みなさんはbarthel index(バーセルインデックス)という言葉をご存知でしょうか?
介護の現場でよく使われている評価指数のことですが、介護に馴染がない方や、
最近介護の仕事を始めたという方には、あまり馴染みのない言葉でしょう。
実施計画書や加算の評価指数として、介護の現場では常識というほどに利用されている
barthel indexについて今回はご紹介します!
目次
barthel index(バーセルインデックス)とは、「日常生活動作がどの程度回復したか?
を判断するための尺度」の1つです。
食事、歩行、着替えなどの日常生活の動作を評価するもので、病院や介護現場では医師や
看護師だけでなく、理学療法士や作業療法士、機能訓練指導員などが、要介護者や障がいを持つ方の
状況を正確に理解するための、国際的なADL評価基準となっています。
バーセルインデックスには以下の特徴が挙げられます。
・日常動作10項目の「できる」を採点し評価するという方法。
・ADL評価が簡単にできる。
・判定にかける時間も短くてすむ。
・介護の現場では特に使いやすい指標である。
・ADL維持等加算の評価指標としてバーセルインデックスが採用されている。
※令和3年度 介護報酬改定より
※ADL維持等加算算定時のADL評価にはバーセルインデックスを適切に評価できる
「一定の研修を受けた者」という要件があります。
バーセルインデックスの評価項目は「10項目」あります。
その項目において、定められた一定の内容をクリアするかしないかが採点のポイントと基準に
なります。
採点方法は、各項目に「自立」「一部介助」「全介助」という基準があり、
それぞれの項目に別々の点数がつけられており、全てクリアすると100点満点となります。
獲得した総合点数により生活全体の自立度を確認します。
総合計の場合、「85点以上」で「自立」、「60点以上」で「部分自立」、
「40点以上」で「大部分自立」「40点未満」で「全介助」と振り分けられます。
それでは、それぞれの項目について順に見ていきましょう。
まず、食事の評価基準と採点方法は次の通りです。
10点:自立(自助具などを自分で利用し食事できる。時間内に食べ終えられる)
5点:部分介助(食べる段階で切ることが必要。エプロンが必要であるが、自分ではつけられない)
0点:全介助(経管栄養等)
自立の具体例:適当な時間内に自分で食事をとって食べることができる。
自助具を自分で装着して食事を食べることができる方
一部介助の具体例:食べ物を細かく切ってもらうなどの介助が必要。
自助食器などを配置し、取りこぼしがないように一部介助が必要な方。
全介助の具体例:寝たきりで全て介助が必要。経管栄養でしか食事できないなどの方。
移乗についての、評価基準と採点方法については次の通りです。
15点:歩行自立・自立(車いすの一連の移乗動作が一人で安全にできる。ブレーキや方向転換、
フットレストの操作など)
10点:軽度の部分介助が必要(声かけ等)
5点:座ることは可能であるが、移動などはほぼ全介助(介助すれば立ち上がれるなど)
0点:全介助または不可能
移乗は、車いすからベッドに移乗するまでを評価の対象とします。
具体的には、車いすでベッドに近づく、ブレーキをかける、フットレストを上げる、ベッドに乗り移る
ベッドに横になる、ベッドから起きる、ベッドに座る、車いすに乗り移る、までを評価します。
整容の評価基準と採点方法は次の通りです。
整容とは身だしなみを整えることを指し、それには洗顔、整髪、歯磨き、ひげ剃り、化粧、
爪切りなどが含まれます。また、整容は個人個人で行う方法、道具や時間帯も異なる動作であり、
この整容は生活リズムを維持するためにとても大切な活動になります。
5点:自立(洗顔、歯磨き、整髪、ひげ剃り、化粧など)
0点:不可能
整容動作は、手洗い、洗顔、歯磨き、ひげ剃り、化粧などの準備や動作が自分でできるかを
「自立」か「全介助」で評価します。
トイレ動作の評価基準と採点方法は次の通りです。
10点:自立(衣服の着脱、トイレットペーパーの利用、パットの自己管理等)
ポータブルトイレ便器などの管理(使用、衛生管理)
5点:部分介助(自立での立位は不可能、衣服の着脱に介助が必要。清拭動作に問題がある等)
0点:全介助または不可能(トイレ動作がほぼ不可能、衛生管理不可、ベッドでのおむつ交換等)
トイレ動作は、トイレの出入り、ズボン・下着の上げ下げ・お尻を拭く、流すなどが
自分でできるかを評価します。
入浴についての評価基準と採点方法は次の通りです。
5点:自立(浴槽に入る、シャワーを使う、髪や体を洗うなど)
0点:部分介助または不可能(洗身、洗髪に介助が必要、転倒の危険性、機械浴等)
入浴は、浴槽に入る、シャワーを使う、体を洗う、頭を洗うといった動作が自分でできるかを2段階で評価します。
自立の具体例:全ての入浴動作が自分でできる。シャワー浴が自分でできる。
自分で浴槽内に入浴できる。
部分介助または不可能の具体例:入浴の動作全てに介助が必要な状態。
歩行の評価基準と採点方法は次の通りです。
15点:45メートル以上の歩行が一人でできる。※補助具(歩行器・車いすを除く)の使用は可。
10点:脇を支える介助や、見守りありで45メートル以上の連続歩行ができる(歩行器の使用を含む)
5点:歩行は不可能だが、車いすを一人で安全に操作でき、45メートル以上の連続でできる。
0点:上記以外の状態。
歩行の評価では、平地の歩行または車いすの移動ができるか4段階で評価をします。
階段昇降の評価基準と採点方法は次の通りです。
10点:自立して階段昇降ができる。(手すりなどの利用は問いません)
5点:介助、階段昇降に少しだけ介助が必要である。
0点:階段昇降はできない。
階段昇降の評価と採点には、階段を安全に昇り降りができるかを3段階で評価します。
階段の昇り降りの階段の段数は、特に問われていません。
自立の具体例:介助や見守りの必要なく階段の昇り降りができる。手すりや松葉杖、杖を
利用して階段の昇り降りができる。
介助の具体例:階段昇降に見守り、または少しの介助が必要。
着替えの評価基準と採点方法は次の通りです。
10点:自立して着替えができる。(靴、ファスナー、装具の装着を含みます)
5点:部分介助で着替えができる。(標準的な時間内で着替えができる。半分以上は自分で着替えが
できる)
0点:上記以外の状態。
着替えでは、上半身の衣類、下半身の衣類、下着、靴、装具などをどのくらい自分で着脱できるかを
3段階で評価します。
自立の具体例:すべての衣類や靴、装具、コルセットなどを自分で着脱ができる。
部分介助の具体例:半分以上は自分で着替えができるが、一部分介助が必要である。
排便コントロールの評価基準と採点方法は次の通りです。
10点:失禁なし。(浣腸や座薬の取り扱いも可能)
5点:ときどき失禁あり。(浣腸や座薬の取り扱いに一部の介助が必要である)
0点:上記以外
排便コントロールでは、便失禁があるかどうかを3段階で評価、採点します。
自立の具体例:失禁がなく排便コントロールが可能。人工肛門の衛生管理が可能。
脊髄損傷者などは座薬や浣腸を使っても良い。
一部介助の具体例:座薬や浣腸に介助が必要であり、時々便失禁がある。
排尿コントロールの評価基準と採点方法は次の通りです。
10点:失禁せず排尿ができる。収尿器の取り扱いも可能。
5点:時々、失禁がある。収尿器の取り扱いに介助が必要。
0点:上記外の状態。
排尿コントロールでは、失禁がないかを3段階で評価します。
自立の具体例:失禁がなく排尿コントロールができる。脊椎損傷がある方などは、
収尿器の着脱や清掃管理が自分でできていること。
一部介助の具体例:たまに尿器やトイレに行くのが間に合わず、失禁することがある。
収尿器の着脱や管理に介助が必要である。
全介助の具体例:常に尿失禁がある。全介助が必要となる。
ここまで、バーセルインデックスの評価項目と採点方法についてご紹介しました。
ここからは、バーセルインデックスのメリットとデメリットについて紹介していきます。
メリットとデメリットを把握し、自分や自分が働いている会社に活用できる場面があるかどうかを
見極めていきましょう!
バーセルインデックスのメリットは次の通りです。
①評価方法が簡単で短い時間で評価ができる。
バーセルインデックスは色々あるADL評価方法の中でも、評価方法が簡単で比較的誰でもできる
スケールです。
評価の区分が2〜4と少ない区分なので、どの区分に当てはめればよいかがわかりやすく
迷わず採点ができるからです。
②100点満点で自立度を把握しやすい。
評価の合計点数が100点中何点なのかという評価なので「自立度がどれくらいなのか」がパッと見て
把握できるのも大きなメリットです。
評価項目が5点刻みなので、計算もしやすいというのもメリットの1つです。
③世界にも通用する評価基準である。
パーセルインデックスができたのは、1995年のアメリカでそこから徐々に世界に広まった経緯が
あります。そのため、パーセルインデックスの評価は日本だけでなく、世界でも通用するという
メリットがあります。
パーセルインデックスのデメリットは次の通りです。
①細かい能力は把握しづらく、変化の過程もわかりにくい。
パーセルインデックスは、大まかで分かりやすい反面、細かい能力については把握しづらいという
デメリットがあります。
また、身体機能が回復する過程を記録できないため、「ADLの回復がどのくらいの期間でおきたか」
などの詳細を把握するのには向いていないというデメリットがあります。
②正確な評価が難しい
パーセルインデックスは評価内容が簡易的で、一般的な動作をあらかじめ決めたものであるため、
当てはめることができない動作や状態の利用者の場合は評価から外れてしまうことになり、正確な
評価が難しくなるケースが出てくることがあります。
また、採点者が変わると評価が変わってしまうケースも考えられます。
今回は barthel index(バーセルインデックス)についてご紹介しました。
barthel indexとは という基本的なことや特徴から、評価項目と採点方法、メリットとデメリットまで
詳しくご紹介しました。
バーセルインデックスは、介護の現場で広く使われており、評価方法も簡単な指標となります。
また、実施計画書や加算の評価指数にも使われておりバーセルインデックスの
知識をしっかり把握し、使いこなせるようになることで実際の介護や仕事にどんどん役立てて
いきましょう!