平成12年より始まった介護保険制度。この制度は、介護が必要な人を社会全体で支える大切な
制度です。
介護保険サービスを利用するためには、介護認定という認定が必要でこの認定に大きな影響を
与えるのが「介護認定調査員」です。
現在、日本の高齢者は総人口の28%を超え、今後も介護を必要とする高齢者が増えてくると
予想されます。
そこで、今回は介護認定に大きな影響を与える「介護認定調査員」の役割や必要な資格、
収入まで解説していきます!
目次
介護認定調査員とは、要支援・要介護区分を決めるための「1次判定に必要となる情報を集める仕事」
をする人です。
要介護区分によって受けられるサービスが異なってきますので、申請者や家族にとっても大きく
影響のある役割といえます。
それでは、介護認定調査員の役割について具体的に見ていきましょう。
介護認定調査員の主な役割は「介護申請者へ聞き取り調査をすること」と「調査票をまとめて介護認定審査会に報告」することです。
介護申請者への聞き取り調査は、介護認定調査員のメインの業務で、申請者に1次判定に
必要な情報について、聞き取りをします。
聞き取りは、自宅・入居施設など、普段くらしている環境で、対面して行われます。
介護申請者の負担を考慮し聞き取りは原則1回だけです。
1回の聞き取りで必要な情報を聞き取りしなければならないため、事前の準備がとても重要になります。
聞き取りの調査は、6つの分類、74項目の聞き取りが行われ、その内容を調査票にまとめることも
大切な仕事であり、申請者の声を直接、判定の場に届けることができるのは、
医師と認定調査員だけといっても過言ではないくらいに重要な役割を担っています。
介護認定調査員が行う調査の内容には、「概況調査」「基本調査」「特記事項」にわかれています。
ここからは、それぞれの調査内容がどういったものなのかを解説していきます。
どんなことが聞かれるのかを事前に確認しておくことは、介護が必要になった人の状態を
正確に伝えることに役立ちます。
また認知調査員を目指す方にとってもこの内容を理解しておくことはとても大切なことになります。
概況調査とは、現在受けているサービス・既往歴・自宅・家族などの「対象者の状況を調査する」
ものです。
概況調査で得た情報は「概況調査票」にまとめます。
この調査票には「調査実施者」「調査対象者」「サービスの状況」「家族」「自宅」などの
環境を記載します。
「日常的に使用している機器」がある場合はそれらについても、聞き取りを行い、概況調査票に
まとめます。
「サービスを利用」している場合は、サービスの種類だけでなく「頻度」も聞き取り、
概況調査票に記載します。
機器やサービスについて、不明な点がないか、必要であれば事前に確認しておきましょう。
基本調査では、「身体機能・起居動作」「生活機能」「認知機能」「精神・行動障害」
「社会生活への対応」「過去14日間に受けた特別な医療」について調査します。
それぞれの項目について、事前に確認し答えられるようにすることで、スムーズかつ正確に、
調査員に情報を伝えることができ、適切なサービス利用に繋げることができます。
それぞれの分類について、簡潔にまとめると以下の通りです。
身体機能・起居動作:麻痺や拘縮の有無、立位、座位保持、歩行など身体機能に関する項目。
生活機能:移乗・移動、排泄、食事、洗髪、更衣、外出頻度など、生活に必要な機能に関する項目。
認知機能:意思の伝達、生年月日や年齢、自分の名前、季節や場所の理解、徘徊など、
認知に関する項目。
精神・行動障害:被害妄想、感情が不安定、昼夜逆転、独り言や独り笑い、介護を拒否など、
精神状態とそれらに関する行動に関する項目。
社会生活への対応:薬の内服、お金の管理、買い物、調理、など社会生活への対応に必要な能力に
関する項目。
過去14日間で受けた特別な治療:点滴の管理、経管栄養、透析、酸素療法、ストーマの処置に
関する項目と、モニター測定や褥瘡の処置などの医療行為に関する項目。
特記事項とは、聞き取り調査と確認調査書に記載されている内容が一致していない場合や、
説明が必要な場合に記載されます。
基本調査票の能力に関して、実際の確認した動きと普段の状態が違うケースなどが挙げられます。
【説明が必要な場合の例】
・掃除はできる。しかし、階段や細かい場所の掃除は介助が必要。
・交通機関に乗ることができるが、乗り物に乗り降りする際には付き添いが必要。
・意思の伝達はできるが、その日の精神状態や体調によってできない日もある。
認定調査員の雇用形態は「非正規雇用や嘱託社員雇用の募集が多い」
「専門として働く人は少ない職種」です。
例えば、時給1400円や、日給1万5千円、1件につき3500円など、アルバイト、パートなど
多様なスタイルで働くことができます。高い収入を目指せる職種です。
日本の高齢者数は、総人口の28%を超えるほど高齢化が進み、介護を必要とする人が増えています。
しかし、それを判定する介護認定調査員は、足りていない現状にあります。
それゆえに、今後重要性が高まってくる仕事の1つと言えます。
介護認定調査員は、自治体の職員や業務を受託している法人などが行います。
自治体の非常勤で求人を募集しているところもあり、地域によって異なります。
給料や雇用形態は、その法人などによって違い、雇用の期間が決まっているパターンもあります。
地域ごとに違いますが、基本的には社会福祉法人や、社会福祉協議会などの組織が行っていることが
多いようです。
また、介護支援専門員(ケアマネージャー)として働いている場合は、更新や区分変更の調査を
実施することができます。
介護認定調査は、「介護支援専門員」のほか「一定の条件を満たす人」によって行われます。
一定の条件とは、「都道府県が行う調査員研修を修了し、受託元の自治体が行う研修を受ける」
というものです。
また、所定の資格を取得し、5年以上、資格に関わる業務に従事していることも条件です。
対象の資格は以下のようなものが挙げられます。
・医師 ・歯科医師 ・薬剤師 ・保健師 ・助産師 ・看護師 ・准看護師
・歯科衛生士 ・理学療法士 ・作業療法士 ・言語聴覚士 ・社会福祉士 ・介護福祉士 ・機能訓練士 ・義肢装具士 ・精神保健福祉士 ・栄養士
・柔道整復師 ・あん摩マッサージ指圧師 ・はり師 ・きゅう師
介護認定調査員になり、働き始めたとしても自分に合っていない職であれば、
長続きしなかったり、やりがいを持って仕事に打ち込めない場合があります。
働くことが苦痛になり、自分自身や周りの負担になる可能性もあります。
事前に興味がある方は、適性があるかどうか確認することでリスクを減らしたり、
事前に勉強や努力できる場合があります。
ここからは、介護認定調査員になるための必要な能力についてご紹介します!
認定調査員は初対面の方と直接合って、聞き取り調査を行うため、コミュニケーション能力が
必要になってきます。
コミュニケーション能力が高いというのは、単に話がうまい、聞くのがうまいだけではありません。
介護におけるコミュニケーションには、相手が話した内容だけでなくその裏に隠された本当の
気持ちやニーズ、価値観を理解し、スムーズにコミュニケーションができる人を指します。
コミュニケーションを上手くとるコツとしては、自分が話す割合が4〜6割くらいで会話を進めると
良いと言われています。
人は、相手が4割以下しか話さない時は「興味がない」と受け取り、6割以上話す時は
「自分の話は聞いてくれていない」と感じるようです。
そのため、自分が話す割合を4割〜6割までにすることを念頭に、会話を進めると
「話が弾んでいる」と感じてくれるようです。
介護認定調査員は、対面した方の会話とコミュニケーションを取りながら、
調査票に状況を書き込まなければなりません。
コミュニケーションをとりながら、対象者や家族が話している内容を、スピーディーに
まとめる必要があります。
調査票に内容をまとめながらも、対象者や家族の顔色、声色、ジェスチャーを観察し、
本当の気持ちやニーズを引き出す必要があります。
そのため、介護認定調査員には、優れた観察力や気づく力、が必要になってきます。
先にも述べましたが、介護認定調査員は聞き取りした内容を、調査票にまとめなければなりません。
見たもの、聞いたものをただただ、書き連ねるのではなく、わかりやすくまとめて記入しなければなりません。
要介護認定において、医師や認定調査員は、対象者の生の言葉を届けることができる、
限られた役割を持つ職種です。
介護が必要になった方の、気持ちやニーズを正確に届け、適切なサービス利用に繋げるために、
書類作成能力は重要の能力だといえるでしょう。
今回は、介護認定調査員について紹介しました。
介護認定調査員の「役割」や「必要な能力」「どういった仕事内容なのか」について解説しました。
また、介護認定調査員の「収入」についても解説しました。
高齢化がどんどん進む日本で、介護認定調査員の仕事は、今後も重要性を増していくでしょう!
雇用形態や働き方によっては、高い収入を得られる可能性も秘めた職種であり、
社会においても必要とされる仕事ですので、
もしも興味があり、条件に合った方は目指してみるのもいいかもしれません!