ADL(日常生活活動)とは?定義や評価方法も詳しく紹介!

2024.04.12

ADL(日常生活活動)とは、リハビリテーション、医療、福祉の業界で使われる用語です。

リハビリテーションや医療、福祉の職に就くとよく聞く言葉ですが、仕事をはじめたてではあまり
聞き慣れず、どういう意味なのだろう?どんな時に使う用語なのだろう?知らないけど聞きづらい、
など疑問を感じる方も多いと思います。

今回は、そんなADLについて詳しく紹介していきます!

ADL(日常生活活動)とは?

ADLとは、Activites of Daily Living の頭文字をとった言葉です。
日本語に直訳すると「日常生活活動」「日常生活動作」という意味になり、
「生活を送るために行う、活動の能力」のことです。

ここからは、そんなADLの定義と、ADLと比較して使われるIADLについて、ご紹介していきます。

 ADL(日常生活活動)の定義

公益社団法人 日本リハビリテーション医学会によると
「ひとりの人間が独立して行う、基本的な、しかも各人ともに毎日共通に繰り返される一連の動作群を言う」と定義されています。

具体的には「食事・着替え・排泄・入浴などの身の回りの動作」「歩行・車いすの操作・階段の昇り降りなどの移動の動作」「家事・交通機関の利用、その他の動作」などを指します。

介護保険の認定などの場合は、このADLについて段階的に評価し、日常生活を遅れる能力がどれくらいできるのかを判断します。

こうして、その方のADLを把握することで、どういった場面で、どのくらい介護が必要なのかを考えていく材料にしていきます。

 IADL(手段的日常生活動作)の定義

ADLと似た言葉で「IADL」という言葉があります。
IADLは「手段的日常生活動作」と訳されることが多く、ADLを「基本的な動作」とすると
IADLは「応用的な動作」というイメージになります。

例えば、買い物や公共交通機関(乗り物)の利用など、単純に動作が行えるかだけではなく、
「判断や意思決定ができるか」ということも、確認していきます。

IADLは、その方の生活の質(QOL)にも密接に繋がる分野のため、ADLだけではなく、
IADLを維持することも寿命が伸びてきている今の時代にとって、とても重要になってきます。

 ADLとIADLの違い

ADLが「基本的な動作」IADLが「応用的な動作」と先ほどご紹介しましたが、具体的にはそれぞれ
どういった動作に分けられるのでしょう?

ADLは「歩く、車いすを操作する」「食事や着替えなどの運動項目」「コミュニケーションの理解
(言葉の意味が理解できるか)」「自分の意思や意図を伝えられるかなどの認知項目」など、
最低限の日常生活を行うための動作を意味します。

一方IADLは、ADLよりも複雑な動作と判断が求められます。
例えば、「買い物ができる」とは単に金銭の支払いなどができるというだけではなく「献立を立て、
そんために何を購入する必要があるか」や「金銭の管理をする能力があるか」なども必要になって
きます。
このようにIADLには、判断力や理解力などの機能も関わってきます。

ADLが低下する原因は?

ADLとIADLとは何か?その違いなどについて紹介し、人間の生活において重要であるということが
わかりました。

では、ここからは「ADLが低下する原因」にはどんなものがあるのか、いくつかの項目に分けて
ご紹介していきます。

 身体全体の機能の衰え

ADLが低下する原因、1つめは「身体全体の機能の衰え」です。

日常生活を送るための動作に必要な機能が、加齢や病気などを理由に運動量が低下し筋力がおちる
ことによって衰えていきます。
また、その結果、活動量も減ってしまいさらに運動量や筋力が徐々に低下するという悪循環も
起きやすくなります。
徐々に自分で日常生活を送るための、様々な作業を行うことが困難になってきます。

身体全体の機能が衰えると、作業が困難になるだけでなく、転倒や転落、反射神経に身体の機能が
ついてこれないなど、事故の原因にもなってしまいます。

 認知機能の衰え

加齢により物忘れが進んだり、認知症により脳が萎縮したり、脳に障害を追ったりなどすると様々な
症状が現れます。

これらは、ADLの機能低下に繋がります。身体の動かし方がわからなくなり歩行ができなくなって
しまったり、必要な作業の手順がわからなくなる記憶障害などが引き起こされ、日常生活に様々な
制限ができてしまいます。

日常生活を制限されることで、ADLが低下してしまう要因となります。
歩行するなどの日常生活の機能が同じくらいの方でも、認知機能の低下があるかないかによって、
要介護認定の判断が変わることがあります。

 メンタル的な落ち込み

ADLの低下は、身体的な要因だけではなく、メンタル的な落ち込みでも引き起こされることが
あります。

メンタルが落ち込むと、人は行動することが面倒になったり、他者と関わることが嫌になることが
あります。
そうすると、外出や会話の機会が減り、筋力や活動量が低下しその結果ADLが低下していきます。

また、外出や会話の機会が減ることは認知機能の衰えにも繋がり、物忘れや認知症が進んでしまう
リスクもありまる。
メンタル的な落ち込みにより、活動が減りADLが低下する一連の流れは、悪循環に陥る可能性も
あります。

 生活習慣病の発症

ADLの低下は、生活習慣病の発症や悪化によりも引き起こされます。

栄養バランスの偏った食事、タバコの吸いすぎ、お酒の飲み過ぎ、過度なストレスによって、
高血圧や糖尿病などの生活習慣病の原因となります。

こういった生活習慣病の発症や悪化により、日常生活に制限が生じてしまいADLの低下に繋がります。
生活習慣病は、若い時はなんともなくても加齢により徐々に身体にダメージを負うことが多いです。

今はなんともなく元気な方であっても、長い人生の先を考えて早め早めに、生活習慣を見直していく
必要があります。

ADL低下を防ぐためには?

ADLが低下する原因について前述しましたが、ここからはADLの低下を防ぐためにはどうすればよいか
紹介していきます。

ADLの低下を防ぐことは、高齢になってもその方がその人らしい生き方をするために、
とても大切なことです。

介助が必要なく生活を遅れる環境を整えることや、本人ができることを見守る、時には介助を
しすぎないことも重要で、ADLが低下しないよう予防方法についてしっかりと把握していきましょう。

 環境を整備する

ADLの低下を防ぐには、本人をとりまく環境を整備することが大切です。

ADLが衰える前の環境のまま過ごすことは、できないことが増えるばかりか無理に維持しようと
ケガや事故を起こすリスクもあります。
加齢や身体機能の低下にともない、本人が動きやすいように環境を整えていくことで、
できなかったことができるようになり、ADLを維持、向上することができるかもしれません。

例えば、歩行が難しくなってきたからといって歩行をすぐに諦めるのではなく、杖や歩行器などの
歩行補助具を利用したり、手すりやスロープをつけることで、本人が動きやすい環境を整えることで
本人の気持ちも引き出しやすくなってきます。

介護保険制度を利用すると、費用面の負担も軽減するためケアマネージャーなどと相談しながら、
環境を一度見直してみましょう。

 本人ができることを見極める

高齢になり介助が必要になってくると、本人が介助なしでもできることでも、ついつい介助して
しまうことがあります。
これは、これは本人の動く機会を奪ってしまうことになり、かえってADLの低下を招きかねません。

ゆっくりであれば、歩行もできるのに転倒してはいけないからと車いすを利用するなどではなく、
ゆっくりでいいから歩いてみよう、という気持ちが大切です。

ADLの低下を防ぎQOL(生活の質)を高められるように、本人の動きや状態をしっかりと
確認していきましょう。

できることとできないことを見極め、必要な分だけ介助することが大切です。
たとえ動作がゆっくりでも、自分でできることはしてもらい、まわりはそれを待つゆとりを持つこと
がADLの低下を防ぐポイントです。

 生活の質を高める

生活の質を高めることは、ADLの低下を防ぐことにも繋がます。
生活の質とは、本人の苦痛を取り除き、総合的な活力の維持、生きがいや満足度を持って生きること
ができるという意味が含められます。

その人が安心して元気に生きがいを感じて生きることは、ストレスや不安を解消し、行動することに
意欲が湧いてきます。
意欲を持って行動することは、活動量や筋力の維持に繋がり、結果ADLの低下を防ぐことになります。
裏を返すと、ADLの低下を防ぐために生きがいを作ることは生活の質の維持、向上に繋がるという
ことにもなります。

ADLの評価方法を紹介

ここからは、ADLの評価方法をご紹介します。
ADLの評価方法はいくつかありますが、この記事では代表的な2つの評価方法をご紹介します。

医療や福祉、リハビリテーションの仕事では、よく利用される評価方法のため、これらの仕事を
している。または興味がある。という方は、是非、役立ててください!

 FIM(機能的自立度評価表)

FIM(機能的自立度評価表)とは、「運動能力」「認知能力」の2つ大項目と、全部で18項目の
小項目があります。

自分で全ての動作ができる状態を「自立」として、7点。動作全てに介助が必要名状態を「全介助」
として1点とし、点数が高い方がADLの自立度が高いことを示しています。
全てが自立の場合は126点、全てが全介助の場合は18点となります。

FIMの良い点は、以下があげられます。
「採点方法が細かく規定されている」
「ADLの自立度と介護量を点数で把握することができる」
「世界共通の評価のため研究や発表の際にデータ集約として活用しやすい」

 BI(バーセル・インデックス)

続いてBI(バーセル・インデックス)という評価方法についてご紹介します。
バーセル・インデックスは介護の現場で活用される例が多く、介護保険法のADL維持加算を評価する
指標となっています。

評価内容は10項目で、5点刻みで点数化し、合計100点満点として評価する採点方法です。
特徴は本人の「できる能力」を加点していく方式となります。

バーセル・インデックスの良い点は、以下があげられます。
「採点方法が簡単で時間をとられず評価できる」
「5点刻みの加点なので計算が簡単にできる」
「介護の現場で多く利用されているため認知度が高い」

まとめ

今回は、ADL(日常生活活動)についてご紹介しました。
「ADLとは何なのか」「ADLとIADLの違い」「ADL低下の原因」「ADL低下を予防するには」
「ADLの評価方法」など、基本的なことから、専門的なところまで、詳しく紹介しました。

ADLについて知り、ADLを評価することは、高齢者ができることやできないことを把握することに
繋がります。
高齢者のADLや状態について把握し、できることはしてもらい必要最低限の介護を意識することは、
人生そのものの質を高めることに繋がります。

その方がその方らしく生きられるよう、ADLを維持・向上できるよう努めていきましょう!

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