介護施設で勤務するスタッフは「利用者がどの程度のことができるのか?」を把握する必要があります。介助に入らなくてはいけない部分とご自身でできる部分を把握して、個別に合わせたケアを提供します。
利用者様が日常動作をどの程度出来るのかを示したものがADLです。この記事では、ADLの評価方法と実施手順やポイントについて解説します。
目次
ADLとは日常生活動作のことです。日常生活を送るのに最低限の動作ができるかを示します。
起き上がり・食事・排泄・移動・更衣・入浴・整容など様々な項目で日常生活動作があり、基本的日常動作のBADLと、手段的日常動作のIADLに分かれます。
また、できるADLとしているADLに分かれて評価がされます。
ADL評価は利用者の介護が必要なレベルを知るために必ず必要なものです。また、ADLを把握することで、介護・看護・リハビリで一人一人に合わせた介助を提供でき、自立支援にもつながります。
この章では、ADL評価の目的について解説します。
ADL評価の目的は「利用者様にどのような介護が必要なのか」「利用者様は生活動作で何ができるのか?」また、出来ることに関してはどの程度できて、どのようなときに介助が必要なのかを知ることが目的です。
また、個別ケアには他職種連携が重要で、本人のADLを介護・看護・リハ職で共有して、自立支援のために連携しケアを提供することも目的です。また、治療効果の判定や治療計画の立案など、主治医の意見も聞いてケアを提供できます。
ADLの評価方法には3種類あります。それぞれの評価方法に異なった特徴があり、評価する項目も違います。この章では、3つの評価方法の違いについて解説します。
基本的な生活動作について10項目に絞り評価をします。食事・排泄更衣・整容・移動・歩行・入浴の項目において、不能から自立までの4段階に分けて評価します。
採点方法においては、20点満点と100点満点があり、得点が高いほど自立度が高いという評価になります。採点する項目が多いので、「どの程度回復したのか?」が分かりやすい評価方法です。
基本となる入浴・更衣・トイレの使用・移動・排尿排便・食事の動作6項目を採点します。
自立度によってA~Gまでの7段階評価をして、判定を行います。難しい項目を入浴→更衣トイレ→移乗としていて、排泄と食事を優しい項目として位置づけています。
各項目では、自立・介助の2段階で評価されて、総合的な評価で自立と判定した数に応じてA~G評価をします。
運動ADL13項目と、認知ADL5項目によって構成されている評価方法です。各項目において全介助から自立までの7点を評価をします。世界中で採用されているADLの評価方法で、日本では、リハビリテーション病棟でよく行われているADL評価方法です。
検査項目が多く認知ADLについての評価もできるので、利用者の現状を把握するだけでなく、リハビリの成果を評価ができるADL評価方法です。
ADLが日常的によく行う動作に対して、IADLは複雑な応用動作のことです。買い物や公共交通機関を利用できるかだけでなく【判断や意思決定ができるか】が検査項目になります。
料理や服薬・金銭管理などもIADLに含まれる検査項目なので、自立して生活していくために必要な動作が含まれます。また、生活の質を保つQOLにもつながるので、健康で自分らしい生活を送るためにIADLを維持していくことが重要です。
IADLは【項目の動作をどのようなレベルでできるのか?】を評価します。電話の使用・買い物・食事の準備・服薬管理・金銭管理・家事・洗濯・移動の8項目を採点します。また、その項目をさらに詳しく評価します。
例:買い物
例:食事準備
ADL評価は、施設で勤務する介護スタッフ・看護スタッフ・リハビリスタッフが行います。利用者様が日常動作がどれだけできるのか、専門職員の目線で評価することで、それぞれの専門スタッフがどのようなサービスを提供すればいいのか把握するためです。
この章では、ADLの評価方法と実施ポイントについて解説します。
ADL評価の方法はFIMです。FIMは、利用者様がしている行動についてADL評価をします。
運動項目と認知項目の2種類に分類されて、満点であれば126点となります。点数が高いほど利用者様の自立度は高く評価されます。
ADL評価は、信頼性と妥当性が必要になります。利用者様の変化などを確認するためにも正確に評価しましょう。
ADL評価をするときに考えることは、以下の通りです。
この記事の内容をまとめます。
ADLとは、利用者様が行っている日常生活動作のことです。IADLはADLより細かく、買い物や交通機関の利用だけでなく、「自分で判断できるか?」が検査項目に入ります。
ADLの評価は、介護施設の介護・看護リハビリスタッフが専門的視点で評価し、個別ケアにつなげます。ADL評価には、信用性と妥当性が重要になります。正確に評価して、利用者様の個別ケアにつなげましょう。