看取り介護とは?余命宣告からの開始時期や内容までを詳しく解説

2023.09.20

看取り介護とは、医療行為は行わず、日常生活のケアで対象者の苦痛を緩和し、自分らしい最期を迎えられるよう支援するのが目的です。

この記事では、看取り介護の内容やターミナルケアとの違いなどを詳しく解説。余命宣告からの開始時期を含めた、看取り介護の期間についても紹介いたします。

今後、ますます必要性が高まると予想される看取り介護。知識を持っておくと安心です。

看取り介護とは?

看取り介護とは、無理な延命治療は行わず、自然に最期を迎えられるようケアすることです。

対象者は、病状の回復が見込めず、近い将来亡くなることが避けられない方です。看取り介護では、日常的なケアで精神的・身体的苦痛を緩和していきます。対象者本人の意志を尊重しながら、自分らしく最期まで生活できるよう支援します。

これまでは、病院で最期を迎えられる方が多くを占めました。しかし、高齢化社会が進む日本では、今後病床不足が深刻化すると予想されます。住み慣れた地域や自宅で、または施設での最期を希望される高齢者も増えるでしょう。現在、看取り介護が重要視されてきているのです。

ターミナルケアとの違い

看取り介護とターミナルケアとの最大の違いは「医療行為の有無」です。

ターミナルケアは「終末期医療」とも呼ばれます。無理な延命治療は行わず、精神的・身体的苦痛を和らげ、最期まで尊厳を守ることが目的です。看取り介護と共通しています。しかし、ターミナルケアでは医師の判断の元、酸素吸入や点滴などの医療行為を中心としてケアします。

看取り介護でも医療との連携は図りますが、医療行為は行いません。医師の指示のもと、体位交換や清拭、褥瘡の予防などを通じて苦痛を緩和します。

ターミナルケアでは「医療中心のケア」を、看取り介護では「日常生活のケア」を通して、対象者を支援するのです。

看取り介護の期間は?流れを解説

看取り介護には、心身の状態などに応じて期間があります。

余命宣告後に看取り介護が始まる「開始時期」を始め「安定期」「不安定期」「介護後期」に分かれます。それぞれの期間に応じたケアが必要です。

この章では、看取り介護の流れについて解説します。それぞれの期間に応じたケアについて詳しくまとめました。対象者の変化に応じた介護ができるよう、事前に必要なケアを理解しましょう。

看取り介護の開始時期

看取り介護は、医師が下記のように判断した際に開始されることがほとんどです。余命宣告とも言えるでしょう。

  • 食事量が減っている
  • 体力が低下
  • 積極的な医療としての治療が不可能
  • 意思疎通ができず、全面的に介助が必要

在宅での看取りは環境を作ることが重要です。医師と相談しながら、看取りに適した環境を準備しましょう。

また、ケアプラン(介護計画)が無い場合は、本人や家族の意向を確認しながら作成します。しかし、心身の状態は変化しますので、都度ケアプランや介護方法の変更をします。

施設で看取り介護をする場合は、開始時期から一か月ほどは「適応期」です。看取り介護について施設から説明してもらい、理解を深める期間です。

看取り安定期

状態が安定している期間は「看取り安定期」です。体調が安定していれば、少量でも好きなものを食べたり入浴をしたり、今までと同じように過ごしましょう。気分転換の時間を持つことも大事です。会話を楽しんだり、家族など周囲の方から積極的に言葉をかけたりして、本人との楽しい思い出の時間を過ごしましょう。

また、本人と意思疎通が図れる場合は、都度看取りへの意志や希望を確認。家族からの意向も踏まえ、必要であればケアプランを変更・調整します。

施設の場合は、入所から半年ほど経った頃が安定期です。本人や家族が、入所開始時から意志や希望が変化することもあるでしょう。施設に相談しケアプランや対応を変更してもらいます。

看取り不安定期

「看取り不安定期」とは、状態が不安定な時期。食事量や体重が減少するなど衰弱傾向が出現し、進行していきます。施設では、その都度家族と状態の変化を共有します。

状態の安定・不安定を繰り返す場合もあります。家族も精神的に不安定になったり、疲弊したりする場合もあるでしょう。看取り介護には、家族の心のケアも含まれます。辛い時は、医師や介護職員などに不安な気持ちを話してみましょう。

また、部屋に花を飾ったり、本人の好きな音楽を流したりするなどの環境作りも重要。本人や家族が、共に安らげる空間にしましょう。

看取り介護後期

「看取り介護後期」は、医師が「回復が見込めず、安定期に戻ることはない」と判断する時期です。食事や水分の摂取量は、自然と減少していきます。

在宅で看取る場合は、もしもの場合の連絡先(医療機関や親類など)を確認しておきます。また、親しい方などに連絡し会いにきてもらいましょう。

看取りが間近に迫り、本人も家族もつらい時期です。しかし、本人の希望を出来る限り叶え、孤独を感じさせないよう寄り添いましょう。家族にとって最期に良いケアを行うことは、看取り後に心の支えとなります。最期の時間を有意義にできるよう、共に過ごしてください。

看取り介護はどこでする?

看取り介護をする場所は、介護施設、病院、自宅のいずれかになります。それぞれの場所でする看取り介護について、詳しく紹介いたします。

あなたやご家族の希望に沿う看取り介護をする場所はどこなのか、参考にしてください。

介護施設

介護施設で亡くなる方は、年々増加傾向にあります。医療での回復が見込めず、在宅介護も困難な場合は、介護施設を選ばれる方が多いです。今後ますます需要が高まるでしょう。

要介護度の高い方が入所される老人福祉施設では、看取り介護を行う施設が多くあります。しかし、対応していない施設もあるため入所前に確認が必要です。

また、看護師常駐の施設では医療行為が可能です。緩和ケアに対応してくれる場合もあり安心です。介護施設の場合、家族が24時間体制で看取り介護をしなくて済むため、負担が軽減されるメリットがあります。家族への精神的ケアも行ってくれます。

病院

日本では近年、およそ8割の方が病院で亡くなります。病院での看取りは「ターミナルケア」が主流です。酸素吸入や点滴などの医療行為を医師の指示に従って行い、苦痛を緩和します。

医師を始め、看護師やソーシャルワーカーなどが本人や家族のケアを行います。容体が急変した際も、すぐに対応してもらえ安心です。

看取りを行う病院は、主に療養型の病院です。しかし、受け入れ先が少ないのが現状です。医療行為が無いと入院することもできません。

自宅

多くの人が、最期は住み慣れた自宅で過ごしたいと望まれるでしょう。病院や施設と比べ周囲に気を遣わずに済み、家族や友人とゆっくり過ごせるのがメリットです。

自宅で看取り介護を行う場合、家族とケアマネージャー、医師や看護師、ヘルパーなどの連携が必須です。家族は日常的なケアに加え、専門家と連絡を取り合わなくてはならず、負担が多くかかります。

また、急変時などに備え、在宅と医療が24時間連携できる体制が必要です。しかし、在宅医療の体制を整えるのも困難な場合があり、自宅での看取り介護のハードルは高くなっています。

看取り介護は何をする?内容を解説

看取り介護では、身体のケアだけでなく精神的なケアも重要です。それぞれのケアの内容を、詳しく解説します。気を付けるべきこともまとめました。

最期の時を過ごす本人は、身体的にも精神的にも苦痛や不安を感じます。少しでも緩和できるよう、ケア内容を把握することが重要です。

身体のケア

看取り介護における身体のケアは、以下のように日常的なケアになります。

  • 食事や排泄、入浴の介助:看取りに近づくと、食事や水分の摂取量は減少していきます。無理に勧めず、本人の食べたい時、飲みたい時に状態に合わせた食事を提供しましょう。排泄は、状態に合わせてポータブルトイレやおむつを使用。清潔保持や感染症予防のため、可能な限り入浴や清拭介助を行います。
  • 口腔ケア:清潔の保持、また誤嚥性肺炎の予防などのため、可能な方法で口腔ケアを行いましょう。
  • 体位変換:身体的な苦痛を軽減するため、体位変換を行いましょう。褥瘡予防にもなります。楽な体勢になるよう、クッションの使用も効果的。
  • 健康状態のチェック:排尿や排便の量、体温・血圧・脈拍など、健康状態のチェックは重要です。皮膚状態も確認し、乾燥していれば保湿を行いましょう。
  • 照明や室温などの環境整備:本人ができるだけ安らかに過ごせるよう、部屋の環境整備を行います。

精神的なケア

人は最期の時が近づくと、不安や恐怖、孤独感を感じるものです。寄り添い、精神的なケアで苦痛を取り除きましょう。こまめにコミュニケーションを図り、不安な気持ちや悩みを聞くことで、孤独感をやわらげられます。

人の感覚の中で、最期まで残ると言われているのが聴覚。話しかけたり、好きな音楽を流したりすることで、最期の時まで精神的ケアを行いましょう。また、体をさすられたり手を握られたりすると、人は安心感を得られます。大切な人の存在を身近に感じられるよう、優しく触れてあげてください。

まとめ

看取り介護とは、無理な延命治療は行わず自然に最期を迎えられるようケアすることです。日常的なケアで、身体的・精神的苦痛を緩和します。

ターミナルケアとの最大の違いは、医療行為があるかどうか。ターミナルケアでは、主に点滴や酸素吸入などの医療行為で苦痛を緩和します。

看取り介護は、余命宣告からの開始時期を始めとし、時期に合ったケアが必要です。

誰しも、必ず最期の時を迎えます。あなたやご家族の意向を踏まえ、事前に看取り介護について話し合っておくと安心です。記事を参考に考えてみてはいかがでしょうか。

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