口腔ケアとは?介護における重要性や方法を徹底解説!ケアグッズも紹介

2023.11.13

口腔内の清潔保持や、口腔機能の維持・向上などのために行う口腔ケア。医療や介護の現場では欠かせません。

この記事では、介護における重要性や方法など、口腔ケアについて詳しくまとめました。必要なケアグッズも紹介いたします。高齢者の健康やQOL(生活の質)にも関わります。目的や注意点を理解し、正しい方法で行いましょう。

口腔ケアとは?

口腔ケアとは、口腔内の清潔保持や、口腔機能の維持・回復などを目的として行うケアの総称です。全身の健康やQOLの向上・維持にも効果があります。口腔ケアの種類は、下記の2つです。

  • 器質的口腔ケア:歯磨きやうがい、義歯の洗浄などで口腔内を清潔に保つケアです。口腔内の細菌数を減少させるため、誤嚥性肺炎や歯周病の予防に効果があります。
  • 機能的口腔ケア:口腔機能の維持・向上を目的としたケアです。口周りの筋肉や舌を鍛え、話したり食事をしたりする機能に働きかけます。口腔体操や唾液腺マッサージなどがあります。

高齢者が健康的な生活を送るためには、口腔ケアが欠かせません。介護職員だけでなく、歯科医や専門家による検診や口腔ケアも重要です。

口腔ケアの目的

口腔ケアは口腔内を清潔にするだけでなく、口腔機能の維持・向上や感染予防なども目的として行います。

この章では、口腔ケアの目的3つを詳しく紹介します。口腔ケアは、心身の健康に繋がります。目的をしっかりと理解して取り組むようにしましょう。

口腔内を清潔にする

口腔ケアの目的1つ目は、口腔内を清潔にすることです。口腔ケアは口腔内の細菌を減少させるため、虫歯や歯周病の予防に繋がります。歯周病は、悪化すれば歯が抜ける可能性もあり危険です。口腔内が清潔になれば、悩みとなる口臭も軽減できます。他者との会話を楽しむことができ、生活に楽しみが持てるのです。

また、舌が汚れていると味覚を感じにくくなります。口腔ケアでは歯や義歯だけでなく、舌も清潔にしてください。味を感じやすくなり、食事を美味しく食べられます。口腔ケアは口腔内を清潔に保ち、QOLの向上にも役立つのです。

口腔機能を維持・向上させる

口腔ケアの目的2つ目は、口腔機能の維持・向上です。

虫歯や歯周病になり歯を失うと、食べ物を噛みにくくなったり会話がしにくくなったりします。悪化すれば、栄養状態の低下や社会との関わり不足を招きかねません。口腔ケアで口腔内を清潔にすることで、虫歯や歯周病を予防します。

口臭などの悩みも解消され、「話す」「食べる」という口腔機能の維持・向上に繋がるのです。また、唾液腺マッサージや口腔体操を食前に行うと、口の動きが良くなり、唾液の分泌も促進。食事に欠かせない咀嚼(食べ物を噛む力)や嚥下(飲み込む力)能力が向上します。

感染予防

口腔ケアの目的3つ目は、感染予防です。口腔内の細菌は、誤嚥性肺炎を引き起こす恐れがあります。誤嚥性肺炎とは、唾液や食べ物が誤って気道に入った際、細菌が肺まで入り発症する肺炎です。寝たきり状態の高齢者は、発症リスクが高いとされています。

口腔ケアは、口腔内の細菌を減少させる働きがあり、誤嚥性肺炎の予防に効果的です。また、歯周病も口腔ケアで予防できます。歯周病菌は血液や唾液で全身に運ばれると、動脈硬化や心筋梗塞などを引き起こす恐れがあり、注意が必要です。

口腔ケアは、感染を予防し様々な病気の発症リスクを下げる働きがあるのです。

介護で口腔ケアが重要なワケ

介護では、高齢者の健康状態の維持やQOL向上のために、口腔ケアが重要視されています。口腔内の清潔は、全身の健康状態に繋がっています。口腔ケアによって歯周病菌を減らせば、誤嚥性肺炎や糖尿病、脳梗塞などの予防に効果的です。特に誤嚥性肺炎は、高齢者の死亡者数が増加傾向にあり注意が必要です。

口腔体操などで口の動きが良くなると、脳へ刺激が送られ認知症予防にも繋がります。また、口腔ケアは高齢者のQOL向上にも効果的です。口臭や味覚障害といった悩みの解消や、咀嚼や嚥下能力の向上は、他者との会話や食事の時間を楽しくします。

介護が必要な高齢者は、自分で歯磨きやうがいが難しい方もいます。介護や医療による適切な口腔ケアの提供が重要と言えるでしょう。

口腔ケアのやり方

口腔ケアは、うがいや歯磨きだけではありません。義歯の掃除や唾液腺のマッサージなども行います

ここからは、口腔ケアのやり方や必要なケア用品を詳しく紹介します高齢者は、ご自分でケアをするのが難しい場合があります。介護者が不足したケアを補えるよう、方法を把握しておきましょう。マニュアルにまとめるのもおすすめです。

ケア用品を準備する

口腔ケアを始める前に、ケア用品を準備しておくとスムーズに短時間でケアできます。必要なものは以下の通りです。

  • 歯ブラシ:本人が持ちやすい柄で、ブラシ部分が小さめな物を選びましょう。口腔内に傷がつかないよう、柔らかめのブラシにします。また、自分で手を細かく動かしにくい高齢者には、電動歯ブラシもおすすめです。
  • 歯間ブラシやデンタルフロス:通常の歯ブラシでは届きにくい、歯と歯の間を掃除します。
  • 義歯専用ブラシ:義歯の洗浄に使用します。
  • 口腔ケア用シートやガーゼ、スポンジブラシ…口腔内を湿らせたり、汚れを拭き取ったりするのに使用します。
  • 舌ブラシ:舌の汚れ(舌苔)の除去に使用します。
  • ガーグルベース(うがい受け):ベッド上などでうがいをする際に使用。四角に近い形で、人の口元に沿うよう作られています。
  • 保湿剤:口腔内の乾燥を防ぎます。ジェルやスプレー、マウスウォッシュなどタイプは様々です。使いやすいものを選びましょう。

うがい

最初にうがいをして、口腔内の食べかすなどを出します。高齢者の口腔内は乾燥しがちです。乾いた粘膜は傷つきやすいため、そのまま口腔ケアを始めると危険です。うがいは、食べかすの除去以外に口腔内を潤す効果もあります。

また、左右の頬を膨らまし、しっかりと動かしながらうがいをしましょう。唇や舌、頬の体操になります。もしも誤嚥の危険性がありうがいが出来ない場合は、無理に行わなくて大丈夫です。口腔ケア用シートやガーゼで、口腔内を湿らせましょう。

歯磨き

うがいが終わったら、歯磨きをしましょう。自分でできる方は、できるだけ自力で磨けるようサポートしましょう。できない動きだけ支援するよう心がけてください。肘を上げていられるよう支えたり、磨きやすい歯ブラシを選んだりします。

磨く際に力が入りすぎると、歯や歯茎を傷つける恐れがあります。高齢者がペンを持つように歯ブラシを持てるよう、支援してください。介護者は、磨き残しが無いか必ず確認しましょう。仕上げ磨きが必要な場合は、頬や唇を手指で広げて汚れを確認しながら行います。

最後にジェルなどの保湿剤を、口腔粘膜に薄く塗布してください。

舌の掃除

歯だけでなく、舌も掃除して綺麗にしましょう。舌には、舌苔(ぜったい)という白い苔状の汚れがこびりつきます。舌苔は、食べかすや細菌が集まってできたもので、口臭や味覚障害を引き起こします。舌ブラシやスポンジなどで、奥から前、中から外の方向に拭き取りましょう。舌が傷つかないよう、優しい力で行ってください。

もしも舌苔が分厚い場合は、一回の口腔ケアで取り切るのは困難です。数日かけて取り除いてください。また、舌が乾燥している場合は、最後に保湿剤を塗布しましょう。

口腔清拭

寝たきりや重度障害などで誤嚥の危険性が高い方は、歯ブラシの使用は難しいでしょう。口腔清拭を行い、汚れを取り除きましょう。口腔ケア専用のシートやスポンジ、ガーゼなどで口腔内を清掃します。

奥から手前の順で拭き取りましょう。歯だけでなく、歯茎や上あご、頬内側など粘膜にも細菌は付着しています。汚れを除去しましょう。唾液や水分による誤嚥を防ぐためには、ガーゼなどで水分を吸いながらケアします。また、指を口腔内の奥まで入れると、傷みや嘔気を感じる場合もあるので、無理に行わないよう注意が必要です。

義歯の掃除

義歯は汚れや細菌が付着しやすいため、毎日洗浄します。手順は以下の通りです。

  1. 食べカスなどの汚れを水で洗い流します。
  2. 専用のブラシで磨きます。義歯の縁や付け根、裏側を念入りに掃除しましょう。部分入れ歯は、金具部分が汚れやすいため要注意。
  3. よくすすぎ、夜間など時間がある際は専用の義歯洗浄剤に浸けおきます。義歯は乾燥すると劣化しやすいため、装着するまで洗浄剤入りの水に浸けておきましょう。

歯磨き粉などの研磨剤は義歯を傷つけるため、使用しないでください。

唾液腺のマッサージ

唾液腺のマッサージは、唾液の分泌を促し、口腔内の乾燥を防ぎます。口腔機能の維持・向上に効果的です。唾液腺マッサージのやり方を紹介いたします。

  1. 耳下腺マッサージ:耳の下から上あごの奥歯のあたりにかけて、ゆっくりと円を描くようにマッサージ。人差し指と中指を使用し、10回ほど行います。
  2. 顎舌腺マッサージ:顎骨の内側の柔らかい部分に、親指以外の4本指をあてて3回ほどマッサージ。耳の下にかけて、数か所に分けて押します。
  3. 舌下腺マッサージ:あご先の尖った部分の内側をマッサージします。両手の親指で、下から持ち上げるようにぐっと押しましょう。10回程行います。

食事前に行うと、唾液の分泌量増加や口の動きが良くなることにより、食事が摂りやすくなります。

口腔ケアの際の注意点

口腔ケアの際の注意点は、以下の通りです。

  • サポートは最小限に:高齢者が出来るだけ自分で行えるよう、サポートは必要最小限にしましょう。
  • 安全な姿勢:立ったり座ったりして歯磨きを行う際は、両足を床にしっかり付けているか確認してください。姿勢が安定します。寝たきりの場合は、上半身を起こしましょう。
  • 誤嚥に注意:唾液や水分の誤嚥に注意。上半身をしっかりと起こしたり、顎を引いたりして誤嚥を予防します。また、ガーゼや口腔ケアシートで口腔内の水分をしっかりと拭き取りましょう。
  • 口腔内を傷つけない:高齢者は口腔内が乾燥しやすく、傷もつきやすいため要注意。ケア前に水やジェルで保湿しましょう。柔らかい素材でできたスポンジブラシなどの専用グッズを使用してください。また、一人で無理に行わず、チームで行うとより安全です。方法をマニュアルで共有しましょう。
  • 感染症予防:介護者の手に傷などがあると、口腔内の細菌に感染する恐れ有り。マスクや手袋を着用します。

まとめ

口腔ケアとは、口腔内の清潔保持や口腔機能の維持・回復などを目的として行うケアの総称です。高齢者の健康状態の維持やQOL向上に効果があるため、介護現場で重要視されています。

口腔ケアをする際は、事前にケア用品を準備するとスムーズです。歯磨きや唾液腺マッサージなどのやり方も把握しておくと安心です。また、誤嚥や感染症の予防などに注意しながら行ってください。

高齢者の介護をする上で、欠かせない口腔ケア。記事を参考に、適切なケアを行い高齢者の健康を守りましょう。

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