介護の現場におけるヒヤリハットとは?事例や対策を簡単に解説!

2023.10.20

介護の現場では、様々なシーンで【ヒヤリ】とするような出来事があります。ヒヤリが積み重なると、大きな事故につながるとして、小さい気づきから大きな事故を防ぐという意味で【ヒヤリハット】という報告書が介護施設にはあります。

この記事では、ヒヤリハットの事例や対策について解説します。

介護の現場におけるヒヤリハットとは?

重大な事故や災害の一歩手前の出来事のことです。事故や災害を防ぐための最大の機会であり、介護では、介護方法の見直しや注意しなくてはいけないことを再度周知する為に使われます。

ヒヤリハットの定義

ヒヤリハットには、重要性を裏付けるために定義があります。「1件の重大事故の背後には、29件の軽微な事故があり、さらにその背後には300件の異常が存在する」とされています。介護業界だけでなく、企業や医療機関、官公庁などでも活用されているのが【ハインリッヒの法則】です。

ヒヤリハットが多ければ、重大な事故に繋がるリスクが高くなるとされ、ヒヤリハットの後に再発防止に努めることが重要となります。また、事業所内でもしっかりと起きた内容を周知することが再発防止のために重要になります。

ヒヤリハットの語源

思いがけないところで【ヒヤリ】としたり、事故寸前のミスに【ハッ】とすることが語源です。事故が発生する前には、その前に多くのヒヤリハットが存在しています。

職場や作業所内で、個人の感じたヒヤリハットを共有することで、今後の事故防止に繋がるのです。危険感受性・安全衛生意識を高めることが目的とされています。事例を早期に見つけて、大きな事故を予防することに努めましょう。

ヒヤリハットが起きる要因とは?

介護の現場での【ヒヤリハット】の要因は、施設利用者・施設のスタッフや家族・施設の環境や整備と3パターンに分けられます。

この章では、様々な観点から起きる【ヒヤリハット】について解説します。

施設利用者

最初に挙げるのは、利用者のADLによるヒヤリハットです。

足が不自由な利用者、認知症の利用者、歩行が一人で困難な利用者が転倒してしまうことです。利用者のADLをきちんと把握することも大事ですが、日によって立ち上がりや歩行が困難だったり日々の状態観察も重要です。

「いつもと違うな?」と感じたら他スタッフと共有して見守りや一部介助などを行いましょう。日々の状態観察が一番の事故予防になります。

施設のスタッフや家族

介護の現場は人手不足が深刻化してます。ヒヤリハットの原因の一つとして、スタッフの人員不足もあります。人手が足りないため、危険に気づくことができないと当然事故につながります。

また、スタッフの焦っていた・疲労による注意力の低下が原因のことも。しっかり休憩を取りながら、注意が散漫しないよう業務にあたりましょう。

事例として、面会に来た家族が食事やベッドに寝かせる介助を行うときにもヒヤリハットの原因になります。プロである私たちが交代するように声をかけましょう。

施設の環境や設備

施設の設備も新しくしていく必要があります。設備の老朽化が原因で起きる事故も少なくないので、メンテナンスや新しい機種の導入を検討し、設備によるヒヤリハットを少なくしましょう。

介護用具の使用で、車いすに傾いた体が引っかかってまう・フットレストに足を乗せずに走行していてずり落ちてしまうなど、車いす走行中の事故も多くあります。

車椅子が利用者様の手足の位置や体形に合っているかなど、確認も必要です。

シーン別ヒヤリハットの事例

この章では、それぞれのシーン別のヒヤリハットを解説します。食事・入浴・移動・着替えなど様々な場面でのヒヤリハットがあります。原因や対策についても解説するので参考にしてください。

食事

事例 他の人の食事を食べてしまう。
原因 利用者が認知症の場合、隣の人の食事に手を伸ばしてしまうことがあります。
新人職員の場合、顔と名前が一致せず違う人に食事を配膳してしまうことも考えられます。
対策 認知症の利用者が手を伸ばさないように見守りを徹底する。食事を早めに配り自分の食事に集中してもらう。
配膳するときは名前の確認を徹底する、またほかの職員にも合っているか確認する。

入浴

床が滑りやすくなります。普段は見守りの必要がない方でも徹底しましょう。入浴前には必ずバイタル測定をして、その日体調がすぐれない利用者は清拭で対応しましょう。

事例 車いすからシャワーチェアーに移乗するときに尻もちをつく。
対策 立位保持が困難な方は、2人介助で対応しましょう。

掴まって立位保持ができるか、普段の生活のトイレや他の入浴日の様子を把握してから介助を行うことも重要です。

移動

施設内だけでなく屋外でイベントや外食に行くときは、でこぼこした道や段差、ちょっとした坂道で操作を誤ると事故のもとになります。

事例 病院受診の帰り道、病院入り口のスロープで車いすの介助をしたところ、利用者が前のめりになり車いすから落ちてしまった。
原因 介護者が坂道での車いす操作を知らなかったことが原因。研修やサポートの介護士が必要。
対策 介護者は車いすの操作やたたみ方、リフトの操作などを把握することが必要になります。坂道を降りるとき前進してしまうと転倒してしまう恐れがあります。後ろ向きで身体を前傾させ、一歩ずつゆっくりと下ります。ブレーキを軽くかけてもよいでしょう。

着替え

朝の起床介助など急いでいるときには、腕を強く引っ張ってしまう傾向にあります。皮下出血や表皮剝離の原因になるので、着脱の方法に気をつけましょう

事例 ズボンを立ってはいているときにバランスが取れず後ろに転倒する。
原因 掴まる場所がなかったことが考えられる。起床時だと体が思うように動かないかもしれないので注意が必要。
対策 見守りをするか、座って介護者が足を通してからズボンをはく。

服薬

事例 違う利用者様の薬を間違って飲ませてしまう。
原因 スタッフが焦っていて名前の確認をしなかった。
対策 同じ名字の方や似た顔の人に間違って配薬してしまうことがあります。薬を配薬するときには、名前の確認をダブルチェック、スタッフ2名で行うことや、飲ませたときに声を掛け合うことが必要になります。

床に薬を落としてしまうことも考えられるので、飲み終えるまで見守りが必要になります。

ヒヤリハットの対策

ヒヤリハットがあった時には対策を考えます。対策では、「次に同じような出来事が施設内で起こらないようにどうすればいいのか?」を考えることが重要です。

きちんとした対策をして、事故や怪我を防ぐことが大事になります。

報告書を書く

ヒヤリハットがあった時には必ず報告書を書いて、「こんなことが起きるから皆で注意して業務にあたろう。」という意識付けをします。

起きた内容を細かく書き、その後の利用者様の様子やバイタル測定の結果、痛みの訴えや傷があるかを確認して、報告書を生活相談員に提出します。

この報告書では、5W1Hに基づき、第三者が見ても分かりやすい正確な情報を記入しましょう。施設長他、監査の時には役所の職員、場合によっては利用者様の家族がご覧になる書類ですので、心配なときにはフロアのリーダーに添削してもらいましょう。

事例について検証する

ヒヤリハットがあった後には事例についての検証や、原因を考えて対策をする必要があります。上記で原因と対策を考えましたが、事故がなぜ起きてしまったのかを考えて原因を調査することが重要です。

環境や設備が問題だった場合、施設内の環境について考える機会にもなります。介護事故を防ぐために検証をきちんと行いましょう。

まとめ

ヒヤリハットとは、業務を行う中で【ヒヤリ】としたり【ハッ】としたりするときに書く報告書です。

大きな事故にはならないですが、一歩間違えれば怪我や重大なミスにつながることを【ヒヤリハット】といいます。様々なシーンで考えられる事故を防ぐために、施設全体で報告書を活用し周知することが大切です。

また、ヒヤリハットの後は、対策や予防策を考えて同じようなことが起きないようにすることで、事故のない安全な介護が提供できる施設を目指します。

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