廃用症候群からの復活はむずかしい?原因や予防法について解説

2023.10.27

廃用症候群とは、長期間の安静状態により身体や精神に起こる症状の総称で、発症すると復活は難しいのが現状です。

この記事では、原因や予防法などを詳しくまとめました。また、廃用症候群からの復活が難しい理由も解説します

高齢者は特に注意が必要な廃用症候群。予防には、周囲の環境も大切です。介護者や家族も原因や予防法を知り、未然に防げるようサポートしましょう。

廃用症候群とは?

廃用症候群とは、病気や怪我などにより長期間安静にすることで、身体や精神に起こる症状の総称です。

寝たきりなどにより活動量が減ると、筋肉や関節がうまく動かなくなります。また、身体を動かさないと心臓や肺など臓器の働きも低下します。筋肉や関節、臓器の働きが弱まった結果、廃用症候群を引き起こすのです。

子どもや若い方が発症するケースもありますが、高齢者は特に注意が必要です。加齢により身体機能が低下している高齢者は、短期間の安静状態でも廃用症候群を起こす可能性があります。

廃用症候群の症状

廃用症候群は、身体面や精神面で様々な症状が現れます。代表的な症状の例は以下の通りです。

  • 筋力低下:活動量の低下により筋肉が痩せたり萎縮したりし、筋力が低下します。
  • 関節が動かしにくくなる:寝たきりでいると関節が硬くなり、動かせる幅が狭くなります。
  • 起立性低血圧:横になってばかりいると血圧のコントロール力が低下。起きたり立ち上がったりすると急激に血圧が下がる、起立性低血圧を起こします。
  • 誤嚥性肺炎:食物や唾液などが誤って気管や肺に入り、肺炎を引き起こします。
  • 褥瘡:同じ姿勢で寝ていると皮膚を圧迫し血流が悪化。傷ができやすくなり、悪化すると褥瘡になります。
  • 認知症や抑うつ状態:入院などによる急激な変化についていけず、抑うつ状態や認知症が進行する場合があります。
  • 睡眠障害:自律神経の乱れなどによる不眠症や過眠症。

また、長時間安静状態になることで、筋肉以外の内臓にも影響を及ぼします。ますます活動が困難となり、廃用症候群が進行してしまうのです。

廃用症候群になる原因とは?

廃用症候群になる原因は、安静状態の長期化や筋力の低下などです。

この章では、4つの原因について詳しく紹介します。高齢者は、短期間の安静でも廃用症候群になる可能性があり、注意が必要です。原因を知り、予防に役立てましょう。

安静状態の長期化

廃用症候群になる原因の一つに、安静状態の長期化があります。病気や怪我をして入院すると、手術や治療のために安静状態が続く場合があります。特に骨折の場合はギプスによる固定などで、動きが制限されがちです。

また、高齢者は怪我や病気になりやすく、回復力が落ちている場合も多いため安静状態が長期化しやすくなります。ベッドで寝ている時間が長くなると、活動量が著しく低下し筋肉量が減少し、関節の動きや臓器の働きも悪くなり廃用症候群を引き起こします

必要以上の安静は避け、積極的にリハビリに参加するなどして体を動かしましょう。

運動量の減少

運動量の減少も、廃用症候群になる原因です。病気や怪我によりベッドや車いす上で動かない生活が続くと、運動量が著しく減少します。

また、麻痺や関節痛、加齢による活動性の低下などにも注意が必要です。体を動かしにくいと活動意欲が沸きにくく、外出の機会も減ってしまいがちです。動かなければ筋力が落ち、ますます活動するのが億劫になってしまいます。

運動量の減少は、脳の働きや精神面にも影響を及ぼす恐れ有り。認知症やうつ状態などを引き起こす可能性があるため、注意しましょう。

筋力の低下

廃用症候群になる原因の3つ目は、筋力の低下です。長期間に渡りベッドで一日の大半を過ごす「寝たきり状態」になると、筋力が著しく低下しやすくなります。

高齢者は、安静状態が1週間続くと筋力が10~20%減少するとも言われており、特に注意が必要です。筋力低下はさらなる活動量の減少を招きます。臓器の機能低下や認知症の進行などといった廃用症候群の症状に繋がる恐れがあります。

また、活動量の減少は食欲不振になりやすく、栄養状態も悪化しがちです。骨や筋肉の破壊も起きやすくなります。筋力低下を防ぐために、普段から体を動かすようにしましょう。

周囲の環境

周囲の環境に問題があると、廃用症候群になる原因になってしまいます。怪我や病気をしているからといって、必要以上に介護者が手を貸してしまうのはよくありません。本人の活動意欲が減少してしまいます。

また、介護の人手が足りない場合も要注意です。「歩きたいので少し手を貸して欲しい」と思っても頼めず、活動する機会が失われます。高齢者の介護をする場合は、これらのことを意識する必要があります。

また、階段や段差が多い建物なども、外出や活動を制限する環境の一つです。生活環境の見直しも行いましょう。

廃用症候群からの復活は難しいのが現状

廃用症候群からの復活は難しいのが現状です。廃用症候群は明確な診断基準は無く、直接的な治療は難しいとされています。また、状態回復には廃用症候群に陥っていた期間の数倍の時間が必要と言われているのです。

症状が進行すると、筋力や身体機能が低下する「サルコペニア」の発症にも繋がる可能性があり、ますます復活は難しくなります。

上記でお伝えしたように、廃用症候群からの復活は困難です。そのため、長期間の安静を避け、予防に努めることが重要と言えるでしょう。

廃用症候群の予防法

廃用症候群の予防法には、リハビリや薬物療法などがあります。この章では、予防法3つを詳しく紹介します。

廃用症候群からの復活は難しいのが現状です。介護を受ける高齢者は身体機能が低下しているため、発症のリスクも上がります。早いうちから予防法を取り入れ、廃用症候群を回避しましょう

適度な運動の機会を設ける

廃用症候群を予防するためには、適度な運動の機会を設けましょう。体を動かさないと関節が固まったり、筋肉が衰えたりします。腰痛や関節痛、心肺機能の低下などを招き、ますます活動量が減少し廃用症候群に繋がってしまいます。ラジオ体操や軽めのヨガ、ストレッチなどを毎日の習慣として取り入れましょう。

家族や友人とウォーキングをするなど、誰かと楽しく運動するのもおすすめです。安静が必要な場合は、ベッド上で足首や手首を回したり、足を上げ下げするだけでも効果があります

リハビリをする

リハビリも、廃用症候群の予防に効果的です。病気や怪我による手術後や治療中に、体を動かさない日が続くほど筋力は低下します。廃用症候群を予防するためには、早期からリハビリを開始し筋力を維持しましょう。しかし、無理なリハビリは危険です。医師や理学療法士などに相談しながら、体調や症状に合わせて行います。

リハビリは、本人の意欲が無くては続きません。モチベーションを保てるよう、介護者や家族など周囲からのサポートが必要です。一緒にウォーキングや体操に取り組む、目的や目標を考えるなど、意欲がわくよう手助けしましょう。

薬物療法

廃用症候群の予防法に、薬物療法があります。廃用症候群は、症状によっては薬物療法が有効と判断される場合があります。例えば、以下のような症状です。

  • 心機能低下
  • 関節痛
  • 精神障害
  • 誤嚥性肺炎

それぞれの症状に合わせた薬を医師が判断し、処方します。早期に薬物療法を行い有効であれば、廃用症候群の予防に繋がるのです。ただし、自己判断で市販薬を使用するのは危険です。症状が悪化する恐れもあります。必ず医療機関を受診し、薬を処方してもらいましょう。

まとめ

廃用症候群とは、病気や怪我などにより長期間安静にすることで、身体や精神に起こる症状の総称です。症状は筋力低下や関節が動かしにくくなる、認知症や抑うつ状態など様々です。

廃用症候群になる原因は、安静状態の長期化や運動量の減少などがあります。廃用症候群からの復活には、症状に陥っていた期間の数倍の時間が必要と言われています。復活は難しいとされるため、予防が重要です。リハビリや薬物療法など、適切な予防法を取り入れましょう。

まずは日ごろの運動習慣が、廃用症候群予防の第一歩となります。ぜひ今日からでも取り入れてみてください。

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