介護におけるバルーンカテーテルの注意点|ミルキングについても解説!

2024.07.01

高齢者になると尿が出にくくなったり、頻尿になったりと約10人に1人が
「排尿障害」と診断されます。
介護施設に入居している方であれば、約半数の方が排尿障害を持っている
というデータもあります。

これは、高齢になるにつれて尿を溜めておく力や尿を出す力が衰えてくることや
病院により障害されてしまうことが原因です。

対処法としておむつや尿パッドを利用するという方法が多いですが、
それ以外にもバルーンカテーテルというカテーテルを膀胱に通し、
尿を溜めておく蓄尿袋につなげるという方法もあります。
この記事では、そんなバルーンカテーテルについて詳しく紹介していきます!

バルーンカテーテル(尿道留置カテーテル)とは

バルーンカテーテルは尿道留置カテーテルまたは膀胱留置カテーテルともいいます。
カテーテルと呼ばれる管を、尿道から膀胱まで挿入したままの状態にすることで、
カテーテルを伝って尿が蓄尿袋に排出されていくというものです。

蓄尿袋にも様々な種類があり、中には小型で足にまきつけることができ、
外見から蓄尿袋などがわかりづらいようになっているものもあります。

また、いくつかの注意点に留意する必要はありますが、バルーンカテーテルを挿入した
状態でも入浴は可能です。

バルーンカテーテのメリット・デメリット

まず、バルーンカテーテルの基本的な説明をを行いました。

排尿障害への対処方法はバルーンカテーテル以外にも、自己導尿やおむつの利用などがあります。
ここから説明をするバルーンカテーテルのメリットとデメリットも参考に
その方にあった対処法を探していきましょう!

 メリット

まずは、バルーンカテーテルの「メリット」について紹介します。
バルーンカテーテルのメリットは以下の通りです。

  1. カテーテルを挿入したままにするため、おむつ交換の回数や複数回の導尿など介護者の
    負担が少なくなります。尿もれにより衣類が汚れることも少なくなるため、
     尿失禁による更衣の回数が減ることもメリットとなるでしょう。
  2. 尿もれによる失禁が少なくなるということは、尿で汚れて起こる皮膚トラブルのリスクも
    ほとんどなくなります。褥瘡(床ずれ)がある方などであれば、褥瘡が尿で汚れて
    悪化するなどの影響がなくなります。
  3. バルーンカテーテルとつながっている蓄尿袋には、目盛りがついているものが多く、
    溜まった尿の量がわかりやすくなります。病気や障害により1日の尿量を観察する必要が
    あるといった場合などは、尿量が一目でわかるようになります。

 デメリット

つづいて、バルーンカテーテルの「デメリット」について紹介します。
バルーンカテーテルのデメリットは以下の通りです。

  1. カテーテルを挿入したままなので、外見が気になる方にはデメリットとなります。
    また、カテーテルが引っかかったり、折れ曲がっていないかなど気にする必要があります。
  2. カテーテルを挿入することで、痛みや違和感などのトラブルが生じるリスクがある。
  3. カテーテルの交換などを定期的にする必要がある。
    カテーテルの交換は医師や看護師でないとできず自分でできないという手間が増える。

バルーンカテーテルを使用する際の注意点

バルーンカテーテルを利用する際には、いくつかの注意点を守らなければなりません。

  1. カテーテルの管理
    チューブが折れ曲がったり、押しつぶされたり、引っ張られないよう注意が必要です。
    カテーテルをテープなどで固定する場合は、テープかぶれが起こらないよう
    定期的に位置を変えて固定しましょう。
  2. 蓄尿袋の管理
    蓄尿袋は「膀胱より低い位置を保つ」ようにしましょう。※膀胱より下で地面にはつかないように。就寝時は、ベッドであれば柵にかけて膀胱より下に袋が位置するように気をつけましょう。
    布団の場合は、布団の下にマットを敷くなどして段差をつくり、蓄尿袋を「足元の布団の外」
    に置きましょう。
  3. 排尿の管理
    蓄尿袋に溜まった尿は「12時間に1回は廃棄」しましょう。
    尿を溜めたままにしておくと感染症などのリスクが高まります。

バルーンカテーテル留置中に起こりやすいトラブル

バルーンカテーテルを利用する際のデメリットで「カテーテルを挿入することで
トラブルが生じる場合がある」と紹介しました。
痛みや痒み以外にも、カテーテルを利用する際には様々なトラブルが生じないか
注意する必要があります。

ここからは、バルーンカテーテル留置中に起こりやすいトラブルについてまとめましたので、
1つずつ確認していきましょう。

 感染症

バルーンカテーテル留置中に起こりやすいトラブル1つ目は「感染症を起こすリスクがある」
という点です。

バルーンカテーテル留置するということは、常にカテーテルを挿入したままで過ごすと
いうことになります。
蓄尿袋から尿を捨てる「排出口」から微生物や細菌が侵入し、カテーテルを通って体内に侵入。
感染症を引き起こします。

尿をすてる時は、使い捨て手袋を利用したり、排出口が地面に直接つかないようにするなど、
衛生面に注意した取り扱いが必要です。

 自己脱去

バルーンカテーテル留置中に起こりやすいトラブル2つ目は「自己抜去の可能性」がでてくる
という点です。
これは、認知症を持つ方に多い事故のひとつで、自分で誤ってカテーテルを
引き抜いてしまうということです。

自己抜去をしてしまうと、すぐに挿入しなおす必要があります。
夜間や休日であればすぐに対応できない場合もあるため、認知症でバルーンカテーテルを
利用している方の介護をする場合は、抜去していないかこまめに確認する必要があります。

自己抜去をしてしまった際に、尿道などを傷つけると「血尿」や「おびただしい量の出血」が
起こる場合があり、裂傷などの処置をする手間が増えることも考えられます。

 カテーテルの閉塞

バルーンカテーテルは、カテーテル内に浮遊物や結晶ができることがあります。
これらがカテーテルの中で詰まり尿の流れが悪くなる。または流れなくなることを
カテーテルの閉塞といいます。

この浮遊物は体内の粘膜の垢のようなもので、尿の中にあるたんぱく質に細菌が繁殖する
ことで発生します。
この細菌の繁殖が持続すると、アンモニアが生成されるなどの過程を経て砂状の結晶が
生成されてしまいます。

これらを予防するには、できるだけ清潔を保つことや、免疫力低下を防ぐことなどを
意識する必要があります。

カテーテル閉塞の一時的な対処法のミルキングとは?

バルーンカテーテルの留置中に起こりやすいトラブルの中で紹介した
「カテーテルの閉塞」ですが、このカテーテル内に溜まった、浮遊物や結晶でカテーテルが
閉塞しないようにする一時的な対処方法として「ミルキング」というものがあります。

ここからは、このミルキングについて解説をしていきます!

 ミルキングの概要

ミルキングとは直訳すると「乳搾り」を意味します。
その由来の通りチューブをつまんだり、専用のローラーなどを使い流してあげる作業のことを
言います。

浮遊物が結晶が中に溜まったまま、長い期間放置すると、カテーテルの閉塞の原因となるほか、
細菌の温床となり感染症などのリスクも高めてしまいます。

ミルキングを行う際にはいくつかポイントがあります。
このポイントを把握しないまま間違った方法でミルキングをしてしまうと、カテーテルや
チューブに圧がかかりすぎた結果、破損してしまうなどのリスクもあるため、
適切な方法を理解した上でミルキングを実施することが大切です。

 ミルキングのやり方・方法

バルーンカテーテルのミルキングの実施手順は以下の通りです。

  1. 蓄尿袋側のチューブにある、膀胱カテーテルとの接続部近くを「左手」で強くつまみます。
    ※チューブの内腔を完全に押しつぶし逆流や圧が逃げないようにする
  2. 次に右手で左手で圧迫している部分の横をつまみます。
    ※この時点で右手と左手の間のチューブ内にほぼ何もないような状態となる。
  3. この状態で右手を蓄尿袋の方向にゆっくりとすべらせることで、左右の手の間にある
    チューブの圧力が低下する。
  4. 左手の圧迫を外すと、減圧された圧力のバランスをとろうと膀胱内の尿が流れ出てくることで、
    浮遊物などが吸引され閉塞予防となる。

また、カテーテルをアルコール面で挟むようにつまみ、そのまますべらせるという
ミルキングの方法もあります。

どちらも、圧力の関係を利用して、膀胱内の尿が流れ出るようにし、
閉塞物や浮遊物を流す閉塞予防のやり方となります。

 ミルキングの注意点

ミルキングを適切に行うためには、いくつかの注意点について知る必要があります。
ミルキングの注意点は以下の通りです。

  1. ミルキングの操作が強いと、膀胱壁を吸着してしまう可能性がある。
  2. 強くしごいたり、管を引っ張るようなやり方をしてしまうとチューブや
    カテーテルの破損につながる。
  3. ミルキングを実施しても、尿が流れ出ないなどがあれば、放置せず医療機関に相談する。
  4. 逆流をふせぐために、蓄尿袋側に向かってミルキングを行う。
  5. 介護者が行う場合は、利用者の体調や様子にも気を配り痛みや違和感などがないか、
    確認しながらミルキングを行う。

まとめ

この記事では、「バルーンカテーテルとは何か」という基礎知識から
「バルーンカテーテルのメリットとデメリット・起こりやすいトラブル」について紹介しました。

バルーンカテーテルの管理は、健康と生活の質を守る重要な役割です。
バルーンカテーテルのメリットとデメリットを理解したうえで、起こりやすいトラブルと
その対処方法をマスターし、バルーンカテーテルの留置が必要になっても、
自分らしく健康で快適な生活を送りましょう!

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