看取り介護という言葉をご存知でしょうか?
看取り介護というのは、身近に死が迫った状態を避けられない方に対して行う介護のことです。
回復や治療というアプローチではなく、避けられない死を迎える方に対して、
精神的や肉体的な苦痛を緩和するためのアプローチを行いながら、
その方の尊厳・その人らしさを残したまま生活を支援することを目的としています。
その看取りについての知識や、看取り介護を考える際の兆候、介護者としての心構えについても
ご紹介していきます。
看取り介護という人生の締めくくりをその人らしく飾るためにもしっかりと知識を
インプットしていきましょう。
目次
看取り介護が必要になった場合に、気になってくるのが看取り介護の期間だと思います。
死が避けられない状態(終末期)であると告知された方とあとどのくらい一緒に過ごせるのだろうか?
どのくらいの状態になると看取り介護の開始を告げられるのだろう?
目安をつけることができることで本人としても周りの方にとっても心構えをすることができる
でしょう。
状態が安定していると、まわりと会話などもできるようなこともあります。
安定している時は、できるだけ気分転換を行う、少量でも好きな食べ物を食べ楽しみを
味わってもらう。入浴を行いさっぱりとした気持ちになる。など、今までの生活をおくりましょう。
言葉を積極的にかけることで、お互いに良い思い出を残すことができるでしょう。
会話ができなくても、耳は聞こえていることや目を開けなどの反応だけであっても、
積極的に言葉をかけましょう。
見知った方の声を聞いて過ごすだけでも、ひとりじゃないと寂しい気持ちが減り
安心できるものです。精神的なケアという意味合いでも、介護する時、お部屋に立ち寄ったときなど
こまめに言葉をかけていきましょう。
看取り介護を行う際、亡くなるまでの変化はどういうイメージでしょう?
緩やかに亡くなっていくイメージを持つ方が多いかもしれませんが、実際には安定している時も
あれば、突然体調を崩してしまうこともあります。
誰一人として、同じ状態や症状な方はいません。その方によっては家族や介護者は、
体調が安定している時と不安定な時を繰り返し経験することになるかもしれません。
持ち直してくれることは嬉しいものですが、何度も繰り返す場合は精神的にも体力的にも
疲弊してしまいかねません。
実は、看取り介護には家族や介護者へのケアも含まれています。
つらい時のは我慢せず気持ちを吐き出してみるのはいかがでしょうか?
今以上の回復は見込めず、安定期にも戻らない状態になる時期を看取り介護の後期といいます。
ご自宅であればもしもの時の連絡先の確認や本人の意向や希望について確認、思い出してみましょう。
施設や病院であれば、最後に会いたい方に連絡を取り、面会する時間を設けましょう。
本人が望むものや、事前に確認していた最後の迎え方などがあれば、できる限り希望に沿った
対応をしてあげてください。
寂しい気持ちにならないよう配慮することが大切です。
家族や介護者も辛い時期となりますが、本人との最後の時間を大切に有意義に過ごせるように
してください。
残念ながら、看取り期間に平均はありません。
本人の病気であったり、体の状態、年齢など色々な要因があり、数日から数ヶ月という期間に
わたります。
お医者様から余命の宣告を受けた場合、こまめに状態を確認して体がどの程度の状況なのか確認し、
どのような対応をすることができるか相談することができるでしょう。
看取り期間に平均がないことは、家族や介護者にとっても辛い期間になるかと思います。
「あとどれくらい一緒にいられるのだろう」「いつまでこの悲しい期間が続くのだろう」
その方にとっても色々な感情が湧き出てくる時期かと思います。
福祉事業所の職員や介護をしてくれているケアワーカーさんに悩みや感情を聞いてもらい、
みんなでより良い看取り介護をしていきましょう。
看取り介護を開始するサインとしては「体重が減った」「全介助が必要で意思疎通が困難」「食事量が低下する」「治療ができない状態にある」などで看取り介護の開始を判断します。
それでは、看取り介護が開始され、いよいよ看取る時が来たかどうかという兆候はあるのでしょうか?また、その兆候はまわりが見ただけで判断できるものなのでしょうか?
介護や看護の場面でよく看取りの兆候として観察し判断材料とする項目について説明していきます。
一つずつ順に見ていき、より良い看取り介護に活用していきましょう。
眠ってしまうことが多くなり、反応がない状態です。それに伴い、呼吸のリズムなどが変化していきます。看取りの時が近づくにつれ、体が生命を維持する司令塔(呼吸中枢)にも時折、
酸素不足の影響が及んでいる状態です。
過呼吸と無呼吸を繰り返すようになります。
胸や腹が上下する普通の呼吸と肩周辺が動き一生懸命に息をしているような状態を繰り返したり
します。(肩呼吸、努力呼吸)
本人は生命維持のために呼吸することを頑張っているので、家族や介護者は言葉をかけたり、
体に触れたりなど反応がなくても、接して安心できるようにしましょう。
家族も辛くなって当然の状態ですので、決して無理はし過ぎないように見守りましょう。
看取り介護を開始してからしばらくは、体の不調や痛み、ストレスに反応し脈拍が増加します。
しかし、看取り介護の進行に伴い、脈拍は徐々に弱くなります。
これは、心臓の機能が低下し、少しずつ衰えていくためです。
心臓は酸素や栄養を運ぶ能力を失い、脈拍が減少します。
脈が弱くなり、血液を送り出す力がなくなってくると、手足の先が冷たくなってきます。
さらに進行すると手足の先が青や紫色に変わってきます。
これはチアノーゼといって、血液が届くなってきている状態を示し、心臓から遠い足先から順に
チアノーゼが出始めます。
喘ぐような呼吸は、「下顎呼吸(かがくこきゅう)」と呼ばれる呼吸です。
これも努力呼吸の1つで、呼吸することすら限界なほど、最後の力を振り絞りながら
顎で喘ぐような呼吸をしている状態のことを言います。
最後に少しでも肺に酸素を取り入れようとするのは、生理的な反応です。
しかし、意識をつかさどる脳の部位にももう酸素は届いていない状態なので、意識はもうない状態で、夢の中にいるような状況です。家族がこの様子をみるのをかなり辛い状況かと思います。
とても辛い状況に見えますが、実際は苦しくない、だれしもが必ず経験する。
最後の準備をしている状態であることを理解してもらう必要があります。
この時に感情的になったり混乱し、看取り介護の方向を急転換したりしないよう、
事前に家族や本人に説明し、意向を確認しておきましょう。
この意向は千差万別の考え方があり、「点滴や酸素吸入だけはしてほしい」という方もいれば、
「ありのまま自然に最後を迎えたい」という方もおられます。
まずはじめに、看取り介護をするために介護者は看取りとは何かを十分に学ぶ必要があります。
家族や本人との信頼関係の構築もとても重要で、「ここなら最後の場所となってもいい」と安心感を
与えることが重要です。
家族も人間で迷いが生じることもあるでしょう。
そのたびに家族の心に寄り添い励まし合うことも看取り介護の重要な役割の1つです。
実際に看取り介護に入ると、食事介助や排泄介助、清潔保持など基本的な介助でも丁寧に安心できる
言葉をかけながら介助をしましょう。
食事を受け付けなくなることも当然のことで、「食べないから死ぬ」という考えではなく
「死ぬから食べない」と準備がはじまったと受け止め無理強いのない介助を心がけましょう。
看取り介護に入ると、積極的な治療や介護はできなくなります。
亡くなる準備が始まった方にとって必要がなくなったとも言えるでしょう。
しかし、準備が整い最後の時を迎えるまで、当然、まったく苦痛がないわけではありません。
そのために必要なのが苦痛を和らげるためのケアです。
病院や施設、自宅によって方法は様々ですが、痛みのコントロールや栄養の管理(量の変更や本人の好きなメニューの提供など)、褥瘡の予防やケアなど症状や様子に合わせてこまやかなケアを
実施します。
これには、薬剤師や管理栄養士、心理士など各専門職によるチームでのサポートが必要になります。
看取り介護は身体的な負担ももちろんですが、精神的な負担も大きいものです。
身体的な苦痛を取り除く介護とあわせて精神的な苦痛を和らげるケアも重要です。
本人の死に対する不安な気持ちや焦りなどに対応することが大切です。
死に対して孤独感を抱くのは当たり前のことです。決してひとりではないことを伝え続けていき
ましょう。
また、看取り介護を行いながら少しでも安心した表情や呼吸、体の力み、負担の少ない介護方法
など、気づいたことは些細なことであっても、チームで共有しどの介護者が対応に入っても、
同じように安心できる介護を提供できるようにしていきましょう。
看取り介護には、終末期を迎えた方への介護だけではなく、家族のサポートも看取り介護に
含まれます。
家族には「物理的な不安」「経済的負担」「精神的負担」の3つの負担があることを理解しましょう。
家族がいる場所と本人が住む場所が離れていると、面会にくるだけでも大きな負担になります。
もっと面会にきてくれたらというのは、介護者目線だけに考えてしまっているかもしれません。
家族の状況も考えることが重要です。
看取り介護を続けるために、経済的な負担がかかっているケースも少なくありません。
本人の年金や所得だけでは賄うことが難しく家族が一部の費用を負担しているケースもあります。
経済的状況についても把握しておく必要があります。
看取り介護は精神的な不安や苦痛をともなうものです。
自宅での看取り介護となれば心身ともに疲弊していきます。
また頼れる家族が他にいるのかなどによってもその負担は違ってきます。
これらのことをしっかりとアセスメントし、各専門職と共通の認識をもち家族と関わることが
とても大切です。
家族ともこまめにコミュニケーションをとり、感情や悩み相談にのり、励まし会える環境を作り
家族のサポートをしていきましょう。
看取り介護は、本人の最後の場所、家族の最後の別れとなります。
今回、紹介した看取り介護とは何か、看取りに入る兆候、最後の時が近づいている兆候、
家族の負担への理解とサポートについて、介護者は十分に学ぶ必要があり、失敗は許されません。
家族にとって「ここが最後の場所になってよかった」と安心感をもってもらえることが重要です。
家族も本人も同じ人間です。不安や迷いは当然生じます。
そのたびに家族や本人に寄り添い励ましあうことも必要になってきます。
しっかりと看取り介護について学び、準備をすることで、その方が介護が必要になっても
最後まで自分らしく生きられるよう支援し、残された家族にとってもいい最後だったと思って
いただけるよう、日々自己研鑽を怠らず、創意工夫に努めていきましょう!