高齢者の中には「立ち上がりができない」「尿意・便意を感じない」など身体機能が影響でトイレに座れない方がいます。そういった方にはおむつ交換を日中夜間ともに行います。日中はトイレに行っても転倒のリスクがあるので夜間のみおむつを使用する方もいます。
この記事では、おむつ交換の準備と手順・注意点について解説します。
目次
おむつ交換を行う前に、準備するものや周辺環境を整える必要があります。環境が整わないままおむつ交換をすると、羞恥心の配慮を怠りニオイのこもる原因になります。準備物も多いのできちんと用意をしてからおむつ交換を行うことで時間短縮に繋がります。
この章では、おむつ交換の準備について解説します。
おむつ交換を始める前に周辺の環境を整えましょう。換気をしたり、多床室の場合パーテーションやカーテンで区切ったりする必要があります。排泄の交換をされているときは誰もが見られたくないものです。羞恥心に配慮して、においがこもらないようにきちんと換気をしましょう。
ベッドがギャッチアップされた状態ではおむつ交換がしづらいので、平らにして、高さは介護者がやりやすい高さに設定します。介護者も腰を痛めないようにおむつ交換を行いましょう。腰痛ベルトを使用することで、おむつ交換やトランス介助をするときの腰の負担を抑えることができます。
おむつ交換を行う前には準備するものをすべて揃えてから行いましょう。途中で取りに戻ることになると、おむつを開けた状態で利用者のもとから離れることになります。
交換する人数分揃えて持ち歩くことで、途中で取りに行くことなく排泄介助を回ることができます。
施設によって準備物が異なります。
この章では、おむつ交換の手順を解説します。準備段階でおむつを広げてギャザーをしっかり立ててパットを差し込んでおきましょう。すぐにおむつを交換することができて利用者様を待たせることなく介助を進めることができます。
最初にズボンを下ろしておむつのテープを外します。ズボンを下ろすときには、利用者様に声掛けをして腰を上げていただきましょう。介護者はズボンを下ろしやすく腰の負担もかかりません。腰が上がらない方は、左右に対抗してその時にズボンを下ろします。
その後、おむつのテープを外しておむつを開きます。
陰洗ボトルで陰部洗浄を行います。陰洗ボトルのお湯の温度は、人肌程度に熱すぎず冷たすぎない温度に設定します。洗浄液で陰部を洗い、便が残らないようにきれいにしましょう。
陰部だけでなく側臥位になった時に肛門も洗浄します。お湯が体やベッドに飛び散らないよう注意し、最後にトイレットペーパーでふき取ったら陰洗の終了です。陰洗は排泄物を除き清潔に保つだけでなく、皮脂の汚れ除去のために行いますので一日一回必ず行いましょう。
続いて新しいおむつに取り替えます。古いおむつは陰洗で側臥位になった時に外し、片方にまとめておきましょう。新しいおむつを当てやすくなり、スムーズに交換ができます。
新しいおむつは側臥位になった時に半分差し込んで逆の側臥位になった時に差し込んだ部分を伸ばします。このとき、体の真ん中におむつがきちんと当たるようにしましょう。これができていないと漏れの原因になり、次に交換するときに衣類まで汚れてしまいます。はじめのうちはおむつを二つ折りにして、おむつの中心に線をつくり当てる位置をわかりやすくするのも良いでしょう。
おむつは鼠径部に沿うように左右に当てます。その後テープ止めをしておむつを閉じます。ズボンを上げて下着を入れ、衣類を整えたらおむつ交換の終了です。
衣類が汚れている場合はズボンとシーツを新しいものに交換しましょう。介助の後は元の状態に戻すことを心がけましょう。陰洗ボトルや交換後のゴミなどを室内に忘れないように気を付けます。
換気していた窓を閉めて、ベッドの高さとギャッチアップを戻したら声掛けをして部屋を出ます。
おむつ交換をするときには、利用者の体形に合わせたサイズ選びや皮膚の状態の確認が必要になります。また、声掛けを欠かさずに行うことで利用者様に安心して介助を受けていただけます。
この章ではおむつ交換の時に注意するポイントについて解説します。
利用者様の体形に合わせておむつを用意しましょう。大きすぎるおむつを使用するとゆるく当たってしまい漏れの原因になります。「テープ止めがきちんとできて寝返りをしたときにズレないか。」をチェックして、スタッフ同士でも利用者に合うおむつについて話し合いましょう。
また、尿取りパットも種類によって吸収できる回数が違います。男性では陰部巻きでパットを1枚使用している方もいます。一人一人の排泄介助のパットの使用方法・おむつのサイズは必ず確認しましょう。
排泄介助は、利用者様に思いやりをもって進めていくことが大切です。声かけ一つで利用者様の気持ちは落ち着き、安心して介助を受けていただくことができます。羞恥心が強い利用者様も多いので、排泄介助は声掛けを多く行いましょう。
向きを変える時や腰を上げる時などに利用者様に協力してもらうこともでき、利用者様との信頼関係を築くこともできます。自尊心を傷つけず思いやりを持って介助を行いましょう。
おむつ交換をするときには、状態観察も行います。皮膚の状態では、褥瘡や傷がないかなどをチェックする必要があります。また、排便・排尿の状況も確認する必要があります。
排便の場合、色・量・形状・硬さをチェックしましょう。排尿の場合は色・頻度・排尿の量を把握しましょう。また、排泄の回数を把握して一日のおむつ交換の回数を減らすことで、利用者・介護職員共に負担を減らすことに繋がります。
おむつ交換は、トイレで排泄ができない方にベッド上で行う介助です。誰もが見られたくない部分を扱う介助なので、自尊心を傷つけないようにスピーディに行うことが大切です。
おむつ交換を行う前には必ず環境を整えて準備物をそろえてから行いましょう。陰洗は一日一回行うことで、清潔に保つことができます。おむつ交換を行うときには、皮膚や排泄物の状態観察を行い、いつもと違う場合は看護スタッフに報告しましょう。毎回状態観察をすることで早期発見に繋がります。