デイサービスで受けられる機能訓練とは?内容や目的を徹底紹介

2024.03.06

高齢者社会が進んでいる現在、医療法人や社会福祉法人以外の企業も進出し、
たくさんのデイサービスがあります。

そのために、選ばれる事業所になるべく、各事業所で他とは違ったサービスを展開する事業所も
増えてきました。

そのサービスの内容の違いの一つが機能訓練です。
特に進出してきた企業は、メインの事業を活かして、あんまマッサージ指圧師や鍼灸師などを
配置して、今まで主流だった機能訓練とは違った、より専門的な内容のサービスを展開しています。

それではここから、デイサービスにはどのような機能訓練指導員がいて、
どのような内容が行われているかをご紹介していきたいと思います。

デイサービスで受けられる機能訓練とは?

デイサービスは、自宅で生活されている利用者さんが通う介護事業所です。
そのためデイサービスでは利用者さんが自宅でその人らしい生活の維持、あるいは改善
できるように、機能訓練を行っています。

在籍している機能訓練指導員の専門性によっても内容は異なりますが、身体機能と認知症予防の
ための機能訓練を、個別やゲームのようなレクリエーション形式など、様々な形で実施しています。
これより、その詳細をみていきましょう。

 機能訓練の目的は?

機能訓練とは、生活の質(QOL)を維持する目的で行われる訓練です。
つまり、日常生活に必要な基本動作である日常生活基本動作(ADL)の改善・維持のために
行われます。

デイサービスでは、体操や歩行訓練などの身体機能訓練、脳力トレーニング(脳トレ)などの
認知症予防を行う訓練を主に行っています。

その他、機能訓練指導員の持っている資格によっては、可動域訓練や、嚥下の機能訓練などの
機能訓練が可能です。
その方法もレクリエーションであったり、専門職によるマンツーマンで行ったりしています。

 機能訓練の対象者は?

介護保険サービスを受けるには要介護認定が必要です。
要介護認定は、要支援の1と2、要介護が1~5の合計7段階あります。

要支援とは、基本動作はすることができるが、負担の大きな家事は支援が必要と言う方です。

デイサービスは機能訓練を行う場所であり、基本動作が可能である要支援1と2は、
デイサービス自体を利用することができません。
よって機能訓練を受けることができるのは、要介護認定を受けている1~5段階の方になります。

機能訓練とリハビリテーションの違いをご紹介

機能訓練、リハビリテーション共に身体機能の改善を目的に行われます。
大きな違いは医師による指示があるかどうか、そしてそれらの行為を行う実施者の違いです。

リハビリテーションは医師の指示の下に、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士のみの
限られた職種のみが実施可能な行為です。

一方で、リハビリテーションは医師の指示は不要で、身体機能の改善、現在の状態を維持するために、看護師・作業療法士・理学療法士・言語聴覚士・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師など幅広い職種が行うことが可能になります。

施設等によっては機能訓練とリハビリテーションを同義として使っている所もあるので、
確認が必要です。

機能訓練の主な内容をご紹介

機能訓練は、認知症予防の為の訓練、身体機能訓練に分けられます。

認知症予防の訓練はパズルやクイズなど、よく耳にする能力トレーニングを紙や
ゲーム形式で行っています。

身体機能訓練は利用者のニーズによって様々なものが行われます。
その一例を下記します。

〇階段昇降・乗降訓練・・・階段を上り下りする訓練
〇歩行訓練・・・自足歩行を持続するための訓練
〇器具を用いた訓練・・・トレーニングマシン等を使用した筋力アップ・維持のための訓練
〇体操・・・ラジオ体操やエクササイズなどの身体を動かす訓練
〇生活動作訓練・・・食事や着脱など生活動作の訓練
〇口腔機能訓練・・・嚥下体操など誤嚥性肺炎を予防するための訓練

上記のような訓練が日替わりなどで行われています。

デイサービスで受けられる機能訓練は有資格者により行われる

介護施設では運営や設備などに基準が設けられており、義務化されています。
その中でも、様々な職種のかかわりが必要となる介護施設の特徴なのが、人員基準です。

機能訓練を求められているデイサービスでは、この人員基準に機能訓練指導員を配置することが
義務付けられています。

病欠などにより機能訓練指導員がいない日があると、減算になるので注意しましょう。
この機能訓練指導員になれるのは、この後説明する7つの国家資格のうちいずれかの資格を
有する者となっています。

 機能訓練指導員に必要な資格と定義

厚生労働省では、機能訓練指導員の定義は「日常生活を営むのに必要な機能の減退を防止するための訓練を行う能力を有するもの」とされています。
介護福祉士は含まれません。

この中の「訓練を行う能力を有する者」に該当するのが、下記の有資格者です。
通信講座により独自の機能訓練関連の資格や修了証を発行するところもありますが、
機能訓練指導員になるには下記の国家資格が必要です。

・作業療法士
・理学療法士
・看護師・准看護師
・言語聴覚士
・あんまマッサージ指圧師
・柔道整復師
・鍼灸師

ここからそれぞれの有資格者の役割と特徴をご紹介していきたいと思います。

 作業療法士

英語では「Occupational Therapist」といい、日本でも作業療法士の事を「OT」と呼んだりもします。
心身に障害がある方に対して、「作業」に焦点を当てて、治療・支援します。
具体的には以下の3つの能力に焦点を当てています。

・基本的能力動作・・・運動、感覚、精神、認知機能
・応用的動作能力・・・食事やトイレなど日常生活で必要な活動
・社会的適応能力・・・社会活動の参加、趣味活動など

この3つの能力を改善・維持して、その人らしい生活をサポートします。

 理学療法士

英語で「Phisical Therapist」といい、日本でも作業療法士の事を「PT」と呼んだりもします。
怪我や病気により運動機能が低下した方に対して、運動療法、物理療法などの物理的手段を用いて
自立した生活を送れるように支援するリハビリテーションの専門職です。

歩くなどの日常動作で基本となる動作の改善を目指します。
関節可動域の拡大、まひの回復、痛みの軽減など痛みに直接働きかける治療法から、
歩行練習など能力向上を目指す治療法の技術を用いて日常生活の自立を目指します。

 看護師・准看護師

看護師の仕事は傷病者の療養上の世話や、診療の補助を行う職種ですが、機能訓練指導員としても働くことができます。

看護師になるためのカリキュラムの中には運動分野はあまり多くありません。
そのためリハビリテーションの知識は少ないですが、看護師としての医療知識を活かして
利用者のケアや、バイタルチェックを通しての健康状態を見極めたり、疾病のリスク管理を
行うことができます。

デイサービスでは看護師と機能委訓練指導員を兼務している場合が多くあります。

 言語聴覚士

病気や交通事故などによりコミュニケーションに必要な各機能が損なわれることがあります。

言語聴覚士はこのようなコミュニケーションに問題がある方が、自分らしい生活を送れるように
支援します。
その他に摂食・嚥下機能関係も支援しています。

高齢者になると嚥下機能が低下してしまうため、のどに食べ物をひっかけてしまったり、
誤嚥性肺炎リスクが高くなります。
そのため高齢者福祉では、食にかかわる嚥下機能への支援に多くかかわっています。

 あんまマッサージ指圧師

手や指などで押したり、もんだり、たたいたりするなどの力学的な刺激を与えて、
体のコリをほぐします。

体のコリをほぐすことで血行を良くしたり、脊椎の歪みを矯正することにより、
症状の緩和・回復を図ります。

要介護認定を受けている方の中には脳梗塞や脳出血で麻痺や拘縮がある方もいます。
その方やその他の方においても、関節可動域の維持や拡大、むくみやしびれがある方のための
血行促進、コリや疼痛のある方には痛みの緩和のサポートをすることが可能です。

 柔道整復師

骨折や捻挫、じん帯、筋などの人体の損傷に対して、非観血的療法により治療します。

非観血的療法とは手術などの出血を伴わない治療法のことです。
つまりは整復・固定などにより機能回復を目指します。

柔道整復師は上記のように手術などの外的治療ではなく、人が本来持っている自然治癒力を
引き出す身体能力と運動能力の専門家です。
そのため高齢者においても施術により、自然治癒力や筋力を高めて自分らしい生活を送るための支援を行います。

 鍼灸師

「鍼(はり)」と「灸(きゅう)」を使ってツボ、皮膚、筋肉に刺激を与えて、
自然治癒力を高めたり、病気の改善や予防など、健康回復を目的として治療を行います。
副作用が少ないといわれ注目されている治療の一つです。

「鍼」と「灸」は別々の国家資格ですが、同時に取る方が多いのもあり、二つの資格を持っている方を「鍼灸師」と呼びます。
鍼灸師が機能訓練指導員になるためには、鍼灸師以外の機能訓練指導員が在籍している事業所で
半年以上の実務経験が必要です。

個別機能訓練加算のチェックをしよう

個別機能訓練加算とは、機能訓練指導員を配置し、利用者さんに対して機能訓練計画書を作成し、
それに基づき訓練を実施し、効果や実施方法を評価することで取得できる加算です。

機能訓練指導員の配置が義務付けられているデイサービスでは取得しやすい加算の一つです。

単位数も個別機能訓練加算(Ⅰ)イが56単位/日、個別機能訓練加算(Ⅰ)ロが85単位/日、
さらにLIFE(科学的介護情報システム)への提出により、さらに個別機能訓練加算Ⅱ20単位/月が
上乗せで算定可能になります。

事業所側からすると取りやすい条件で高い報酬なので、取りたい加算の一つです。
こういった理由もあり、求人には機能訓練指導員の募集を見るかと思います。

まとめ

これまでデイサービスの機能訓練について説明してきました。

デイサービスでは配置義務のある機能訓練指導員に様々なリハビリテーションの専門職がなれるよう
になっています。
それぞれの専門性を活かし、それぞれのアプローチから利用者さんの自宅でのその人らしい
生活の継続を支援できるということです。

現在、施設の人員不足により、在宅介護の需要は高まるばかりです。

その在宅介護を支える一つであるデイサービス、その中で行われる機能訓練は、
より健康的な生活を支援しているため、利用者さんにとっても介護業界にとっても重要な
位置づけといえるでしょう。

お役立ちコラム一覧へ戻る