公的医療保険では、病気・ケガ・出産・死亡した場合などに、診療を提供したり、
給付金を支給します。これを「保険給付」と呼びます。
保険給付には、医療サービスそのものを給付する「現物給付」と
手当金などを給付する「現金給付」があります。
この記事では、そんな公的医療保険における現物給付について、種類や内容を
わかりやすく解説していきます!
目次
医療保険とは、相互扶助の精神にもとづき、加入者全員がお金を出し合って医療費負担が
大きい人の経済的負担を軽減する仕組みのことを指します。
医療保険は「公的医療保険」と「民間医療保険」の2つがあり、それぞれで役割が異なります。
まずは、この2つの医療保険について紹介していきます!
「公的医療保険制度」とは、ケガや病気をした時に医療費の一部を公的な機関が負担する制度です。
日本は「国民皆保険制度」が採用されており、「日本国民すべてに加入が義務」づけられています。
この公的医療保険制度には「被用者保健(共済制度や健康保険)」「国民健康保険」
「後期高齢者医療制度」という3つの公的医療保険制度があります。
これにより、日本国民が医療機関で受診した際の医療費の自己負担額は1割〜3割となるのです!
民間の医療保険とは、公的医療保険だけではカバーできない、自己負担分や他にかかる
費用をカバーするための「任意加入の保険」のことです。
保障内容は保険会社の商品によって異なります。
保障を受けられる期間は「定期か終身か」入院給付金の日額を「1日いくらに設定するか」
手術時の保障は「倍率タイプか定額タイプか」など、自分にあった医療保険が選べるのが特徴です。
女性であれば「子宮がんや乳がん」など特有のリスクについても考慮する必要があるため、
自分の「年代、収入、性別」などライフステージに合わせた保険を選ぶことができます。
公的医療保険には2種類の保険給付があります。
医療サービスそのものを給付する「現物給付(医療給付)」と
手当金などを現金で給付する「現金給付」の2種類です。
ここからは、この2つの給付についてそれぞれ解説していきます。
公的医療保険における給付、ひとつめは「現物給付(医療給付)」です。
現物給付とは、医療機関を利用した際、健康保険証を提示することで、一定割合の自己負担で
診療や治療、投薬などのサービスが受けられるものです。
医療機関を受診すると、かかった医療費の原則2割〜3割を自己負担として窓口で支払います。
残りの7割〜8割は保険者が医療機関に支払います。
このように、加入者に「医療サービスという現物を給付する」というかたちになるため、
これを「現物給付」といいます。
公的医療保険における給付、ふたつめは「現金給付」です。
現金給付とは、現物給付をするのが難しく、立替払いをしたケースや、出産や死亡のときなどに
支給される「手当金」など、「現金で支給される給付のこと」です。
故意に事故を起こした場合や、ケンカや泥酔してできたケガ、理由もなく医師の指示に従わなかった
場合などは「全てまたは一部を制限」される場合があり、給付の請求にはそれぞれ時効があり、
いずれも「2年を過ぎると給付をうける権利がなくなる」ため、注意が必要です。
現物給付(医療給付)とは「サービスという現物を支給する」給付のかたちと紹介しましたが、
このサービスにはどんな種類があるのでしょうか?
ここからは、現物給付(医療給付)の種類と内容を4つ紹介していきます!
現物給付の種類と内容、ひとつめは「療養の給付」です。
これは、先にも説明しましたが「医療機関を利用する際には健康保険証を提示」することで、
「必要な医療が受けられる」という給付です。
これを「療養給付」といい、患者は「一部負担金」と「通院時の薬剤費」「入院時の食事代の一部」
を負担し、残りの医療費は保険組合より支払われます。
また、被扶養者(家族)も同様に保険証を提示することで必要な医療を受けられます。
「家族の一部負担金は被保険者の一部負担金と同じ」です。
現物給付の種類と内容、ふたつめは「入院時食事療養費」です。
被保険者が入院したときの食事にかかる費用は、決められた金額までは自己負担となります。
この決められた金額を超えた分を給付してくれるのが入院時食事療養費です。
「1日3食、1食につき〇〇円まで」という風に自己負担額がきまっているため、確認が必要です。
また、低所得者や市町村が決めた区分に該当する方などは、さらに少ない自己負担額で
入院時の食事を提供してもらえるようになります。
市区町村によって差があるため、申請方法等はお住まいの市区町村に確認しましょう。
現物給付の種類と内容、3つめは「高額療養費」です。
高額療養費を利用すると「高額な医療費を支払った際に払い戻しを受けられます」
同一月(1日から月末)にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、
一定の金額(自己負担限度額)を超えた分が、あとで払い戻される制度です。
月をまたいだ場合は、月ごとにそれぞれ自己負担額を計算します。
例えば、1月10日から2月10日まで診療を受けた場合、1月10日〜1月31日と2月1日〜2月10日までで、
それぞれ自己負担分を計算し、自己負担限度額を超えた分を払い戻ししてもらえます。
この場合はそれぞれの月の分の申請が必要なため、注意が必要です。
現物給付の種類と内容、4つめは「入院時生活療養費」です。
入院時生活療養費とは、介護保険との均衡の観点から、医療療養病床に入院する65歳以上の方の
生活療養に要した費用について、保険給付として入院時生活療養費が支給されます。
入院時生活療養費の額は、生活療養に要する平均的な費用の額を勘案して算定した額から、
平均的な家計における食費および光熱水費の状況などを
勘案して厚生労働大臣が定める生活療養標準負担額を控除した額となっています。
被扶養者の入院時生活療養に係る給付は、家族療養費として給付が行われます。
現金給付とは「手当金や一時金などの現金で支給される」給付のことをいいます。
現金給付にもいくつかの種類があり、この記事では中でもよく利用される
「出産育児一時金・出産手当金」「傷病手当金」「埋葬料」の3つを、
詳しく紹介していきます!
現金給付の種類と内容ひとつめは「出産育児一時金・出産手当金」です。
出産育児一時金とは、本人が出産したとき健康保険から「出産育児一時金」が受けられます。
厚生労働省によると、健康保険や国民健康保険の被保険者等が出産したときは、
出産育児一時金が支給されます。
その支給額については、令和5年4月より、42万円から50万円に引き上げられました。
※妊娠週数が22週に達していないなど、産科医療補償制度の対象とならない出産の場合は、
支給額が48.8万円となります。
また、本人が出産のために、仕事を休んで給料がもらえないときには産前産後の
「98日分の出産手当金」が受けられます。
また給料をもらえても、うけられるはずの「出産手当金」より低いときは、その差額分が
受けられます。
現金給付の種類と内容ふたつめは「傷病手当金」です。
傷病手当金は病気やケガのため会社を休み、給料をもらえない時に健康保険より傷病手当金が支給
されます。
支給条件は以下の通りです。
現金給付の種類と内容3つめは「埋葬料」です。
埋葬料とは、埋葬料として50,000円が、健康保険から受けられます。
友人や勤め先などで埋葬を行ったときには「埋葬料」にかえて「埋葬費」が、
健康保険から受けられます。
また、家族が死亡した時は健康保険から「家族埋葬料」が受けられます。
埋葬料の申請に必要な書類は、おおむね以下のとおりです。
・埋葬料支給申請書 ・個人の健康保険証 ・生計維持を確認できる書類
・葬儀を実施したことが分かる書類 ・死亡診断書のコピー
・埋葬許可証(もしくは火葬許可証か死亡診断書)
※埋葬料支給申請書は、役所の窓口で受け取られるほかにインターネットで
ダウンロードすることもできます。
上記の書類を整えて、申請先の健康保険組合か社会保険事務所に提出をしましょう。
この記事では、公的医療保険における現物給付について紹介しました。
医療保険制度には公的医療保険と民間の保険があり、保険給付にも
「サービスそのものを提供する現物給付」と「手当金などを受け取れる現金給付」があり、
現金給付でも「出産育児一時金」や「傷病手当金」などの種類と内容があります。
現物給付は健康保険証を持参して医療機関を利用すると1割〜3割の自己負担で診察や
治療などを受けることができます。
このような保険の制度や給付を理解することは、何か合った時に身体的にも経済的にも
負担を減らしてくれることにつながります。
ぜひ、この記事が医療保険制度を利用する方にとっての一助となれば幸いです。