看護や介護で効果的なボディメカニクス8原則とは?注意点も紹介!

2024.06.03

看護や介護では、腰痛や身体の痛みに悩まされている職員が多くみられます。

介護技術の中の身体介助において、ボディメカニクスを実践することは、介助する側も、
介助される側も身体的な負担を減らすことができ、安定して長期間、介護に従事することも
可能になります。

「ボディメカニクス8原則」の原理を解説し、注意点や活用のメリットについて紹介していきましょう。

介護や看護に役立つボディメカニクスとは?

ボディメカニクスとは、最小限の力で身体介助ができる技術で、神経系や骨格系、筋系などの
力学的相互関係を利用した介護技術です。

無駄な力を使わず、看護者や介護者、介助される側も互いに身体的負担を軽減できます。

 最小限の力で介護ができる介護技術の1つ

ボディメカニクスは最小限の力で介助ができる介護技術の1つです。
人間の関節や筋肉、骨が動作する時の力学的な関係を利用した技術です。
特に腰痛予防に効果があると言われています。

力任せに身体介助を行わず、介助される側に合わせた介助方法を実践できるようになることで、
介助する側と介助される側の双方の身体的な負担を減らすことができ、移動や移乗の際に役立ちます。
介助の負担を軽減できる技術として注目されているテクニックです。

 腰痛予防に効果的

介護施設や在宅で介護をしていると多くの人が腰痛問題に悩まされます。
介護施設での高齢者介護で、腰痛発生件数は大幅に増加しており、割合では80%にも
なるといわれています。

そんな深刻な腰痛問題に腰痛予防対策として取り入れたいのがボディメカニクスです。
ボディメカニクスを活用すると、介助者の腰の負担が軽減され、長く安定して無理なく
介護職を続けることも可能です。
腰痛予防に効果のあるボディメカニクスを理解し活用しましょう。

ボディメカニクス8原則

  1. 支持基底面積を広く確保
  2. 重心の位置を低くする
  3. 水平方向にスライドさせる
  4. 被介護者との重心を近づける
  5. てこの原理を使う
  6. 被介護者の身体を小さくまとめる
  7. 身体全体と大きな筋群を使う
  8. 押さずに手前に引く

 1.支持基底面積を広く確保

支持基底面積は、体重を支えている足と床が接している部分の面積をいいます。
介助する際に介助者が被介護者(介助される側)の体重を支えるために必要な床面積です。

介助者は、足を揃えて直立したときより、足幅を前後または左右に広くとることで、
支持基底面積が広くなり、立ったときの安定性が増します。
そのため介助者の身体が安定するので腰への負担を軽減できます。

支持基底面積を広く確保することで介助する際の姿勢が安定しますので実践してみましょう。

 2.重心の位置を低くする

支持基底面積を広くした状態で、膝を曲げ、重心を低くするとさらに安定します。
立位よりも座位、座位よりも臥位というように、姿勢は重心を下に移動することで、
より安定させることができます。

重心の位置を低くすると介助する側の腰痛予防にもつながります。
高い位置に重心がある状態で介助した場合、身体が反ったり捻れたりして腰を痛める危険性が
高まります。
骨盤を立てた状態で腰を落とすと、しっかり重心を下に置けるのでおすすめします。

 3.水平方向にスライドさせる

身体介助は被介護者の身体を頻繁に持ちあげるイメージがありますが、持ち上げる動作は
腰への負担が大きくなってしまいます。

重いものは持ち上げてから動かそうとすると、重力の影響を大きく受けて、より重く
感じてしまうことがありますが、水平移動には重力の影響がないため、水平方向に
スライドさせるように動かすと小さな力で移動させることが可能です。

移動介助の際はできれば持ち上げず、スライドさせるよう意識し、身体的負担を軽減しましょう。

 4.被介護者との重心を近づける

被介護者との重心を近づけるとは、被介護者と介助者がなるべく身体を密着させることで、
安定感が確保でき、介助する側の力を入れやすくする動作です。

被介護者と身体を近づけると、重心も近づくため、移動の方向がぶれにくく、一方向に向けて
大きな力がより働くため、力が少しでも介助ができるようになります。

支持基底面積を広くとることで安定し、足や腰の力が伝わりやすくなり、最小限の力で動かせて、
腰痛防止にも繋がります。

 5.てこの原理を使う

てこの原理を使うと、小さな力でも大きなものが動かせるようになります。

支える部分・力を加える部分・加えた力が働く部分の関係を利用すると、小さい力で
しっかり支える介助の動きができます。

自分よりも体格の大きな横になっている被介護者を、起き上がらせて座位にする場合は、
被介護者の膝や肘、お尻を支点にして遠心力を利用して動かすと、スッと上体を起こすことが
できます。
てこの原理で身体的負担を軽減しましょう。

 6.被介護者の身体を小さくまとめる

被介護者に腕や膝を曲げてもらい身体全体を小さくまとめてもらうと、力が分散しなくなり、
摩擦が少なくなるため動かしやすくなります。

介助者が身体をねじった姿勢だと、重心が不安定になり力が入りにくくなるため、腰への負担が
大きくなってしまい腰痛の原因にもなります。

介助者は足先を動かしたい方向に向けてから動かすようにして、被介護者に身体全体を小さく
まとめてもらうと、移動が楽になり双方の負担が軽減されるでしょう。

 7.身体全体と大きな筋群を使う

大きな筋群とは、大きな力を出せる筋肉のことで、大胸筋・広背筋・大腿四頭筋・腹直筋などの
筋肉のことをいいます。

身体介助は腕力に頼ってしまいがちですが、腕だけなどの一つの筋肉だけでなく、全身の大きな
筋肉を同時に使うことで、身体の一部分への負担を軽減することができ、腰痛予防にもなります。

そこで、腰・脚・背中などの全身の大きな筋肉を同時に使い、特に背中や太もも、足腰の大きな
筋肉を意識して使うようにしましょう。

 8.押さずに手前に引く

押さずに手前に引く力の方が小さい力で動かすことができます。

押す動作には腰に余計な力が入ってしまいがちですが、引く動作を意識すると腰痛の予防も
可能になります。

ですが、腕や洋服などを引っ張ってしまうと、被介護者の身体を痛めてしまう可能性があり
ますので、注意が必要です。

手前に引く動作は介助する側も被介護者側も楽なので、力任せに押したり引いたりするのは
おすすめできません。手前に引く動作を常に意識しましょう。

ボディメカニクスを行う際の注意点

注意点は、「声かけ」と「できることはしてもらう」ことです。

  • 安心して介助を受けてもらうには、丁寧な声かけを常に行い、被介護者の様子や痛みが
    ないかを、その都度確かめましょう。
    声かけをすることで、被介護者の意思や意見を尊重し、自立心を促すこともできます。
  • 被介護者が自力でできることがあれば自分でやってもらいましょう。
    自力でできることまで介助してしまうと、身体の機能が低下して、できることが減って
    しまいます。

ボディメカニクスのメリットは?

  • 介助者の身体的負担が軽減されるため、腰痛の防止策として有効とされています。
    最小限の力で介助ができるため介助者の身体的な負担が減り、筋力が衰えても無理なく
    介護職を続けることが可能です。
  • 被介護者に余計な力が加わったり、無理な姿勢にならないため身体的な負担が軽減されます。
  • 被介護者に安心感を持ってもらうことで、ストレスによる行動や介護拒否などを減らし、
    被介護者との信頼関係も生み出しやすくなるでしょう。

まとめ

ボディメカニクスの基本には、8原則ありました。
8原則を常に意識し、声かけをしながら介助することで、被介護者も安心できるでしょう。

介護のあらゆる場面で役に立ち、被介護者と介助者の双方に、身体的な負担や精神的な負担を
減らせるメリットがあります。

ボディメカニクスを習得し、実施することで介護に関連した身体的な負担を軽減していきましょう。

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