国民健康保険と世帯分離の関係は?負担軽減とメリットを解説

2024.01.31

同居している家族と住民票の世帯を分けることで、介護費用や保険料などの負担を軽減できるかもしれないと考えている方もいるでしょう。

このようなことを「世帯分離」と呼びますが、実際にどのようなメリットがあるのでしょうか?

また、どのような手続きが必要なのでしょうか?

この記事では、国民健康保険と世帯分離の関係について、基本的な知識からメリットやデメリット、申請方法や注意点などを詳しく解説します。

世帯分離を検討している方はぜひ参考にしてください。

 国民健康保険と世帯分離の基本

まずは、国民健康保険と世帯分離の基本的な概念や関係性について説明します。

世帯分離とは何か、どんな人ができるのか、国民健康保険料はどのように決まるのかなどを理解しておきましょう。

以下で解説していきます。

 世帯分離とは?

世帯分離とは、同じ家に住んでいる家族が、住民票上で別々の世帯に登録することです。

例えば、親子や兄弟が同居している場合、それぞれが独立した家計を営んでいれば、世帯分離することができます。

この場合、1つの家に2つ以上の世帯主が存在することになります。

世帯分離の本来の目的は、所得が少ない方の住民税や国民健康保険料を軽減するためです。

住民税や国民健康保険料は、4月1日時点での世帯構成や所得に基づいて決まります。

そのため、世帯分離することで所得が減ったり非課税世帯になったりする場合があります。

 国民健康保険との関係性

国民健康保険とは、日本に住むすべての人が加入することが義務付けられている保険制度です。

国民健康保険に加入している方は、病気やけがなどで医療機関を受診した際に、医療費の3割を自己負担し、残りの7割を保険でまかなうことができます。

国民健康保険に加入している方は、毎年国民健康保険料を支払う必要があります。

国民健康保険料は、市区町村が独自に設定しています。

国民健康保険料は4月1日時点での世帯構成や所得によって決まります。

そのため、世帯分離することで世帯構成や所得が変われば、国民健康保険料も変わる可能性があります。

ただし、世帯分離した年度内は再計算されません。翌年度から適用されます。

 世帯分離がもたらす負担軽減のポイント

世帯分離をすることで、介護費用や国民健康保険料などの負担を軽減できる場合があります。

ここでは、世帯分離がもたらす負担軽減のポイントを3つ紹介していきます。

それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。

 保険料の見直しと節約のメリット

世帯分離をすることで、国民健康保険料を見直し、節約するメリットがあります。

具体的には以下の2つのケースが考えられます。

・住民税非課税世帯になる場合
・所得割が下がる場合

住民税非課税世帯になる場合は、国民健康保険料が全額免除されます。

例えば、親子で同居している場合、子どもの収入が高ければ親子ともに住民税が課税されます。

しかし、世帯分離をして親世帯の収入が少なければ、親世帯は住民税非課税となり、国民健康保険料も免除されます。

 扶養家族の影響

世帯分離をすることで、扶養家族の影響を受けなくなるメリットがあります。

扶養家族とは、社会保険や公的年金などの制度で定められた基準によって扶養される家族のことです。

例えば、配偶者や子どもなどが該当します。

扶養家族は、扶養者の社会保険や公的年金に加入することができます。

これにより、医療費や年金などの給付を受けることができます。

しかし、扶養家族は一定の所得制限を受けます。

扶養家族の所得が制限額を超えると、扶養から外れて自分で国民健康保険や国民年金に加入しなければなりません。

 医療費の支払いにおけるメリット

世帯分離をすることで、医療費の支払いにおけるメリットがあります。

具体的には以下の2つのケースが考えられます。

・高額療養費制度の利用
・医療費控除の申請

高額療養費制度とは、1か月あたりの医療費の自己負担額が一定の限度額を超えた場合に、超過分を国や市区町村から返還してもらえる制度です。

また、医療費控除とは、1年間に支払った医療費が一定の基準額を超えた場合に、所得税や住民税を減らしてもらえる制度です。

医療費控除の基準額は、所得によって異なります。

世帯分離をすることで、所得が減る場合があります。

その場合、基準額も下がります。

これにより、医療費控除を受けやすくなります。

 世帯分離の申請と手続き方法

世帯分離をするためには、市区町村に申請と手続きを行う必要があります。

ここでは、世帯分離の申請と手続き方法について説明します。

申請の方法や必要な手続き、手続きの際の注意事項やポイントなどを理解しておきましょう。

 申請の方法

世帯分離をするためには、まず市区町村に相談してください。

市区町村では、世帯分離のメリットやデメリット、必要な書類や手続きなどを説明してくれます。

また、世帯分離が可能かどうかも判断してくれます。

世帯分離が可能であれば、市区町村から「世帯分離届」を受け取ります。

「世帯分離届」は、住民票上で別々の世帯に登録することを申告する書類です。

「世帯分離届」には以下の内容を記入します。

・世帯主となる人の氏名・住所・生年月日・性別・本籍・国籍
・世帯主以外の同居家族(配偶者・子ども・親・兄弟など)の氏名・生年月日・性別・本籍・国籍
・世帯主以外の同居家族との続柄(配偶者・子ども・親・兄弟など)
・世帯分離の理由(独立した家計を営むためなど)
・世帯分離の日付(4月1日以降であれば任意の日付が選べる)

 必要な手続き

世帯分離を申請するには、以下の手続きが必要です。

・住民票の写しを取得する。
世帯分離をする家族全員の住民票の写しを市区町村の窓口で取得するか、インターネットで申請することができます。
住民票の写しは、世帯分離の日付から3か月以内に発行されたものでなければなりません。

・国民健康保険証を返却する。
世帯分離をする家族全員の国民健康保険証を、所属する市区町村の国民健康保険担当窓口に返却します。
新しい国民健康保険証は、世帯分離後の所得や扶養の状況に応じて発行されます。

・世帯分離届を提出する。
世帯分離をする家族全員が署名した世帯分離届を、所属する市区町村の国民健康保険担当窓口に提出します。
世帯分離届は、市区町村のホームページからダウンロードできる場合があります。
世帯分離届には、世帯分離の理由や日付、新旧の住所や世帯構成などを記入します。

 手続きの際の注意事項とポイント

世帯分離の申請と手続きを行う際には、以下の注意事項とポイントを押さえておくことが大切です。

・世帯分離は4月1日以降であれば任意の日付でできますが、その日付は住民票上で反映されます。
そのため、世帯分離した日付以前の事象に関しては世帯分離前の状況で対応しなければなりません。

・世帯分離した年度内は住民税や国民健康保険料は再計算されません。
翌年度から適用されます。
そのため、世帯分離した年度内に支払った住民税や国民健康保険料は返還されません。

・世帯分離をすることで他の税金や給付が変わる可能性があります。
例えば、所得税や消費税、児童手当や特別定額給付金などです。
そのため、世帯分離をする前には税務署や市区町村に相談してメリットやデメリットを確認しておくことが重要です。

・世帯分離をすることで家族関係や生活環境が変わる可能性があります。
例えば、親子や兄弟が別々の世帯になると、相続や贈与などの法的な問題が発生する可能性があります。
また、家族間のコミュニケーションやサポートも変わる可能性があります。

 世帯分離の具体的な事例

世帯分離のメリットやデメリット、申請や手続き方法について説明しましたが、実際にどのような場合に世帯分離をするのでしょうか?

ここでは、世帯分離の具体的な事例を3つ紹介します。

それぞれの事例について詳しく見ていきましょう。

 夫婦の世帯分離

夫婦の世帯分離とは、夫婦が同居しながらも住民票上で別々の世帯に登録することです。

夫婦の世帯分離をする理由は様々ですが、一般的には以下のようなケースが考えられます。

・夫婦別姓を望む場合
・配偶者控除を受ける場合
・配偶者から暴力を受ける場合

夫婦別姓を望む場合は、現在の法律では夫婦同姓が原則とされています。

しかし、職業上や個人的な理由で自分の姓を残したい場合もあります。

その場合、夫婦の世帯分離をすることで自分の姓を使い続けることができます。

 親子・兄弟の世帯分離

親子・兄弟の世帯分離とは、親子や兄弟が同居しながらも住民票上で別々の世帯に登録することです。

親子・兄弟の世帯分離をする理由は様々ですが、一般的には以下のようなケースが考えられます。

・介護費用や保険料を軽減する場合
・扶養家族から外れる場合
・独立した家計を営む場合

介護費用や保険料を軽減する場合は、前述した通りです。

親子や兄弟が同居している場合、所得や世帯人数に応じて介護費用や保険料が決まります。

しかし、世帯分離をすることで所得や世帯人数が減り、介護費用や保険料も減る可能性があります。

扶養家族から外れる場合は、前述した通りです。

扶養家族とは、社会保険や公的年金などの制度で定められた基準によって扶養される家族のことです。

扶養家族から外れることで所得制限を気にせずに働くことができます。

独立した家計を営む場合は、親子や兄弟が同居していてもそれぞれが自分の収入や支出に責任を持ちたい場合です。

その場合、世帯分離をすることで自分の家計管理をしやすくなります。

 子供が無職の場合の世帯分離

子供が無職の場合の世帯分離とは、子供が無職でも親から独立して住民票上で別々の世帯に登録することです。

子供が無職の場合の世帯分離をする理由は様々ですが、一般的には以下のようなケースが考えられます。

・子供が障害者や病気で働けない場合
・子供が就職活動中や学生で収入がない場合
・子供が自立心を持って親から離れたい場合

子供が障害者や病気で働けない場合は、世帯分離をすることで親の所得に関係なく障害者手当や医療費助成などの給付を受けることができます。

また、親も子供を扶養する必要がなくなり、所得税や住民税、国民健康保険料などの負担を軽減できます。

その他に、親も子供を扶養する必要がなくなり、所得税や住民税、国民健康保険料などの負担を軽減できます。

子供が自立心を持って親から離れたい場合は、世帯分離をすることで自分の家計管理や生活責任を持つことができます。

また、親も子供に対する介入や干渉を控えることができます。

 いつから世帯分離が適用される?

世帯分離をすると、住民票上で別々の世帯に登録されます。

しかし、それだけでは世帯分離のメリットを享受することはできません。

世帯分離のメリットを享受するためには、市区町村によって定められた基準日に基づいて判断されます。

基準日とは、住民税や国民健康保険料などの負担額や給付額を決めるために参照される日付のことです。

基準日は市区町村によって異なりますが、一般的には以下のような日付です。

・住民税:1月1日
・国民健康保険料:4月1日
・高額療養費制度:1か月ごと
・医療費控除:12月31日

 まとめ

この記事では、国民健康保険と世帯分離の関係について、基本的な知識からメリットやデメリット、申請方法や注意点などを詳しく解説しました。

世帯分離をすることで、介護費用や保険料などの負担を軽減できる場合がありますが、それに伴って他の税金や給付が変わる可能性もあります。

また、世帯分離をすることで家族関係や生活環境が変わる可能性もあります。

そのため、世帯分離をする前には、市区町村に相談してメリットやデメリットを確認しておくことが重要です。

世帯分離は個々の状況によって異なります。

自分の家族や収入、支出などを把握しておきましょう。

世帯分離を検討している方は、この記事を参考にしてください。

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