医療の分野では、患者の状態や治療効果を客観的に評価するためにさまざまな指標や
ツールが利用されています。
その中で重要な役割を果たすのが「バーセルインデックス」です。
この指標は、患者の身体的機能や活動能力を評価するための有用な手法として広く用いられています。
本記事では、バーセルインデックスの定義やその重要性、そして評価基準などについて解説します。
目次
バーセルインデックスは、医療分野において患者の身体的な機能状態を評価するための
指標の一つです。
具体的には、日常生活における身体活動や生活動作の能力を数値化し、患者の
リハビリテーションや治療の進行状況を評価するのに用いられます。
バーセルインデックスは比較的簡単に点数化できるため、広く用いられており、
実際に活用しているセラピストも多いでしょう。
患者の日常生活動作の自立度を定量的に評価することで、治療の進捗状況を把握し、治療計画を
調整するのに役立ちます。
高齢者や障害者のケアプランを立案する際にも、バーセル指数は役立ちます。
患者の日常生活動作の自立度を評価することで、必要な介護レベルや支援の程度を決定するのに
役立てられます。
また、新しい治療法や医療製品の効果を評価する臨床試験においても使用されます。
患者の日常生活動作の自立度の変化を定量的に評価することで、治療の有効性や安全性を
評価する
のに役立ちます。
バーセルインデックスでは、「食事」「移乗」「整容」「トイレ動作」「入浴」
「歩行」「階段昇降」「着替え」「排便コントロール」「排尿コントロール」という10項目の
日常生活動作の能力を点数化して評価します。
これは、患者の病状や健康状態を数値化することで、その重症度を客観的に評価するために
使用されます。
まずは、食事になります。
患者が自分で食事をする能力を評価します。
食事の準備から摂取までの能力が含まれます。
3段階で自立は10点、見守りや介助が必要なら5点、全部において介助が必要なら0点となります。
適当な時間内に自分で食事をとって食べることができる、助具を自分で装着して食事を食べる
ことができると判断されれば10点となります。
5点となる一部介助では、食べ物を細かく切ってもらうなどの介助が必要となる、
自助食器など配置して、取りこぼしがないように一部介助が必要となるなどの状態となります。
移乗は、車椅子からベッドに移乗するまでを評価の対象とします。
患者の移乗や移動の際のリスクを評価するための指標で、特に高齢者や身体的に弱い患者など、
移乗時にリスクが高まる患者の安全性を確保するために使用されます。
車椅子またはベッドの移乗が全て自分でできるなら15点、移乗動作のいずれかに介助が必要だが、
あとは自分でできるなら10点です。
そしてベッドから起き上がり座っていることはできるが、乗り移りに介助が必要となるなら
一部介助で5点、完全に介助が必要なら0点となります。
整容動作は、手洗い、洗顔、歯磨き、髭剃り、化粧の準備や動作が自分でできるかを
「自立」か「全介助」かで評価します。
全ての整容動作が自分でできるのであれば5点、整容動作に介助が必要となるのであれば
全介助という事で0点になります。
男性であればひげ剃り、女性で化粧の習慣があれば化粧も評価項目に含まれます。
歯磨き粉を自分で出せない、入れ歯の管理ができないといったようなことがあれば、
介助が必要になるので0点ということになります。
トイレ動作は、トイレの出入り、ズボン・下着の上げ下げ、お尻を拭く、流すなどが自分で
できるかを評価します。
全てのトイレ動作が自分でできること、ポータブルトイレや尿器を使用して洗浄などもできると
判断されれば、自立できているとして10点になります。
ズボンのお尻の部分を一部介助する必要があるが、その他は自分でできる、トイレットペーパーを
とってあげる必要があるが、その他は自分でできるなどであれば部分介助という事で5点です。
そして、完全に介助が必要な場合には0点です。
入浴は、浴槽に入る、シャワーを使う、体を洗う、頭を洗うといった動作が自分でできるかを
2段階で評価します。
シャワー浴で入浴できる、自分で浴槽内で入浴できるなど、全ての入浴動作が自分でできるので
あれば自立できているとして5点です。
入浴に介助が必要となるのであれば、どれだけ小さな介助であっても0点となります。
入浴に関しては、浴槽につかる、シャワーを浴びる、髪や体を洗うといったことまですべて
自分でできるかが左右する部分となっています。
歩行の評価では、平地の歩行または車椅子の移動ができるかを4段階で評価します。
見守りまたは介助なしに45m以上歩けること、装具、義足、杖、松葉杖、歩行器を使用して
45m以上歩けることに合致していれば15点です。
見守りまたはわずかな介助があれば45m以上歩けるのなら、一部介助として10点になります。
車椅子を自分で操作して45m以上移動ができるか、角を曲がること、方向転換、
テーブル・ベッド・トイレなどを含めた45m以上の移動ができるなら全介助で5点です。
階段昇降では、階段を安全に昇り降りができるかを3段階で評価します。
なお、昇降を評価するうえでの階段の段数はとくに問われてはいません。
見守りまたは介助なしで安全に階段の昇降ができる、手すりや松葉杖、杖を利用して
階段の昇降ができるなら10点です。
見守りまたはわずかな介助があれば安全に階段の昇降ができるなら一部介助ですので5点です。
階段昇降に全介助が必要となるなら0点です。自立、手すり、杖などの使用はかまいません。
着替えでは、上衣・下衣・下着・靴・装具などを着脱できるかを3段階で評価します。
靴を履いたりファスナーを締めたりなど、すべて自分で行える場合に「自立」10点と評価します。
コルセットなど装具を装着している人が着替えに介助を必要とするが、作業の半分以上は
自分でできるなら5点です。そして、着替えに全介助が必要となるなら0点です。
こちらもやはり、すべて自分で行えるかどうか、半分以上が自分でできるかどうかによって
評価が分かれます。
排便コントロールでは、便失禁がないかを3段階で評価します。
失禁なし、浣腸、坐薬の取り扱いも可能ということで、脊髄損傷者などは坐薬や浣腸を使っても
良いので失禁がなく排便コントロールが可能なのであれば10点です。
ときに失禁あり、浣腸、坐薬の取り扱いに介助を要する者も含むという事で、坐薬や浣腸に介助が
必要となる、またはたまに便失禁があるのであれば一部介助という事で5点です。
常に便失禁がある状態の場合には0点です。
排尿コントロールでも、排便コントロールと同じく便意や尿意を感じてから排泄するまでを
1人で管理できているか、つまり失禁がないかを自立:10点、部分介助:5点、
上記以外:0点の3段階で評価します。
失禁がなく排尿コントロールが可能で、脊髄損傷者などは収尿器の着脱や清掃管理ができている
のなら10点です。
たまに尿器やトイレに行くまで間に合わず尿失禁することがある、収尿器の着脱や管理に介助が
必要となる場合には5点です。
常に尿失禁がある、全介助が必要となるケースは0点となります。
デイサービスでは「ADL維持加算」導入に伴い、バーセルインデックスによる評価が
用いられています。
しかし、バーセルインデックスにはメリットもあればデメリットも存在しています。
ここではそれら両面について解説していきます。
バーセルインデックスは評価項目が10項目で、2~4段階のわかり易い評価区分は
誰にでも理解しやすいのが魅力です。
5点刻みなので合計点数も比較的簡単に算出できます。結果が100点満点で出せるため、
医療従事者や介護職員はもちろん、利用者本人や家族も理解しやすいでしょう。
細かい検査は必要なく、簡単に実施可能で、結果もわかりやすいということが特徴です。
最近では介護報酬のADL維持等加算や個別機能訓練加算などを算定するための評価方法として
用いられており、今後もさまざまな場面で活用されていくことが予想されます。
一方で、シンプル過ぎる評価区分であることから、検査する人によって結果が変わってしまうことも
あります。
似ている検査方法にFIMがあります。FIMとは「Functional Independence Measure
(機能的自立度評価法)」の略です。FIMは「しているADL」を重視する日常生活動作の検査方法です。
例えば病院のリハビリでその動作ができたとしても、帰宅後に同じ動作ができなければ
利用者のためにはなりません。
細かいADLは、バーセルインデックスでは評価しづらいので、FIMをはじめとするADL評価方法と
併用するのがおすすめです。
本記事では、バーセルインデックスがどんなものか、評価基準それぞれについて解説してきました。
バーセルインデックスは、世界的に使われている検査方法です。
誰でも簡単にADLを評価できる点が魅力的です。
一方で簡易的な検査項目だからこそ、バーセルインデックスのみで細かく評価するのは
難しいでしょう。
サービスの質向上や科学的介護の実現に向け、ぜひバーセルインデックスについての理解を
深めておきましょう。