終末期に家族ができることは?本人が望む形で最期を迎えるためのケア

2024.05.13

みなさんは、ご家族が高齢になり、老衰・病気・障害の進行により残された時間が
限られているような場合にどのように対応しますか?
出来るだけご家族の希望に沿った形で最期を迎えて欲しいと思う方が多いのではないでしょうか。

少しずつターミナルケアが重要視されるようになっている中で、今回はターミナルケアに
関して色々と解説していきます。

終末期医療(ターミナルケア)とは?

厚生労働省が発表した「平成29年人口動態統計」を見ると、年間136万人が死亡していると
されています。

そこで今回は、自宅で最期を迎えたいという家族を看取るときにできることや、
終末期医療に関して色々と紹介していこうと思います。

 終末期の定義

ターミナルとは「終末期」を意味します。
人生の終末期、病気の終末期が来たとき、延命するか、残された時間を充実させるか、
ターミナルケアはデリケートな決断から始まります。

病気で余命わずかの人をはじめ、認知症や老衰の人たちが、人生の残り時間を自分らしく過ごし、
満足して最期を迎えられるようにすることが目的です。


つまり治療による延命よりも、病気の症状などによる苦痛や不快感を緩和し、精神的な平穏や
残された生活の充実を優先させるのを目的として行われるケアです。

 緩和ケアと終末期医療の違い

ターミナルケアは緩和ケアの一部だと考えると良いでしょう。一言で言えば、緩和ケアの一部に
ターミナルケアがあると言っても間違いではありません。

緩和ケアは、がん患者らの苦痛を緩和して、QOLの改善を図るものです。

ターミナルケアは、治療よりも残された生活を心穏やかに過ごしてもらうように努める
「終末期医療」「終末期看護」とみなされています。
これに対して、緩和ケアはターミナルケアの要素に加えて治療も並行して進める点に違いがあります。

 終末期医療を開始する時期

通常の治療同様、ターミナルケアを行うかどうかは患者本人や家族の意思に任されています。

しかし、ターミナルケアを始めるということは「延命をあきらめる」こととほぼイコール
となるため、開始の決断はとてもデリケートな問題です。

がんなどの病気の場合には、病状から予測される余命や、治療の効果が期待できるかどうかなどを
考慮して、タイミングを決断することになります。

認知症や老衰の場合は、寝たきりになって介助があっても食事ができなくなったときが、
一般的にターミナルケアの開始時期と考えられています。

終末期医療の内容は?

ターミナルケアは主に「身体的ケア」「精神的ケア」「社会的ケア」の3つに分けられます。
精神的ケアと社会的ケアは、家族や友人の役割が重要です。
それぞれのケアの中では、具体的にどんなことを行うのかを見ていきましょう。

 身体的ケア

投薬などで痛みなどの症状を緩和するケアが、身体的なターミナルケアです。

ターミナルケア開始の判断基準となる「食事ができなくなったとき」の対応も重要です。
ただ、栄養補給は延命措置にもなります。そもそも栄養補給を実施するかどうか、
実施するのであればどんな補給手段にするかといった選択は、本人または家族の意思を確認した
上で進める必要があります。

毎日の生活においては着替え・排泄・移動といった日常行為でストレスを感じないよう
環境を整えることが大切です。自宅介護なら、介護サービスを積極的に利用してプロの助けを
借りましょう。

 精神的ケア

ベッドの周囲にできるだけ普段と変わらない環境を作り、リラックスできるようにしましょう。
好きな音楽をかけたり、大切にしている物、思い出の品などを身近に置いたりして、
本人にとって満足感のある空間にすることがポイントです。

また、死に対する不安や心残りが大きくなりすぎないように家族や友人と過ごす時間を十分に
作ってあげることも重要です。

そのためには死をタブー視せず、「不安や恐怖を拭い去ることは難しい」ということを理解して
寄り添う必要があります。
一人で死に臨むような孤独を感じさせないことが、家族や友人の最も大切な役割といえるでしょう。

 社会的ケア

入院や介護による経済的な負担が、患者本人のプレッシャーになることもあります。
病院のソーシャルワーカーに医療費負担を軽減できるかどうか相談したりするのが、
社会的ケアになります。

医療費を抑えるには、入院から在宅介護に切り替えるのもひとつの方法です。
職場で責任ある立場だったり、家庭の大黒柱となっていた人、家事全般を担っていた人は、
「職場に迷惑を掛けている」「家族に迷惑を掛けている」という思いに苦しむことがあります。

マイナス思考に陥らないよう、しっかりコミュニケーションを取りましょう。

終末期ケアを受けられる場所

ターミナルケア(終末期医療)を行う場所は、主に自宅、医療機関、介護施設の3つです。

  • 病院では、ホスピスや緩和ケア病棟、一般病棟でターミナルケアを受けられます。
  • 一般病棟では、医師、看護師、ソーシャルワーカー、理学療法士などからなる「緩和ケアチーム」
    により終末期医療を受けられることがあります。
  • 介護施設では、特別養護老人ホームや介護付有料老人ホームなどでターミナルケアが行われています。
  • 自宅では、医師や訪問看護師などが自宅に訪問し、患者さんの苦痛症状を和らげたり、
    精神的支援や環境の整備を行ないます。

家族ができるケアは?

この様に、ターミナルケアは本人の意思を尊重しつつも、終末期を迎えるための時間として
当人及び家族にとっても非常に慎重になるべき時間となります。

では、今までターミナルケアについて紹介してきましたが私たちが家族のためにできることは
どのようなことがあるのでしょうか。

 本人がしたいことを応援する

思い出作りとかぶるところがありますが、これは患者さん個人の思い出作りという側面が強いです。
今までしたくてもできなかったようなこと、時間が取れずに後回しにしてしまっていたことを
応援してあげましょう。

例えば、ダイビングや長期間ゴルフや釣りをするなど趣味のことです。
本人がしたいと思ったことを優先するのが大切になります。

親子で過ごす時間が今まで取れなかった・夫婦で過ごす時間が少なかったと感じている場合は、
親子や夫婦で共通の趣味を始めるのも良いでしょう。

 思い出を作る

例えば、仕事で忙しかったときは家族で出かけた記憶が少ないことも珍しくありません。
そんな家族は家族旅行などに出かけるのも出来ることの1つといえるでしょう。

もし遠出する場合には、主治医から許可や旅行中の注意事項を聞く必要がありますが、
家族で出歩けるうちに思い出を作ることも大切です。
旅行先は今まで行きたくていけなかったようなところはもちろんですが、患者さんのルーツを辿る
旅行でも良いです。

 終活を手伝う

終活とは、死を前にしてどう生きるのか、死後のことをどうするかについて考え、
必要な取り決める活動です。
ターミナルケアを開始すると自分の最期について考える機会が多くなります。

終活は葬儀やお墓のことだけでなく、遺言を準備したり財産相続を考えたりします。
相続のことなどを考え準備をする終活は、患者にとって大変なことなのでできる範囲で
手伝うことができます。
身体が動くうちなら患者さん一人でできますが、ご家族の方も出来る限りで良いので終活の
お手伝いをしてあげると良いでしょう。

 本人が話せる機会を作る

ターミナル期にある利用者は、死期が迫っているという現実に対するつらい思いだけでなく、
自分の役割を失うこと、活動範囲が制限されることなどといった社会的疎外感を持つことも
少なくありません。

さまざまな感情に寄り添うために、ベッドサイドに座って話を聞いたり、会話をしたりする
機会が多くなります。
気持ちに焦点を当てて、気持ちを受け止めたコミュニケーションを心がけましょう。

心が安らぐよう、趣味の時間を設けることや、家族との面会の機会を提案することも
精神的ケアのひとつです。

 本人に寄り添い続ける

やはり一番ターミナルケアで重要なのは、家族が寄り添い続けることではないでしょうか。
患者も出来るだけ家族に寄り添ってもらい、最期を迎えるまで充実した生活を送りたいと
考えているはずです。

家族を看取るとなった時、看取られる方もそうですが看取る方も後悔が残らないように
準備したり、ケアを提供したり、支え合えたりできることが理想です。
医療は医師や看護師など専門家に任せて、ご家族と残された大切な時間を過ごしましょう。

まとめ

本記事では、終末期と家族についてご紹介しました。
ターミナルケアは、利用者が人生の最期を穏やかに過ごすためのケアです。

100%後悔が残らない方法はありませんが、不安に思うこと、疑問に思うことなどは家族で
支援することが大切になります。

生活の質を保持しながら、人間らしく最期を迎えたいという方にはターミナルケアという選択肢も
忘れないでいてください。

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