介護うつとは、介護による肉体的・精神的ストレスなどが原因で発症するうつ病のこと。介護をしている方なら、誰でもなりえます。
この記事では、介護うつについて原因などを詳しく紹介します。セルフチェックや回避するための方法もまとめました。高齢化社会の日本では、介護うつは深刻な問題です。あなたや周りの方の発症を防ぐために、知識を得ることが大事です。
目次
介護うつとは、家族などの介護をしている人が、肉体的・精神的ストレスなどが原因で発症するうつ病です。介護うつは、本人や周りが気づきにくく進行しやすいため危険です。早期発見による治療が重要となります。
症状は以下のようなものがあり、通常のうつ病と同じです。
上記の症状が2週間以上続く場合は要注意です。介護うつの可能性がありますので、早めに受診しましょう。
介護うつになる原因には、介護による精神的ストレスや肉体的な負担などがあります。
この章では、介護うつになる原因を4つ紹介します。介護うつを予防するためには、原因を知ることが大事です。介護をされている方は、当てはまるものが無いか確認してみましょう。
介護うつになる原因の一つは、精神的ストレスです。介護は長期的に続く場合が多く、介護者は自由な時間を持てずストレスが溜まりやすくなります。ケアマネージャーやヘルパーといった専門職との連携も必要で、対人関係で負担を感じる場合もあります。
また、在宅介護では他者に悩みを相談しにくく、一人で辛い気持ちを抱え込みがちです。孤独感に襲われる方もいます。介護の対象者が認知症の場合は、暴言や暴力を受けることもあり、より精神に負担を感じます。
上記のような精神的ストレスが積み重なると、介護うつの発症リスクが高まるのです。
介護うつの原因には、介護による肉体的な負担もあります。
介護は、入浴やトイレの介助、車いすへの移乗介助などがあり身体に負担がかかります。また、無理な姿勢で介助を続けていると、腰や腕などを傷める場合も。自宅介護では、介護以外にも家事や育児など行うことが多く、休む暇がありません。夜間にもトイレなどの介護が必要な場合は、睡眠時間も削られます。
毎日続けていると、肉体の疲れが蓄積するでしょう。しかし、一人で介護をしている場合は体調が悪くても休めません。その結果、精神的にもストレスが溜まっていき、介護うつの発症に繋がります。
介護による経済的な負担も、介護うつの原因になります。
介護の負担を軽減するためには、介護保険サービスを利用します。しかし、サービスを多く利用すれば、それだけ高額なサービス料金が必要です。被介護者の年金などで払えれば良いですが、足りない場合は介護者が賄い、経済的な負担がかかります。
介護保険サービスの利用を抑えれば、家族が介護を行わなくてはいけません。そのために仕事を休む、もしくは辞めると収入が減ります。収入減により生活が困窮すると、介護者の肉体的・精神的負担にも繋がります。そして介護うつを発症しやすくなるのです。
ひとりで介護することによる孤独感も、介護うつを引き起こします。
在宅介護の場合、24時間ひとりで介護をしていると外出する機会などが減少します。社会との関わりが減ってしまい、友人や親族と疎遠になる方もいるでしょう。最近は近所の方との交流も減っています。周囲に頼る人がいないと、誰にも相談できず孤独感に襲われるのです。
また、介護うつになりやすい人の特徴に「気が弱く、人の頼みを断れない」という点があります。気が弱い人は周囲の人に頼まれると、自分ひとりで介護を引き受けてしまう傾向があります。責任感が強いと、より問題をひとりで抱え込みがちになります。
ひとりで介護し続けた結果、孤独感をつのらせ精神的に負担がかかり、介護うつを発症するのです。
介護うつは、介護者本人や周囲の人も気づきにくいため、注意が必要です。したがって、定期的なセルフチェックがおすすめ。また、周囲の方が介護者の様子を観て当てはまるかチェックすれば、客観的に判断できます。
厚生労働省のホームページに掲載されている「簡易抑うつ症状尺度(QIDS-J)」をぜひ試してみてください。下記の項目に当てはまるかセルフチェックし、点数化します。
点数により、介護うつの重症度が分かります。例え軽度であっても、今後重症化する恐れがありますので早めに受診しましょう。
誰でもなりえる介護うつですが、回避方法を知っていれば予防できます。
この章では、介護うつの回避方法を5つ紹介します。自分の考え方を変えたり、自治体などに頼ることは、介護うつの予防に効果的です。ぜひ参考にしてください。
介護うつを回避するためには、相談できる人を作りましょう。責任感が強い人は、自分ひとりで問題を解決しようとしがち。周囲に介護をしていることを話せず、ひとりで抱え込んでしまう人もいます。
友人や親族、恋人など、信頼できる人に悩みを打ち明けてみましょう。自分が頑張りすぎていることに気付き、一緒に解決策を見つけられるかもしれません。
また、相談できる人がいない場合は、地域の介護相談会や家族の会に参加するのもおすすめです。あなたと同じように、介護の悩みを抱えた方と交流できます。開催情報は、市区町村の地域包括支援センターなどでお知らせしています。
ストレスを抱えていると自覚することも、介護うつの回避方法の一つです。介護でストレスを感じるのは自然なこと。国の統計では、介護者のおよそ60~70%がストレスを抱えていると分かっています。
介護は、肉体的・精神的な負担が溜まるだけでなく、自分の自由な時間も持ちにくくなります。ストレスを抱え込むと、介護うつの発症に繋がり危険です。
まずは自分にストレスがあると自覚しましょう。自覚すれば、解消や予防の方法を考えられます。少しでも介護から離れる時間を作ったり、趣味を楽しんだりするのもおすすめです。
自宅介護をテーマにしたブログを観るのもおすすめ。自身の介護を赤裸々に書いたブログは「他の人も介護にストレスを感じている」と気づかされます。ストレスを抱えるのは、決して珍しくはないのです。
介護うつを回避するためには、完璧を目指さないことも大事。
完璧主義な人は、介護うつになりやすいと言われています。自分に厳しいため、介護でも手を抜かず、理想を追い求め一生懸命です。
しかし、介護は思い通りにはいきません。被介護者が自分の思い通りに行動しなかったり、わがままを言ったりするとストレスを感じてしまいます。介護は、少しぐらい手を抜いても大丈夫。100点満点でなく、60点くらいの介護を目指しましょう。心にゆとりを持つことができ、介護うつの発症リスクを抑えられます。
介護サービスの利用も、介護うつを回避する方法のひとつです。以下のような介護サービスがあります。
介護サービスを利用すれば、介護者の負担やストレスが軽減されます。自分の時間も作れ、リフレッシュできるでしょう。利用するためには、ケアマネジャーによるケアプランの作成が必要です。必要なサービスのプランを提示してもらえます。
介護うつを回避するために、地域包括支援センターや自治体に相談しましょう。介護の悩みを相談したり、専門的なアドバイスをもらえたりします。
自分ひとりでは、今後の介護に不安を感じるでしょう。また、介護保険サービスを利用したくても費用面が気になるところ。地域包括支援センターや自治体なら、必要なサービスからかかる費用まで説明してくれます。
また、被介護者の収入や資産状況により、サービスの減免制度を受けられる場合があります。金銭面が気になる方は、こちらも相談してみましょう。
介護うつとは、家族などの介護をしている人が、身体的・精神的ストレスなどが原因で発症するうつ病のことで、介護をしていれば誰でもなりえます。
介護うつになる原因は、精神的ストレスや、肉体的・経済的な負担。ひとりで介護することによる孤独感も原因のひとつです。厚生労働省のホームページに掲載されている「簡易抑うつ症状尺度(QIDS-J)」で、セルフチェックが可能なので、定期的にチェックしましょう。
いつまで続くのか分からない介護は、介護者に大きな負担がかかります。ストレスを感じるのは自然なこと。介護うつにならないために、原因をよく理解し、ひとりで抱え込まないようにしてください。