高齢者の多くに、排尿障害がみられます。
自宅で暮す人の約10人にひとり、さらに施設入所者の約半分には排尿障害がみられるといいます。
歳を重ねるごとに尿を溜める力や出す力が衰えてしまう事が原因です。
対処方法として、おむつ以外にバルーンカテーテルがありますが、介護職員は
バルーンカテーテルの利用者に何ができるのか、注意点も解説していきましょう。
目次
バルーンカテーテルは膀胱留置カテーテルともいいます。
カテーテルと称される管を、尿道から膀胱まで挿入したままの状態にすることで、
尿はそのカテーテルの中を通って、蓄尿袋に溜まります。
蓄尿袋には足に巻きつけズボンの下で隠して使用できる小型のタイプもあり、外からは、
わからないように外出することもでき、バルーンカテーテルを挿入したままの入浴も可能です。
バルーンカテーテルは素材や種類によって2〜4週間ごとに交換が必要です。
排尿障害の方への対処方法を検討する際、おむつの利用や自己導尿などがありますが、
バルーンカテーテルのメリットとデメリットの解説を参考に排尿障害の方への
対処方法を考えてみましょう。
介護施設でできるカテーテルの管理方法は下記のようになります。
バルーンカテーテルの観察や管理において、介護職はバルーン内の尿を破棄することや
尿量の確認が行えます。
保健師助産師看護師法が改正により、介護職ができる観察や管理の範囲は下記のようになります。
予想される問題として、自己抜去があります。
認知症を持つ方に多い事故で、自分で誤ってカテーテルを引き抜いてしまうのですが、
すぐに挿入をやり直す必要があります。
認知症の方がバルーンカテーテルを利用している場合は、抜去していないかを、
度々確認する必要があります。
また、尿路や腎臓に疾患を抱えている場合が多いので、腹部に痛みを訴える方もいます。
問題が起きたら介護職が自己判断で処置せず、医療職に速やかに報告しましょう。
バルーンカテーテルの挿入は医療行為に当たります。
バルーンカテーテルは医療職である医師や看護師が挿入を行います。
約4週間に1回、定期的に主治医や看護師がバルーンカテーテルを交換します。
施設によっては入浴やトイレ介助のタイミングでバルーンカテーテルを新しく交換しますが、
介護職はバルーンカテーテルを挿入できないので、
入浴や排泄が終了したら、医師や看護師を呼び、バルーンカテーテル交換を依頼しましょう。
カテーテルは、チューブが折れ曲がったり、引っ張られていないかの観察や、
蓄尿袋に溜まった尿が12時間に1回は廃棄されているかなど、注意すべき点があります。
下記について解説しましょう。
バルーンカテーテル留置中に注意したいのは、感染症を起こすリスクがあることです。
バルーンカテーテルを留置することは、常にカテーテルを挿入したままで過ごしていることになり、
蓄尿袋から尿を廃棄する際、排出口から微生物や細菌が、カテーテルを通って体内に侵入し、
感染症を引き起こします。
尿を廃棄する時は、使い捨て手袋を使用したり、排出口が直接、地面につかないようにするなど、
衛生面に注意した取り扱いが必要です。
カテーテルが膀胱内に留置されることで、尿路感染症と共に皮膚トラブルに注意が必要です。
カテーテルが皮膚と常時触れ続けているため、尿道裂傷、尿道皮膚瘻、尿道下裂など、
皮膚トラブルや潰瘍などが起こるリスクがあります。
膀胱留置カテーテルの固定には、テープなどを使用しますが、このテープによって
皮膚がかぶれたり、圧迫によって潰瘍ができることがあります。
皮膚の観察や、定期的なカテーテルの清掃、適切な衛生管理が重要です。
尿量を観察することで、身体の不調などを把握でき、薬物が適切に処方されているかなどの
確認にもつながります。
尿量を正確に管理する必要がある場合に、バルーンカテーテルが使用されることがあります。
病気や障害などで、1日の尿量を観察する必要がある場合は、尿量が一目でわかり
確認しやすいでしょう。
バルーンカテーテルにつながっている蓄尿袋には、目盛りがついているものが多く、
溜まっている尿量が見やすくなっています。
介護職員がバルーンカテーテルを利用する方にできることは、カテーテルの観察と管理です。
皮膚の観察や、定期的なカテーテルの清掃、適切な衛生管理が重要になります。
バルーンカテーテルの挿入は医療行為のため、介護職はできないので、
医師や看護師に交換を依頼しましょう。
バルーンカテーテルの管理は、健康と生活の質を守る重要な役割があることを理解しましょう。