経管栄養の種類にはどんなものがある?メリット・デメリットも紹介!

2024.05.07

みなさんは経管栄養というものをご存知でしょうか?
医療や福祉の仕事に携わる方には聞きなじみのある言葉でしょう。
医療や福祉の現場では、日常的に行われている栄養を身体に取り込む方法の一つです。

ひとえに経管栄養といっても、必要な方の個々の状態に合わせるためにたくさんの種類があります。
この記事では、経管栄養を初めて知る方にとっても、医療や福祉に携わる方の予習や復習にも
繋がるよう、経管栄養の種類やメリット、デメリットについてもご紹介していきます!

そもそも経管栄養とは?

そもそも経管栄養とは、病気や障がい、加齢によって誤嚥の危険が高い方など、口からの
栄養摂取が困難な方が栄養を摂取するための、方法の一つです。

カテーテルやチューブを利用し、「胃や腸に直接栄養剤を注入」します。
経管栄養には、胃ろう・腸ろう・経鼻経管栄養・間歇的口腔食堂経管栄養などの種類があり、
それぞれに特徴とメリット・デメリットがあります。

ここからは、そんな経管栄養の目的や対象者、特徴や管理方法など、各項目に分けて
ご紹介していきます。

 経管栄養の目的

経管栄養は、消化液の分泌など消化管機能を促進する効果が期待できます。
免疫細胞が多く集まる腸が刺激されることで、免疫力の向上も期待されます。

また、高齢者の肺炎や床ずれは、誤嚥や皮膚を治癒する栄養素の不足が原因となるため、
経管栄養で栄養状態を改善することで、肺炎や床ずれの予防にも効果があると言われています。

消化管の機能が充分にある場合は、経鼻経管栄養や胃ろうなどの方法があり、そうでない場合は
点滴による静脈栄養が行われます。

 経管栄養の対象者

経管栄養の対象となるのは、嚥下が難しい状態、意識障害がある、熱傷、などがあげられ、
嚥下機能や摂食機能に障がいがあるものの、消化管の機能は正常である場合が基本となります。

また、消化吸収機能が低下しており、口からの摂取だけでは栄養障害に陥るリスクがある場合や、
癌による化学療法や放射線療法による経口摂取不良の場合でも、対象となることがあります。

逆に対象とならない例としては、消化管の機能が低下している、循環動態(血管や心臓などの
循環系を流れる血液の状態)が不安定などの場合は対象となりません。

また、寝たきりで人工呼吸器を利用している方の場合、栄養を注入しすぎると肥満や糖尿病、
高脂血症、脂肪肝などの原因となる危険性があり、新たな合併症を引き起こすリスクがあるため、
注意が必要です。

 経管栄養の特徴

経管栄養は、先に述べた通り「消化管の機能を促進する効果」が期待でき、腸管から消化と吸収が
できるため、身体に及ぼす影響やリスクを少しでも軽減することに繋がります。

消化管の機能を使わなくなると、摂取エネルギーが減り、気力の低下、筋肉が痩せたり、神経伝導の
障がい、免疫力の低下など、身体に様々な悪影響を及ぼし
てしまいます。

その結果、頭がぼーっとしたり、床ずれや感染症の発症、悪化、治癒が充分にできないなど、
消化管の機能を使わないことのデメリットは多くあります。

これらを回避するためには、たとえ口から栄養を摂取することが困難であっても、消化管の機能が
充分であれば、経管栄養によってその働きを促進していくことが大切といえます。

 経管栄養の管理方法

経管栄養を行うには、事前に利用者の上半身を起こして、安定した姿勢をとりましょう。
これは注入した栄養剤が逆流するのを防ぐために大切なことです。

また、上半身を起こした姿勢は、注入後1時間ほどは続ける必要があります。
注入が終わったとしても栄養剤が充分に吸収されていない状態で寝転んだりしてしまうと
これも栄養剤の逆流をまねく要因となってしまいます。

胃ろうや腸ろうの場合は、器具の抜けや破損がないかも注入前に確認しましょう。
その際、皮膚トラブルが起きていないかも合わせて確認することも重要です。

注入中は苦しい表情や咳込みがないかを観察しながら注入を行い、注入のスピードが早くないかも
適宜確認しましょう。
注入のスピードが早いと、下痢や嘔吐、膨満感などに繋がります。
注入後はチューブやカテーテルに栄養剤が残るとそれが腐ってしまい感染症を引き起こす
危険性がでてきます。

注入が終わった後は、シリンジを使って白湯を吸い上げ栄養剤を洗い流しましょう。

経管栄養の種類とメリット・デメリットを紹介

ここまでは、経管栄養の基礎知識とその目的や特徴、管理方法などについてご紹介しました。
ここからは、具体的に経管栄養にはどんな種類があり、それぞれにどんなメリットとデメリットが
あるのかを各方法に分けて紹介していきます!

 経鼻栄養法

経鼻経管栄養は、「鼻からチューブを通して、胃や腸に栄養を注入する方法」です。

メリットは「手術が必要ない」「在宅での注入が可能」「口から食事できるようになれば、
すぐに止められる」「胃腸を使うため負担が少なく免疫も保たれやすい」
という点が挙げられます。

デメリットは「鼻に通ったチューブに違和感を感じる」「鼻からのチューブが目立ちやすい」
「チューブが細いため栄養剤が詰まりやすく、交換回数が増える」
「チューブが通っているため、口から食事や嚥下訓練がしづらい」などが挙げられます。

また、認知症がある方の場合は自分でチューブを引き抜いてしまうリスクもあります。

 間歇的口腔食道経管栄養法

間歇的(カンケツテキ)口腔食堂経管栄養法とは「栄養剤を注入する時だけチューブを挿入し、
終わるとチューブを抜く方法」です。

今まで長期的な経管栄養が必要な方には、胃ろうを増設することが一般的でしたが、
最近は注入時以外はチューブを出し入れすることが嚥下訓練となりえる点から、
間歇的口腔食堂経管栄養法も注目されるようになってきました。

メリットは、「注入時に嚥下訓練も兼ねることができる」「平常時はチューブが入っていないため嚥下訓練を行いやすい」「手術を行う必要がない」
「慣れてくると短時間で注入を終えることができる」という点が挙げられます。

デメリットは、「チューブを入れる際に噛んでしまう、舌で押し返してしまう」
「強い嘔吐反射が出てしまう場合は実施が難しくなる」「発声ができない方は適用外」
「食道や胃の手術歴がある場合は慎重な検討が必要」といった点が挙げられます。

 胃ろう

胃ろうとは、手術で腹部から胃まで穴を開け、チューブを通し、体外と胃の中に固定パーツを
設置し固定する方法です。

体外のパーツは、ボタン型とチューブ型があり、胃の中のパーツは、バンパー型とバルーン型が
あり、その方の状態や環境に合わせてそれぞれのパーツを組み合わせることができます。

メリットは、「経鼻経管栄養に比べ違和感や不快感が少ない」「運動やリハビリを行いやすい」
「入浴がそのままできる」「チューブ部が衣類で隠せる」
「胃に直接注入するため、誤嚥や肺炎のリスクが少ない」「胃ろうをしながらも口からの食事を
訓練できる」などが挙げられます。

デメリットは、「胃に穴を開ける手術が必要となる」「カテーテルを抜いてしまうと穴がふさがり
再度手術が必要」「胃ろう周辺は皮膚トラブルが起きやすい」
「メンテナンスが大切でお金と手間がかかる」「口から摂取することが少なくなり口腔内が
不衛生になりやすい」といった点が挙げられます。

 腸ろう

腸ろうは、手術を行い腹部に穴を開け、そこからチューブを小腸まで通す方法です。
長期間の経管栄養が必要となる場合、胃ろうを増設するのが一般的ですが、
固定方法は胃ろうと同じく固定パーツで体外と体内を固定します。

メリットは、「腸に栄養剤をいれるため逆流がしにくい」「衣類で隠すことができる」
「経鼻経管栄養に比べ違和感や不快感が少ない」「自分で引き抜いてしまうリスクや、
何かに引っかかり抜けてしまうリスクが少ない」「胃ろうと同様に口からの摂取もできる」などが
挙げられます。

デメリットは「腹部に穴を開ける手術が必要」「カテーテルの交換のたびに受診が必要」
「もしカテーテルが抜けた場合、自宅で再挿入ができない」
「腸ろう周辺の皮膚トラブルが起きやすい」「チューブが胃ろうより細く長いため、栄養剤がつまり
やすく注入にも時間がかかる」という点が挙げられます。

まとめ

今回は、経管栄養とは何かという基礎知識と、対象となる方、目的と特徴、経管栄養の種類と
メリットやデメリットについて紹介しました。

加齢や障がい、疾病により口から食事が困難になった方にとって、経管栄養は必要な栄養を
摂取するためのとても大切な手段です。

しかし、その知識が不十分であると、皮膚トラブルや栄養剤の逆流、過剰投与による新たな
合併症の発症などリスクも大きな方法でもあります。

口からの食事が困難な方であっても栄養をしっかりと身体に取り入れられるようにすることは、
「その人が、その人らしい生活」を送ることに繋がります。

そのため、利用者も介護者も経管栄養に関する知識と技術をしっかりと磨いていきましょう!

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