胃瘻とは、口から食事のとれない方、食べ物を上手く飲み込めない方などに、
手術によって小さな穴を腹部に開け、そこから栄養剤を注入する栄養補給法です。
口から栄養を摂れない場合、本人への負担が少なく、看護・介護側にも負担が少ない点や
胃瘻中のリハビリが行いやすいという特徴があります。
胃瘻の種類・メリット・デメリットを詳しく解説しましょう。
目次
胃瘻とは、手術で腹部に小さな穴を開け、チューブを通して胃に直接、
栄養を注入する医療措置のことです。
病気や加齢によって口から食事がとれなくなったときに、衰弱しないよう口以外から
栄養を補給する方法です。
高齢者は、加齢や認知症、脳血管障害などで飲み込む力(嚥下力)が低下し、食べ物が
肺に入って誤嚥性肺炎を引き起こす可能性が高くなります。
食べられないために栄養が摂れなくなると、身体状態に悪い影響が現れます。
そのため、胃瘻は、食事が困難となった方や、むせ込みやすい方が、負担なく栄養を
摂取するために行われる方法です。
口から栄養摂取ができるまでのリハビリをしやすくさせ、胃瘻を終わらせることもできるため、
身体的な負担は少ないでしょう。
胃瘻は、身体機能の低下や重度の認知症などで、口からの食事が困難になった方や、
むせ込みやすい方が対象になります。
食べ物をうまく飲み込めず、むせてしまう方は、誤嚥性肺炎や気管支炎などになる危険性が
高くなります。
このようなリスクを避けるために医師や介護者が胃瘻を勧める場合があります。
胃瘻を行っても口から食事をとることはできますので、口から食べる
リハビリ(嚥下訓練)もしやすくなります。
できるだけリハビリを続けましょう。
以下のようなメリットがあります。
・ 不快感や負担が少ない
・ カテーテルが抜けにくい
・ 口から食事ができる
・ 入浴ができる
次にデメリットも解説します。
・ 手術が必要
・ 定期的なメンテナンスが必要
・ 誤嚥性肺炎のリスクがある
・ 口腔内が不潔になりやすい
必要なカロリーとバランスの取れた栄養摂取が可能となり、誤嚥性肺炎などを少なくできます。
カテーテルには4種類あります。
胃の内部にある部分はバルーン型・バンパー型、体の外に出ている部分はボタン型
・チューブ型があり、これらを以下のように組み合わせて使用します。
①バルーンボタン型
②バルーンチューブ型
③バンパーボタン型
④バンパーチューブ型
・ボタン型は体の外にチューブが出ていないので、目立たず動きをじゃましないことや、
お手入れの負担も軽減されるメリットがあります。
逆流防止弁がついているため、栄養素の逆流を防ぎます。
栄養剤を注入するチューブの接続に手間がかかるのがデメリットです。
・チューブ型はチューブの接続がしやすいことがメリットです。
体の外にチューブが出ているので、動きのじゃまになりやすく、自分で引き抜いてしまう恐れが
ある点がデメリットです。
・バルーン型は、蒸留水で膨らませて固定してあり、交換時に蒸留水を抜くことで、
痛みを感じにくく、簡単に交換できるメリットがあります。
バルーンは破裂する心配があり、1〜2ヶ月に1回の頻度で交換が必要になるデメリットもあります。
・バンパー型は、胃の内壁に固定してあり、カテーテルが抜けにくいメリットがあります。
約半年に1回、交換しますが、交換時に痛みや圧迫感を感じやすいため体への負担が
大きいことがデメリットになります。
胃瘻の方を介護する際に気をつけたいポイントを解説しましょう。
・ 身体を起こして姿勢を正す
・ 胃瘻の周りの皮膚トラブルのケア
・ 口腔ケアをしっかり行う
・ 適した栄養剤を選ぶ
・ 使用する器具の衛生面に気を配る
栄養剤を注入する際、姿勢が悪いと栄養剤が逆流する心配があります。
そのため、栄養剤を注入するときは上体を30度以上起こし、無理のない正しい姿勢に整えましょう。
逆流防止のためにも、注入終了後は30分から1時間程度は上体を起こした体制を維持するのが
良いでしょう。
また、姿勢を維持することが難しい方もいるため、苦痛を与えないよう工夫し、
様子を見ることも必要です。
介護者はしっかりと意識して気をつけるようにしましょう。
胃瘻の周辺の部分は皮膚とカテーテルの摩擦をできるだけ減らすようにし、
いつでも清潔にしておきましょう。
洗浄を怠ると胃瘻の周りの皮膚が赤くなったり、一部が腫れるなどの皮膚トラブルに繋がる
心配があります。
胃瘻をつけた状態での入浴が可能なので、石鹸などを用いて丁寧に洗うようにしましょう。
また、体にとっては、異物が差し込まれた状態なので拒絶反応を起こす方もいます。
皮膚トラブルが見られたら医師に相談し適切に対処しましょう。
胃瘻を使っていて、口で食べていなくても、胃瘻の方には口腔ケアが非常に重要です。
口から食事をとる機会が少なくなると唾液の分泌量が減ってしまうため、口の中が汚れやすくなり、
雑菌が繁殖しやすい環境になります。
口腔内で繁殖した菌や唾液が、たんに絡んで気管に入ると、気管支炎や
誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)、さらには細菌性肺炎を引き起こす心配もあります。
口腔ケアで口の中を清潔にしておきましょう。
胃瘻の方に注入する栄養剤は「成分栄養剤」「消化態栄養剤」「半消化態栄養剤」の3種類があります。
効果的な治療のためには、栄養必要量や消化吸収能力、病気の状態などを総合的に判断し、
その方に応じて適切な栄養剤を選択することが重要です。
「消化態栄養剤」は、すでにタンパク質が分解された状態で含まれているので、
消化吸収能力が低下している方に適しています。
それぞれの方に適した栄養剤を検討し選びましょう。
胃瘻に使用する器具の衛生面には特に注意が必要です。
栄養剤は高カロリーなので、清潔に保管しておかないと雑菌が繁殖する原因になります。
カテーテルなど胃瘻に関わる器具は、使用毎にきちんと洗浄し、十分に乾燥させホコリや
雑菌がつかない場所に保管しましょう。
認知症の利用者の手に触れない場所に置いておくことも、用具を清潔に保つために重要です。
新しいものに交換が必要な器具は、適切な交換期間内に取り替えましょう。
胃瘻は口から食事のとれない方などに胃へ直接、栄養を入れる方法です。
手術によって腹部に小さな穴を開けますが、口からの食事は可能ですし、
胃瘻をやめることも可能です。
胃瘻行うことは、延命治療とみなされる場合がありますので、本人の意思と家族の協力が
とても重要です。
最も大事なのは「本人がどのように生きたいと思っているか」という点ですから、
治療やケアに関する正しい知識を身に付け、メリットやデメリット、重要なポイントを考慮して、
しっかりと話し合って納得のいく決断をするようにしましょう。