介護における特定施設をわかりやすく解説!基準についても紹介

2023.12.05

介護施設にはたくさんの種類があり、どの施設がどのようなサービスを提供してくれるのか分からない方も多いのではないでしょうか。

今回は、数ある施設の中から「特定施設」について、サービス提供内容やメリット・デメリットなどを解説しています。

特定施設とは?

正式には「特定施設入居者生活介護」といいますが、一般的に「特定施設」と略称で呼ばれています。特定施設とは、ケアマネージャーが作成したケアプランに基づき、食事介助や入浴介助、排泄介助などのほか、身体的介護サービスと機能回復のためのリハビリテーションを受けられる厚生労働省令が定めた施設のことです。

入居者へのサービス内容

大きく分けて以下の3つがあります。

  • 24時間の介護サービス:24時間スタッフが常駐しているため、夜間や早朝であっても介護や看護のサービスを受けることが可能です。急変時も同様です。内容は、見守り、移動介助、排泄介助などサービスを受けることができます。
  • 生活支援サービス:シーツ交換や服薬管理、お部屋の掃除、洗濯など生活をする上で必要なことを利用者の状態に合わせてサポートすることです。
  • 機能訓練サービス:機能訓練は、利用者の身体的な機能を維持したり鍛えたりするためにも重要です

特定施設の対象施設

特定施設入居者生活介護が受けられる施設は、おもに以下の4種類に分けられます。

  • 介護付き有料老人ホーム
  • 介護型軽費老人ホーム(ケアハウス)
  • 特別養護老人ホーム
  • サービス付高齢者向け住宅(一部のみ)

有料老人ホーム

主に民間企業が運営しており、一定の設備、人員、運営基準のもと都道府県の指定(認可)を受けている施設を指します。高級な施設もあれば低価格が特徴の施設もあり、入居費用の設定はさまざまです。予算に合わせて選定しましょう。

入居要件も施設により異なり、介護度が軽い方から重い方、寝たきりの方、認知症の症状がある方など幅広く受け入れています。施設側の説明をよく聞き、入居される人にとって合っているのか検討することが大事です。看取りまで対応しているところが多く、終のすみかの選択として探しておられる方が多い施設種別です。

サービス付き高齢者向け住宅

サービス付き高齢者向け住宅とは、自宅同様の自由度の高い暮らしを送りながらスタッフによる安否確認や生活相談サービスなどを受けられる賃貸住宅です。高齢者が必要な支援を受けながら、自分らしい暮らしを実現できる「住まい」とされています。「サ高住」「サ付き」の略称で呼ばれることもあります。

以下のような方におすすめです。

  • 自立状態~要介護2くらいまでの方
  • 一人暮らしが少し不安でも、食事、入浴などは自力でできる方
  • 元気だが、定期的な見守りを受けて生活したい方

経費老人ホーム(ケアハウス)

ケアハウスは、軽費老人ホームC型とも呼ばれ身寄りがない、または家庭環境や経済状況などの理由により家族との同居が困難な高齢者が比較的安価に入居できる介護施設です。60歳以上で、自宅生活が困難な低所得者向けの福祉施設です。一般型(自立型)と介護型(特定型)の2種類あります。

  • 一般型:独居生活に不安のある60歳以上の方が対象
  • 介護型:要介護1以上で65歳以上の方が対象

養護老人ホーム

生活環境や経済的に困窮した高齢者を養護し、社会復帰させることを目的とした施設です。入所基準は、環境上の理由や経済的理由で困窮していることです。環境上の理由とは、身寄りがいないなど現在置かれている状況では生活が困難なことをさします。

サービス内容には、食事の提供や健康管理を含む自立支援です。養護老人ホームは生活困窮者の養護が目的であり、基本的に身の回りのことは自分でできる方を対象にしています。入居には市区町村が対象者の調査を行い決定されます。

特定施設の基準

特定施設の基準は人員基準、設備基準、運営基準で構成されます。 人員基準では、介護職員の適切な配置や資格が求められ、設備基準では利用者の安全や快適な生活を保障することが求められています。運営基準は、施設の支払いな運営や入居者の権利保護に焦点をあてています。

これらの基準がクリアされることで質の高い介護が提供されることが期待されます。

人員配置の基準

人員基準とは「入居者1人に対し、看護介護職員・生活相談員・機能訓練指導員・計画作成担当者・管理者を、どのくらい配置しなければならないのか」を定めたものです。

  • 管理者:1人(兼務可)
  • 生活相談員:要介護者等:生活相談員=100人:1人
  • 看護・介護職員:
    ①要支援者:看護・介護職員=10:1
    ②要介護者:看護・介護職員=3:1※ただし看護職員は要介護者等が30人までは1人、30人を超える場合は50人ごとに1人※ 夜間帯の職員は1人以上
  • 機能訓練指導員:1人以上(兼務可)
  • 計画作成担当者:介護支援専門員1人以上[兼務可]※ただし、要介護者等:計画作成担当者=100:1を標準とする

設備基準

  1.  介護居室:原則個室 。プライバシーの保護に配慮、介護を行える適当な広さで、地階に設けない 等
  2. 一時介護室:介護を行うために適当な広さ
  3. 浴室:身体の不自由な者が入浴するのに適したもの
  4. トイレ:居室のある階ごとに設置し、非常用設備を備える
  5.  食堂、機能訓練室:機能を十分に発揮し得る適当な広さ
  6.  施設全体:利用者が車椅子で円滑に移動することが可能な空間と構造

運営基準

運営基準はとても項目が多く、特に重要なものを紹介します。

  • 手続きの説明契約の締結:事前に利用者とその家族に、勤務体制や利用料等について説明を行い、同意を得ること
  • サービス計画・提供:利用者に合った特定施設サービス計画を作成すること。具体的なサービス内容を記録すること。
  • 相談及び援助:相談に適切に応じ、利用者の社会生活に必要な支援を行う。尊厳を守ることも重要です。
  • 非常災害対策:非常災害に関する具体的な対策を立てること定期的に訓練を行うこと。消防訓練は義務づけられています。

特定施設入居のメリット・デメリット

ここでは、特定施設入居のメリットやデメリットを分かりやすく解説しています。確保される専門的なケアと安全性がメリットですが、自由度の制約とコストがデメリットとなる可能性があります。

特定施設入居のメリット

  • 介護サービス利用料が定額になる:利用者側のメリットとして、一ヶ月あたりの介護サービス利用料が定額になることが挙げられます。介護度の高い人にとってはメリットが大きいと言えます。
  • 介護体制が充実している:手厚い介護を受けられることもメリットの一つです。特定施設の人員基準により、介護スタッフが24時間365日常駐して安否確認を行います。日中は看護師も常駐しているため、気分不良や体調変化が生じた際には居室で処置を受けることができます。医療機関と連携しているため、万が一の際も安心です。
  • 安心・安全な場所:設備基準によって、高齢者が生活することを考慮した設備が揃っています。バリアフリーや十分な広さの床面積、トイレ・浴室の手すり設置など、安全な生活環境が保たれているため安心です。

特定施設入居のデメリット

  • 利用者:外部サービスを使えない。介護サービスなどを受ける際、当該施設のスタッフがしてくれるメリットがありますが、相性が悪い場合他を選ぶことができません。 スタッフの交代を希望することはできるとは思いますが、限られた人数のため、限界があります。
  • 施設側:「特定施設」という指定をもらうためには、後述する基準を満たさなければなりません。さらに、開業後も定期的にきちんと運営されているかチェックされます。新たなことをしようとしても規制がかかる可能性があります。

まとめ

特定施設は、介護が必要な高齢者や障がい者向けの住居であり、介護保険が適用される場合があります。これらの施設が提供する専門的なケアは、生活の質向上と安全確保に寄与し、個々のニーズに対応したサービスを提供します。しかし、個人の自由度が制約されるというデメリットもあります。

特定施設の選択は容易ではないですが、被介護者にとってのメリットとデメリットを比較検討することが重要です。介護は誰にとっても避けられないテーマであり、適切な選択は積極的な未来設計の一部と言えます。

お役立ちコラム一覧へ戻る