親の介護は義務ではない?法律的にはどうなのか徹底解説!解決策も!

2023.11.20

親の介護は『扶養義務』にあたり、原則子どもの義務です。しかし、子ども自身の生活が経済的に困窮している場合は強制されません。親の介護について、介護義務の対象者や内容を紹介します。放棄した場合、法律的に罪になるのかもまとめました。介護ができない場合の解決策も、合わせて紹介いたします。

親の介護は、誰にでも起こりうる問題です。いざという時に焦らないために、介護義務について理解を深めておきましょう。

親の介護は子どもの義務ではない?

親との関係性や家庭の事情から、親の介護に不安をお持ちの方も多いでしょう。子どもには親の介護が義務づけられていますが、他の親族にも義務はあります。

また、子どもに法律で義務づけられているのは「扶養義務」です。裁判所に生活が困窮していると認められれば、強制ではないのです。親の介護義務の対象者は誰なのか、また内容についてご紹介いたします。

介護義務の対象とは?

親の介護義務の対象は、子どもを含めた血縁者にあります。民法877条第1項には、【直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある】と記載しており、『直系血族及び兄弟姉妹』の対象者は、親の配偶者や兄弟姉妹、子どもや孫です。たとえ絶縁していたとしても、法律的に義務が発生します。

しかし、親が高齢の場合、配偶者や兄弟も高齢である場合がほとんどです。子どもが介護をするケースが多くなります。時折「長男の嫁が介護をしないのはおかしい」という意見がありますが、子どもの配偶者は該当しません。嫁にとって義両親の介護は、法律上義務ではないのです。

介護義務の内容

介護義務は『扶養義務』にあたり、身体的な介護だけでなく経済面での支援も含まれます。原則として、親の介護は子どもの義務です。ただし、扶養義務は経済的に余裕が無い場合、強制されません。家庭裁判所に生活が困窮していると認められた場合は、無理に親の支援をしなくて良いのです。

また、扶養義務は生活費や介護費用などの経済的支援だけでも行えば、義務は果たされます。仕事などで身体介護が難しい場合は、費用を負担し介護サービスを利用すると良いでしょう。

介護を放棄したらどうなるのか?法律で罪になる可能性

もしも扶養上の義務があるのに、子どもが介護を放棄したらどうなるのでしょうか。法律では、【保護責任者遺棄罪】に問われる可能性があります。3か月以上5年以下の懲役になるかもしれません。もしも親が傷害を負ったり死亡したりすれば、【保護責任者遺棄致死罪】や【保護責任者遺棄致傷罪】に問われる可能性も。

最悪の事態を回避するために、2つの罪について理解しましょう。詳しく紹介いたします。

保護責任者遺棄致死罪

親の介護を放棄した結果、故意ではなく死亡させてしまうと【保護責任者遺棄致死罪】に問われる可能性があります。保護責任者遺棄とは、保護を必要とする者を遺棄、または保護しないこと。介護が必要な親と介護者である子どもでは、以下のようなケースが保護責任者遺棄と言えます。

  • 介助が無いと生活できない親を、長時間自宅に置き去りにした
  • 安全ではない場所(山中など)に放置した
  • 食事や必要な治療を与えなかった

保護責任者遺棄をした上で、健康状態の悪化などが起き親が死亡するケースがあります。明確な殺意が無かった場合は、殺人罪ではなく保護責任者遺棄致死罪となるのです。殺意とは、明確に殺そうとするだけでなく「このままにしておけば死ぬかもしれない」と自覚している場合も含みます。

刑罰は、3年以上20年以下の懲役です。

保護責任者遺棄致傷罪

保護責任者遺棄罪を犯した上で、親に障害を負わせた場合は【保護責任者遺棄致傷罪】となります。親の介護を放棄してしまい、親が病気に罹ったり怪我をしたりすると問われる罪です。

保護責任者遺棄罪を犯した場合、傷害罪と比べて上限下限とも重い刑で処断されます。傷害罪が1カ月以上15年以下の懲役なのに対し、保護責任者遺棄致傷罪は3か月以上15年以下の懲役となります。

親の介護は【扶養義務】です。扶養の義務は保護責任が生じる要因の一つとされています。親の介護が難しいと感じた場合は、罪を犯してしまわないよう早期に対応しましょう。

親の介護ができない原因とは?

親の介護ができない原因は、親との関係性や仕事との両立など様々です。怪我や病気が原因で、突然親の介護が必要になる可能性も考えられます。大きな負担がかかり、生活に支障が出るかもしれません。あなた自身にも当てはまる原因があれば、早めに解決策をお考えください。

親の身体機能・認知機能の悪化

親の身体機能や認知機能が悪化すると、子どもだけでの介護は難しくなります。一般的に身体機能や認知機能は徐々に低下します。例えば、少し体を支えるだけでできていた歩行が難しくなったり、認知症が進行し徘徊などの問題行動が増えたりします。

自宅での介護は24時間体制です。夜間も排泄などの介助や見守りが必要になると、睡眠時間も削られます。親が要介護状態になると、子どもは精神的にも肉体的にも負担が増加していきます。苦しい状況に耐えられなくなり、介護ができなくなるのです。

親との関係性

親との関係性が悪いと、子どもは介護を拒否したいと感じるでしょう。幼少期に親から虐待を受けていたなど、子どもが親に対しトラウマや憎しみの感情を抱いているケースがあります。関係が良好でなければ、介護をしたいとはなかなか思えません。

また、物理的に距離を取るため、子どもが遠方に住んでいて介護が難しい場合もあります。自宅での介護は決して簡単なことではありません。親との関係性が悪化していれば、子どもが関わろうとせず介護放棄が起きる可能性は高いでしょう。

経済的に厳しい

子どもが経済的に厳しい状況では、親の介護をするのは困難です。日本では所得格差が問題視されています。所得の少ない家庭では自分たちの生活で手一杯となり、親までサポートするのは難しいでしょう。

また、現在の経済状態が安定していても、安心できません。親を自宅で介護すれば、仕事をする時間が減って収入が減少する可能性もあります。介護サービスを利用すれば在宅介護の負担は軽減されますが、料金が発生します。親の年金だけで足りなければ、子どもに費用面で負担がかかるのです。

経済的に厳しい状況は、精神的にも追い詰められ、その結果親の介護ができなくなるのです。

仕事との両立

親の介護と仕事との両立が難しいという点も、介護ができない原因のひとつ。自宅介護は、介護に関わる時間が増加したり体力的に厳しくなったりして、働く時間の減少や休職に繋がる場合があります。また、仕事を辞める『介護離職』が起きるケースもあるのです。

仕事が出来なければ、子どもの収入は減少し自身の生活も厳しくなります。親のサポートまで手が回らなくなるでしょう。また、仕事を辞めて介護ばかりの生活になると精神面での負担も増加し、介護の継続が難しくなる可能性があります。

介護ができない場合の解決策

介護ができない場合の解決策として、介護施設への入居や生活保護の検討があります。あなたも何らかの理由で、親の介護が難しくなるかもしれません。しかし、親の介護を放棄すると、法律で罪に問われる可能性があります。

親と子ども双方が穏やかな生活を送れるよう、解決策を知っておきましょう。

介護施設に入居してもらう

親を自宅で介護するのが困難な場合は、介護施設に入居してもらうのも解決策の一つ。介護施設に入居する際の手続きや面会などの対応は必要ですが、家族の介護負担は大幅に軽減されます。また、親の介護に使う時間も減るため、介護離職を防げるのもメリットです。

専門のスタッフが24時間介護をしてくれますので、親も安心して生活できます。介護施設の入居に関しては、親との話し合いが必要です。本人は入居したいのか、費用面は親の年金や預貯金等で賄えるのかなど、家族で話し合いましょう。

生活保護を検討する

親だけでなく子どもも経済的に余裕が無く、資金援助ができない場合の解決策は、生活保護の検討です。生活保護を受給するには、以下の条件があります。

  • 世帯収入が国の定める基準より少ない
  • 障害や高齢などのやむを得ない事情で働けない
  • 現金化できる資産を持っていない
  • 親族から生活費の援助が受けられない
  • 他の公的制度を利用しても、最低限の生活費が確保不可能

生活保護は、家族にも調査協力が求められます。福祉事務所から、家族が本人に生活費の援助ができないのか確認されるためです。

まとめ

親の介護は、原則子どもの義務です。介護義務の対象者は親の配偶者や兄弟姉妹、子どもや孫で、配偶者の嫁は含まれません。

介護義務は【扶養義務】にあたります。扶養の義務は、子どもが経済的に困窮している場合は強制されません。また、経済的な支援を行えば義務は果たされますので、身体的な介護を強制されることも無いのです。

親との関係性などが原因で、介護ができない場合もあるでしょう。しかし、子どもが親の介護を放棄すると、法律で罪に問われる可能性があり注意が必要です。介護ができない場合は、介護施設の入居や生活保護の検討をしましょう。

親の介護から逃れるのは、原則難しいと言えます。できない場合は早期に対策し、親やあなた自身を守ってください。

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