高齢者の骨折は、健康寿命の低下や寝たきりの原因となる深刻な問題です。高齢者には、肩、手首、太もも、脊椎の4つの骨折が特に多くみられます。
この記事では、高齢者における骨折の重要性とリスク、4大骨折の症状と治療法、骨折予防と健康維持のためにできることについて詳しく解説します。高齢者の方やご家族の方はもちろん、これから高齢者になる方や関心のある方もぜひ読んでみてください。
目次
高齢者は、骨密度が低下し骨が弱くなる「骨粗しょう症」を発症しやすいため、骨折のリスクが高くなります。骨折は、歩行困難や寝たきりの原因となり、健康寿命の低下につながります。
以下で、高齢者の骨折がもたらす健康への影響と予防の重要性について、詳しく解説します。
高齢者の骨折は、単に骨が折れるだけではなく、様々な健康への影響をもたらします。以下に、その影響をいくつか挙げます。
高齢者の骨折は、健康寿命を低下させるだけでなく、医療費や介護費などの社会的コストも高くなります。日本では、高齢者の医療費は約40兆円であり、そのうち約10%が骨折関連です。また、高齢者の介護費は約20兆円でありそのうち約30%が転倒関連です。
高齢者の骨折を予防することは、個人的にも社会的にも重要です。しかし、多くの高齢者は骨折のリスクを過小評価していることがあります。日常生活で気を付けることや適度な運動をすることで、骨折のリスクを減らしましょう。
4大骨折とは、高齢者によくみられる4つの骨折のことを言います。それぞれの骨折は、症状や治療法が異なります。
以下で、高齢者によくみられる4つの骨折は、肩、手首、太もも、脊椎の骨折について詳しく解説します。
肩の骨折は、手を高く上げる動作や、転倒時に肩を強く打ったときに起こりやすい骨折です。肩関節周囲炎や関節リウマチなどで、肩関節が変形している場合もリスクが高まります。肩の骨折では、以下のような症状があります。
肩の骨折の治療法は、骨折の程度や患者の年齢や健康状態によって異なります。軽度の骨折では、装具や固定で治療します。重度の骨折では、手術が必要になることもあります。手術では、骨折した骨を固定したり人工関節に置き換えたりすることがあります。
手首の骨折は、手を着いたときや、転倒時に手を強く打ったときに起こりやすい骨折です。
手首は、手根骨という8つの小さな骨と、前腕の尺骨と橈骨という2つの大きな骨で構成されています。手首の骨折では、これらの骨の一部または全部が折れることがあります。手首の骨折では、以下のような症状があります。
手首の骨折の治療法は、骨折の程度や患者の年齢や健康状態によって異なります。軽度の骨折では、装具や固定で治療します。重度の骨折では、手術が必要になることもあります。
太ももの骨折は、転倒時に大腿骨が折れる骨折です。大腿骨は、体で最も太くて強い骨ですが、高齢者では骨粗しょう症で弱くなっていることが多く、軽い外力でも折れることがあります。
太ももの骨折では、以下のような症状があります。
太ももの骨折は、手術が必要な骨折です。手術では、金属製のネジやプレートや釘で骨を固定したり、人工関節に置き換えたりすることがあります。手術後は、リハビリテーションを行って歩行能力を回復させる必要があります。
脊椎の骨折は、転倒や交通事故などの強い外力で起こる骨折です。脊椎は、背中にある24個の椎体という小さな骨で構成されています。背中を支えたり、神経を保護したりする重要な役割を果たしています。
脊椎の骨折では、以下のような症状があります。
脊椎の骨折の治療法は、骨折の程度や患者の年齢や健康状態によって異なります。軽度の骨折では、装具や固定で治療します。重度の骨折では、手術が必要になることもあります。
手術しない場合は、骨折が治るまで数週間から数ヶ月の入院が必要になることがあります。入院期間は、骨折の程度や部位、患者の年齢や健康状態によって異なります。一般的には、以下のような目安があります。
入院中は安静を保ち、リハビリテーションを受けます。リハビリテーションは、骨折した部位だけでなく、全身の筋力や関節の可動域を回復させることを目的としています。医師や理学療法士や作業療法士などの専門家の指導のもとで行います。
手術を回避した場合も、リハビリテーションは必要です。リハビリテーションによって、筋力や関節の可動域を回復させ、日常生活を送れるようにしていきます。
リハビリテーションの期間は、骨折の程度や部位や患者の年齢や健康状態によって異なります。一般的には、以下のような目安があります。
骨折を予防するためには、骨密度の維持やバランス感覚の向上など、早めの対策が重要です。骨折を予防することは、高齢者の健康寿命を延ばすことにもつながります。
以下で、骨折予防と健康維持のためにできることについて、具体的な方法を紹介します。日常生活で気を付けることや適度な運動をすることで、骨折のリスクを減らしましょう。
骨密度とは、骨の量や質を表す指標です。骨密度が高いほど、骨は強くて丈夫です。骨密度が低いと、骨がもろくなり軽い外力でも折れやすくなります。骨密度は、年齢とともに低下するため、骨密度を維持することは高齢者の健康寿命を延ばすことにもつながります。
健康寿命とは、自分で日常生活を送れる期間のことです。日本では、平均寿命は男性で81.41歳、女性で87.45歳ですが、健康寿命は男性で71.19歳、女性で74.21歳です。つまり、男性は平均10年以上、女性は平均13年以上も自立できない状態で生きていることになります。あなたの健康寿命を延ばすためにも、骨密度の維持に努めましょう。
禁煙と適度な飲酒は、骨密度の維持にも影響します。
喫煙は、カルシウムの吸収を妨げたり、女性ホルモンの分泌を低下させたりして、骨密度を低下させる原因となります。飲酒は、適度であればカルシウムの吸収を促進したり、女性ホルモンの分泌を増加させたりして、骨密度を高める効果があります。しかし、飲み過ぎると逆効果になります。
禁煙と飲酒を適度にすることは、骨折予防だけでなく全身の健康にも良い影響を及ぼします。喫煙は、肺がんや心臓病などの生活習慣病のリスクを高めます。
アルコールは、飲み過ぎると肝臓や胃や膵臓などの臓器に悪影響を及ぼします。また、脳にもダメージを与えて認知機能の低下や認知症のリスクを高めてしまうので注意しましょう。
運動は、骨密度だけでなく、筋力や関節の可動域やバランス感覚も向上させる効果があります。歩行能力や転倒予防にも重要です。運動は、以下のようなポイントに注意して行いましょう。
また、歩く・踊る・ゴルフ・ボウリング・水泳などの趣味やレクリエーションも運動になります。
安全対策とは、転倒や骨折を防ぐための対策です。安全対策は、以下のような方法で行います。
高齢者の骨折は、健康寿命の低下や寝たきりの原因となる深刻な問題です。高齢者には、肩、手首、太もも、脊椎の4つの骨折が特に多くみられます。
骨折を予防するためには、骨密度の維持やバランス感覚の向上など、早めの対策が重要です。日常生活で気を付けることや適度な運動をすることで、骨折のリスクを減らしましょう。