高齢者によくある4大骨折とは?手術しない場合の入院期間などを解説

2023.10.17

高齢者の骨折は、健康寿命の低下や寝たきりの原因となる深刻な問題です。高齢者には、肩、手首、太もも、脊椎の4つの骨折が特に多くみられます。

この記事では、高齢者における骨折の重要性とリスク、4大骨折の症状と治療法、骨折予防と健康維持のためにできることについて詳しく解説します。高齢者の方やご家族の方はもちろん、これから高齢者になる方や関心のある方もぜひ読んでみてください。

高齢者における骨折の重要性とリスク

高齢者は、骨密度が低下し骨が弱くなる「骨粗しょう症」を発症しやすいため、骨折のリスクが高くなります。骨折は、歩行困難や寝たきりの原因となり、健康寿命の低下につながります。

以下で、高齢者の骨折がもたらす健康への影響と予防の重要性について、詳しく解説します。

高齢者の骨折がもたらす健康への影響

高齢者の骨折は、単に骨が折れるだけではなく、様々な健康への影響をもたらします。以下に、その影響をいくつか挙げます。

  • 歩行困難や寝たきりになる:骨折した部位によっては、歩行や立ち上がりなどが困難になります。
    その結果、自分で日常生活を送れなくなったり、ベッドや車椅子に依存するようになったりします。これは、身体的にも精神的にもストレスとなります。
  • 合併症が起こる:骨折した部位が感染したり、血栓ができたりすることがあります。また、長期間の安静や入院によって、肺炎や褥瘡(床ずれ)などの合併症が起こることもあります。これらの合併症は、命に関わることもあります。
  • 骨密度がさらに低下する:骨折した部位は、しばらく運動できなくなります。その結果、骨密度がさらに低下し、再度の骨折のリスクが高まります。また、他の部位の筋力や関節の可動域も低下し、バランス感覚も悪化します。
  • 生活習慣が悪化する:骨折した部位が回復するまでには、数週間から数ヶ月かかることがあります。

予防の重要性

高齢者の骨折は、健康寿命を低下させるだけでなく、医療費や介護費などの社会的コストも高くなります。日本では、高齢者の医療費は約40兆円であり、そのうち約10%が骨折関連です。また、高齢者の介護費は約20兆円でありそのうち約30%が転倒関連です。

高齢者の骨折を予防することは、個人的にも社会的にも重要です。しかし、多くの高齢者は骨折のリスクを過小評価していることがあります。日常生活で気を付けることや適度な運動をすることで、骨折のリスクを減らしましょう。

4大骨折とは?

4大骨折とは、高齢者によくみられる4つの骨折のことを言います。それぞれの骨折は、症状や治療法が異なります。

以下で、高齢者によくみられる4つの骨折は、肩、手首、太もも、脊椎の骨折について詳しく解説します。

肩の骨折

肩の骨折は、手を高く上げる動作や、転倒時に肩を強く打ったときに起こりやすい骨折です。肩関節周囲炎や関節リウマチなどで、肩関節が変形している場合もリスクが高まります。肩の骨折では、以下のような症状があります。

  • 肩から上腕にかけて激しい痛みがある
  • 肩関節が腫れている
  • 肩関節を動かすと痛みが増す
  • 肩関節を動かせない
  • 肩関節の形が変わっている

肩の骨折の治療法は、骨折の程度や患者の年齢や健康状態によって異なります。軽度の骨折では、装具や固定で治療します。重度の骨折では、手術が必要になることもあります。手術では、骨折した骨を固定したり人工関節に置き換えたりすることがあります。

手首の骨折

手首の骨折は、手を着いたときや、転倒時に手を強く打ったときに起こりやすい骨折です。

手首は、手根骨という8つの小さな骨と、前腕の尺骨と橈骨という2つの大きな骨で構成されています。手首の骨折では、これらの骨の一部または全部が折れることがあります。手首の骨折では、以下のような症状があります。

  • 手首に激しい痛みがある
  • 手首が腫れている
  • 手首を動かすと痛みが増す
  • 手首を動かせない
  • 手首の形が変わっている

手首の骨折の治療法は、骨折の程度や患者の年齢や健康状態によって異なります。軽度の骨折では、装具や固定で治療します。重度の骨折では、手術が必要になることもあります。

太ももの骨折

太ももの骨折は、転倒時に大腿骨が折れる骨折です。大腿骨は、体で最も太くて強い骨ですが、高齢者では骨粗しょう症で弱くなっていることが多く、軽い外力でも折れることがあります。

太ももの骨折では、以下のような症状があります。

  • 大腿部に激しい痛みがある
  • 大腿部が腫れている
  • 足を動かすと痛みが増す
  • 足を動かせない
  • 足の長さや向きが変わっている

太ももの骨折は、手術が必要な骨折です。手術では、金属製のネジやプレートや釘で骨を固定したり、人工関節に置き換えたりすることがあります。手術後は、リハビリテーションを行って歩行能力を回復させる必要があります。

脊椎の骨折

脊椎の骨折は、転倒や交通事故などの強い外力で起こる骨折です。脊椎は、背中にある24個の椎体という小さな骨で構成されています。背中を支えたり、神経を保護したりする重要な役割を果たしています。

脊椎の骨折では、以下のような症状があります。

  • 背中に激しい痛みがある
  • 背中が腫れている
  • 背中を動かすと痛みが増す
  • 背中を動かせない
  • 下肢にしびれや麻痺がある

脊椎の骨折の治療法は、骨折の程度や患者の年齢や健康状態によって異なります。軽度の骨折では、装具や固定で治療します。重度の骨折では、手術が必要になることもあります。

手術しない場合の入院期間

手術しない場合は、骨折が治るまで数週間から数ヶ月の入院が必要になることがあります。入院期間は、骨折の程度や部位、患者の年齢や健康状態によって異なります。一般的には、以下のような目安があります。

  • 肩の骨折:約2週間から4週間
  • 手首の骨折:約4週間から6週間
  • 太ももの骨折:約3ヶ月から6ヶ月
  • 脊椎の骨折:約3ヶ月から12ヶ月

入院中は安静を保ち、リハビリテーションを受けます。リハビリテーションは、骨折した部位だけでなく、全身の筋力や関節の可動域を回復させることを目的としています。医師や理学療法士や作業療法士などの専門家の指導のもとで行います。

手術を回避した場合のリハビリ期間

手術を回避した場合も、リハビリテーションは必要です。リハビリテーションによって、筋力や関節の可動域を回復させ、日常生活を送れるようにしていきます。

リハビリテーションの期間は、骨折の程度や部位や患者の年齢や健康状態によって異なります。一般的には、以下のような目安があります。

  • 肩の骨折:約2ヶ月から4ヶ月
  • 手首の骨折:約2ヶ月から3ヶ月
  • 太ももの骨折:約6ヶ月から12ヶ月
  • 脊椎の骨折:約6ヶ月から24ヶ月

骨折予防と健康維持のためにできること

骨折を予防するためには、骨密度の維持やバランス感覚の向上など、早めの対策が重要です。骨折を予防することは、高齢者の健康寿命を延ばすことにもつながります。

以下で、骨折予防と健康維持のためにできることについて、具体的な方法を紹介します。日常生活で気を付けることや適度な運動をすることで、骨折のリスクを減らしましょう。

骨密度の維持

骨密度とは、骨の量や質を表す指標です。骨密度が高いほど、骨は強くて丈夫です。骨密度が低いと、骨がもろくなり軽い外力でも折れやすくなります。骨密度は、年齢とともに低下するため、骨密度を維持することは高齢者の健康寿命を延ばすことにもつながります。

健康寿命とは、自分で日常生活を送れる期間のことです。日本では、平均寿命は男性で81.41歳、女性で87.45歳ですが、健康寿命は男性で71.19歳、女性で74.21歳です。つまり、男性は平均10年以上、女性は平均13年以上も自立できない状態で生きていることになります。あなたの健康寿命を延ばすためにも、骨密度の維持に努めましょう。

禁煙と適度な飲酒

禁煙と適度な飲酒は、骨密度の維持にも影響します。

喫煙は、カルシウムの吸収を妨げたり、女性ホルモンの分泌を低下させたりして、骨密度を低下させる原因となります。飲酒は、適度であればカルシウムの吸収を促進したり、女性ホルモンの分泌を増加させたりして、骨密度を高める効果があります。しかし、飲み過ぎると逆効果になります。

禁煙と飲酒を適度にすることは、骨折予防だけでなく全身の健康にも良い影響を及ぼします。喫煙は、肺がんや心臓病などの生活習慣病のリスクを高めます。

アルコールは、飲み過ぎると肝臓や胃や膵臓などの臓器に悪影響を及ぼします。また、脳にもダメージを与えて認知機能の低下や認知症のリスクを高めてしまうので注意しましょう。

適切な運動

運動は、骨密度だけでなく、筋力や関節の可動域やバランス感覚も向上させる効果があります。歩行能力や転倒予防にも重要です。運動は、以下のようなポイントに注意して行いましょう。

  • 自分に合った強度や時間や頻度で行う:運動は、自分の体力や健康状態に合わせて行います。無理をすると逆効果になります。一般的には、週に3回以上、1回に20分以上の運動が推奨されます。
  • 様々な種類の運動を行う:運動は、荷重運動やバランス運動だけでなく、有酸素運動やストレッチングなども行います。様々な種類の運動を行うことで、全身の健康を向上させます。
  • 楽しく続ける:運動は、楽しく続けることが大切です。好きな音楽やテレビを聴きながら行ったり、友人や家族と一緒に行ったりすると良いでしょう。

また、歩く・踊る・ゴルフ・ボウリング・水泳などの趣味やレクリエーションも運動になります。

安全対策の徹底

安全対策とは、転倒や骨折を防ぐための対策です。安全対策は、以下のような方法で行います。

  • 転倒しにくい靴を履く:靴は、滑りにくくて底が平らで幅広、かかとが低いものを選びます。靴紐やベルトでしっかり固定します。
  • 部屋に手すりを付ける:部屋では、階段や廊下やトイレや風呂場などに手すりを付けます。手すりは、握りやすくて強固で高さが適切なものを選びます。
  • 床に敷物を敷かない:床に敷物を敷くと、つまづいたり滑ったりしやすくなります。敷物は、できるだけ使わないか、滑り止めを付けて固定します。
  • 照明や視力を確保する:部屋は明るくして暗いところがないようにします。また、眼鏡やコンタクトレンズなどで視力を確保します。視力が低下すると、段差や障害物に気づきにくくなります。

まとめ

高齢者の骨折は、健康寿命の低下や寝たきりの原因となる深刻な問題です。高齢者には、肩、手首、太もも、脊椎の4つの骨折が特に多くみられます。

骨折を予防するためには、骨密度の維持やバランス感覚の向上など、早めの対策が重要です。日常生活で気を付けることや適度な運動をすることで、骨折のリスクを減らしましょう。

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