運動療法とはどんなもの?目的や種類を徹底紹介!

2024.03.07

若い人から年配の人まで、取り組みやすく、内容によって、いろんな病気やケガ予防に効果を発揮するのが運動療法です。

運動療法にも様々な種類があり、理学療法士が行う専門的なものから、一般の人でもできることも
たくさんあります。
これから運動療法について、その内容や種類、目的や予防に向いている疾病等について、
説明していきたいと思います。

運動療法とは?

運動療法とは、運動を行うことによって治療部分の運動機能の回復や、症状の改善をはかる治療法
です。

一般的には、食事療法や薬物療法と共に、成人病の一つである生活習慣病の治療法として
用いられます。

その他にも理学療法士によるリハビリテーションの一環としても使用されてる治療法です。
また、福祉業界においても次の3つの効果が期待されています。

・身体を動かすことによる体力維持・増進
・脳活性化による認知症予防
・有酸素運動による脳の血流の改善

これらの効果により介護予防の治療法としても取り入れられています。

運動療法を行う目的

身体をよく動かしたりなど運動を行っている人は、死亡率が低く、糖尿病、高血圧症などの生活習慣病や骨粗鬆症などの割合も低いことが言われています。
その運動療法の目的としては主に次の6つが上げられます。

・体力向上や筋力・持久力の維持改善
・健康寿命を延ばす
・生活習慣病や肥満予防
・日常生活動作の維持・改善
・骨粗鬆症や筋萎縮の予防・心の健康の維持

それではこれからこの6つについて詳しく見ていきたいと思います。

運動療法の分かりやすい目的が、体力向上や筋力・持久力の維持改善です。
運動やトレーニングによって筋肉量の増加、あるいは体力が向上すると様々な効果が期待できます。
その代表的なものが下記の通りです。

・移動機能の向上による転倒防止
・サルコペニアや、その他要介護リスクの高まる疾病の予防・改善

 体力向上や筋力・持久力の維持改善

・誤嚥性肺炎のリスク減少
このようなものがあげられます。特に疾病や栄養状態等により筋肉量が減ることをサルコペニアと
言いますが、それらは要介護のリスクを非常に高めてしまいます。
それらを予防、あるいは罹患してからも改善する効果があるため、体力向上や筋力・持久力の
維持改善はとても効果的です。

 健康寿命を延ばす

健康寿命とは、支援や介護の必要がなく、自立した生活が出来る状態の期間を言います。
つまり、健康寿命を伸ばすということはしっかりと介護予防を行って、要介護認定を
受けなくてもよい状態を継続していくことです。

その介護予防を行うのにも運動療法は効果を発揮します。
運動療法は、歩行などの移動機能、その他生活機能を維持・改善することで、
生活の質(QOL)を維持することで、介護予防となり健康寿命を延ばすことができます。

 生活習慣病や肥満予防

脳梗塞などの冠動脈疾患、高血圧症や糖尿病などの生活習慣病は、運動量に応じてそのリスクが
低くなることが報告されています。

特にウォーキングやラジオ体操などの有酸素運動はエネルギーが多く消費され、内臓脂肪が
燃焼されやすくなり、さらに内臓の動きを活発化させます。

それにより肥満や血糖値、その他にも高血圧の予防や改善につながるのです。
健康診断の結果等により生活習慣病の恐れや肥満の傾向がある方は、運動療法により予防や
改善を目指しましょう。

 日常生活動作の維持・改善

日常生活を続けていくためには、起居動作、移動、食事、更衣、排泄、入浴、整容などの
基本動作が必要になります。
一般的にこの日常生活動作の事をADLと言います。

起居動作とは、寝返り、起き上がり、立ち上がり、座る等の動作を差します。

これらの日常生活動作を維持・改善していくためには、日常的に身体を動かすことも重要ですが、
加えて筋力の維持・向上が必要です。

そのため、日常生活動作を維持・改善するために、運動療法を行い筋力の維持・向上を
目指しましょう。

 骨粗鬆症や筋萎縮の予防

運動療法は骨粗鬆症や筋萎縮の予防効果もあります。

骨粗鬆症は骨の量が減り、骨折がしやすくなる疾病ですが、心拍数を上げる程度の運動により
骨密度が増加し、さらに筋力トレーニングでは骨の形成を促進させる効果があります。

筋萎縮は筋肉が痩せることにより筋力が低下する疾病です。
痛みやだるさなどの理由であまり使わないようにすると、筋力は痩せて委縮してしまいます。
そのため定期的に運動や可動域訓練を行うことはとても重要です。

 心の健康の維持

運動は自律神経を構成する交感神経と副交感神経を調整する機能を持っています。

運動をすると活動的になる交感神経が優位に働きポジティブ思考になりますが、行き過ぎた運動は
逆にストレスになってしまいます。
副交感神経は心身共に休んでいる時に優位に働きますが、運動不足ではうまく活動しにくい状態に
なってしまうのです。

加えて運動はストレス解消効果もあるため、運動療法により適度な運動を行って自律神経を整え、
心の健康を保つことができます。

運動療法の種類とは?

運動療法にはいくつか種類があります。
運動療法の代表的なものが、有酸素運動、筋肉トレーニング、ストレッチング、無酸素運動です。

目的や人によって、適したものを選んでいく必要があります。
これからそれぞれの特徴について説明していきたいと思います。

 有酸素運動

有酸素運動とは、筋肉を動かす際のエネルギーとして酸素を使う運動です。
比較的軽度の運動を数十分などの長時間行います。

酸素と一緒に、脂質や糖質を消費するため、血中脂質や血糖の減少が期待でき、高血圧、高血糖、
脂質代謝異常などの生活習慣病の改善に効果があります。
生活習慣病の他にも肥満予防やストレス解消効果もあるため、これらを目的とする場合には効果的な
運動です。
ウォーキングや体操、ジョギング等がこれに該当します。

 筋肉トレーニング

筋力トレーニングとは、その名の通り筋力を増強するための運動です。
関節の動きを伴わない等尺性運動と、関節の動きを伴う等張性運動があります。

そして筋肉に負荷をかけて繰り返し動作を行う等張性運動をレジスタンス運動とも呼びます。
筋力が低下している人に早期に取り入れやすい運動です。

一般的な負荷をかけて行うものもありますが、高齢者においては椅子に座って足を上げたり、
足踏みしたりすることも筋力トレーニングに含まれます。

 ストレッチング

よく耳にする「ストレッチ」は「伸ばす」と言う意味であり、ストレッチングとは筋肉の柔軟性を
高めるための運動です。

関節の動きを伴って筋肉の伸縮を繰り返して行う動的ストレッチングと、筋肉をある程度伸ばした
状態で静止して行う静的ストレッチングがあります。

運動前後にこれらを取り入れることで、怪我の予防と、疲労の蓄積を予防することができます。
また、筋肉の柔軟性を高めるため可動域を広げることができます。可動域の維持、拡大等により、
特に拘縮の予防に特に効果的です。

 無酸素運動

無酸素運動とは、酸素を使わずに筋肉を使う負荷の強い運動のことです。

負荷が大きく短時間に集中して行いますが、筋肉量を増やす効果があります。
そのため、筋肉量が減ってしまう疾病であるサルコペニア等の予防に特に効果的です。

また下半身の無酸素運動により、下半身が鍛えられることで転倒防止にもなります。
また急に強い負荷をかけるとケガをするリスクが高まるため注意が必要です。

踏み台昇降、スクワット、ダンベル運動などがこれにあたります。

理学療法士が行う運動療法

理学療法士が行う運動療法には代表的な訓練に以下のようなものがあります。

・関節可動域訓練
・基本動作訓練
・筋力増強訓練
・持久力増強訓練
・治療体操
利用者や患者のそれぞれの目的や用途に応じて、これらの訓練を効果的に使用し、身体的・精神的な
機能の回復を図り、自立して生活できるようにすることを目的にしています。

そのため、理学療法士の役割は病気の治療を行いながらも、日常生活を行う能力を維持・向上させる
ことです。

まとめ

今回、運動療法について説明してきました。運動療法といっても種類があります。
そして、その種類に応じてどの病気の予防に向いているかなど、それぞれが特性を持っています。

また、運動療法も理学療法士の専門的なものもありますが、高齢者においても家で特殊な道具が
なくても行うことが可能です。

少しでも健康寿命を延ばすために、難しい運動ではなくとも、簡単で継続してできる運動から
始めてみてはいかがでしょうか。

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