. 中等度介助 (3点):利用者は一部の移乗動作に手で触れる以上の介助が必要で、50%〜75%未満は自力で行う。
  6. 最大介助 (2点):利用者は移乗の大部分に介助が必要で、25%〜50%未満は自力で行う。
  7. 全介助 (1点):利用者は25%未満しか自力で移乗行動を行わない。

これらの評価項目に基づいて、利用者の移乗に対する自立度が評価され、必要なケアや介助が適切に提供されます。

移動

移動はFIM評価のセルフケア項目の一つであり、利用者が身体を動かして移動する能力をどれだけ自立して行えるかを評価します。具体的な動作には歩行や移動手段の利用が含まれます。以下はFIM評価における移動の評価基準です。

  1. 完全自立 (7点):利用者は歩行器や杖などの支援具を使用せずに、安全かつ迅速に自力で移動できる。
  2. 修正自立 (6点):利用者は移動に一部支援が必要だが、大部分は自力で行える。
  3. 監視・補助 (5点):利用者は移動において監視、準備、指示、促しが必要な場合がある。簡単なことに介助が10%未満必要。
  4. 最小介助 (4点):利用者は軽度の介助を必要とし、手で触れる以上の介助は必要ない。75%以上は自力で行う。
  5. 中等度介助 (3点):利用者は一部の移動動作に手で触れる以上の介助が必要で、50%〜75%未満は自力で行う。
  6. 最大介助 (2点):利用者は移動の大部分に介助が必要で、25%〜50%未満は自力で行う。
  7. 全介助 (1点):利用者は25%未満しか自力で移動ができず、ほぼ全ての動作に介助が必要となる。

これらの評価項目に基づいて、利用者の移動能力に対する自立度が評価され、適切なケアや介助が提供されます。

コミュニケーション

FIM評価におけるコミュニケーションは、利用者が他の人と意思疎通を図る能力を評価する項目です。

コミュニケーションの評価では、言語やジェスチャー、表情、筆談、コミュニケーション支援具などを用いて、利用者が自分の意思や感情を適切に伝えることができるかを評価します。以下はFIM評価におけるコミュニケーションの評価基準です。

  1. 完全自立 (7点):利用者は言語やコミュニケーション支援具などを使用せずに、他の人と自由に意思疎通ができる。
  2. 修正自立 (6点):利用者は一部の場面や内容においてコミュニケーション支援が必要だが、大部分は自力でコミュニケーションができる。
  3. 監視・補助 (5点):利用者はコミュニケーションにおいて監視やサポートが必要な場合があり、簡単なことに介助が10%未満必要。
  4. 最小介助 (4点):利用者は軽度の介助を必要とし、手で触れる以上の介助は必要ない。75%以上は自力で行う。
  5. 中等度介助 (3点):利用者は一部のコミュニケーション動作に手で触れる以上の介助が必要で、50%〜75%未満は自力で行う。
  6. 最大介助 (2点):利用者はコミュニケーションの大部分に介助が必要で、25%〜50%未満は自力で行う。
  7. 全介助 (1点):利用者は25%未満しか自力でコミュニケーションができず、ほぼ全ての動作に介助が必要となる。

これらの評価項目に基づいて、利用者のコミュニケーション能力に対する自立度が評価され、適切なコミュニケーション支援が提供されます。

社会的認知

FIM評価における社会的認知は、利用者が社会的な状況を理解し、適切な行動を取る能力を評価する項目です。社会的認知の評価では、利用者が他の人との交流や社会的なルールに適切に対応できるかを評価します。以下はFIM評価における社会的認知の評価基準です。

  1. 完全自立 (7点):利用者は社会的な状況を適切に理解し、他の人との交流や社会的なルールに自力で適応できる。
  2. 修正自立 (6点):利用者は一部の社会的な場面やルールにおいてサポートが必要だが、大部分は自力で適応できる。
  3. 監視・補助 (5点):利用者は社会的な状況において監視や補助が必要な場合があり、簡単なことに介助が10%未満必要。
  4. 最小介助 (4点):利用者は軽度の介助を必要とし、手で触れる以上の介助は必要ない。75%以上は自力で行う。
  5. 中等度介助 (3点):利用者は一部の社会的な状況に手で触れる以上の介助が必要で、50%〜75%未満は自力で行う。
  6. 最大介助 (2点):利用者は社会的な状況の大部分に介助が必要で、25%〜50%未満は自力で行う。
  7. 全介助 (1点):利用者は25%未満しか自力で社会的な状況に適応できず、ほぼ全ての場面に介助が必要となる。

社会的な環境において適切に行動する能力は、個人の日常生活や社会参加において重要な要素となります。

まとめ

この記事では、ADL(日常生活動作)の意味と重要性について説明しました。

ADL評価は、日常生活における機能的自立度を評価するための有用なツールであり、患者や高齢者のケアに欠かせない要素です。BI(バーセルインデックス)やFIM(機能的自立度評価表)などの評価方法についても詳しく解説しました。

適切なADL評価は、介護プランの立案やリハビリテーションの計画において重要な情報を提供し、利用者の機能向上や自立度の向上に役立ちます。介護やリハビリテーションの専門家が適切な評価を行い、個々のニーズに合わせた適切なサポートを提供することが、利用者の生活の質向上に繋がることを忘れてはなりません。

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