身体拘束とは何か?定義や弊害・具体的事例を紹介!

2024.03.06

身体拘束とはどんなものか、ご存知でしょうか?
高齢者や身体的に制限のある人をベッドや椅子などに拘束することを指します。

これは安全や管理のためとされることもありますが、適切でない使用は自尊心の低下や筋力低下、
深刻な精神的・身体的健康リスクをもたらす可能性があります。

本記事では、身体拘束の定義、弊害、事例について詳しく解説しますので、
是非参考にしてみてください。

身体拘束とは?

身体拘束は、高齢者や障害者のケア現場でよく見られますが、その実態や影響について知ることが
重要です。

身体拘束がいかに人権を侵害し、身体や精神に及ぼす影響を考えると、その使用は慎重に検討が
必要なのかもしれません。

 厚生労働省による身体拘束の定義

厚生労働省による身体拘束の定義は、次のようなものです。

・身体拘束とは、 徘徊、他人への迷惑行為等のいわゆる問題行動などを防止するために、
車いすやベッドに拘束するという行動の自由そのものを奪うこと

・車いすやいすからのずり落ちや転倒、ベッドからの転落、車いすとベッドとの間を移乗する際の
転倒等といった事故を防止するために、これらの用具に拘束するという、福祉用具の間違った利用
のこと

2000年4月に始まった介護保険制度に伴い、高齢者が利用する介護保険施設などでは身体拘束が
禁止されており、現在身体拘束ゼロに向けた取り組みがいろいろと行われています。

身体拘束は原則禁止

身体拘束は個人の尊厳や人権を侵害する行為であり、自由を制限するものであるため、
その行使は慎重に考えられる必要があります。

身体拘束は事故や怪我、精神的な不安や混乱を引き起こすリスクが高まります。
特に高齢者や認知症の患者に対しては、深刻な結果をもたらす可能性があります。

身体拘束は身体的な不自由さや苦痛を引き起こし、精神的なストレスや抑うつを誘発する可能性が
あります。
それによって、個人の健康や福祉に悪影響を及ぼすこともあります。

緊急やむを得ず身体拘束を認める3つの要件

身体拘束は高度な自己決定権を尊重する観点から基本的に禁止されていますが、
稀な状況下においては緊急やむを得ず行われる場合があります。

3つの要件が存在しており、

  • 命の危険が発生する可能性が高い切迫性
  • 他の方法が無い非代替性
  • あくまでも一時的に行われる一時性
    の3つです。

身体拘束にあたる具体的な事例を紹介

ここまでに解説した通り、身体拘束とは、徘徊・他人への迷惑の予防のために、
高齢者の身体的自由を奪うことです。
具体的な事例としては以下が挙げられます。

・ベッドや車いすの高齢者を縛りつける
・部屋に閉じ込める行為
・向精神薬を使って身体の自由を奪う行為
・歩行中の転倒を防ぐため、歩行そのものを妨げる

このほかにも色々とありますが、多くの場合、身体的拘束は高齢者の安全を図るために行われます。

とくに認知症の方は、思考力が低下しているために予想外の危険にさらされる場面が多いため、
結果として身体拘束になってしまう事もあります。

身体拘束による弊害とは?

身体拘束は高齢者や身体的制約のある人々に対するケア手段として一般的には禁止されています。
実際、その使用には重大な弊害が存在します。ここからは、身体拘束がもたらす潜在的なリスクとその影響について探求します。

 精神的弊害

身体拘束は、本人にとって深刻な精神的な弊害をもたらす可能性があります。
身体の自由を奪われることは、本人だけでなく家族にも大きな精神的苦痛をもたらします。
身体を拘束される怒り・悲しみ、生きる気力が失われるといったようなものが挙げられます。

戸惑いや不安ばかりが増すため、精神的苦痛はさらに大きなものとなります。
混乱や不安が、症状を悪化させることも少なくありません。

とくに認知症の方は状況把握が困難であるため、なぜ身体の自由を奪われるのか理解できません。

 身体的弊害

長時間拘束されると、当然ながら身体を自由に動かせなくなります。
長時間同じ姿勢を強要されるため、関節の萎縮・筋力の低下が起こる、運動不足や身体的な圧迫により食欲が減退するといった事が挙げられます。

運動不足になるため、筋力の低下や関節の硬直といった身体機能の低下が起こりやすくなります。
身体機能の低下は体力の低下でもあります。

心身が弱ることで食欲が減退したり、感染症のリスクが高まったりする可能性もあります。

 介護施設内の弊害

身体拘束は、介護施設内で生じる多くの弊害をもたらす可能性があります。

身体拘束は倫理的な問題を引き起こし、介護者に精神的な負担を与えます。
介護者は患者の人権や尊厳を尊重しながら、安全と自立をどう両立させるかというジレンマに
直面します。

身体拘束は患者との信頼関係を損なう可能性があります。
患者は介護者を信頼し、尊重されたいと望んでいますが、身体拘束はその期待に反する行為であり、
関係を悪化させる恐れがあります。

身体拘束を管理するためには追加のコストと時間がかかります。
適切な監視やケア計画の立案に時間とリソースを費やす必要があり、介護者の負担まで増加します。

 社会的弊害

身体拘束を行っていることが明らかになれば、その施設への社会的な信用は失墜します。

施設への社会的信頼の低下、介護業界全体への社会の不信感、身体拘束が原因で発生した
医療費などの損失といったものが挙げられます。

不信感は該当施設のみならず、介護施設・有料老人ホームのほか、介護業界そのものに向かう
おそれもあります。身体的拘束が、思わぬ経済損失に発展するケースもあります。

たとえばベッドの柵を乗り越えようとした高齢者が転落し、大ケガを負ったとしましょう。
施設には医療費などの賠償が求められるため、経済的な損失が発生します。

身体拘束をせずに高齢者をケアするためには?

高齢者のケアにおいて身体拘束は最終手段。
愛情と尊厳を尊重したアプローチが重要となっています。

柔軟なコミュニケーションや適切な環境整備、安全なモビリティ支援が大切ですから、
それを実践するための方法を探りましょう。

 危険行動の原因を探り協力体制を構築する

転倒などの事故が起きにくい環境があれば、身体拘束をする必要はありません。

手すりの設置やベッドの高さの見直しなどを行いましょう。
あわせて、施設職員が全体で支え合う環境づくりも重要です。
人手が足りない現場では、身体拘束の確率が高くなります。

反対に人手が十分であれば、身体拘束以外の選択肢を選べます。
緊急対応には施設全体で応援態勢をとるなど、スタッフ間でのサポート体制を築きましょう。
個々のニーズに合わせたケアプランを立て、高齢者がより良い生活を送れるよう支援することが
目指されます。

まとめ

本記事では、身体拘束とはどんなものか、定義や弊害、どんなことが具体的事例になるのかなどを
紹介しました。

高齢者の身体拘束が許されるのは、切迫性・非代替性・一時性が認められ、かつ複数職員による
確認手続きと家族の同意が得られた場合のみとなっています。

協力体制を構築することは、介護者、医療従事者、家族、地域の関係者が連携し、
高齢者の健康と安全を確保するために重要となっていますので、本記事を是非参考にして
みてください。

お役立ちコラム一覧へ戻る