口腔内の清潔保持や、口腔機能の維持・向上などのために行う口腔ケア。医療や介護の現場では欠かせません。
この記事では、介護における重要性や方法など、口腔ケアについて詳しくまとめました。必要なケアグッズも紹介いたします。高齢者の健康やQOL(生活の質)にも関わります。目的や注意点を理解し、正しい方法で行いましょう。
目次
口腔ケアとは、口腔内の清潔保持や、口腔機能の維持・回復などを目的として行うケアの総称です。全身の健康やQOLの向上・維持にも効果があります。口腔ケアの種類は、下記の2つです。
高齢者が健康的な生活を送るためには、口腔ケアが欠かせません。介護職員だけでなく、歯科医や専門家による検診や口腔ケアも重要です。
口腔ケアは口腔内を清潔にするだけでなく、口腔機能の維持・向上や感染予防なども目的として行います。
この章では、口腔ケアの目的3つを詳しく紹介します。口腔ケアは、心身の健康に繋がります。目的をしっかりと理解して取り組むようにしましょう。
口腔ケアの目的1つ目は、口腔内を清潔にすることです。口腔ケアは口腔内の細菌を減少させるため、虫歯や歯周病の予防に繋がります。歯周病は、悪化すれば歯が抜ける可能性もあり危険です。口腔内が清潔になれば、悩みとなる口臭も軽減できます。他者との会話を楽しむことができ、生活に楽しみが持てるのです。
また、舌が汚れていると味覚を感じにくくなります。口腔ケアでは歯や義歯だけでなく、舌も清潔にしてください。味を感じやすくなり、食事を美味しく食べられます。口腔ケアは口腔内を清潔に保ち、QOLの向上にも役立つのです。
口腔ケアの目的2つ目は、口腔機能の維持・向上です。
虫歯や歯周病になり歯を失うと、食べ物を噛みにくくなったり会話がしにくくなったりします。悪化すれば、栄養状態の低下や社会との関わり不足を招きかねません。口腔ケアで口腔内を清潔にすることで、虫歯や歯周病を予防します。
口臭などの悩みも解消され、「話す」「食べる」という口腔機能の維持・向上に繋がるのです。また、唾液腺マッサージや口腔体操を食前に行うと、口の動きが良くなり、唾液の分泌も促進。食事に欠かせない咀嚼(食べ物を噛む力)や嚥下(飲み込む力)能力が向上します。
口腔ケアの目的3つ目は、感染予防です。口腔内の細菌は、誤嚥性肺炎を引き起こす恐れがあります。誤嚥性肺炎とは、唾液や食べ物が誤って気道に入った際、細菌が肺まで入り発症する肺炎です。寝たきり状態の高齢者は、発症リスクが高いとされています。
口腔ケアは、口腔内の細菌を減少させる働きがあり、誤嚥性肺炎の予防に効果的です。また、歯周病も口腔ケアで予防できます。歯周病菌は血液や唾液で全身に運ばれると、動脈硬化や心筋梗塞などを引き起こす恐れがあり、注意が必要です。
口腔ケアは、感染を予防し様々な病気の発症リスクを下げる働きがあるのです。
介護では、高齢者の健康状態の維持やQOL向上のために、口腔ケアが重要視されています。口腔内の清潔は、全身の健康状態に繋がっています。口腔ケアによって歯周病菌を減らせば、誤嚥性肺炎や糖尿病、脳梗塞などの予防に効果的です。特に誤嚥性肺炎は、高齢者の死亡者数が増加傾向にあり注意が必要です。
口腔体操などで口の動きが良くなると、脳へ刺激が送られ認知症予防にも繋がります。また、口腔ケアは高齢者のQOL向上にも効果的です。口臭や味覚障害といった悩みの解消や、咀嚼や嚥下能力の向上は、他者との会話や食事の時間を楽しくします。
介護が必要な高齢者は、自分で歯磨きやうがいが難しい方もいます。介護や医療による適切な口腔ケアの提供が重要と言えるでしょう。
口腔ケアは、うがいや歯磨きだけではありません。義歯の掃除や唾液腺のマッサージなども行います。
ここからは、口腔ケアのやり方や必要なケア用品を詳しく紹介します高齢者は、ご自分でケアをするのが難しい場合があります。介護者が不足したケアを補えるよう、方法を把握しておきましょう。マニュアルにまとめるのもおすすめです。
口腔ケアを始める前に、ケア用品を準備しておくとスムーズに短時間でケアできます。必要なものは以下の通りです。
最初にうがいをして、口腔内の食べかすなどを出します。高齢者の口腔内は乾燥しがちです。乾いた粘膜は傷つきやすいため、そのまま口腔ケアを始めると危険です。うがいは、食べかすの除去以外に口腔内を潤す効果もあります。
また、左右の頬を膨らまし、しっかりと動かしながらうがいをしましょう。唇や舌、頬の体操になります。もしも誤嚥の危険性がありうがいが出来ない場合は、無理に行わなくて大丈夫です。口腔ケア用シートやガーゼで、口腔内を湿らせましょう。
うがいが終わったら、歯磨きをしましょう。自分でできる方は、できるだけ自力で磨けるようサポートしましょう。できない動きだけ支援するよう心がけてください。肘を上げていられるよう支えたり、磨きやすい歯ブラシを選んだりします。
磨く際に力が入りすぎると、歯や歯茎を傷つける恐れがあります。高齢者がペンを持つように歯ブラシを持てるよう、支援してください。介護者は、磨き残しが無いか必ず確認しましょう。仕上げ磨きが必要な場合は、頬や唇を手指で広げて汚れを確認しながら行います。
最後にジェルなどの保湿剤を、口腔粘膜に薄く塗布してください。
歯だけでなく、舌も掃除して綺麗にしましょう。舌には、舌苔(ぜったい)という白い苔状の汚れがこびりつきます。舌苔は、食べかすや細菌が集まってできたもので、口臭や味覚障害を引き起こします。舌ブラシやスポンジなどで、奥から前、中から外の方向に拭き取りましょう。舌が傷つかないよう、優しい力で行ってください。
もしも舌苔が分厚い場合は、一回の口腔ケアで取り切るのは困難です。数日かけて取り除いてください。また、舌が乾燥している場合は、最後に保湿剤を塗布しましょう。
寝たきりや重度障害などで誤嚥の危険性が高い方は、歯ブラシの使用は難しいでしょう。口腔清拭を行い、汚れを取り除きましょう。口腔ケア専用のシートやスポンジ、ガーゼなどで口腔内を清掃します。
奥から手前の順で拭き取りましょう。歯だけでなく、歯茎や上あご、頬内側など粘膜にも細菌は付着しています。汚れを除去しましょう。唾液や水分による誤嚥を防ぐためには、ガーゼなどで水分を吸いながらケアします。また、指を口腔内の奥まで入れると、傷みや嘔気を感じる場合もあるので、無理に行わないよう注意が必要です。
義歯は汚れや細菌が付着しやすいため、毎日洗浄します。手順は以下の通りです。
歯磨き粉などの研磨剤は義歯を傷つけるため、使用しないでください。
唾液腺のマッサージは、唾液の分泌を促し、口腔内の乾燥を防ぎます。口腔機能の維持・向上に効果的です。唾液腺マッサージのやり方を紹介いたします。
食事前に行うと、唾液の分泌量増加や口の動きが良くなることにより、食事が摂りやすくなります。
口腔ケアの際の注意点は、以下の通りです。
口腔ケアとは、口腔内の清潔保持や口腔機能の維持・回復などを目的として行うケアの総称です。高齢者の健康状態の維持やQOL向上に効果があるため、介護現場で重要視されています。
口腔ケアをする際は、事前にケア用品を準備するとスムーズです。歯磨きや唾液腺マッサージなどのやり方も把握しておくと安心です。また、誤嚥や感染症の予防などに注意しながら行ってください。
高齢者の介護をする上で、欠かせない口腔ケア。記事を参考に、適切なケアを行い高齢者の健康を守りましょう。