介護で家族が感じるストレスとは?対策や相談先について解説

2023.10.10

介護は、高齢化社会において避けて通れない課題です。しかし、介護をすることで家族が感じるストレスは少なくありません。介護ストレスとはどのようなものなのでしょうか?また、介護ストレスを軽減するためにはどのような対策や相談先があるのでしょうか?

この記事では、介護で家族が感じるストレスとその原因、問題点、対策方法や相談先について解説します。

介護により家族が感じるストレスの原因

介護という仕事は、誰にでもできるものではありません。介護をすることで、家族はさまざまなストレスを感じることがあります。介護ストレスとは、介護をすることで生じる心身の不調や不満などの状態を指します。

介護ストレスの原因は人によって異なりますが、一般的に以下のようなものが挙げられます。

身体的な負担

身体的な負担とは、介護をすることで生じる体の不調や痛みのことです。介護者は、要介護者の移動や入浴などの介助をすることで、腰痛や肩こりなどの筋肉痛や関節痛を起こすことがあります。また、介護をする時間が長くなると、睡眠不足や疲労感などの症状も現れることがあります。

身体的な負担は、介護者の健康や生活に悪影響を及ぼす可能性があります。身体的な負担を予防したり軽減したりするためには以下が有効です。

  • 介護用品やサービスを活用
  • 体操やストレッチ
  • マッサージや温熱療法

精神的な負担

精神的な負担とは、介護をすることで生じる心の不調や不満のことです。介護者は、以下の感情を抱くことがあります。

  • 要介護者の病状や将来に対する不安や心配
  • 自分の時間や趣味がなくなることへの不満や後悔
  • 自分の能力や役割に対する自信喪失や罪悪感

また、要介護者からの暴言や暴力、感謝や理解が得られないことなどによって、ストレスを感じることもあります。精神的な負担は、介護者の健康や生活に悪影響を及ぼす可能性があります。

経済的な負担

経済的な負担とは、介護をすることで生じるお金の問題のことです。介護者は、介護用品やサービスの費用、要介護者の医療費や生活費などの支出が増えることで、家計が苦しくなることがあります。また、介護をするために仕事を減らしたり辞めたりすることで、収入が減少したり失われたりすることもあります。

経済的な負担は、介護者の健康や生活に悪影響を及ぼす可能性がありますが、介護保険制度や介護保険料の減免制度を利用することで、介護用品やサービスの費用を抑えられます。

人間関係の負担

人間関係の負担とは、介護をすることで生じる人との関わりによるストレスや不満のことです。介護者は、利用者や利用者の家族、職場のスタッフなど様々な人とのコミュニケーションの中でトラブルや摩擦が起きることがあります。

また、介護現場では年齢や経験、職種などが異なる人が集まるため、意見や価値観の違いによって対立や調整が難しくなることもあります。さらに、介護業務が忙しくて育成環境が整っていない場合も多く、不安や不信感を抱くこともあります。

人間関係の負担は、介護者の健康や生活に悪影響を及ぼす可能性があります。

介護ストレスが引き起こす問題

介護は、社会的にも個人的にも重要な役割を果たしていますが、同時に介護者にとっては大きな負担となることもあります。介護者は、介護の時間や内容、環境などによってさまざまなストレスを抱えることがあります。

介護ストレスは、放置すると介護者の健康や生活に悪影響を及ぼすだけでなく、要介護者や社会にも問題を引き起こす可能性があります。

ここからは、介護ストレスが引き起こす問題として、要介護者への虐待と介護うつについて詳しく解説します。また、それぞれの問題の原因や対策についても紹介します。

要介護者への虐待

要介護者への虐待とは、介護者が要介護者に対して、暴力や暴言、無視や放置などの不適切な行為をすることです。介護者は介護によるストレスや疲労、感情的な不安定さなどが原因で、虐待してしまうことがあります。

要介護者への虐待は、要介護者の身体的・精神的・社会的な健康に悪影響を及ぼします。例えば、虐待を受けた要介護者は、傷や病気、栄養不良、うつ病、自殺念慮などのリスクが高まります。また、虐待を受けた要介護者は、自分の尊厳や人権が侵害されたと感じて、信頼や愛情を失うこともあります。

介護うつ

介護うつとは、介護をすることで生じるうつ状態のことです。介護者は、介護によるストレスや疲労、喪失感や拘束感などが原因で、気分が落ち込んだり、食欲や睡眠が乱れたりすることがあります。

介護うつは、介護者の身体的・精神的・社会的な健康に悪影響を及ぼします。例えば、介護うつの介護者は、免疫力や認知機能の低下、心臓病や脳卒中などのリスクが高まります。また、介護うつの介護者は、自分の価値観や目標を見失って、自己否定や自殺念慮に陥ることもあります。

介護ストレス対策4選!

介護者は、介護の時間や内容、環境などによってさまざまなストレスを抱えることがあります。介護ストレスは、放置すると介護者の健康や生活に悪影響を及ぼすだけでなく、要介護者や社会にも問題を引き起こす可能性があります。

そこで、介護ストレスの原因と対策について以下の4つのポイントに分けてご紹介します。

  • 介護保険サービスを活用する
  • 自治体の行政サービスを理解し活用する
  • 身近な人と話をする
  • 専門家に相談する

介護保険サービスを活用する

介護保険サービスとは、介護保険制度のもとで提供されるさまざまな介護サービスのことです。利用するには、要支援または要介護の認定を受ける必要があります。

自宅で受けられる訪問型のサービスや、施設に通ったり入ったりする通所型や宿泊型のサービスなどがあります。例えば、介護保険サービスは負担を軽減する以下のようなメリットがあります。

  • 自分の時間や休息を確保できる:訪問型や通所型のサービスを利用することで、介護者は自分の用事や趣味に時間を使ったり、リフレッシュしたりできます。
  • 専門的なケアや支援を受けられる:訪問看護や訪問リハビリテーションなどのサービスを利用することで、介護者は医療的なケアやリハビリテーションを専門家に任せられます。
  • 費用負担が軽くなる:介護保険サービスを利用する場合、利用者は所得に応じて1割〜3割の自己負担額しか支払わなくて済みます。

自治体の行政サービスを理解し活用する

自治体の行政サービスとは、国や地方自治体が税金や財政支援などを使って、住民の暮らしや福祉を支えるために提供するサービスのことです。サービスには、教育や保健、社会保障、環境、産業など様々な分野があります。自治体の行政サービスを活用するメリットは以下です。

  • 経済的な支援を受けられる:介護者は、介護にかかる費用や生活費などに困っている場合、自治体の行政サービスを利用することで経済的な支援を受けられます。
  • 住宅や移動手段を改善できる:住宅改修助成制度や福祉タクシー制度などの自治体の行政サービスを利用することで、住宅や移動手段を改善できます。
  • 子育てや仕事と両立できる:子育て支援センターや就労支援制度などの自治体の行政サービスを利用することで、子育てや仕事と両立できます。

身近な人と話をする

身近な人と話をすることで、自分の思いや悩みを打ち明けたり、アドバイスや励ましをもらったりできます。コミュニケーションには、以下のようなメリットがあります。

  • ストレスの発散になる:身近な人と話をすることで、心の中に溜まった感情を吐き出したり共有したりすることで、心のバランスを整えたり気分を軽くしたりできます。
  • 共感や理解を得られる:介護者は、介護の現実や困難さを他の人に理解してもらえないと感じることがあります。自分の状況やニーズに寄り添ってくれる人が居ることで、孤独感や劣等感を減らしたり、自信や支えを得たりできます。
  • 情報交換や協力ができる:身近な人と話をすることで、有用な情報や経験を教えてもらったり、相談したりできます。また、身近な人から介護の手伝いや支援を受けたり、することで介護の質や効率を向上させたり、負担を分散させたりできます。

専門家に相談する

介護者にとって、専門家に相談することは、自分や要介護者の権利や利益を守るために有効な手段です。専門家に相談することで、法的なトラブルの解決、税務や経営に関する知識の習得、介護や福祉に関するサービスや制度の活用が可能になります。

  • 法的なトラブルの解決:裁判や調停などの手続きや費用、弁護士の選び方などのアドバイスが受けられる。
  • 税務や経営に関する知識の習得:確定申告や節税対策、経営計画や資金繰りなどのアドバイスが受けられる。
  • 介護や福祉に関するサービスや制度の活用:介護保険サービスや自治体の行政サービスの利用方法や申請方法などのアドバイスが受けられる。

経済的に余裕がない場合は、法テラスや中小企業庁などの公的機関を利用することで、無料の相談や支援を受けることができます。

介護ストレスを解消するために役立つ相談先

介護者は、介護の時間や内容、環境などによってさまざまなストレスを抱えることがあります。ストレスは、放置すると介護者の健康や生活に悪影響を及ぼすだけでなく、要介護者や社会にも問題を引き起こす可能性があります。介護ストレスを解消するために役立つ相談先として、以下を紹介します。

  • 地域包括支援センター
  • ケアマネジャー
  • 市区町村の介護担当窓口
  • シルバー110番

地域包括支援センター

地域包括支援センターは、高齢者の総合相談窓口として、市町村が設置している機関です。介護予防ケアマネジメント、総合相談、包括的・継続的ケアマネジメント、権利擁護の4つの業務を行っています。

介護予防ケアマネジメントでは、要支援や要介護になる可能性が高い高齢者に対して、介護予防のためのサービスや支援を提供します。総合相談では、高齢者のさまざまな悩みや困り事に対して、必要な情報やサービスを紹介します。

包括的・継続的ケアマネジメントでは、地域の医療・介護・福祉などの専門家と連携して、高齢者のニーズに応じたケアプランを作成し、実施・評価します。権利擁護では、高齢者の権利を守るために、成年後見制度や虐待防止などの支援を行います。

ケアマネジャー

介護は、肉体的にも精神的にも負担が大きく、ストレスを感じる人が多いものです。介護ストレスを軽減するためには、ケアマネージャーに相談することが有効です。

ケアマネージャーは、介護保険サービスの利用計画を作成する専門家です。介護者の状況や希望に沿ったサービスを適切に選び、利用方法をアドバイスできます。また、介護者同士の交流や、介護に関する情報提供などの支援も行っています。ケアマネージャーに相談することで、以下のメリットがあります。

  • 適切な介護サービスを利用することで、介護者の負担を軽減することができる。
  • 介護の悩みや不安を相談することで、心の負担を軽くすることができる。
  • 介護者同士の交流を通して、孤独感や孤立感を解消することができる。

市区町村の介護担当窓口

市区町村の介護担当窓口では、介護に関する相談や支援を受けられます。具体的には、以下の内容について相談できます。

  • 介護保険の利用について
  • 介護サービスの利用について
  • 介護に関する法律や制度について
  • 介護の悩みや不安について

介護担当窓口では、介護に関する専門知識や経験を有する職員が、適切なアドバイスや支援を提供してくれるでしょう。介護ストレスを感じている方は一人で悩まずに、市区町村の介護担当窓口に相談することをおすすめします。

シルバー110番

シルバー110番は、全国の都道府県に設置されている高齢者やその家族の総合相談窓口です。介護に関する相談も受け付けており、介護ストレスを軽減するための支援をしています。シルバー110番に相談することで、以下のメリットがあります。

  • 介護の悩みや不安を相談することで、心の負担を軽くできる。
  • 介護に関する情報や支援を受けることができる。
  • 介護者同士の交流を通して、孤独感や孤立感を解消できる。

まとめ

この記事では、介護で家族が感じるストレスとは何か、その原因や問題、対策について解説しました・また、専門家に相談することが有効な対策の一つであり、専門家に相談するために役立つ相談先の紹介もしました。

これらの相談先は、それぞれ異なる特徴や役割を持っていますが、共通して言えることは、介護者や要介護者の立場に立ってサポートしてくれることです。一人で悩まずに、気軽に相談してみましょう。

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