介護における口腔ケアの目的は?メリットや方法も詳しく紹介!

2024.04.01

介護における「口腔ケアの重要性とは?」「清潔にする以外にどんな効果があるの?」と疑問に
思う方もおられるかと思います。

また、介護で口腔ケアをしているが歯科医師に習うタイミングなども少なく
「このやり方が適切なの?」と不安ながらも介助をしている方も少なくないのではないでしょうか?

今回はそんな口腔ケアに焦点をあて、目的やメリット、どんな効果があるのかまで詳しく
ご紹介します!

そもそも口腔ケアとは?

口腔=口の中 を意味し、文字通り口の中をキレイにする介助のことです。

この口腔ケアは超高齢化社会に突入する日本において、今後重要性を増していくと考えられています。
口腔ケアをして、口の中をキレイに保つことで、歯周病や虫歯をはじめとする様々なトラブルを
予防する他、口腔機能を保つ役割もあります。

そして、口腔機能を保つということはそれに関連して、全身機能にも繋がっていきます。

 口腔ケアを行う目的

口腔ケアの目的は「口の中をキレイに保つこと」はもちろんのこと、「食事を噛んだり
飲み込んだりすること」にも繋がります。

衛生や食事のため以外の目的として、口腔内や口周りの筋肉を動かしたり刺激することで
「会話に使う筋肉のトレーニング」にもなり、それも大きな目的です。

さらに、口を動かすことや筋肉を刺激することは脳への刺激にもなり「認知症の予防」にも
繋がると言われています!

このように、口は様々な機能に繋がっており「口をケアすることは、全身の機能に働きかける」こと
といっても過言ではないほど重要なのです!

 口腔ケアの種類

口腔ケアといっても「機能的口腔ケア」と「器質的口腔ケア」があります。

・機能的口腔ケアとは、嚥下機能を鍛えるトレーニングや口のマッサージなどによって
「食べたり、話をしたりする口の働きの維持や向上を目指すケア」のことを意味します。

・器質的口腔ケアとは、歯磨きやうがいなどの口腔ケアを通じて、歯や歯茎、舌などに付着した
汚れを除去し、口腔内を清潔に保つケアを意味します。

機能的口腔ケアは、口腔機能に制限を抱えている方にとって、生活の質を上げることに繋がり、
器質的口腔ケアは口をキレイにすることで細菌が体内に入ることを防ぎ、誤嚥性肺炎などのリスクを
減らすことに繋がります!

口腔ケアのメリットとは?

口腔ケアの大きなメリットは「QOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上」が期待できる
ということです。

口腔ケアで口腔機能が回復すると、食欲の増進やしっかりと食事を噛む、飲み込めるようになります。食事をしっかり食べられるということは、体力が増進し活動も積極的になります。
この循環が起きることでQOLの向上に繋がるということになります。
それ以外にも様々なメリットがありますので順に見ていきましょう。

 虫歯・歯周病の予防

口腔ケアで口の中の食べかすや細菌を取り除くことで、虫歯や歯周病を予防することができます。
また細菌や歯垢は口臭の原因にもなるため、その改善にもなります。

実は口の中の健康を保つことは全身の健康を保つことにも関連してきます。
心血管疾患や糖尿病、呼吸器疾患などたくさんの病気のリスクと関係があります。

口のことだけだと軽く考えてしまうことはとても危険です。
口腔ケアを怠ることで病気のリスクも上がってしまうと考えることで、口腔ケアの重要性が
増すでしょう。

 感染症の予防

口腔ケアと関連する感染症で有名なのは「誤嚥性肺炎」です。

誤嚥性肺炎は細菌を含む唾液や食べ物を誤嚥することで、肺に細菌が入り、増殖することで
炎症が起きる肺炎です。「細菌を含む唾液や食べ物」が原因のため、口腔内に細菌が増殖している
状態で誤嚥を起こすことでこの肺炎のリスクが上がるということになります。

口腔ケアをしっかりし細菌を普段から取り除くことで、この誤嚥性肺炎をはじめとする感染症を
予防することに役立ちます。

誤嚥性肺炎での死亡者数は年々増加しています。また、口腔ケアをしっかりすることで誤嚥性肺炎で
入院したとしても、入院期間が短く済むというデータもあります。

 認知症の予防

口腔ケアを行うことは、口の中をマッサージすることにもなります。
口を動かしたり刺激することは「脳への刺激」にも繋がります。

また、口腔ケアを行い口腔機能を維持、回復することでしっかりと食べ物を咀嚼することができるようになることも脳への刺激に繋がります。
脳にある海馬という部位は記憶を司る部位であり、「噛むという行為」はこの海馬の神経細胞を
増加する効果があります。

その結果、「口腔ケアで口腔機能を維持・回復する」=「脳の神経細胞を増加し認知症の予防に
つながる」
ということになります。

 味覚改善・食欲増進

味覚は唾液や水分に溶けたものだけを感じ取ります。
舌が汚れた状態ではこの味覚が反応しにくくなり、味を感じづらくなります。

口腔ケアを行い、汚れを取り除くことで味覚がしっかりと味を感じるようになり、味覚改善に
繋がります。

また、唾液の分泌が増えたり、味をしっかりと感じ食べる楽しみが回復することで、食欲増進にも
繋がります。

味覚改善と食欲増進が起きると、低栄養や脱水の予防にもつながり、結果QOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上にも繋がる好循環が期待できるでしょう!

 円滑なコミュニケーション

口腔ケアを行うことで、口や舌の機能が改善されると発音がよくなることが期待できます。
発音がよくなることで円滑にコミュニケーションができるようになります。

また、口腔内が汚れていると口臭の原因にもなり、それを気にして会話が減った方も、
気兼ねなく会話を楽しむことができるようになるでしょう。

そして、口腔ケアにより口周りや顔の筋肉がリラックスすると、表情も豊かになり他の理由とも
相まってコミュニケーションが促進されます!
気兼ねなく会話を楽しむことはQOLの向上にも繋がります!

口腔ケアに必要な道具

ここからは、口腔ケアの手順やポイントについて説明していきます。
口腔ケアに必要な道具と道具についての理解を深めることは口腔ケアにとって重要です。

・歯ブラシ:高齢者は歯茎が弱いので「毛の柔らかい歯ブラシ」を選ぶ。
できるだけ自分で行うよう支援するために本人が利用しやすい歯ブラシを選びましょう。
手首の細かい動きが難しい場合は電動歯ブラシを利用するのもひとつの手段です。
・歯間ブラシ:歯の間の歯垢は歯ブラシでは取りづらいことがあります。その時は歯間ブラシを利用しましょう。
・舌用ブラシ:舌用ブラシは舌苔を取り除くためにあります。強い力でこすると舌が傷つくため、
優しい力でブラッシングしましょう。
・義歯用ブラシ:義歯を洗浄する場合は、義歯用ブラシを利用しましょう。歯と義歯は硬さが
違うため専用のものを利用するのが望ましいです。
・スポンジブラシ:口を大きく開けるのが難しい方や自分の歯がすでにない方にはスポンジブラシを
利用しましょう。
・ガーグルベース:ガーグルベースは寝たままの姿勢であっても、うがいができるように作られて
います。プラスチックなど軽い素材でできているため、力の弱い高齢者でも利用できます。
・口腔用ウエットティッシュ:口腔用ウエットティッシュは、使い捨てが可能で口腔内の汚れを拭き取るために利用します。また、うがいができない方や認知症があり水を飲み込んでしまう方などは、
この口腔用ウエットティッシュを利用することで、口腔ケアができます。

口腔ケアの方法は?

ここまで、口腔ケアのメリットや準備物についてご紹介してきました。
ここからは、口腔ケアの手順について見ていきましょう。

間違った手順で口腔ケアを行うと、効果が半減したり口腔内を傷つけたりする危険があるため、
しっかりと手順を確認しておきましょう。

 歯磨き・うがい

まずは、うがいをします。うがいで口腔内の汚れや食べかすを洗い流してから歯磨きをしましょう。
歯磨きなどが終わった後にもうがいを行い、歯磨きで落とした汚れが口の中に残らないように
気をつけましょう。

次に歯磨きを行います。歯ブラシは鉛筆を持つように持ちます。歯垢が貯まりやすい歯と歯茎の間などを注意して磨きましょう。
歯ブラシは力を入れすぎて磨くと歯茎を傷つけてしまいますので、優しく磨きましょう。

また、介護をする場合は本人に「痛みがないか」「苦しくないか」を確認しながらブラッシング
しましょう。

 舌の掃除

舌ブラシを利用して、舌のブラッシングを行います。
奥から手前に向けて優しく動かしていきます。乾燥している場合は湿らせてから行うように
しましょう。

舌ブラシには、ブラシタイプのものやゴムタイプのものなどがあります。
自分に合った舌用ブラシを選んで利用しましょう。

舌苔が多くついている場合は、一度のブラッシングで取り切ろうと何度もゴシゴシすると舌を傷つけることになるため注意しましょう。

1回の口腔ケアでの舌のブラッシングは十回程度で十分なので、毎日継続して少しずつ舌苔を取り除いていくよう心がけましょう。

 口腔清拭

口腔清拭は、体を起こせない時や水を口に含めない時、歯ブラシが口の中を傷つける時に行います。

方法としては、スポンジブラシを水に濡らし、軽く水気を絞り口腔全体の細かい部分まで食べかすや
汚れを取り除き、口腔内を潤った状態にしましょう。

スポンジブラシを無理に口にいれると、口腔内を傷つけたり喉を突いてしまったりする危険があり
ます。
口角から優しく口の中に入れ、奥から手前にクルクルと回すように引き出し、汚れや食べかすを
取り除いてきましょう。

 入れ歯の掃除

入れ歯の掃除をする時は「流水で流した後」に「義歯用の歯ブラシ」で磨きましょう。
保管する時は「専用容器やケースに水をいれて漬けて保管」しましょう。

義歯には「総入れ歯」と「部分入れ歯」があります。
総入れ歯の場合は、大きな汚れを専用ブラシで磨き取り除きます。汚れのつきやすい部分は
「上顎の後ろのふち」「人口歯の付け根」「下顎の内側」になります。

部分入れ歯の場合はそれに加え金具の部分を丁寧にブラッシングしましょう。
細かい汚れは洗浄剤も併用して除菌しましょう。

 唾液腺のマッサージ

高齢者は唾液の分泌量が減るため、口腔内が乾燥しやすくなります。
唾液の循環がないと口腔内に細菌が留まりやすくなり、口臭の原因にもなります。
口腔ケアの際には、唾液腺のマッサージも合わせて行うことで自浄作用を促しましょう。

唾液腺は「耳下腺」「顎下腺」「舌下腺」があり、これらの唾液腺をマッサージを行い唾液の分泌を
促しましょう。

また、唾液腺マッサージは食事前に行うことで、むせや噛みにくい状況の予防にもなります。
強くマッサージする必要はないため、優しくマッサージをしましょう。

口腔ケアを行う際の注意点を紹介

介護における口腔ケアを行う際の注意点は以下の通りです。

① 丁寧なコミュニケーションを心がける。
② 乾燥している場合は湿らせてから口腔ケアを行う。
③ 正しい姿勢で口腔ケアを行い、誤嚥に注意する。
④ 体調に変化があった場合は注意する。
⑤ 口腔内に痛みがある場合は無理に行わない。
⑥ 義歯は外して掃除する。
⑦ 専門的なケアが必要な場合は歯科医に相談する。

これらの注意点を守りながら、先に述べた手順にそって適切で快適な口腔ケアを実践しましょう。

まとめ

今回は、介護における口腔ケアの目的と題し、メリットや方法について詳しくご紹介しました。

口腔内が不衛生なままだと、虫歯や歯周病を始め、生命に関わる可能性のある誤嚥性肺炎の可能性も
高まります。また、口は体の各機関と密接に繋がりがあり、怠ると様々な疾患に繋がるリスクがでて
きます。
逆に口腔ケアをしっかりと行い口腔機能を維持・回復することで脳への刺激にも繋がり認知症の
予防にも期待できます!

しっかりと適切な口腔ケアを実施、QOLの向上を目指しましょう!

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