介護における入浴介助の手順を解説|注意点やコツも紹介

2023.11.20

3大介護の一つとして入浴介助があります。要介護者の入浴をするときに、出来ない部分を支援する介護サービスです。利用者によって入れる浴槽の種類が異なり、身体状況に合わせて浴槽の種類を選ぶ必要があります。

この記事では、入浴介助の手順や注意点について解説します。

介護における入浴介助とは?

介護における入浴介助とは何のために行うのでしょう?

この章では、入浴をする効果と入浴介助をするときの浴槽の種類、また、どのような方を介助するときにどの浴槽を利用するのかについて解説します。

入浴介助の効果は体を清潔にするだけではない

入浴介助の効果には、血流の促進やリラックス効果、感染症予防などがあります。適温のお湯につかることで、新陳代謝が良くなり、血液の循環を高めることができます。

皮膚を清潔に保つことは感染症予防にもつながり、皮膚感染症や尿路感染症の予防になります。また、入浴介助の目的はリラックス効果だけでなく、ボディチェックの場でもあります。「傷やアザができていないか?」「処置を行った部分はどうなっているか」を確認しましょう。

入浴介助の種類

施設で入浴介助を行うときには、3種類の浴槽があります。一般の住宅にあるお風呂と同じ一般浴と、専用の車いすに座った状態で入浴をできる中間浴、寝たままでも入浴ができる機械浴があります。

この章では、施設での入浴介助で使用される3種類の浴槽について解説します。利用者様のADLに合わせた介助方法を選ぶことで、利用者も介護者も安全に入浴を進められます。

一般浴

在宅のお風呂と同じ浴槽での入浴です。家と違い手すりの設置や滑り止めなどで足元が滑らないようになっています。家と同じ環境でお風呂へ入ることができて、見守りのみで入浴できる方もいます。

立位が困難な方には、バスボードを利用して入浴することで浴室をまたぐことなく入浴できます。浴槽内には滑り止めを敷くことで足を滑らせて転倒することを防ぎます。立位が不安定な場合、介護者が足を浴槽に入れて後ろを支えましょう。

中間浴

シャワーチェアに座った状態で入浴ができるお風呂です。車いすから、リフトと呼ばれる椅子に移乗して入浴します。リフトは上下左右に動くので、楽に入浴介助を進めることができて利用者様も負担が少ない入浴方法です。

周囲が見えた状態で入浴ができるので、利用者様は視覚的にも安心して入浴できます。安全のためにベルトをきちんと付けて、入浴中も利用者様から目を離さないようにしましょう。

機械浴

寝台の上に横になった状態で入浴をするお風呂です。寝たきりの利用者様が入浴するための浴槽です。
ストレッチャーに移った後は機械を操縦するだけでお湯につかることができるので、介助する側も楽です。また、寝たまま入浴できるので、利用者様の負担を軽減することもできます。

機械音が大きいことや浮力の影響を受けやすいので、怖がる利用者様もいます。利用者様に伝わるように声掛けをしながら介助を進めましょう。

介護における入浴介助の手順を解説

入浴介助をする前には、バイタルの測定や入浴する利用者の入浴方法を確認する必要があります。入浴介助で使用する脱衣所と浴室も準備が必要ですので、抜けがないようにきちんと進めましょう。

この章では、入浴介助時の手順や確認事項について解説します。

入浴介助前に確認すること

入浴介助をする前には、当日入浴する利用者様の入浴方法やバイタルの異常がないか、脱衣室・浴室を温めて湯冷めしない環境になっているかを確認する必要があります。

水分補給ができるように、脱衣室には飲み物も用意しましょう。一日中お風呂場で勤務するので、スタッフの水分補給も大切です。事故なく安全に入浴介助を行うために確認事項をきちんと把握しましょう。

被介護者にあった入浴方法を確認する

ご利用者様に合わせた入浴方法で入浴介助をしましょう。先ほど紹介した一般浴・中間浴・機械浴は、利用者様のADLに合わせて介助をします。人によって立位が困難だったり認知が進んで支持が入りづらい方もいるので、経験を積むことで入浴介助に慣れていくことも大事です。

普段のトイレ誘導や居室でのベットから車椅子への移乗、立ち上がりや歩行など、全ての介助を応用した介助が入浴介助です。

被介護者の体調を確認する

入浴介助を始める前には、利用者様のバイタルチェックが必要です。入浴は血圧の変動が激しく、気を失ってしまうことや体全身の力が抜けて浴槽から立ち上がれなくなるなどのリスクが考えられます。利用者様にとって、入浴は普段以上に体力を消耗する行為です。

血圧が高すぎる、低すぎる場合は時間を見合わせて、または日にちをずらして入浴をしましょう。体温が高い場合も同様に入浴の中止をしましょう。体調不良で入浴ができない方には、全身清拭または足浴を行う場合もあります。

浴室・脱衣所を温めておく

入浴介助の前には、浴室・脱衣所を温めておく必要があります。利用者様の身体は暑さ、寒さに敏感ですので室内の温度調整は特に注意しましょう。

入浴の脱衣所・浴室では服を着ていないので、利用者様は寒さを特に感じやすいです。温度調節の他にも、バスタオルをかけたり上がり湯をかけてからお風呂を出るなど、お風呂上りに湯冷めしないように工夫することも大事です。浴室でもシャワーをかける時にタオルを肩にかける・断熱材で外の空気を遮断することもできます。

介助者・被介護者とも水分補給をする

介護者・利用者共に、水分補給も忘れずに行いましょう。入浴後にお茶を飲めるように脱衣室には冷たいお茶を用意しましょう。お風呂上りは熱がこもっていますので、冷たい麦茶やスポーツドリンクなどがおすすめです。

入浴後すぐには運動せずに水分補給を促しましょう。浴室は熱がこもり長時間作業することになりますので職員の水分補給も欠かさずに行います。汗を拭くためのタオルや、一日入浴介助の場合、替えのTシャツなどがあると便利です。

入浴介助に必要なものを準備する

入浴介助をする前には必要な物品を用意しましょう。ボディータオルやバスタオル、シャワーチェアーと転倒防止マットを用意して、利用者様がすぐに入浴できるように脱衣室と浴室を準備します。入浴する方に合わせて尿取りパット・オムツや着替えも用意しましょう。

介助する側も入浴介助用のエプロンや手袋を用意して、汚れてもいい服装で介助をします。介助の途中で取りに行くことがあると、浴室に利用者様が一人で残されてしまいますので事故につながるリスクがあり危険です。用意を万全にしてから介助を始めましょう。

入浴介助をする

入浴介助が始まったら、シャワーチェアへ利用者様を誘導します。床が滑りやすいので誘導の時にも転倒に注意しましょう。また、シャワーの温度は利用者様に確認するだけでなく、自分でもどれくらいの温度か確認しながら行います。浴槽内の温度も、介護者が手を入れて温度を確認しましょう。

利用者様が浴槽へ入る時間は5分程度です。体を洗うときには、自分でできるところを洗っていただくことで残存機能を活かすことやプライバシー配慮に繋がります

入浴介助の際の注意点

浴槽に入るときには、両手で手すりに掴まりバランスを崩さないように注意して見守りをしましょう。浴槽内で滑っておぼれてしまうこともあります。必ず後ろから介護者を支えましょう

体を洗うときには、洗い残しがなく足先や背中、頭の後ろや臀部・陰部をきちんと洗えているかも確認しましょう。また、洗身のときには、強さを確認しながら行います。強くこすりすぎると内出血やケガの原因になります。

まとめ

入浴介助は、体をリラックスさせることや新陳代謝・血流をよくする効果があります。利用者様がリラックスするだけでなく、ボディチェックの場でもあります。処置を行った所は悪化していないか?傷や内出血はないかをよく確認しましょう。

入浴介助の前には、バイタルチェックや浴室と脱衣所の準備をする必要があります。入浴介助は、お湯の温度や利用者が床で滑らないか?洗身をするときの強さなど注意する点が多い介助です。スピードと丁寧さをバランスよくこなし、利用者様に満足してもらえるような介助を提供しましょう。

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