全身清拭ってなに?スムーズに行う手順とコツをわかりやすく解説

2023.11.13

入浴ができない時でも体をきれいにする必要があります。足浴や中間浴・シャワー浴などの入浴ができない場合に、居室で体をきれいにする介助が清拭です。入浴の介助よりもプライバシーの保護や体温・力加減など、注意点の多い介助です。

この記事では、全身清拭の手順や注意点だけでなく効果や目的についても解説します。

全身清拭とは?

入浴ができない場合に、温かいタオルで体の汚れをきれいにふき取る行為です。体調が悪く入浴ができないときに行います。

この章では、全身清拭を行う目的・効果について解説をします。

全身清拭の目的

病気やケガが原因で入浴ができないときに全身を清潔に保つこと・皮膚感染症、尿路感染症を防ぐために行います。呼吸や血液循環に影響が少ないので、入浴の負担が大きい方には入浴の代わりに全身清拭をする場合もあります。

全身をきれいにするだけでなく、皮膚の状態・処置を行った箇所の状態確認をする機会です。介護・看護職員が協力し、ボディチェックを欠かさず行いましょう。

全身清拭の効果

血液循環を良くする効果:温熱で皮膚を刺激することで皮膚音の上昇・皮膚に流れる血液を多くする効果があります。
床ずれ・拘縮予防:血液循環を促進して床ずれの予防につながります。寝たきりで入浴ができない方には必ず行いましょう。手足の関節を動かすので、拘縮の予防や便秘の予防にも繋がります。
リラックス効果:血液循環・新陳代謝が良くなることでリラックス効果・安眠効果があります。また、体がさっぱりすることでリフレッシュ効果も得られるでしょう。

全身清拭の手順

全身清拭は、上半身から順に顔から足先までを清拭します。この章では、全身清拭の事前準備と手順について解説します。

全身清拭の前の準備

清拭を行う前にきちんと準備を整えてから始めましょう。清拭中に忘れ物に気付いて物品を取りに行くことがあると、介助中に利用者から離れることになってしまいます。利用者の羞恥心保護への配慮のためにも、準備物をきちんと揃えてから清拭を行いましょう。

準備物には下記のものがあります。

  • バスタオル
  • 清拭用タオル・フェイスタオル
  • ぬるま湯が入った洗面器・陰洗ボトル
  • 石けん
  • エプロン・ビニール手袋
  • 着替え
  • 保湿剤・塗り薬

顔・耳・首を拭く

フェイスタオルを使用して顔・耳・首を拭きます。

  1. おでこからこめかみ
  2. 目頭から目尻
  3. ほほから広角
  4. 顎から首

このように上から下に拭いていくことが基本です。

目ヤニなどの汚れがきちんと拭き取れるようにしましょう。男性の場合髭剃りもこの時に行い、清潔に保ちます。

手・腕を拭く

肩・手首から腕の付け根に向けて清拭を行います。

指の間や脇の下など洗いづらい箇所も念入りに洗いましょう。拘縮している方は手のひらもきちんと開いてキレイに清拭しましょう。また、心臓から遠い箇所から進めましょう

  1. 指先から手のひら
  2. 手首から肘
  3. 肘の内側は円を描くように
  4. 肘から脇の下の順で清拭を行います。

自分でできる利用者様には自分で清拭をしてもらいましょう。

胸・お腹を拭く

続いて胸・おなかの清拭を行います。

お腹や胸は温度を感じやすいので、タオルの温度を確認しながら清拭をしましょう。羞恥心保護のため同性の職員が行うことが望ましいです。手足が冷えないようにバスタオルをかけることも大事です。

  1. 鎖骨の上、下を拭きます。
  2. 円を描くように胸から脇に向けて拭きます。女性は乳房の下に汚れが溜まりやすくなるので忘れずに拭きましょう。
  3. お腹は「の」を描くように拭きます。

背中・腰・おしりを拭く

背中は横になっていただき腰から肩に向けて拭きます。かゆいところがある方もいると思いますので、程よく力を入れて声掛けをしながら行いましょう。

ボディチェックも兼ねていますので、あざや傷がないかをきちんと確かめます。ベットから落ちないように柵を持って体勢を維持してもらいましょう。

お尻は外から内に向けて拭きます。デリケートな場所なので、ご自身で拭いてもらえる方は自分で行ってもらいましょう。
オムツは新しくあて直して、さっぱりした状態で清拭を終えます。

足全体を拭く

足を支えて、足先から足の付け根に向けて清拭を行います。指の間やひざの後ろ・足の甲には汚れがたまりやすいので良く拭き、かかとは褥瘡ができやすいので優しく行います。

足が乾燥しないように保湿剤を使用しケアしましょう。上半身は上着を着ていただき寒くならないようにします。

陰部を拭く

新しいタオルを使い清拭を行います。可能な限り自分で拭いてもらいましょう。男女によって手順が異なります。

≺男性≻
陰部・陰嚢の順で拭きます。
≺女性≻
恥骨から肛門へ向けて一方向に拭きます。

衣類を着た後で手足の爪切りや髭剃りを行いましょう。

全身清拭の注意点

全身清拭をするときには、注意する点がいくつかあります。プライバシー保護や力加減・清拭を行う時間に気を配り、体が冷めないように実施しましょう。

ここでは全身清拭の注意点について解説します。胸や臀部を清拭するとき以外は、バスタオルを使用して体を保護しましょう。できる部分は自分でやってもらうこともプライバシー保護になります。

プライバシーに配慮する

清拭をするときには、カーテンや仕切りを使用してプライバシーを保護します。個室の方でも、清拭を行うときはカーテンや扉で外部から見えないように配慮することが大切です。

もし準備物を忘れて部屋を離れる際には、カーテンをきちんと閉めて寒くないように布団で全身を隠しましょう。

力加減や体調に注意する

全身清拭をする際には、力加減やバイタルチェックも欠かさず行いましょう。力加減が強いと体にあざができてしまう原因になります。また、処置をしている部分を強く拭いてしまうと、状態が悪化してしまうことになりますので、ちょうどいい力加減で行えるように「力加減はいかがですか?」と利用者様に確認しながら行います。

暑さ・寒さでの血圧の変動が多く、体力も消耗します。必ず清拭の前にはバイタルチェックを行いましょう。

食前・食後は避ける

食前・食後に清拭を行うと、血行が良くなることで血糖値や血圧の変動が激しくなります。食事前後から1時間ほどが、清拭をするタイミングのベストです。

清拭の途中で体調が悪くなることもありますので、体調の確認を必ず行いながら清拭をすることで、急変にもいち早く気付くこともあります。

身体が冷えないように配慮する

身体が冷えてしまうことで、ヒートショックによる血圧の変動があり急変が起きることもあります。入浴時と同じで、エアコンで室内の温度を調整しながら行いましょう。

また、清拭タオルで拭くときには、熱くないか、冷たくないか利用者に確認をしながら行いましょう。バスタオルや布団で温かくすることも体が冷めないために必要です。

まとめ

清拭の目的は、入浴が困難な方が体を清潔に保つために、体全身を拭く介護です。

血液循環を良くする効果や床ずれ・褥瘡の予防・リラックス効果があります。それだけではなく、前回処置をした箇所の確認と傷やアザがないかの確認も必要です。ボディチェックの一環として行うケアですので看護や医師と連携して行いましょう。

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