介護福祉士の医療行為は何が認められている?法改正の背景も紹介!

2024.04.12

介護福祉士は、看護師や医師とともに仕事をすることが多い職業です。
その中で、医療従事者ではない介護福祉士が医療行為に準ずる仕事を行うことがあります。

医療従事者でないため、本来医療行為はできない介護福祉士でしたが、平成24年から法改正により、
一部の医療行為は介護福祉士でもできるようになりました。

介護の仕事をする上で「これって医療行為じゃ?」「これは介護福祉士はしてよかったかな」と
迷う方も多いのではないでしょうか?

この記事ではそんな「介護福祉士ができる医療行為」について法改正の背景も含めて
ご紹介していきます!

医療行為と医療的ケアの違いについて

介護や看護の仕事をする中、双方の専門職が連携して介護や医療を提供する機会はよくあります。
そんな中、よく耳にするのは「医療行為」と「医療的ケア」という言葉です。
どちらも医療という言葉がつくため、同じようなものと考えている方も多いのではないでしょうか?

まずは、この医療行為と医療的ケアの違いについてご紹介していきます!

 医療行為

医療行為とは、「医師の医学的判断や技術を持って行う行為」のことを意味します。

医療を提供する際に医学的な技術や知識がないと、人体に危険な影響を及ぼしかねない事態になる
可能性があります。
この医学的な技術や知識があることで安心で安全な医療をうけることができます。

また、医療行為は「医師法によって規定されている行為」でもあるため、医療行為をできるのは、
「医師」「歯科医師」「看護師」など、「国家資格を有する医療従事者のみ」と定められています!

介護福祉士が行うことを認められていない医療行為をしてしまうと法律を違反してしまうことに
なるため、「知らなかったでは済まない」事態になる可能性もあり、しっかりと介護福祉士が
提供できる医療行為について、介護職員は把握しておかなければなりません!

 医療的ケア

医療的ケアとは、医療行為の中でも例外として介護職員が行うことが認められている
行為を意味します。

血圧測定や服薬管理などがこれに該当し、医療の免許を持っていない介護職員であっても、
在宅介護や老人ホームで処置することができます。
医療行為と同様に医療的ケアに関しても、しっかりと把握しておくことが大切です。

介護の現場では、介護と医療の職種が連携を図って仕事をすることも多く、介護職員もこれらの
知識と技術をしっかりと養っていく必要があります。

「介護職員は医療行為はできない」「介護職員に医療行為をさせるのは違法だ」と偏った知識や
間違った知識をもって従事してしまうもって従事することは、多職種の連携を断ち切ってしまうこと
になり、職員同士の関係悪化にも繋がります。

「福祉に携わる職員間での問題は、最終的に利用者様が被害を被ることになりかねません」
福祉に携わる職員全体がこういった知識についてしっかりと身につけることは利用者様の満足度
や安心感に繋がるということを覚えておくことが大切です!

「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等」の法改正

2011年に「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等」の法改正がありました。
この改正では、特定行為である経管栄養と喀痰吸引の2つがポイントです。

この改正に合わせて、2012年から介護福祉士の資質や社会的地位の向上を目的とし、
国家試験の義務化が方針化されました。
※これは現在延期され2027年からの義務予定となっています。

ここからは、そんな法改正の背景と、それに伴い介護福祉士でもできるようになった医療行為や
医療的ケアについて紹介していきます!

 法改正の背景

この介護サービスの基盤強化のための介護保険法等が改正に至った背景は、
「介護福祉士の資質や社会的地位の向上」のため前述しましたが、
それ以外にも「高齢化に伴い、医療的ケアが必要になった高齢者が増えた」ため、
介護福祉士でも医療的ケアができるようにし、それに対応していこうという背景もあります。

また、医療技術などが進み、医療機器を装着した方が在宅で生活できるようになったため、
それに対応するため介護福祉士でできる内容も拡大する必要があったという背景もあります。

介護福祉士ができる医療行為と医療的ケア

さて、ここまでは医療行為と医療的ケアとは何か?また、それに関する法律の改正について、
ご紹介しました。
それでは、ここからは具体的に介護福祉士ができる医療行為と医療的ケアはどんなものがあるのかを
ご紹介していきます!

 介護福祉士が対応できる医療的ケア

介護福祉士ができる医療的ケアは法律に定められた以下のものです。
また条件付きでできる医療的ケアもあります。

① 特定の安全な体温計を利用した体温の測定。
② 自動血圧測定器を利用した血圧の測定。
③ パルスオキシメーターを利用した酸素飽和度の測定。
④ 切り傷・すり傷・やけどなど、専門的な知識の必要がない処置。

以下は、条件付きではあるものの、それを満たしていれば介護福祉士でも行える医療的ケアに
なります。
※条件とは「いずれも入院治療が必要ない患者である」「容態が安定していること」
「服薬に関する経過観察が必要ない」などです。

① 床ずれの処置以外の軟膏を塗る。
② 皮膚に湿布を貼る。
③ 目薬の点眼。
④ 肛門からの出血がない場合の座薬の挿入。
⑤ 誤嚥がない場合の服薬のサポート。

 法律で一部介護福祉士に認められている医療行為

つづいては、一部ですが法律で認められている医療行為についてです。
条件をみたしていれば、介護福祉士であっても以下の医療行為を行うことができます。

  1.  爪やその周囲に疾患がなく、糖尿病に関する管理の必要がない、爪切りや爪やすり。
  2.  重度の歯周病がない場合に限る、歯ブラシ・綿棒・巻綿子などを利用した口腔ケア。
  3. 耳垢塞栓のある場合を除いた、耳掃除。
  4.  肌にパウチが接着していないもののみ、ストマ装具のパウチに溜まった排泄物の除去。
  5.  自己導尿補助を目的とした、カテーテルの準備、体位補助など。
  6. 大きさ、成分、内容量などが特定の条件に合う、違反の浣腸液を利用した浣腸。

どのケースも、一定の条件に当てはまる必要があるため注意が必要です!

参考:医師法17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)
/ 厚生労働省

 研修が必要な特定行為に当たる医療行為

2011年の介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の法改正により、
特定行為として「喀痰吸引等」に相当する介助内容が介護福祉士にも
認められました。この場合の「喀痰吸引等」とは「経管栄養と喀痰吸引の2種類」です。

①経管栄養とは
 チューブやカテーテルで、胃や腸に直接、栄養や水分を注入する医療行為です。
経管栄養にはいくつかの種類がありますが、
 介護福祉士ができるのは「胃ろう」「腸ろう」「経鼻経管栄養」の3つです。
経管栄養には、胃や腸からの逆流により、嘔吐や誤嚥のリスクがあり、様子をよく見守りながら
介助する必要があるため、「研修の受講は必須」です。

②喀痰吸引とは
 喀痰吸引とは、吸引器を利用して「痰や唾液を排出する」医療行為です。
この吸引は「口腔内や鼻腔内」「気管カニューレ内部」に対して行われます。気管カニューレとは、
気管を切開して管を設置し、呼吸の補助や誤嚥を防止するものです。
この気管カニューレの長さによって、カニューレの内部だけ吸引ができます。

介護職ができない医療行為

介護福祉士によって行える、医療的ケアや医療行為が拡大されましたが、あくまで介護福祉士は
医療従事者ではありません。

基本的には医療行為が禁止されているのは変わりありません。
介護の現場で実際に多く行われている医療行為である「インスリンの注射」
「摘便」「床ずれの処置」「血糖の測定」「点滴の管理」などは介護福祉士が行わることは
禁止されたままです。

こういった、専門的な知識や技術が必要な医療行為は、看護師に行ってもらう必要があります。

医療知識をもった介護福祉士になるためには?

医療行為や医療的ケアはとても重要なことです。また、高齢者の増加や進歩していく医療技術に
対して、介護福祉士としても技術や知識を磨いていくことは重要な時代となってきています。

そんな中、介護福祉士であっても高い医療知識を培う方法にはどんなものがあるのでしょうか?
ここからは、そんな医療知識も兼ね備えた介護福祉士になるための一例をご紹介していきます!

 医療介護福祉士の役割

医療知識を持った介護福祉士になるための方法の一つに「医療介護福祉士」という民間資格が
あります。
医療介護福祉士とは、1年以上の実務経験がある介護福祉士が講座の受講により取得できる資格です。

医療介護福祉士は介護の現場で働くだけでなく「医療チームの一員として、医療現場で働く」ことも
可能となります。
終末期医療やスタッフの医療知識がより求められる介護老人保健施設などで、知識を活かした仕事が
可能です。

 医療介護福祉士の仕事

医療介護福祉士の資格を取得しても、医療従事者になるわけではありません。
ですので、仕事としては介護福祉士と同様の仕事となります。

しかし、医療介護福祉士がいるということは、「医療的知識の豊富なスタッフがいる職場である」
という評価に繋がるともいえます。
また、医療介護福祉士が現場にいるということは、「利用者の急変時や体調不良時の対応がスムーズ
かつ正確にできる」ため、他の職員としては医療知識が豊富な職員と一緒に働くことは
「何かあっても大丈夫という安心感」があります。

また、医療的知識の豊富な介護職員がいるということは、看護などの専門職とも情報を共有できる。
医療介護福祉士を介して、看護職と介護職の連携を強化しやすいというメリットがあり、ある意味、
それも医療介護福祉士の仕事といえるでしょう。

まとめ

この記事では、介護福祉士ができる医療行為や医療的ケアについて、法改正の背景もふまえて
紹介しました。
現代の日本は、世界でも前例のない超高齢化社会に突入しつつあります。
それに伴い進歩する医療機器や技術に対して、医療従事者だけでなく、
介護福祉士もそれに対する技術や知識を養い、チーム全体で福祉を支えていく必要があります。

介護福祉士ができる医療行為と医療的ケアについて、しっかりと把握することはチーム全体の信頼、
評価、技術、知識、の向上に繋がります。

介護福祉士をすでに取得した方、これから取得する方は、資格取得だけでなくその先にどういった
ことができるのかもしっかりと学び、社会全体の福祉力の向上を一緒に目指していきましょう!

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