サルコペニアとは?原因やチェック方法フレイルとの違いも解説!

2023.09.20

サルコペニアとは、筋肉量が低下していく症状の総称で、加齢や疾患など様々な原因があります。筋肉量が低下することで、日常生活に支障をきたし危険です。

この記事では、サルコペニアになる原因やセルフチェック方法などをまとめました。また、同じく加齢により起こる「フレイル」との違いも解説します。65歳以上の高齢者の、1~29%に症状が現れていると言われるサルコペニア。治療方法も紹介いたします。

サルコペニアとは?

サルコペニアとは、筋肉量の減少による筋力低下や身体機能の低下により起きる症状の総称。ギリシャ語のSarx(筋肉)とPenia(減少)を合わせた造語です。65歳以上の高齢者がなることが多く、特に75歳以上になると発症者が急増します。

サルコペニアは、主に腹筋や広背筋、臀筋群、膝伸筋群などの抗重力筋が減少。抗重力筋とは、座位や立位などの姿勢を保持する働きがある筋肉です。そのため、日常生活の動作が困難になったり、転倒や骨折のリスクが高くなったりします。

若年層でも注意が必要

65歳以上の高齢者に多いサルコペニアですが、若年層でも要注意です。生活習慣や怪我・病気などにより、若い方でも発症する可能性があります。若年層でサルコペニアを発症するには、以下のような原因があります。

  • 病気や怪我:心疾患、呼吸器疾患、がん、外傷、肥満など
  • 栄養状態:ダイエットなどによる栄養不足、栄養の吸収不良など
  • 活動状態:デスクワークなどによる運動不足、寝たきりなど

ダイエット目的で、過度な食事制限をしている若い女性は要注意です。BMIが18.5以下だったり、たんぱく質の摂取量が低かったりすると危険です。また、メタボや肥満で食事制限を行うも、運動を全くしないと脚だけ細くなる場合があります。「サルコペニア肥満」と言い、体重の負荷に対し脚の筋力が低下しているため、転倒リスクが上がります。

サルコペニアになる原因は?

サルコペニアになる原因には、加齢や栄養状態、疾患などがあります。サルコペニアは、「一次性サルコペニア」と「ニ次性サルコペニア」の2種類。それぞれ以下の原因があります。

一次性サルコペニア】加齢に伴う筋肉量の減少により起きるサルコペニアで、他の原因は考えられません。加齢による要因の例は以下の通りです。

  • 運動量や活動量、ホルモンの減少
  • 栄養不足(たんぱく質など)
  • 慢性的な炎症や神経系の問題
  • 食欲不振による体重減少

25~30歳頃から、加齢により筋肉量は徐々に減少します。40歳を過ぎる頃には、全身の筋肉量の1%ほどが1年で減少すると考えられています。

ニ次性サルコペニア】活動量の低下などによる、筋肉量の減少が原因。若年層でも起こりうるサルコペニアです。

  • 活動量の低下:デスクワークで座位が続いたり、寝たきりだったりすると筋肉量が低下します。
  • 低栄養状態:栄養不足が原因。体内への栄養吸収が低下したり、食事量が足りずたんぱく質などの栄養が不足したりして起きます。過度なダイエットにも要注意。
  • 疾病病気に付随して起きる場合もあります。原因となる疾病は、神経筋疾患やがん、臓器不全など。

サルコペニアの症状は?セルフチェック方法

サルコペニアの症状は、転倒しやすくなる、ペットボトルやビンの蓋が開けにくくなる、などです。これから紹介する症状がある場合は、サルコペニアの可能性があります。

また、自宅で簡単にできるセルフチェックの方法も紹介します。症状と合わせて確認することで、サルコペニアの早期発見に繋がります。

サルコペニアのよくある症状

サルコペニアは、歩行や立ち上がりが困難になる、握力が低下するなどの症状があります。具体的な症状は、以下のようなものがあります。

  • ビンやペットボトルの蓋が開けにくくなる
  • 歩行のスピードが落ち、横断歩道を青信号の間に渡り切れない
  • 頻繁につまずいたり、転倒しそうになったりする
  • ふくらはぎの筋肉が痩せてきた
  • 腰痛や膝痛

症状が悪化すると、転倒や骨折、寝たきりなどのリスクが上がります。早めに受診しましょう。

サルコペニアのセルフチェック

自分がサルコペニアの可能性があるか、自宅で簡単にセルフチェックできます。セルフチェックの方法は、片足立ちテストと歩行テスト、指輪っかテストの3種類。それぞれ詳しく紹介いたします。

サルコペニアを早期発見できれば、治療に繋げられます。気になる方はすぐにチェックしてみましょう。

片足立ちテスト

サルコペニアのセルフチェックに、「片足立ちテスト(開眼片足立位テスト)」があります。足の筋力を測るテストです。

  1. 滑りにくい床に立ちます。素足で行いましょう。
  2. 両手を腰に当てます。
  3. 立ちやすい方の足で、片足立ちをします。もう片方の足は床から5㎝ほど上げて、そのままキープしましょう。

片足立ちを60秒キープするのが目安。8秒未満の場合は要注意です。足の筋力が低下している恐れがあります。早めに受診しましょう。

また、片足立ちテストを行う場合は、転倒しないよう掴める場所があると安心です。転倒時のリスクを考え、周りに危険が無いかも確認してください。

歩行速度テスト

サルコペニアのセルフチェックの一つが、「歩行速度テスト」です。サルコペニアの症状の一つ「歩行速度の低下」をチェックします。手順は以下の通り。6m以上のスペースを確保してください。

  1. スタート地点からゴール地点まで6m距離を取り、それぞれ印をつけてください。
  2. 中間の1m地点、5m地点にも印をつけます。
  3. スタートからゴールまで歩行。中間の1m地点から5m地点までのタイムを計測します。

中間の1m地点から5m地点までの距離(4m)の歩行速度が、1秒当たり0.8m以下の場合は要注意。サルコペニアの可能性が高いため、早めに受診しましょう。

また、日常生活で横断歩道を青信号の間に渡り切れない場合も、注意が必要です。横断歩道の青信号は、大体1m/秒の歩行速度で渡れるよう、設定されています。渡り切れなくなった場合は、足の筋力低下が疑われます。

指輪っかテスト

「指輪っかテスト」は、ふくらはぎの筋肉の太さをチェックする方法。サルコペニアの症状の一つである、ふくらはぎの筋肉が痩せているかをチェックします。

方法は以下の通り。椅子に座って両足を床につけた状態で行いましょう。

  1. 両手の親指と人差し指で輪っかを作りましょう。
  2. 利き足でない方の足のふくらはぎを、①で囲みます(ふくらはぎの一番太い箇所)

ふくらはぎを囲めない場合、サルコペニアの可能性は低くなり、囲めると可能性が高くなります。囲めない場合に比べ、ちょうど囲めると2.4倍、隙間ができると6.6倍可能性が高くなると言われています。
もし利き足が分からない場合は、両足で行ってください。

サルコペニアとフレイルの違い

サルコペニアは、加齢などで筋肉量が減少したことによる、身体能力の低下を指します。フレイルもサルコペニアと同様、加齢による能力の低下を指しますが、さらに広い範囲を含む概念です。

フレイルは、身体能力に加え、精神的及び社会的生活面でも衰えがある状態。要介護状態の前段階とも言われ、生活習慣によっては改善する可能性もあります。フレイルには、以下のような症状があります。

  • 身体活動の低下
  • 歩行速度の低下(1m/秒未満)
  • 握力の低下
  • 理由もなく疲れやすい(1週間のうち3~4日以上)
  • 体重減少(半年で2~3㎏以上)
  • 鬱状態
  • 家に引きこもりがちになる
  • 判断力や認知機能の低下

フレイルを引き起こす原因の一つに、サルコペニアの進行があります。身体的なフレイルには、筋力の低下が大きく関わってくるからです。

サルコペニアの治療方法

サルコペニアの治療方法には、タンパク質の摂取や筋肉に不可をかける運動があります。この2つの治療方法について、詳しく紹介します。

サルコペニアの改善だけでなく、予防にも効果があります。生活習慣に取り入れましょう。

積極的なたんぱく質の摂取

サルコペニアの治療方法の一つに、積極的なたんぱく質の摂取があります。看護する上でも、栄養管理は基本と言えるでしょう。

サルコペニアと低栄養は深く関連しているといわれています。特に、筋肉の材料となるたんぱく質の摂取は重要です。たんぱく質は、魚や肉、卵、乳製品や大豆製品に含まれます。ただし、過度に摂取すると腎障害などを起こす可能性があります。摂取量は、医師や栄養管理士に相談しましょう。

また、たんぱく質だけでなく、ビタミンやミネラル、アミノ酸など、バランスよく栄養を取り入れましょう。エネルギーを十分に摂取しないと、補うために筋肉が分解されてしまうので注意が必要です。

筋肉に負荷をかける運動

サルコペニアの治療方法として、筋肉に負荷をかける運動があります。

サルコペニアは、筋肉量の減少に大きく関わります。適度な運動を継続すれば、筋肉量を維持・増進し、サルコペニアの予防や改善に繋がるのです。筋肉に負荷をかけるには、有酸素運動とレジスタンス運動が有効。内容は以下の通りです。

  • 有酸素運動:軽く息がはずむ程度に行う有酸素運動は、生活習慣に取り入れやすくおすすめ。生活習慣病の予防・改善にも効果があります。水泳やウォーキング、サイクリング、エアロビクスやラジオ体操などがあります。
  • レジスタンス運動:一般的に筋力トレーニングと呼ばれ、自分の体重を負荷にして骨格筋を鍛えます。体力や体調に合わせ、トレーニングの強度を決めましょう。上体起こしやお尻上げ、ハーフスクワットなどがサルコペニアに有効。ふらつきや転倒を予防します。

まとめ

サルコペニアとは、筋肉量が低下していく症状の総称。加齢や疾患、低栄養状態など原因は様々で、若年層でも発症する恐れがあります。

サルコペニアの治療方法は、積極的なたんぱく質の摂取と、筋肉に負荷をかける運動の2つが有効で予防にも効果的です。

高齢になると、症状が現れやすいサルコペニア。普段から予防やセルフチェックを行うと良いでしょう。

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