子供が社会人になった世帯分離できるのか?メリット・デメリットを解説

2024.02.09

最近なんだか耳にする「世帯分離」とは何のことかご存じでしょうか?
「世帯」とは、住居と一部の生計をともにする人々からなる集団(広辞苑より引用)と
定義されています。

つまり、とても簡単にいうと住民票の世帯を分けることです。

では、なぜ、世帯分離を行う必要があるのでしょうか。
それは、介護費用負担軽減の一つとして見直すとよいとされているからです。
今回は、うまく使えば介護費用にメリットがある世帯分離について、デメリットも交えながら
お話していきます。

世帯分離とは?

先ほども記載したように、「世帯分離」とは、住民票を分けることです。
同居していても、世帯分離の条件はそれぞれが独立した家計を営んでいることなので問題は
ありません。
世帯分離を行うか考えるタイミングとして、3つあります。

①介護保険サービスを検討し始めているとき:訪問介護、訪問リハビリなど
②介護施設に入居が決定したとき:介護保険老人施設、特別養護老人ホームなど
③介護費用の負担が増えたとき

子供が社会人になったら世帯分離はできる

結論から記載すると、子供が社会人になったら世帯分離ができます。
ただし、注意することがあります。
あくまで世帯分離が可能なのは、それぞれが別の家計で独立して生活していけることが前提です。

それぞれに独立して生活が営める状態ではないと審査された場合、子供が成人となり社会人となっていても、世帯分離ができません。

世帯分離を却下されてしまった場合は、市町村役場に理由を問い合わせてみるといいでしょう。
改善し、世帯分離ができるようになるかもしれません。

子供と世帯分離をするメリット

ここまで世帯分離についてまとめてきました。
子供と世帯分離をするとどんなメリットがあるのでしょうか?

世帯分離を考える方の多くは、介護費や医療費にお困りかと思い、この記事を読んでくださっている
と思います。

そうです、世帯分離をすると、介護費や医療費など負担が軽減される可能性があります。
それでは、ひとつずつ詳しく見ていきましょう。

 介護費用の自己負担額が下がる可能性がある

世帯分離をすると、今後、親は単独世帯として扱われます。
すると、親の所得のみで介護費用負担額が算定されます。

介護保険サービスの自己負担額は、その方の所得により、1割から3割までと分けられています。
同世帯で生活していたが、世帯分離を行ったら、自己負担額が3割から1割まで軽減したという話も
あります。

例えば、要介護5の方が月額426,240円分のサービスを受けるとき、
自己負担額が3割の方は月額127,872円かかります。

それが、自己負担額1割であれば、月額42,624円となり、その負担軽減は一目瞭然です。

 介護保険施設の居住費と食費が下がる可能性がある

現在、介護保険施設とは、さまざまなサービスを提供しています。そのほとんどが、入居することによって受けられますが、そのときにかかってくるのが居住費や食費です。

一般的に介護保険施設の居住費や食費は全額個人負担です。
しかし、世帯分離を行った場合、「負担限度額認定制度」を利用することができる可能性があります。

①所得の要件:本人を含む世帯全員が非課税世帯であること
②預貯金等の要件:預貯金額などが1,000万以下であること(配偶者がいない場合)

ぱっと見ただけだと、厳しい条件ではありますが、世帯分離をするときに必ず相談してみてください。

 生活保護を受けられるようになる可能性がある

世帯分離を行うと、低所得者向けの保障をうけることもできます。
代表的なのは、生活保護です。

介護費や医療費で家計が圧迫され苦しいときに、世帯分離を行い、親を生活保護で申請するのも
手です。生活保護の申請が通れば、親の介護費に充てることができます。

また、最近では低所得者向けの給付金制度もあるため、うまく利用していきましょう。

生活保護を受けられる条件を確認したい場合は、在住している市区町村の役所に問い合わせてみるほか、ホームページに記載があります。

子供と世帯分離をするデメリット

これまで子供と世帯分離をするメリットについて説明してきました。メリットがあればもちろんデメリットもあります。一番のデメリットは、医療保険料が高額になる可能性があることです。
これから大きく3つに分けて説明します。

 国民健康保険料の納付額が増える可能性がある

世帯分離により、世帯が2つになると、それぞれの世帯主が国民健康保険料を支払います。
今まで1世帯分で済んでいたものが、2世帯分となるため、合算すると世帯分離をする前よりも
納付金が上がってしまうケースがあります。

せっかく介護費や医療費に充てようと思い世帯分離をしたのに、支出が増えてしまっては
困りますよね。現在いくら支払っていて、世帯分離をした場合の国民健康保険料がいくらになるのか
まで計算しておくと安心です。

 家族手当がもらえなくなる

世帯分離をすると、扶養手当が支給されない場合があります。
代表的なものだと、会社から支給されていた家族手当や自治体から支給されていた
児童扶養手当があります。

会社や自治体により規定が変わるため、世帯分離をする前に確認しておきましょう。
また、母子家庭の場合、児童扶養手当はとても大切な収入源の一つです。しかし、児童扶養手当は、同一建物で家計を共に生活している家庭を基準として考えています。
親の収入も併せて計算されてしまうため、児童扶養手当が欲しい場合は、二世帯住宅にするなど、家計を分けていることを証明する必要があるそうです。

 手続きが面倒

まず、手続きの場所は居住している市町村役場です。
印鑑、本人確認証、国民健康保険証をもっていき、必要書類に記入後、審査を待ちます。
この申請は本人または世帯主が基本です。

「それぞれの世帯が家計を別として生活を営める」ことを審査条件としているので、
断られることもあります。

無事に審査が通ったあとは、世帯分離した2週間以内に、年金や税金関係の変更届だけでなく、
住民票や国民健康保険の変更届を出さなければいけません。

それぞれに必要な書類が違う上に、不備があったり期日が過ぎてしまったりした場合、
罰則等を受ける可能性もあるようです。
手続き前に問い合わせをし、必要なものをそろえておくと安心です。
また、手続きは一度行うと世帯を戻すのがとても大変で苦労をされたという話をよくSNSで見かけます。家族でよくよく話し合ってから手続きすることをおすすめいたします。

税法上の扶養に入るための条件

世帯分離をしていても親を税法上の扶養に入れることは可能です。
ただし、16歳以上であり、かつその年の12月31日に以下の4つの要件を満たしている必要があります。

(1)配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族をいいます。)または都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。
(2)納税者と生計を一にしていること。
(3)年間の合計所得金額が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)であること。(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
(4)青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと。

出典:国税庁

まとめ

まだまだ聞きなれず、調べても情報がいろいろと出てきてしまう「世帯分離」。
メリットもデメリットも人によっては嬉しいことだったり、困ったことだったりさまざまだと思います。それでも、うまく使えば、よりよい生活へと変わっていくでしょう。

今後、高齢者の方々を支える社会の取り組みとして、一つの選択肢に世帯分離があっても
いいのかもしれません。
また、手続きは一度行うとなかなか戻すのは難しいそうなので、家族でよくご相談されてください。

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