本記事では、権利擁護がどのようなものかについて解説していきます。権利擁護自体はすべての人間に当てはまるものなのですが、特に老人の介護に関してこの権利擁護が関係している部分があります。
事業やサービスなどについても権利擁護が関係しているものがあるので、どのようなものか気になっている方はぜひ本記事を参考にしてみてください。
目次
「権利擁護」は、個人や団体が自らの権利を守り、擁護することを指します。これは、法的な権利だけでなく、社会的・倫理的な権利や利益も含まれます。
権利擁護は、不当な侵害からの保護や、平等な権利の享有を確保するための活動を包括しています。例えば法的な権利擁護があり、法律に基づいて自らの法的な権利を守ることを指します。これには、裁判所での訴訟や法的手続きを通じた権利の主張が含まれます。
他にも社会的権利擁護もあります。社会的な公正や平等に基づいて、特に弱者や社会のマイノリティが公平な権利を享有できるようにするための努力を指します。
権利擁護がどのようなものなのかについて簡単に解説しました。誰にでも権利擁護が存在している事がお分かりいただけたかと思いますが、種類も様々存在していますので、特に高齢者や障害者の権利擁護について解説します。
高齢者のための権利擁護は、高齢者が自らの権利を保護し、尊重されるために行われる活動やプロセスを指します。高齢者も他の人々と同じように、基本的な人権や尊厳を享受する権利があります。そのため、高齢者の権利を擁護することは、社会的な公正や人権の尊重を促進する重要な役割を果たします。
高齢になると認知症や病気の影響により判断力が低下したり、コミュニケーションが上手くとれなくなる事が増えていくために、権利擁護の必要性が主張されているのです。
障害者のための権利擁護は、障害者が平等かつ公平な機会を享受し、社会参加を果たすための権利を守ることを目的とした活動や運動を指します。障害者も高齢者同様、知的障がいや精神障がいのために判断能力が不十分であったり、自分の意思を上手く伝えられない場合があります。
そのような場合は、高齢者の権利擁護と同様に意志決定や財産管理のサポートをすることで、地域での生活を続けられるよう支援が行われます。障害者の権利擁護のために、障害者差別解消法など法律面でも支援が行われています。
権利擁護のために、様々な制度が設けられています。例えば地域包括支援センターでは、相談内容に応じて成年後見制度や日常生活自立支援事業などの、相談者に適した権利擁護事業への繋ぎ役を担います。
また、介護者や介護施設職員による高齢者虐待も、高齢者の権利を奪う行為です。障害者にも各種支援に繋げるための窓口として、「機関相談支援センター」が設置されている訳ですが、その詳細を解説していきます。
成年後見制度は、判断能力が十分でない成年者が法的な保護や支援が必要な状況にある場合に、その人の権利や利益を保護するために設けられた法的な制度です。
判断能力が不十分な理由としては、高齢や病気、障害などが挙げられます。成年後見制度では、裁判所が成年者の判断能力の有無を認定し、必要に応じて後見人を任命します。本人に代わり財産の管理や契約締結、取消をするのが主な内容です。
成年後見制度は、個々の状況に合わせて柔軟に対応できるように設計されています。
利用を検討する時点で判断能力が低下している場合は、「法定後見制度」を利用します。被後見人が法的な保護や支援を必要とする場合に、その者の権利や利益を保護し、健全な生活を支えるための制度です。
法定後見制度は、精神的な障害、身体的な障害、高齢などの理由により、自分で法的な行為が難しい状態にある人々を対象としています。後見人等には、親族や知人のほか、弁護士や司法書士、社会福祉士などの専門職からその人に適した人が選ばれます。
任意後見制度は、一般的に高齢者や障害者などが自分自身の生活や財産に関する判断力を喪失した場合に、他者がその代わりにサポートや管理を行うための制度です。
まだ判断能力が落ちていないが、今後に備えたいという場合に利用できる制度で、将来判断能力が低下した場合にお願いしたい内容や、お願いしたい人をあらかじめ登録しておけます。登録の時点では、各都道府県にある「公証役場」で、取り決め内容をまとめた公正証書を作成します。
法定後見制度と違い、任意後見制度は後見人を本人の意思で自由に選べます。
このように、権利擁護に関する制度についても様々なものが存在しています。最後に、権利擁護に関する各種事業及びサービスを紹介していきますので、高齢者や障碍者の介護に関してどのようなサービスが利用できるのか参考にしてみてください。
日本の福祉サービスの一環で、高齢者や障害者などがより自立した生活を送るために提供される支援プログラムやサービスのことを指します。ある程度の契約能力はあるが、ひとりで日常の金銭管理や福祉サービスの契約をするには不安がある、という場合に検討される事業サービスです。
下記に紹介する3つのサービスが主体となっていて、福祉サービスの契約や福祉サービスの利用料、公共料金の支払いをひとりで行うのが難しい方が対象となります。
その名の通り、利用者が自身の金銭面での生活を適切に管理し、安定した経済基盤を築くための支援を提供するものです。
判断力が低下すると、請求書の内容を理解できずに支払いを忘れてしまったり、お金を使いすぎて次の年金支給日前に手持ち金がなくなるというケースがあります。これを防止するため、利用者の通帳を預かり税金や公共料金、医療費、家賃などの支払いを行うのが主なサービス内容です。
また、収入に応じた支出や貯金の計画をたて、毎月の生活費は支援員が本人の元に届けるのも内容に含まれています。
財産保全サービスは、高齢者や身体障害者が自宅で安心して生活できるように、その財産や住居を守るための支援を提供するものです。特に認知症高齢者に多い困り事が、貴重品の紛失です。
手元に通帳があることで、お金を使いすぎたり詐欺被害にあうことも考えられます。財産保全サービスでは、年金証書や保険証書、通帳などの証書類や印鑑を預かるといった事を行います。預かった財産は、銀行の貸金庫で保管されるのが一般的です。
そしてもう1つが、契約支援サービスです。主に、高齢者や障害者が自分自身で生活を管理し、契約などの法的手続きを円滑に進めるためのサポートを受けることを目的としています。
住居や生活に必要なサービスの契約、通信サービス、公共料金の手続きなどが該当し、介護や障がい福祉サービスを利用する時も含まれます。
支払いが上手く出来なければ、介護サービスを打ち切らなければならない、ということにもなりかねませんので、地域のソーシャルサービスや自治体の支援事業等がサポートを行います。
本記事では、権利擁護がどんなものなのか、実際に利用できる制度やサービス内容について紹介しました。いずれも高齢者や障碍者が日常生活をより円滑に過ごすために提供され、自立した生活を送るために役立つものです。
どんな制度やサービスがあるのかを知っておくことでスムーズな生活支援につながりますので、是非本記事を参考にしてみてください。