看護や介護における清拭の手順を紹介!注意点や必要物品も解説!

2024.05.13

清拭(せいしき)とは、入浴のように全身を清潔にするための介助です。
病気や怪我で入浴やシャワー浴ができない方に、全身の清潔を保ち感染や褥瘡などを防ぐ
目的や効果があります。清拭の介助には手順があり、大切な意味を持ちます。

清拭の介助を始める前の準備や、全身の部位ごとの清拭の順序など、
気をつけたい注意点を
解説します。

清拭とは?

清拭とは、怪我や病気などで入浴やシャワー浴ができない方に、適度な温度に温めた
タオルで
身体を拭くことです。

全身の清潔保持や血液循環と新陳代謝の促進、爽快感やリラックス効果も期待でき、
入浴ができない方にとって重要な役割を果たします。

 期待できる効果

清拭には、感染の予防・ストレスの緩和、気分転換・QOLを高めるなどの目的があります。

身体の清潔を保つだけでなく、身体を拭くことによりマッサージ効果や新陳代謝を高める
効果があり、全身を観察できるため、褥瘡や皮膚トラブルの早期発見にも繋がります。

リラクゼーション効果や安眠効果が期待でき、血液循環を促進することで褥瘡を予防し、
手足の拘縮や便秘の予防、皮膚トラブルの予防にも繋がります。

さまざまな効果が期待できるため、清拭は重要なケアといえます。

 清拭の種類

清拭には、全身を拭く「全身清拭」と、身体の一部(手と足など)を拭く「部分清拭」があります。
また、身体の一部分をお湯にいれる「部分浴」があり、部位により「手浴」「足浴」
「陰部浴」などもあります。

褥瘡や皮膚トラブルの予防のため、皮膚の観察をしっかりし、皮膚トラブルが見られた場合には、
医師に相談し対応しましょう。
手指の拘縮の予防に、清拭中に利用者の手指を動かしたり、マッサージをするのも効果が
あるでしょう。

清拭での必要物品を紹介

清拭に必要な物品について、解説していきます。
まず、清拭をする前に室温を23℃~25℃前後に保ち、カーテンを閉めるなどして、
ご本人のプライバシーが保たれる状態にしましょう。
清拭をする前に以下の物品をきちんと準備しておきましょう。

・ バスタオル
・ フェイスタオル
・ 陰部洗浄用タオル、または使い捨てタオル
・ バケツとお湯
・ 陰部洗浄ボトル
・ 石けん
・ 使い捨て手袋
・ 着替え
・ 保湿剤、または塗り薬

清拭の手順を紹介

全身の清拭の手順は、顔・耳・首→腕・手→胸・お腹→背中・腰・おしり→足全体→陰部となります。
血液の循環を促進させるため、抹消から中枢に向かって拭くようにしましょう。
効率よく清拭をするために、各部位の順序や注意点を解説しましょう。

 顔・耳・首

顔・耳・首の清拭では、顔専用のフェイスタオルを準備します。
かぶれを避けるため石鹸は使用しない方が良いでしょう。

顔を拭くときは目頭から目尻まで拭いてから、まぶたの順に拭いていきます。
目ヤニで汚れる場合があるので、目を拭いた後はタオルを変えて清潔にしましょう。

次に、鼻→口→額→頬→顎→耳→首の順番に拭いていき、顔全体を顔の中心から外側に
向けて拭きます。
耳の後ろや首も、垢が溜まりやすいので、忘れずに拭きましょう。

 腕・手

腕・手の清拭では、血液循環を促進させるため心臓より遠い指から心臓に向かって、
順番に手首→肘→脇の下→の順番で拭いていきます。

手首を支えて指先から手のひら、手首から肘へ向かって拭きます。
指の間も丁寧に拭き、肘の内側は円を描くように拭きましょう。
肘を支えて肘から脇の下、腕の付け根に向かって拭きます。
汚れや汗が溜まりやすい脇の下は、丁寧によく拭きましょう。
※血液循環を促進させるために、末端(手先)から拭いていきます。

 胸・お腹

胸・お腹の清拭では、胸→お腹の順番で拭きます。
清拭中は、手足などが冷えないようバスタオルをかけてから始めましょう。

鎖骨の上下を拭き、胸とお腹は円を描くようにゆっくり拭きます。
女性は乳房の下に垢や汚れが溜まり、かぶれやすいので、丁寧に拭きましょう。
お腹は臍(へそ)を中心に「の」の字を描くように拭くとマッサージ効果があります。
臍(へそ)の汚れがひどい場合は、オリーブオイルなどをつけた綿棒で拭きましょう。

 背中・腰・おしり

背中の清拭は、横を向いて側臥位の姿勢になってもらい軽く膝を曲げて安定した姿勢に
整えておきましょう。

腰→肩の順番に円を描くように中心から外に向かって拭いていきます。
背中の中心から肋骨に沿うように拭き、肩を肩甲骨から外に向けて拭いていきます。
お尻の清拭は、左右の臀部それぞれを、外側から内側へ円を描くように拭くように
注意しましょう。
仙骨部は褥瘡ができやすいので、注意して観察しながら優しく、しっかり拭きます。

 足全体

足全体の清拭では、拭く側の膝を立てて足首→太ももの方向に拭いていきます。
膝の裏→足の指→足の裏の順番に拭きます。

その際、忘れないように、上半身にバスタオルをかけてから始めるようにしましょう。
足首から膝に向かって拭いていき、次に、膝から太ももの付け根に向かって拭きます。
かかとを支えて、くるぶし→膝の裏を拭きましょう。

次に足の指を一本ずつ丁寧に拭いてから足の裏を拭きましょう。
足の清拭には、「足浴」もあります。

 陰部

陰部の清拭は、デリケートな部分のため可能であれば、ご本人に拭いてもらいます。
陰部専用のタオルを使用し、汚れが多い場合は、陰部洗浄など石けんで洗い流しましょう。
陰部の清拭は、男性と女性によって手順や動作が違います。

男性の場合は、陰茎→陰のう→陰茎の包皮を伸ばして拭き、最後に肛門の順で拭きます。
女性の場合は、恥骨→大陰唇・小陰唇へ上から下に向かって丁寧に拭きとります。
最後に肛門へ向けて一方向に拭きます。

清拭をする際の注意点

以下のポイントに注意しましょう。

・清拭前に体調を確認し、必ずバイタルチェックをする
・食事の前後1時間は血糖値や血圧の変動が起こりやすいため避ける
・室温は温度差がないように23℃~25℃程度に保つ
・プライバシーを意識し、拭く場所以外はバスタオルで隠す
・必要物品を整えておき、温めたタオルが冷めたり、利用者を待たせない
・清拭の手順を把握しておくと、体温の低下や、体調の悪化を防げる
・皮膚が弱いため、傷つけないように注意する

まとめ

清拭の効果や手順・注意点について詳しくご紹介しました。

清拭の効果としては入浴やシャワー浴ができない方に、清潔を保ち皮膚トラブルの観察などを
行い予防を促す大切なケアです。

利用者の方に負担をかけないように物品を用意し、環境を整備してから清拭の手順を守り、
プライバシーや身体を冷やさないように配慮し、体調をチェックしながら行いましょう。

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