本記事では、介護技術とはどういったものなのかについて詳しく解説していきます。
介護の現場において、正しい知識やケア技術がないと、利用者さんと接する際に
相手の体を痛めたり、不快な思いをさせたりする恐れがあります。
介護職員としてさらに活躍するためにも、より実践的で役立つ介護技術を身に付けましょう。
具体的な内容について解説していきますので、是非とも参考にしてみてください。
目次
介護技術とは、介護者と利用者さんの双方が、負担なく過ごすために必要な技術のことです。
介護技術においてはスピードや効率ではなく、利用者さんがより安全に、
より自然に動けるようにすることを重視します。
ただし、介護技術を駆使して介護職員が何から何まで支援してしまうと、
利用者さんがもっている能力の維持・向上にはつながりません。
手助けしたくなる場面は少なくありませんが、利用者さんの自立を促すために時には見守ることも
大切です。
介護技術は、介護される方のためにあると同時に介護する方のためにあるといってもいいでしょう。
その際、ボディメカニクスを活用することが非常に大切です。
ボディメカニクスとは人間が動作するときの力学的関係を利用したもので、
今の介護技術のベースにもなっています。
重心を下げるとは、身体の重心を低く保つことで、安定性を高め、身体にかかる負担を減らすことを
指します。
具体的には、膝を曲げたり、腰を落とすことで体全体の重心を下げる動作です。
重心を下げることで、身体の安定性が増し、転倒や体の揺れを防ぐことができます。
これは特に、被介護者を持ち上げたり移動させたりする際に重要です。
例えば、被介護者をベッドから車椅子に移す際、介護者は腰を落とし、膝を曲げて重心を下げます。
これにより、被介護者を安全に持ち上げることができ、腰への負担を軽減します。
てこの原理は、支点、力点、作用点の3つの要素を活用して、小さな力で大きな物を動かすことが
できる物理の法則です。
これを介護に応用すると、介護者の負担を軽減しながら利用者を移動させることが可能になります。
例えば、ベッドから車椅子への移乗をさせる場合には以下のようになります。
手順としては、まずベッドの高さを調整し、利用者が車椅子に移りやすい姿勢にします。
介護者は利用者の腰や肩を支点にして、適切な位置で力を加えることで、
最小限の力で安全に移動を行います。
ボディメカニクスを活用した介護技術では、介護者の身体に負担をかけずに効果的に
介護を行うために、大きな筋肉を活用することが重要です。
例として、スクワットの動作を取り入れることで、膝を曲げて腰を落とし、
立ち上がる際に大腿四頭筋を効果的に使います。
例えば、利用者をベッドから車椅子に移動させる際に、介護者がスクワットをすることで
大腿四頭筋を使って力を発揮できます。
他にも、物や人を持ち上げるときに、腰ではなく膝を使って持ち上げることが大腿四頭筋の使用を
促進します。
腰に負担をかけず、強力な大腿四頭筋を活用することができます。
「利用者と介助者の重心を近づける」ことは、移動や体位変換の際に非常に重要なポイントです。
重心を近づけることで、介助者が少ない力で利用者を支えることができ、
腰や肩への負担を軽減します。
重心が近いと、お互いの動作が連動しやすく、転倒や事故のリスクが減ります。
また、相手に近付くことで、腕だけでなく体全体の力を利用しやすくなります。
力が伝わりやすくなる上に安定感も増すので、腰にあまり負担がかかりません。
例えば介護される方を起こすときは、腕だけの力に頼るのではなく、体全体を密着させます。
介護する方も腰に負担をかけることなく楽に起こすことができます。
水平移動は、ベッド上や椅子から椅子への移動など、身体を水平にスライドさせる動作を指します。
これは、被介護者の身体の負担を軽減し、介護者の腰や背中への負担を最小限にすることを
目的としています。
人の体のように重いものは、持ち上げてから移動させると重く感じてしまいます。
重いものを移動させる時、上に持ち上げようとすると腰に大きな負担がかかりますが、
水平に動かせば最小限の力で移動することができます。
移動の際には、なるべく持ち上げないで水平方向にスライドさせる工夫をしましょう。
被介護者の体をコンパクトにまとめることは、介護者が安全かつ効果的に被介護者を
移動させるための重要な技術です。
この技術は、被介護者の体を効率的にまとめることで、重心を安定させ、移動や介助が
容易になります。
介護される方の体重は変えることはできません。
しかし、胸の上で腕を組んだり、前かがみになってもらったりして体全体を
小さく丸めてもらうことで介護する側の力を節約することができます。
体を小さくまとめてもらうことで力が分散しなくなるため、身体的負担を軽減できます。
腕は胸の前で組み、膝を曲げてもらいましょう。
「支持基底面積を広くとる」とは、身体のバランスを安定させるために、両足を広げたり、
足を前後に開いたりして、体重を支える面積を広くすることを指します。
これにより、転倒や姿勢の崩れを防ぎ、安定した動きを維持することができます。
支持基底面積とは、体重を支えるために必要な床面積のことです。この支持基底面積が広ければ
広いほど安定します。
できるだけ脚をしっかりと開いてもらって、支持基底面積を広くすることが大切です。
この様に、介護技術やボディメカニクスを活用する方法は日々の介護において非常に
有用となっています。
では、実際の介護のシーンでどのように技術を活用するのかについて、
食事などをはじめとしてそれぞれのシーンで解説していきます。
食事前にメニューの説明などを行ったり、盛り付けを工夫したりして、
食べる意欲を引き出しましょう。
食事中は介護者が隣に座り、スプーンは必ず下から口元へ運ぶようにします。食べ物を上から
口に入れると誤嚥しやすくなるので注意してください。
ひと口の量は多すぎず、少なすぎない適量を心がけ、急がずゆっくりと食事を進めましょう。
噛む力や飲み込む力が弱くなった方は誤嚥性肺炎を起しやすくなっているため、
適切な介護がとても重要です。
必ず隣に座って介護すること、スプーンは下から運ぶこと、適量を口に入れることを重要点として
押さえておきましょう。
衣服の着脱をスムーズに行うために、伸縮性があって着脱しやすい衣服を選ぶようにしましょう。
まひがある利用者さんの着脱を行う場合は、「患側(まひ側)から着て、健側(非まひ側)から脱ぐ」のが基本です。
着脱する時は声かけをし、不安感を与えないように注意してください。
着替えが終わった後は、衣服やシーツ、タオルなどのしわを伸ばしておきましょう。
しわを伸ばすことで床ずれ防止につながります。
衣類の着脱を介護する更衣技術で大切なことは、介護される方の状況を見ながら
進めるということです。
衣類の着脱だけに気を取られていると、衣類を強く引っ張ったりして身体を傷つけてしまう
危険性があります。
排せつ介助には、トイレ誘導やおむつ交換があります。
トイレで介助する場合は何から何まで手助けするのではなく、利用者さんができることは
本人に任せましょう。
排せつ介助で最も重要なのは、利用者さんの羞恥心を理解し、尊厳を傷つけないことです。
安全面だけでなくプライバシーにも配慮しながら、利用者さんが自立した生活を送れるように
サポートしましょう。
また、移乗の目的は車いすから便座へ、車いすからベッドへなど乗り移ることです。
移乗は、介護生活の中で最も頻繁に行われる介護です。
たとえば、頭蓋骨や骨盤など身体の大きい骨を支えることで安定した移乗ができることを
覚えておくだけでも安全で負担のかからない介護ができます。
介護技術を高めれば、サービスの質が向上するだけでなく、利用者さんの安心感や
満足度の向上にもつながります。
加えて、介護者自身にも自信が付き、充実した気持ちで仕事ができるようになるでしょう。
以下では、介護技術を上げるための方法を3つ紹介します。
スキルを磨きたい場合は、勉強会やセミナーに参加するのがおすすめです。
スムーズな介助方法や新たな知識を学び、介護技術についての理解を深めましょう。
また、勉強会・セミナーに参加すれば、他の参加者と悩みを共有したり、
他の施設の情報を得たりすることもできます。
勉強会やセミナーは、講演会型や体験型などさまざまな種類があります。
直接足を運ぶことが難しい場合は、オンラインセミナーに参加するのが良いでしょう。
オンラインセミナーは自分の都合に合わせて受講できるので、スケジュール調整がしやすいという
メリットもあります。
続いては、自身のコミュニケーションスキル向上です。
円滑な介助を行うためには、コミュニケーション能力が欠かせません。
きちんとコミュニケーションを図ることで、利用者さんの言葉や表情から喜怒哀楽を読み取る
ことができるでしょう。
利用者さんの要望をくみ取って適切なサービス提供につなげれば、信頼関係も築きやすくなります。
コミュニケーションを図る際は、友だち口調や若者言葉を控えて正しい言葉遣いや
マナーを心がけることが大切です。
利用者さんに不快な思いをさせないように、十分注意してください。
資格取得も有効な方法の1つといえるでしょう。
代表的な介護資格に「介護福祉士」があります。
資格を取得するには3つの方法があり、それぞれの詳細は下記の通りです。
資格を取得すれば、正しい介護技術が身に付くだけでなく、仕事の幅も広がります。
介護福祉士以外にも、福祉用具や住環境、レクリエーションなどの分野に特化した資格も
あるので、興味のある資格から取得してみましょう。
本記事では、介護士の介護技術に関する点を詳しく紹介しました。
介護を実践する上で重要なポイントは、利用者さんが動作しやすいよう安全にサポートすることです。
ボディメカニクスを活用すれば、最小限の力で介助でき、介護者自身の負担も減らせます。
介護技術が上がればキャリアアップも目指せるので、積極的にスキルを身に付けましょう。