本記事では、日常生活動作(ADL)とは何かについて詳しく解説していきます。読んで字のごとく、日常生活における自分で生活するための最低限の自立度などを表しているのですが、その種類や評価方法なども異なっています。
日常生活動作(ADL)が低下する原因などについても解説していきますので、介護に関する知識として是非とも参考にしてみてください。
目次
介護をするうえでは、日常生活動作、ADLという単語を聞く機会が少なくありません。どの程度の介護が必要になってくるのかの指標の1つともされていますので、まずは日常生活動作がどのようなものかを解説していきます。
日常生活動作は、日常生活での基本的な身の回りの活動や動作を指します。これらの活動は、個人が日常的に行うことで自己の生活を維持し、日常的な機能を果たすのに必要です。食事や入浴、衣類の着脱といったような項目が挙げられます。
対して日常生活自立度は、これらの活動をどれだけ独力で遂行できるかを示す指標です。日常生活自立度が高いほど自己管理ができ、生活の質が向上することが期待されます。
日常生活動作は基本的な生活において必要な活動を指し、日常生活自立度はそれらの活動をどれだけ自力で行えるかを示す尺度です。
日常生活動作とはどのようなもので、自立度との違いについても解説しました。実は、日常生活動作の中にも細分化された種類が存在していますので、それぞれの種類ごとにどのようなものなのかを解説していきましょう。
基本的日常生活動作は、日常生活を送るうえで最低限必要な動作です。BADLと略されることもあり、日常生活動作そのものを指すことも多く、人間らしい生活を送るために欠かせない動作です。
入浴や更衣、食事、移動といった日常生活における基本的な動作が該当しています。例えば
といった行動が当てはまります。支障をきたす場合は、要介護度が高いと判断されやすいです。
もう1つが、手段的日常生活動作になります。
手段的日常生活動作は、日常生活での機能的な活動や動作のことを指します。これらの活動は、独立した日常生活を営む上で必要なスキルや機能を評価するのに役立ちます。
これらの動作が該当しており、個々の人が自立した生活を営むために必要な能力やスキル群です。これらの活動が困難になると、生活能力や独立性が損なわれる可能性があり、健康や生活の質に影響を与えることになります。
日常生活動作の中でも、行動それぞれで種類が分けられている事がお分かりいただけたかと思います。ここからは、そんな日常生活動作の評価する為の方法がいくつかありますので、それぞれ解説していきましょう。
バーセルインデックスはバーセル指数とも呼ばれ、日常生活動作の評価に使用される指標の一つです。
この指数は、個々が日常生活でどれだけ自力でできるかを評価し、身体の機能や独立性の程度を示すものです。
食事や移動、入浴をはじめとした基本的日常生活動作を項目として用意しており、合計点が100点で、高い得点ほど患者の日常生活動作が独立していることを示します。脳卒中やその他の神経学的障害、怪我などによって日常生活動作に制限が生じた患者を評価するために広く使用されています。
FIMは、Functional Independence Measureの略称です。日常生活動作の評価方法の一つであり、特にリハビリテーションや医療の分野で使用されています。患者が日常生活の様々な動作を、どれだけ独力で行えるかを評価するための指標となります。
基本的な日常生活動作に焦点を当てており、食事、入浴など日常的な生活で必要な活動に関連する項目を評価します。患者の機能的なレベルを7段階で評価します。これには完全な独立から完全な依存までの範囲が含まれます。
これら以外にも、Lawtonの尺度といったものも評価方法として挙げられます。IADLを評価するための尺度で、料理、掃除、買い物、電話の使用など、日常生活のより高度なスキルに焦点を当てています。
老研式活動能力指標というものもあります。こちらも手段的日常生活動作(IADL)を図る方法であり、日本における退職後の高齢者の生活能力を把握するために開発されました。
これらの評価方法は、患者や高齢者の日常生活動作の能力や機能性を、総合的かつ特定の側面から評価するために使用されます。
日常生活動作は、介護を受ける際の基準になる評価として用いられています。日常生活動作はいくつかの理由で低下してしまいます。最後に、日常生活動作が低下する原因について紹介していきましょう。
まず挙げられるのは、やはり老化です。加齢とともに筋肉量や筋力が低下します。筋肉の減少は、歩行、階段の昇り降り、物を持ち上げるなどの日常の動作に影響を与え、これらの活動が難しくなる原因となります。老化に伴い関節の軟骨が減少し、関節可動域が狭くなります。これにより、身体の柔軟性が低下し、日常の動作が制約される可能性も高まります。
体力の低下に伴い、運動・外出の意欲そのものが減退することも少なくありません。すると運動不足はますます加速し、それに伴って身体機能の低下にも拍車がかかります。つまり、悪循環に陥りやすくなるのです。
生活習慣病は、主に不健康な生活習慣が原因となって発症する病気で、これが身体機能や日常生活動作に影響を及ぼします。生活習慣病には、運動不足や不健康な食生活が関連していることがあります。これにより筋力や持久力が低下し、日常生活動作が困難になっていってしまうのです。
生活習慣病は寝たきり状態に発展することも少なくありません。運動の機会が減少すると、筋力の低下や関節の萎縮が起こります。身体機能が低下すれば、日常生活動作も低下しやすくなります。
神経疾患により日常生活動作が低下する理由は、主に神経系の障害や損傷に関連しています。神経疾患によって、筋肉の制御が難しくなる症状が見られます。これにより、歩行、手の動き、バランスなどの日常生活動作に支障が出る可能性があります。
神経が筋肉に信号を送らなくなると、筋肉は徐々に萎縮して力を失います。これにより、持ち上げたり押したりする動作が難しくなり、生活動作の制限が生じるわけです。「パーキンソン病」や「脊髄小脳変性症」などが代表的です。
認知症は、脳の機能が損傷したり変化したりする状態であり、この影響により日常生活動作が低下することがあります。認知症患者はしばしば記憶障害を経験します。これにより、日常の予定や重要な情報を覚えにくくなります。忘れっぽさが増し、予定やルーティンを遵守するのが難しくなります。
たとえば、認知症状である「実行機能障害」や「失行」は、日常生活動作(ADL)の低下の代表的な原因の一つです。自分の身の回りの環境や場所を認識するのが難しくなり、家庭内での移動や必要な場所への移動が難しくなったりするのです。
薬の副作用により日常生活動作が低下する理由は、薬物が身体全体に及ぼす影響によるものです。認知症・その他疾患の治療薬の中には、副作用を引き起こすものもあります。副作用の症状は、めまい・腹痛・吐き気・意欲の低下など多岐にわたります。
中枢神経系に影響を及ぼす薬物は、めまいや平衡感覚の異常を引き起こす可能性があります。これが原因で歩行や日常の動作が困難になります。これらの理由から、医薬品を使用する際には医師や薬剤師の指示に従い、定期的に健康状態をモニタリングすることが重要です。
本記事では、日常生活動作がどのようなものか、評価基準や低下理由などについて紹介しました。日常生活動作を維持することは、身体と心の健康を維持し、生活全般の質を向上させるために重要です。また、介護の観点からも負担を軽減し、自分の体をできる限り自由に動かすためにも欠かすことのできない要素となっています。
介護における日常生活動作を、本記事で参考にしてみてください。