中心静脈栄養で余命はどれくらい?メリット・デメリット・注意点を解説

2024.03.07

中心静脈栄養という言葉をご存知でしょうか。
消化器官の障害などで栄養がとれない方が中心静脈をから水分や栄養をとる方法です。

末期がんなど延命治療で行われることもあります。
中心静脈栄養を開始したら、もう予後は短いのではないかと不安になる方もいるかもしれません。

今回の記事では中心静脈栄養で余命はどれくらい伸びるのか、
メリットやデメリットなどについて詳しくご紹介します。

延命治療で行われることもある中心静脈栄養とは

中心静脈栄養とは病気によって口からの摂取が難しかったり、消化器官が低下している方などが
中心静脈を使い、水分や電解質などを入れて栄養をとる方法です。

末期がんなど延命治療の一環として中心静脈栄養を選択することもあります。
口からの摂取が難しい状態でも中心静脈に高カロリーの輸液を投与し、栄養不足や脱水症状を
予防できるからです。

栄養状態が回復すれば、再び口から食べられることもあります。
最期まであきらめたくない方は中心静脈栄養を試してもいいかもしれません。

中心静脈栄養で余命はどれくらい伸びるのか?

中心静脈栄養で余命はどれくらい伸びるのかは年齢や病気の状態にもよるため個人差が大きいです。
しかし、中心静脈栄養を行ったことで余命が6~8ヶ月伸びることもあるそう!

中心静脈で使われる高カロリー輸液の成分はぶどう糖をはじめとし、ナトウリウムやマグネシウム
などの電解質が含まれており1日におよそ1000kcalの高い栄養が、24時間かけて持続的に投与
されています。

高カロリー輸液を入れることで栄養状態の低下を抑え、治療の効果が高まることにより
余命の延長に繋がるのかもしれません。

中心静脈栄養のメリットとは

中心静脈のメリットには寿命が延びる可能性があります。

中心静脈を使って全身に高カロリーの栄養を届けることで栄養状態の低下を防ぎ、合併症の発症を
抑えることで、治療の効果が高まる可能性があります。

また、口から食べることがないため誤嚥したり、誤嚥性肺炎のリスクが下がることもメリットの
ひとつです。

さらに長期的に確実に栄養摂取が可能で自宅でも使うことができます。
外出や入浴に制限のないもののあり、一般的な末梢への点滴と違い針を何度も刺さなくていいことも
中心静脈の特徴です。

中心静脈栄養のデメリットとは

中心静脈栄養のデメリットはカテーテルを挿入するための処置や手術が必要なことです。

心臓近くの太い静脈(中心静脈)に点滴チューブを挿入するためのカテーテルを入れる手術を
行わないといけません。

手術は局所麻酔で行い、約30分から1時間で終了します。

日帰りで行うか、一泊するか、料金も病院によって異なるので中心静脈栄養を行う場合は病院に
料金などを確認しましょう。
また、医療的な管理を行うため介護者に負担がかかる可能性があります。

慣れるまでは訪問看護を利用し、管理方法について質問したり相談することがお勧めです。

中心静脈栄養の注意点とは

中心静脈栄養にはメリットがたくさんありますが、注意点も。

合併症やカテーテルの自己抜去、点滴の閉塞、感染症などトラブルも多く注意が必要です。
以下の記事では中心静脈栄養の主なトラブルについて詳しく解説します。

 合併症に注意

中心静脈栄養の合併症には主に感染症、カテーテルの閉塞、血糖異常などに注意しなければ
なりません。

チューブの挿入部の皮膚が汚染していたりなど何らかの原因で汚染されたものが体内に入る
ことによりカテーテル内で感染症が起こってしまうことがあります。
挿入部付近に腫れや発赤、膿などが出ている場合は受診してください。

また、カテーテルやチューブのねじれにより点滴が閉塞してしまう可能性があるため、
ねじれは直しましょう。
ねじれを直しても直らない場合はカテーテルが破れているなど他の可能性があるため、
医師や看護師に相談しましょう。
さらに高濃度の糖が点滴されているため血糖の変動が大きく高血糖になりやすく、点滴終了時は急に
低血糖になることもあるので併せて注意が必要です。

1日に複数回血糖を測ることをお勧めします。

 カテーテルに自己抜去が原因の出血に注意

中心静脈栄養のカテーテルを自分で抜いてしまうと出血することがあります。

カテーテルを抜いてしまう方は、認知症などカテーテルがなぜ必要なのかを理解していない方が
多いです。カテーテルを引っ張って抜いてしまったり、ちぎってしまう場合もあります。

自己抜去してしまうと挿入部から出血する恐れがあるため、出血を見つけた際は挿入部を押さえて
止血しましょう。

ほとんどの出血がしっかり圧迫止血することにより落ち着きますが、出血が続く場合は
看護師や医師に相談してください。

 点滴の閉塞に注意

中心静脈栄養では点滴の閉塞に注意しましょう。

カテーテルやチューブのねじれにより点滴が閉塞してしまう可能性があるため、ねじれは
直してください。
また、カテーテルが破れたり、体内で位置がずれる位置異常が起こることで閉塞してしまうことも
あります。

さらに、点滴中に血液が逆流して閉塞する可能性もゼロではありません。
ねじれを直しても点滴が落ちない場合はすぐに看護師か医師に連絡しましょう。

完全に閉塞してしまった場合はカテーテルの入れ替えや再挿入が必要となるため、点滴がきちんと
落ちているかは適宜確認してください。

 感染症によるトラブルに注意

中心静脈栄養は感染症によるトラブルに注意が必要です。

静脈に挿入したカテーテルが体の外に出ているタイプは汗や浸出液で汚染しやすく、
感染症の原因になりやすいです。

挿入部を保護するフィルムテープは1週間に1度は必ず交換と消毒を行い、汚染した場合は
都度交換と消毒を行いましょう。

日々の観察として挿入部に腫れや発赤、膿は出ていないかを注意して見てください。

CVポートの場合、輸液ルート接合部から細菌が侵入したり、挿入部位の皮膚常在菌が針刺入時に
血管内に侵入しすることで血流感染が起こることがあります。
適切なカテーテル管理と清潔保持した状態で針を刺すことが重要です。

中心静脈栄養以外の選択肢は?

中心静脈栄養以外の選択肢の代表的なものは3つあります。

  • 胃ろう
  • 経鼻栄養
  • 末梢点滴 です。

胃ろうはお腹に開けた穴、経鼻栄養は鼻からチューブを通し栄養を入れます。
末梢点滴は手か足の末端に点滴針を刺し、点滴から栄養をとる方法です。

以下の記事では胃ろう、経鼻栄養、末梢点滴のそれぞれの特徴について詳しく解説します。

 胃ろう

中心静脈栄養以外の選択肢に胃ろうがあります。

胃ろうは手術でお腹に小さな穴を開けて、チューブを通して胃に直接栄養を送る医療的ケアです。
胃ろうは身体機能の低下などにより口から食べられない方が対象となります。
ただし、消化器官に障害がある場合は適応外です。

胃ろうと並行して口から食べる練習を行うこともできます。
必要な栄養量を口からとれなくても、胃ろうから栄養をしっかりとることで、口から再び食べれる
ようになった事例もあるため栄養摂取の手段の一つとしてとても有効です。

 経鼻栄養

経鼻栄養とは鼻の穴から胃までチューブを入れて栄養を摂取する方法です。

食べ物を飲み込む力が衰えており、栄養が十分にとれていない方や口や喉の手術を行った方などが
対象となります。

メリットは手術が不要で、やめるのも簡単なため一時的な栄養補給に適していることです。
チューブの違和感があること、誤ってチューブを抜いてしまいやすこと、1~4週間ごとに
交換が必要などデメリットも多いため、長期的な栄養方法が必要となった場合は他の栄養方法が検討
されます。

 抹消点滴

末梢点滴とは腕や足の末梢の静脈に点滴針を刺して点滴で栄養を取る方法です。

栄養状態は良好でも口からの栄養補給が不足している時に1週間~10日間程度の栄養維持として
使われます。
点滴に使われる輸液剤は電解質や、アミノ酸製剤、ビタミン剤が含まれ栄養豊富です。

メリットは特別な手技を必要としないことと、点滴針の留置による危険性や合併症が少ないことが
ポイントとなります。

しかし、点滴中は動きづらく、何かに引っかかって点滴針が抜けたり、点滴をなぜしているのか
理解していないと針を自分で抜いてしまう可能性があるのがデメリットです。

抹消点滴はあくまで一時的な栄養補給の手段であり、長期的に栄養補給をしなくて行けない場合は、
中心静脈栄養や胃ろうが検討されます。

まとめ

今回の記事では中心静脈栄養で余命はどれくらい伸びるのか、メリットやデメリットなどに
ついて詳しくご紹介しました。

中心静脈栄養で伸びる余命は年齢や病気の状態にもより個人差が大きいものの
6~8ヶ月伸びることもあるようでした。

感染症や合併症に注意しなければならないなどデメリットを把握したうえで、栄養状態の低下を防ぎ
寿命を延ばす効果もある中心静脈栄養を最期の選択肢に選んでもいいかもしれません。

この記事を読んだ方が中心静脈栄養について前向きに考えていただけたら幸いです。

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